表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/33

24

テスト前の休み期間へと突入した。この学校では、テストに入る前に、3日〜4日の授業休みがあり、その間に教師はテストの最終準備をして、生徒たちは勉強をする、ということになっている。今回のテスト前休暇は、3日の休みらしい。

メイは毎日図書館に通っていたが、テストが近づくごとに、図書館で勉強する生徒の数は増えていった。


テスト前の休み期間に入ったらアーサーが帰ってくるとのことだったが、テスト前休暇初日に、図書館やカフェテリアを探したが、アーサーの姿は見つからなかった。

そして、2日目の午前中、メイは勉強に区切りをつけると、早めのランチを取りにカフェテリアに向かった。朝、昨日と同じようにアーサーを探したが見つからず、あきらめて図書館で勉強していたのだ。

アーサーの誤解を解けていないことがどうもメイの気をもみ、それを考えたくないからメイは勉強に打ち込んだ。しかし、今回のテストは間違いなく補習になるだろう。メイは、負け試合に挑むしかないことにモチベーションが上がらなかったが、やれるところまでやろう、という気概で勉強していた。


カフェテリアで早めの昼食を終えて、図書館に戻ろうとしていたとき、メイちゃん、と呼ばれた。振り返るとそこにはダニエルと、なんとアーサーがいた。


「あっ」

「アーサー、さっき帰ってきたみたいだよ」


ダニエルは、ね、とアーサーに言う。アーサーは、ああ、と頷く。メイは、そうなんですね、大変でしたね、と返しながら目が泳いだ。ダニエルはそんなメイを見ると小さく微笑んだ。


「メイちゃんは、補習回避できそう?」

「えっ、…私にそれを聞きますか…」

「なら、アーサーと一緒に勉強したら?わからないところ教えてもらえるし」


ダニエルのわかり易すぎる援護に、メイは動揺する。いやさすがにテスト直前は迷惑だし、とメイはおどおどしながら言った。


「構わない」

 

アーサーは、何でもないようにそう答えた。メイは、アーサーの方を見た。いつもの無表情で、何を考えているのかわからない。ダニエルは、にこにこ笑うと、じゃあ決まりだね、と言った。


「それじゃ、僕はこれで」


ダニエルはそう言うと2人の前から去っていった。メイは、気まずさに耐えきれず、お願いだからいかないで欲しい、という気持ちで一杯だった。


「昼食はとったか?」


アーサーはそうメイに尋ねた。メイが頷くと、そうか、とアーサーは言った。


「俺はまだなんだ。すぐに済ませるから、先に図書館に行っていてくれ。いつもの席で待ち合わせよう」


アーサーは、そう、いつものように言う。花祭りのことなんて、何も気にしていないようだ。メイは、アーサーのその様子に傷つく。やっぱり、アーサーにとっては、どうでもいいことだったのだ。わかっていたことのはず。傷つくほうがおかしい。メイはそう言い聞かせるけれど、心が言うことを聞かずにどんどん沈んでいく。


「それじゃあ、また後で」


そう言って去ろうとするアーサー。メイは、アーサーの背中を見つめる。言わなくては。言わなくては。言わなくては。


「あのっ…」


絞り出すように言葉を出した。アーサーは振り返る。


「どうした?」

「花祭りのこと、あの、謝りたくて…」


メイは、アーサーの瞳を見つめる。けれど、まっすぐに見つめられずに目をそらしてしまう。


「…あの日は、アーサーさんから花をもらったのに、私、」 

「何も謝ることなんてない」


アーサーは、メイの方を見てそう言った。メイは、え、と声を漏らす。アーサーのいつもの無表情な様子に、彼が何を考えているのかわからずにメイは混乱する。


「君は、渡したい相手に渡した。それだけだ」

「あの、」

「よかったじゃないか。君は君の行く道を見つけている。それが一番じゃないか。俺に気を使うことはない」


アーサーは、そう淡々と返す。メイは、そんなアーサーの様子に、ああそうだ、婚約者といえど、この人は私のことは本当に好きではなかったんだった、と思い出す。ただ、彼がとても優しい人だから、メイのことを心配していただけ、ただそれだけ。わかっていた。わかっていたつもりだった。


「そう、ですよね…」

「ああ。…それじゃあ、また後で」


アーサーはそう言うと、またメイに背中を向けて歩きだしてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ