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野宿ガール  作者: 五月雨拳人
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3話 お荷物選抜大会

     ◇


 移動手段とルートが決まったら、いよいよ本格的な準備に取り掛かる。


 荷物の選択だ。


「さて、何を持っていこうかな」


 紗月はクローゼットから大きな防水バッグを引っ張り出す。


 中にはテントや寝袋など、キャンプに必要な道具がぎっしり詰まっていた。四国には手ごろなキャンプ場が多く、紗月は暇ができるとバイクにこれを積んで、よくキャンプツーリングに出かけたものだ。


「テントと寝袋、それにマットは絶対必要ね」


 旅行で最も費用がかかるもの。それは交通費と宿泊代だ。


 交通費は自転車なのでかからない、かかってもそれは紗月の食費ぐらいだ。


 となると問題は宿泊代である。一応旅費は充分にあるが、それでも節約するに越したことはない。


 仮にホテルに泊まれば一泊一万円はするだろうか。安いビジネスホテルでも五千円はかかるだろう。もっと節約するならばマンガ喫茶やインターネットカフェという手もあるが、それでも一晩二三千円はする。しかしそれでもひと月近く旅をすれば、積もり積もって大金になる。


 しかし、テントを貼って野宿をすればタダなのだ。仮にキャンプ場を利用して料金を払っても、数百円程度の安いところはいくらでもあるし、何なら無料のキャンプ場もある。それに四国は遍路文化があるおかげか、野宿に寛容なように紗月は感じる。遍路が野宿できるように四阿あずまやがあるのを見た時、なんと素晴らしい所であろうと感動したものだ。なので紗月は旅にはテント・寝袋・マットの三種の神器を必ず持って行っている。これさえあればとりあえず夜寝ることができるからだ。


「三種の神器を入れたら、お次は……」


 ふと紗月の手が止まる。


 よく行くバイクでのキャンプツーリングなら、多少余分な物を持って行っても問題はない。


 だが、今回は自転車旅行である。


 積載量に限界はあるし、何より重量制限がある。無駄な物は何一つ持って行けない。持っていけば、それだけ自分が辛い思いをするだけだ。


「これはちょっと、よく考えないといけないわね……」


 紗月は防水バッグの中からトートバッグを取り出す。


 中には折り畳み式の焚火台、メスティン、携帯用のガスコンロ、カセットボンベ、耐熱手袋、トング、ナイフ、折り畳み式の鋸など、焚き火に必要な物が一式詰め込まれていた。


 ガスコンロとメスティンは、お湯を沸かしたり調理したりできるので持っていると便利だ。


 しかし焚き火台などは、完全に遊び用である。別に今の時期は焚き火をしないと寒くて耐えられないわけではないし、湯を沸かしたり調理するならガスコンロがあれば充分である。


 よって――


「今回は焚き火はしないかな」


 トートバッグから焚き火に必要な物を抜き出してクローゼットに戻し、再び防水バッグの中を漁る。


 次に出てきたのが小さな透明のビニールポーチ。中には歯ブラシや歯磨き粉。洗顔フォームに液体石けんが入っている。


「これはマストよね」


 さすがに洗顔と歯磨きは毎日しないといけないので、これは外せない。


 続いては折り畳み式のアルミテーブル。小さくて背も低いが、あると便利な憎い奴。ただ今回は自転車旅行なので、こちらも残念ながらお留守番だ。『あると便利』は『なくても平気』なのだ。


「さて、どんどん行こう」


 雨合羽と長靴のセット。雨の日は必ずあるので、これは必要。


 地図と記録用のノートを入れたB4クリアケース。ヘッドライトと充電器と予備のバッテリーを入れたタッパーウェア。ついでに化粧水や乳液、リップクリームなど寝る時に必要な物をまとめた小物入れも防水バッグに詰め込む。


「とりあえずこんなものかな」


 大雑把ではあるが、当日持っていくものは決まった。


 改めて荷物を見ると、思ったより量が多い。バイクで行くのとあまり変わらないような気がした。これはちょっと重量オーバーかもしれない。


「まあいいや。後でまた考え直そう」


 出発まではまだ時間がある。それまでに精査すればいいだろう。


「とりあえず今日はここまで。残りは明日や~ろうっと」


 荷物はこれぐらいにして、残った問題は明日取り掛かることにして寝た。


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