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第38話 ‼名誉挽回‼

「久しいな、ご両人。賀新正旦がしんしょうたん一日閃終いちじつせんしゅうの心持だったぞ」


「なんだろう、発音はいいんだけど、なんか意味が違う気がする。」


 おっといけない。ここは戦場だ。重要なのはそこではない。

 しかし、やはりこいつは独特の引力を持っている。


 「こいつに気を取られたが、城壁はどこ行った? こいつまさか戦域を構築して、30㎞地点から地下を掘り進んできたのか!?」が正しい反応のはずだ。


「お前は、ドン=ギュウだな! なぜ後ろから?」


 ギルドマスターは小ボケに引っかからなかった。さすがの貫禄だ。


「む、俺は馬鹿だからな。よく意味は分からなかったが、これだけ言えればいいだろうと教えてもらったのさ! さて、屈辱を果たす時が来たようだな!」


「「…………⁇」」


「ん? ナンカチガウ? おお⁉ 雪辱を果たす時が来たようだな‼」


「「それだーーー!!」」


「ならば‼ 名誉挽回‼ 【|戦域構築:雷明黄金霊安廟アステリオス】!!!」


 再びの戦域構築。さっきまで掘り進んできた戦域は【戦域構築:黎冥厳陵宮(ラビリントス)】か。こちらが暗い迷宮だったのに対して、こちらはド派手な宮殿だ。色とりどりの雷光が走っていて目に悪い。

 在りし日のクノッソス宮殿もこんな感じだったのかな? いや、ここまで過剰な電飾はなかったはずだし、今は久遠の宮殿に思いを馳せて感傷に浸るべきではない。


「行くぞ、アオイ! 【濃美畏怖(ノービーフ)、濃雷斧(、ノーライフ)】!」


「上等だ。【梅枝】‼……強いな!」


 【雷斧】は戦域から発生する雷だった。今回のは、ドン=ギュウ自信が投擲してきている。【梅枝】で押し切れると思いきや、押し負けた。とっさにいなしたが、なぜだ? 出力で負けた気はしない。

 タネは割れていないが、ここはギルマスと二人がかりか?


「嬢ちゃん悪い、そっちは任せてよいか?」


 ダメみたいだ。象頭のフェルディナントとキャッキャウフフしてる。

 迷宮探索組はというと、フレイムトレントの処理に回ってるな。クバラの戦域、迷宮の外だと結構小さいのか、だいぶ苦労している。トレントは戦域に引きずり込めばたちどころに死んでいくのに。

 まあ、街に火の手を放たれても困る。

 やむを得ない。ここはさっさと倒して加勢しよう。


「OK、任せて!」


 ダメだ、やっぱり我慢できない。


「いや、待て! お前だけはヴェジタリアンの友であれよ!」


 なんだよ牛肉無くして人生なしって。

 ああ、くそ。また突っ込んじまった。やっぱこいつの戦域効果にツッコミ強制があるはずだ。なければおかしい。


「がっはっは。突っ込みが甘いな葵よ! そもそも牛が牛を食うと危ないんだぜ! 【雷斧】!」


 空間からの電撃魔法。起こりから発射までの感覚が短くなってるな。


「それは見飽きたよ!【澪標】、【梅枝】!」


 さっきよりも出力を上げるためにいったん【雷斧】を受ける。


「かかったな! 【濃美畏怖(ノービーフ)、濃雷斧(、ノーライフ)】! これは【雷斧】と、惹かれ合う!」


 なるほど。先ほどの【濃美畏怖(ノービーフ)、濃雷斧(、ノーライフ)】は出力で勝ったから私に向かってきたのではない。私が【梅枝】で引き寄せてしまったということか。

 【梅枝】は【雷斧】と同じ電荷であり、【濃美畏怖(ノービーフ)、濃雷斧(、ノーライフ)】とは逆の電荷。そして今、私の体は【雷斧】色に染まっているはずだ。

 つまり次の一撃は、より強い。

 

 いや、むしろ好都合。


「がっはっはっはっはっはっは! 虚弱なニンゲンでは耐えられまい。まずは首級一級上げさせてもらうぞ!」


 勝利を確信してくれた。あとはうまくやるだけ。


「とんでもない待っていたんだよ。お帰り、【真木柱まきばしら】!」


 今はとて 宿かれぬとて 慣れ来つる 真木の柱は 我を忘るな

 住み慣れた家を離れる真木柱が詠んだ歌。柱とは背骨、骨盤、肩甲骨。全部受け入れろ。私そのものが大黒柱なのだ。


「ふふふふふ、やっぱりだ。成ったな」


 思わず笑みがこぼれる。【紅梅】うちの流派にはない。あるのは【幻】、【雲隠】までだ。紅梅はその先の章。でも、先祖が完成させたはずだと信じてた。

 なぜなら、真木柱と紅梅は再婚するから。あのヲタクが作らないはずがないのだ。


 【紅梅】。ドン=ギュウの【濃美畏怖(ノービーフ)、濃雷斧(、ノーライフ)】を受けた時、電位の勾配は逆転した。放たれた槍は戻らねばなるまい。


「お返しだ。【紅梅】」

 【梅枝】とは比べ物にならない極太の雷が、優美な桔梗の切っ先からほとばしる。

 突く必要はない。切っ先を向けてやるだけだ。引力が勝手に電流を作り出す。赤紫色の雷光が、戦域を支配した。


「なに⁉ グオオオオオオオオ⁉」


 腕を交差させてとっさに体を守ったのだろう。奴の左腕が消し飛び、胴体も結構焦げている。しかし、内臓も焦げていることだろう。絶命は時間の問題だ。

 そういえば、前回も似た倒し方だったな。 

 焼け焦げた肉の匂い。私からもするけど、どちらかというとビーフステーキの香りが強い。赤みが多くて、獣臭いからあまり食欲はわかないかも。

 既に奴の戦域の崩壊も始まっている。


「ぐおお、やりおるわ、アオイ。これは奥の手を使うしかないのう」


 思わず警戒して足を止める。こいつの肌を貫けるのはこいつ自身の雷撃と可能性があるとしたら【蛍】だけ。今この場においては近づいて切るしかないが、手負いの獣は怖い。特に草食獣は。

 ドン=ギュウ不敵な笑みを見せた後、崩れ行く戦域の中で叫んだ。


「助けてえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!」


 やられた。戦域は崩壊中。助太刀の可能性もあるか。急がねば。


「まったくてめえはとんだA5ランクだよ‼ ドン=ギュウ‼ 【蛍】‼」


 その首もらい受ける。と思ったとき、


電撃機動ルクス!」


 招かれざる客が来た。

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