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3話 守仁 コウはハーレム主人公

果たして、コーラに敗北したセカイ系彼女がどこにいるだろうか。


この三日間、俺の魅了能力を浴びせ続けてみたが、あの野郎全く反応しない。

ナーフされてるとはいえ、俺の権能が通らない人間なんて初めてだ。

…いや、前に同位体を作った時、無意識に放ってやらかしたくらいしか前例がないけど。

もしかすると俺の権能が通じない世界なのかもしれない。

そう思い至り、俺は魅了能力をそこらを歩く野良猫に浴びせてみる。


「にゃおー!にゃおー!」

「機能するな、うん…」


虚空腰ヘコにゃんことかいう業の塊みたいな存在にしてしまった。

流石に申し訳ないな、と思い、鎮静能力で溢れ出た性欲を鎮めてやる。

大丈夫だ、お前の痴態は俺しか見てないから。


「んー…、人間にもやってみるか?」


やりすぎるとどんな聖人も性犯罪者に早変わりだから、あんまりやりたくないんだけど。

前に同位体作った時はやり過ぎて、生きるチ○コみたいな邪神生まれたし。

ちょろっと出すくらいだったら試してもいいかな、と思っていると。

ちょうど登校してくるところだったのだろう、コウくんが眠そうに通学路を歩く姿が見えた。

今日こそはコーラ、怪物魔剤、炭酸ぶどうジュースの炭酸糖分三銃士に勝ってやるんだ。

そんなふうに思い、彼に歩み寄ろうとしたその時。


「おはよ、守仁くん!」

「おはよ」

「お、おはようございます…」


数人の女が親しげにコウくんに挨拶を交わした。

それに対し、コウくんは「ああ、おはよう」と淡白に返す。

個体差はあれど、どれもこの世界で言う美人の類であることは明白。

その光景を前に、ナーフしたはずの俺の脳細胞に雷が走った。


こいつ、ハーレム主人公だ!!


女慣れしてやがる!彼女いないくせに!

彼女が欲しいとか宣ったくせに!明らかな俺モテないぜオーラ出してたくせに!

…少々荒ぶってしまった。心を落ち着け、状況を整理しよう。

まず守仁 コウには俺の絶対魅了が効かない。他の権能がどうかはわからないが、少なくとも効かないのは確かだ。

次に、守仁 コウには何人かの女友だちがいる。しかも、美人揃い。

故に、守仁 コウは女に慣れている。

なんてこった。俺の魅了は女慣れしてると効かないのか。


そこまで考えて、俺は違和感に気づく。

あれ?これ、歴戦の英雄ですら虚空に腰ヘコするような魅了だったよな?

それがたかが女に慣れてるだけの思春期坊主に防げるものなのか?

悶々と俺が悩んでいると、こちらに目を向けたコウくんが手を振った。


「真白さん、おはよー!」

「あ、うん。おはよう」


試しに周りに魅了をかけてみようか。

いざとなったら鎮静の権能でなんとかなるだろうし。

そんなことを思いつつ、俺は軽くコウくんを囲む3人に魅了をかけてみる。

腰ヘコマシンにはしない。

せいぜい、「この子可愛いな」程度の愛玩精神を芽生えさせるくらいだ。

美少女ではあるものの、今の俺の容姿はどちらかというと可愛い系。

流石に悪い顔はしないだろう。そう思い、俺は3人に微笑む。


「初めまして、真白 ハジメです」

「転校生ちゃんだよね?

私、3組の吉良 ヒカリ。よろしくね!」

「2組、洲帆 ツミキ。よろしく」

「あの、おんなじクラスの…、小川、イオ…、です。よろしく…」


同年代より知能が低そうな活発女子、スポーツ万能そうなダウナー女子、引っ込み思案小動物女子…と。

なるほど。ベターな組み合わせだ。

表情を見るに、無意識ながらも俺に対する警戒は解いている。

つまるところ、俺の魅了は機能しているということだ。

…本当にコイツなんなんだ?何故に俺の力が全くもって効かないんだ?

因果律を気軽に覗けた本体が恋しい。猛烈に。

何故にロケハンしなかったんだ、と今更な後悔を味わう俺に、「どこから来たの」、「趣味は」など普通の質問が投げかけられる。

俺は適当に繕った返答を返しながら、ダメ元でコウくんに魅了をかけてみた。


結論を言おう。レモンフレーバーの炭酸水に負けた。


♦︎♦︎♦︎♦︎


「この世界の男には効かんのか…?」


その日の放課後。

「用事があるから」とアカリちゃんと去ってしまったコウくんのことを想起し、俺はため息混じりに呟く。

貞操観念が男女逆だった世界とかじゃないよな?…いや、それでも関係ないはずだ。猫や同性にだって通じたんだ。コウくんにだけ効かないのはおかしい。

この世界の男には効かないという可能性を検証してみよう。

そこらのモテなさそうな男に魅了をかけてみよう。それで虚空腰ヘコマシンにならなければ、俺の魅了はこの世界の男相手には通じないと言う証明になる。

もし効いてしまっても、鎮静の権能を使えば大丈夫だろう。


そんなことを思いつつ、俺は街を練り歩く男たちに目をつけていく。

もちろん、視線は向けない。劣化版千里眼で、半径数メートル以内の男を感知しているのだ。

因果律を覗けない欠陥品だが、比較的平和なこの世界ならばこれくらいで大丈夫だろう。

そんなことを思っていると、ちょうど良さそうな人間を見つける。

今の力で見れるだけの履歴を見てみると、かなり女を食ってる。

大学生か。こういう世界なら、ちょうど性が生活に組み込まれる時期だろう。

そんなことを思いつつ、俺はそれなりに弱くした魅了を男に浴びせた。


「そこの君、1人?」


お、かかった。

ふむ、目が野獣と化している。やはり権能は機能しているらしい。

俺みたいなおっぱいがない可愛い系に、女に困ってなさそうなコイツが絡みにくる時点で、魅了にバグは生じていない。

もういいや、と思い鎮静の権能を向けようとすると、腕を掴まれた。


「1人じゃ危ないし、もしよかったら送ってくよ?」

「…すみません、1人で大丈夫ですので」

「遠慮しなくてもいいよ。何もしないから」


めちゃくちゃ目がギラついてますけど?

今、股間を蹴り上げたら硬い感触が襲いそうだ。

…まあ、俺の魅了能力せいなんだけど。

そんなことを思いつつ、俺が鎮静の力を使おうとしたその時。


「お、お待たせ、真白さん!」


買ったばかりであろうクレープを片手に持ったコウくんが、俺の手を取った。

男はそれに目を見開き、「彼氏いたかぁ」と呟いて踵を返す。

しばらく2人で逃げるように歩くと、同じようにクレープを持ったアカリちゃんが心配そうな顔を向けた。


「真白さん、大丈夫だった!?」

「うん。ちゃんと断ったから」

「断ってもダメそうだったでしょ!

そういうときはちゃんと助けてって言わなきゃ!」


別に気にしてない。デート中なのに申し訳ないことをした。

俺がそう頭を下げるより先、コウくんが握っていた手を離し、俺の肩を掴んだ。


「真白さん。困ってる時は困ってるって言ってもいいよ。絶対に誰かが助けてくれるから」


困ってる原因お前なんだけど?

そんなことを言えるはずもなく、俺はこれ以上彼らを刺激しないよう、小さく頷いた。

アカリちゃんは「助けて」って言えない理由が激重だったので、ハジメも同じような子なんじゃと危惧してる

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