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1 愛しています。本当だよ。

 そっと、ふれあうように。


 愛しています。本当だよ。


 その日は夕方から、突然の大雨になった。

 ついてないな。と思いながら、白川小唄が田んぼ道を走っていると、近くに明かりの灯っていないとても大きな古い日本家屋のお屋敷が見えた。

 その立派な日本家屋のお屋敷の松の木の見える入り口にある瓦屋根のところで、小唄は少しの間、雨宿りをさせてもらうことにした。

 びしょ濡れになった自分の髪と服の雨をできるだけ手で絞ってから、小唄はなにをするでもなく、暗い雨降りの空と門からはみ出して見える松の木の枝を見つめた。

 ……ざーという激しい雨の音だけが聞こえる。

 それは、とても静かな時間だった。

 小唄は家の人に迷惑がかかるので少しの間だけ、と思っていたのだけど、そう思っていた以上に、小唄はなんとなくその美しい風景に見とれてしまって、その立派な木の門のところで雨宿りをしてしまった。

 それから十分くらいしたところで、「白川くん。なにしているの?」と背後から声をかけられた。

 驚いた小唄が慌てて後ろを振り返ると、そこには小唄と同じ高校に通っている小唄のクラスメートである少女、日下部道子が立っていた。

「え? どうして日下部さんがここにいるの?」突然の出会いに慌てて小唄はいった。

「どうしてって、ここ私の家だから」

 小さく笑って道子はいった。

 考えてみれば、当たり前のことなのだけど、思わずとても変なことを道子に聞いてしまって小唄はその顔を思わず真っ赤にした。

 みると確かにお屋敷の木の門のところには『日下部』と言う表札があった。

「ここで雨宿りしていたの?」

 道子は言った。

「うん。ごめん。少しの間だけって思ってたいんだけど、つい長居しちゃって。それに、ここが日下部さんの家だって知らなかったから」と小唄はいった。

「別に謝らなくていいよ。突然の雨だったしね。それよりさ、どうせ雨宿りしているのなら私の家の中にこない? 今、ちょうど誰もいなくて暇していたところなんだ」と、にっこりと笑って道子はいった。

 そんな道子の突然の誘いに小唄は戸惑ったのだけど、「用事とかないんでしょ?」と言う道子の言葉に「ない」と答えると、「じゃあ決まりだね」といって、道子は小唄の手を引いて、小唄を自分の家の中へと案内して歩き出した。

 小唄と道子がこうして手をつないだのは、このときが初めてのことだった。

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