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休み時間に、メイは廊下の窓から外を眺めながら、村のパパとママに書く手紙の内容を考えていた。今日はアーサーと図書館で約束している日で、メイが考えてきた文を直してもらえる。そして、直しが終われば村に手紙を送れる。それが楽しみで仕方なかった。メイがそんな風に思えるのはアーサーのおかげだった。

ふと、視線を感じで、メイがそちらに目線をやると、ダニエルがいた。メイは小さく微笑み、こんにちは、と会釈した。ダニエルは、前までの人当たりのいい笑顔ではなく、口元を少し緩めただけの笑みをメイに返すだけだった。


「そういえば、最近あなたの浮いた話は聞きませんね」


クラスメイトと仲良くできるようになってからは、それはもう山程噂話が耳に入っていて、ダニエルの話ももちろんその中の一つだったけれど、その噂は最近聞かない。ダニエルは、メイの隣に立って壁にもたれかかる。そして、そうかな、と返す。


「女の子が泣かなくてすんでるようで良かったです」

「僕と遊んでもらえないことが寂しくて泣いてる子がいるかもよ」

「遊ばれて泣かされる前でよかったんです」  


メイが威嚇するようにダニエルに言えば、ダニエルは、もうしないよ、と返す。そんな素直なダニエルを、メイは意外そうに見上げる。


「…僕はさ、父親の愛人の子どもなんだ。ずっと本妻に男の子が生まれなくて、仕方なしに彼らは僕を引き取ったんだけど、そのあとすぐに男の子が生まれちゃって」

「…」


メイは、ダニエルの言葉に何も言えなくなる。メイの心配そうな瞳に、ちがうちがう、とダニエルが手を振る。


「同情してほしいんわけじゃないんだ。むしろ、そんなの虫唾が走る。…学校ではとっくに広まってる話だから、そのうちメイちゃんにも回ってくるかなと思って、変に気を使われるより先に自分から言っておこうかなって」

「そうだったんですか」

「引き取った親も、僕を売り払った生みの母親も、嫌いで仕方がないのに、僕がしていたことは結局、嫌いな奴らに囚われてるみたいで滑稽だって、気がついたんだ」

「…」


ダニエルはそう言うと、メイの方を見て小さく笑った。メイはそんなダニエルをじっと見つめる。そんなメイに、ダニエルはまた人懐っこい笑顔を見せる。


「なあに、また何か分析でもしてくれるの?」

「そういうつもりは…。ただ、良かったなって思って」

「よかった?」

「ダニエルさんが、晴やかだから」

 

無意味に傷つく女の子はいなくなるし、良いことばっかりですね、とメイ。そんな彼女をみて小さく笑ったダニエルは、あ、と声をもらした。ダニエルの視線の先を見ると、アーサーがこちらへやってくるのが見えた。なぜか少し怒っていて、メイは、何かしてしまっただろうか、と頭の中をフル回転させたがわからなかった。そんなメイとアーサーを交互に見て、ダニエルは愉快そうに口元を緩める。


「ダニエル、彼女に何の用かな」

「やあアーサー。今日もいい天気だね」

「曇天だ。午後から雨が降る」

「そうだったかな?メイちゃんの隣にいると、こんな天気でも素晴らしく眩しく感じてしまうからさ」


はは、と爽やかに笑うダニエルを怪訝そうに見つめるアーサー。メイも、不思議そうにダニエルを見つめる。ダニエルはそんな2人を見て、うそうそ、と目を細めた。


「心配しなくても大丈夫だよ。こんな可愛げのない女の子、僕は好みじゃないんだ」

「それで結構ですけど」

「(これはこれで仲が良さそうで複雑だな…)」


メイは、あ、とつぶやき、そろそろ教室に帰ります、と言うと早足で二人の前から離れた。


「あ、放課後またお願いします!」


メイはアーサーにそう言うと、手を振り、また歩き出してしまった。そんなメイに、あ、と声を漏らすアーサー。


「…君のせいで、彼女に用件を伝えそびれたじゃないか」

「僕とメイちゃんが仲良さそうで焦っちゃった?」

「…」

「後で彼女の教室に行けばいいじゃないか」

「…俺が教室に行ったらまた彼女が騒がれる」

「それじゃあ、僕も一緒に行こうか?騒ぎが分散されるから丁度いいんじゃない?」

「断る」


アーサーはそう言うと、ダニエルの隣を通り過ぎた。そんなアーサーを、面白そうにダニエルが口元を緩ませた。

11/5 訂正

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