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第18話 お酒を受け付けない

「がっはっは。よい飲みっぷりですな。トーマス殿」


「いえいえ、まだまだです。かくいう閣下こそ、もう2樽開けられたのではないでしょうか?」


「ん? もうそんなになりますかな? いやいや、気づかなんだ。トーマス殿のお話は面白いですな。それを肴にぐいぐい行けてしまいますな。わっはっはっはっは」


「ははは、私もこんなに楽しい酒席は初めてですよ。私についてこれる者は居りませんからな」


「ほほう。まだまだイケる口ですな? どうですかな飲み比べといきますかな? おおい、ワインはもうよい。ブランデーを、ブランデーを持ってこい」


「ほう。ブランデー。そんな高級品を頂けるのですか?」


「ええ、製法が少々特殊でしてな、厳密には1年熟成なのですがね、なぜだか14年熟成させたかのような芳醇な味わいがするのですよ。ささ、グイッとグイッと」


「ほほう、威厳ある色合い、馥郁ふくいくたる香り、うんうん。辛口ですが芳醇で濃厚。たしかにこれで1年モノとは、信じられませんな」


「うーん。貴殿は繊細な味覚をお持ちなのですな。俺も好き嫌い程度なら分かるが、難しい言葉はよくわからんのだ。なるほどこれがフクイクというやつなのだな。やはり、貴殿と飲むのは良いですな。勉強になるし、世界が広がっていくようで心地よいですぞ!」


「はははは、それは光栄ですな。さて、飲み比べでしたな、お注ぎしますよ」






「ねえ、あの人たち何やってんの?」


「うーん。ペースを見るからに飲み比べじゃね?」


「毒の?」


「酒じゃないか? いや、飲んでる量的に毒でも間違いない気がする。周りの牛どもは死屍累々だけどな。給仕係とわずかな守衛しか機能してねえな」


「おろろろろろろろ」


「あ、ジョン君エチケット袋持ってきてくれたんだ、ありがとう。匂い消しまで? 気が利くなあ」


 いいなあルナ。こんな美少年に親切にされて。あ、でも迷惑そうな視線もぶつけられてるから羨んだらだめか。本当に羨んだらダメか? 本当に?


 城壁への着陸は無事に成功し、そのまま東門前の陣地を一望しているところだ。


「確認なんだけど、ギルドマスターって人質なの?」


「いや、僕にもさっぱり分からないんですけど、どうやら客人扱いらしいんですよ。ギルドマスターが入城許可を取るまでに3日ほど要るけど必ず取ってあげるねって言ったら信じちゃったみたいなんです。で、接待の宴に呼ばれて、意気投合して、将軍以外酔い潰したところです」


 これ状況理解できる奴いる? いねえよなあ? なんだか本部からお偉いさんが来たみたいなノリの話してないか? 接待ってことなの?


「これ、もう攻撃かけてよくない?」


「葵さん、ダメですよ。ここの作戦指揮は今ギルド本部と通信してるサブマスターなんですから」


「いえ、葵さんがいけそうなら、攻めましょう」


 サブマスター、トムというらしい、が帰ってきた。眼鏡クイってやる感じのインテリって感じ。細身だけどひょろくは無い。実は情熱家タイプと見た。


「敵は牛鬼ぎゅうき族。雷の力を操る魔族です。それ以上のことは分かりません。珍しい魔族です」


「じゃあ、行ってきます」


 しかし城壁の階段の上り下り大変だな。棒みたいなのでするすると降りたいわ。






 牛鬼は皮膚も硬いし、筋肉も分厚いから切りづらい。頸動脈切れば一撃なのはありがたいけど。

 やっぱりナオミは特殊な部類なのかな? 切っただけでは死なない奴がうようよいる世界だったら身が持たん。


「ごきげんよう? だいぶ出来上がってるじゃん」


 私が宴会場に入ったとき、ギルドマスターと比較的小柄な牛鬼がまだ飲み比べている。身長が剛田くらいあるのに小柄な部類とか、牛鬼のフィジカルやば。

 ギルドマスターも実は魔物のスパイだったのかっていうくらい楽しそうに飲んでる。


「やあ、ギルドマスター元気? 人が死線潜り抜けてるときに何やってんのさ? お前スパイなのか?」


 ほっぺつねるくらいいいよね。


「むお? 葵じゃねえか? よく戻ってきたな。お前も飲むか?」


「お酒は20歳になってから!」


「む、トーマス殿? 貴殿はギルドマスターではなかったはずですが? ……よもや嘘をついたのか?」


 急に剣吞とした雰囲気に変わる。じゃあ、スパイではないのか。


「いや、嘘はついていません。私がギルドマスターではないとは言っていませんよ。入城にギルドマスターの許可がいるのも、3日は許可できないのも、すべて事実です。「筋肉は嘘をつかない」でしょう」


「では3日後には入れてくれるというのか?」


「ええ、勿論。筋肉は裏切らない、でしょう」


「ふむ、嘘はついていないな。俺は馬鹿だから嘘はつけないんだが、他人の嘘は分かるのだ」


 あ、牛鬼の表情が和らいだ。マスターに酒を注ぐ。


 待って⁉ こいつらワイングラスにブランデー入れて割らずに飲んでたの? 馬鹿なの? いや、馬鹿だったわ。


 ふと、牛鬼の動きが止まった。

 息をすうと吸ってから、言葉を紡いだ。


「馬鹿ですまない、もう一つだけ。我らが入城を許されるというのは、死体を街に搬入するという意味ではないのか?」


「「勿論」」


 ああ、君のような勘のいい馬鹿は嫌いだよ。


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