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Hoshoku-sha 〜異世界転移してきた敵には光学迷彩の能力がありました〜  作者: ゆずさくら


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転生の扉へ

 せめて二階からなら怪我をせずに降りれるだろう。

 上がってくるゾンビを電子銃で撃つ。

 まずはこの飛び散った肉片と体液が、後続のゾンビが階段を上がるのを遅らせてくれる。

 次に俺は階段を降りつつ、持ってきた椅子でゾンビを押し戻した。

 とりあえず二階の窓まで行ければ、もう、この階段を使う必要はない。

 二階の窓に手を掛け、体を下ろすと、そこから飛び降りた。

 建物の外にもゾンビはいたが、電子銃で処理できた。

 ヤツの姿はこの通りにはなかった。

 今までの行動から逃げるときは『転生の扉』に向かっている時だ。

 どこかで『転生の扉』が開いているに違いない。

愛瑠(める)、早く降りてこい! ヤツが逃げる!」

 俺は止めていた砂上車を探した。

 ゾンビや草の炎で燃えてしまっていないか心配だった。

「あった」

「後ろ!」

 愛瑠(める)の声に反応し、後ろを向くと至近距離にゾンビがいた。

 無意識に捻ったアクセルで、無限軌道が勢いよく回転した。

 無限軌道に削られ、ゾンビの足が飛び散った。

「早く乗れ!」

 愛瑠を乗せると、俺はヤツが逃げていった方向に砂上車を走らせた。

「転生の扉がどこに現れたかわかる?」

「路上の草を踏み潰すか、焼いて進むんじゃない?」

 ヤツのことだ、構わず草を焼いて逃げる可能性は高い。

 走りながら、路上の草が焼かれている方へハンドルを向ける。

「どう? この先にいる?」

「シートの上に立ち上がれっての?」

「膝立ちでもいいから」

 スピードを緩める訳にはいかない。

 転生の扉が閉じたら、俺はなんのためにこんな馬鹿げた世界までヤツ追いかけてきたのかわからない。

 俺の肩を掴みながら、愛瑠は砂上車のシートに立ち上がる。

「見えた! けど、閉じ始めている!」

「掴まって!」

 愛瑠の手を取り、俺はアクセルを更に開いた。

 背の高い草で前が見えない状態で、砂上車を飛ばすのは怖かった。

 だが、俺と愛瑠がしてきたことが、この一瞬で無駄になるよりはマシだった。

 大きな岩や、放置してある壊れた砂上車を、寸前で避け、俺たちは閉じ始めた『転生の扉』へ向かっていた。

「間に合ってくれ!」

 俺は顔に当たる風に向け叫んだ。

 愛瑠は言った。

「ここから飛ばないと」

「飛ぶって?」

「『転生の扉』まで高さがあるのよ」

 砂上車を扉の下に止めている時間はない。この勢いのままシートに立ち上がり、ジャンプするしかない。

 失敗すれば転生出来ないどころか、この世界で命を落とすことになる。

 俺は服を千切ってアクセルに挟み込み固定すると、シートに足をつき、立ち上がる準備をした。

「見えた!」

 俺の想像より扉は小さくなっている。

「!」

 愛瑠が焦ったのか、先に蹴り出してしまった。

 俺はまだ早いと思いつつも、愛瑠を救う為にシートを蹴るしかなかった。 

 歪な形で空中に放り出された。

 砂上車は無人のまま走り続ける。

 俺は体を捻りながら、『転生の扉』へ手を伸ばす……

1

2

3

 真っ白だった。

 天然雪の中なのか、人工的な空間なのか、はっきりしなかった。

 コントラストがなく、端が見えない。そのせいで広いのか狭いのかすらわからない。

 あの時以降の記憶がない。

 ジャンプした後、『転生の扉』に触れることが出来たのか、触れていないのか。

 ここは、いつか見た世界のようでもある。

 生きているのか、死んでいるのか、俺は今、その境界にいるのかもしれない。

 こんなギリギリの生活(いのち)を、いつまで続けなければならないのだろう。

 ヤツを倒したら終われるのだろうか。

 ヤツを倒したら『転生の扉』は現れないのだろうか。

 だとしたら……

 いつまでも倒さなければ、いつまでも転生できる。

 目標を達成したら、俺には何も残らない。

 復讐心がなくなったら、家族を失ったという心の『穴』だけが残ってしまう。

 今、転生出来ていないなら、俺は死んでいるのだろうか。

 ゾンビが闊歩する世界で、死体になると言うことは、ゾンビの手足に利用されてしまうのだろう。

 俺は、腐った腕を取り替えているゾンビのことを思い出していた。

 では、なぜ『転生の扉』に触れたかどうかを思い出せないのだ。

 順番に記憶を辿るが、砂上車の上に立ちあがろうとしたあたりから、記憶が曖昧になる。

 愛瑠(める)のジャンプが早すぎた。

 俺は、できる限りタメ(・・)を作って飛び上がったが、俺の指先が『転生の扉』に触れていなければ、そしてその時、愛瑠と触れていなかったら。

 二人とも転生出来なかったか、俺一人が転生したか。


 無限の世界の中で、俺は一人だけだ。


 愛瑠がいても、いなくても、結局、一人なのだ。

 家族がいても、いなくても。


 生きていても、死んでいても。

 ゾンビの世界にいても、次の世界に転生しても。


 俺はただ一人だけ。


 命が尽きるのを待つだけの存在。


「おい、醍醐(だいご)。俺たち先帰るからな」


 部活の友達が、俺の頭の先の方で、そう言った。


 今日は日曜日で、今、家に帰ると、父や母、妹がいて邪魔臭い。


 あの時、俺はそう思った。


 もうしばらく、一人でいたいと思った。


 結局、家族といても、一人だったのだ。


 家族といると、いっときの間、それに気が付かないだけだ。



「起きろ」

 その声で、俺は覚醒した。

 目の前に愛瑠がいた。

 俺は再びヤツを追う。

 孤独を忘れる為に。




 終わり



 


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