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Hoshoku-sha 〜異世界転移してきた敵には光学迷彩の能力がありました〜  作者: ゆずさくら


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電気設備

 枯れ草の上で一晩を過ごした。

 愛瑠とジョニーは、まだ寝ていたので、俺は一人で建物の中を歩いた。

 昨晩、三人で回った時とは印象が違った。

 ここで人が生きていた、暮らしていた、それが分かる様々な証があった。

 オフィスのようなテーブルに、ノートや書籍が置いてあったり、給湯室にコップが置いてあったりと様々だった。

 加えて、惨劇があったことも分かった。

 床や壁に体液をぶち撒けたような黒い跡が残っていたり、無造作に人の骨が落ちていたりする。全身の骨があるわけではなく、一部が砕けていたり、失われていたりする。

 牢屋で見たゾンビたちが互いの体で補完するように、ゾンビ同士で部位を補った結果かもしれないし、生きた人間を食い散らかした結果かもしれない。

 テーブルやノートもそうだったが、俺は、自分が生まれた世界と同じ形をしているものを見つけた。

 それはコンセントだった。

 二つ、長方形の穴が並んで開いている。

 それに差し込む側のものも、対応して同じ様にデザインされていた。

「……」

 俺は持っていた電子銃を手に取り、考えた。

 この世界なら充電できるのではないだろうか。

 ジョニーがこの建物に取り付けた警報器は、電池、あるいは充電して使うものだろう。

 だとしたら、電池か、充電する設備が存在するはずだった。

 俺は電子銃を端から端まで見回し、充電するための口を探した。

 四つの金属で出来た円が並んでいて、ここに直流の電圧を掛ければ充電ができそうだ、と考えた。

 それは自分の世界で見たことのないコネクタだったが、もしかしたら、偶然合うもの存在するかもしれないと思った。根拠はないが、建物にあるコンセントが、俺の生まれた世界のものと同じ形をしているからだった。

 二人が横になっている部屋に戻ると、ジョニーが起きていた。

「なんだそれは?」

 ジョニーは俺が持っていた電子銃を見て言った。

「電子銃だ。電子を加速して発射し、対象を破壊する」

「……」

 あまりに反応がないので、俺は不安になった。

「この世界に銃はないのか?」

「ある。いや、銃は『あった』と言った方が正しい」

 俺は訊ねた。

「どういう意味だ」

「村長が言っていた。人類はゾンビと正常な人間に対し、銃弾を撃ち尽くし、最後にはそのテクノロジーごと失ってしまった」

 だからジョニーはゾンビ対策で『火炎放射器』を持っていたのだ。

「この世界に『電気』は残っているよな」

「ある。なぜそんなことを聞く」

「この銃を使うには充電が必要だからだ」

 俺はさっき見つけた四つの円形の金属面が並んでいる部分をジョニーに見えるように向けた。

「……」

「電気はあるんだろう? 昨日仕掛けていた警報装置は電気で動くと思っているけど」

「ああ。そのコネクタ、どこかで見たことがある」

 ビンゴだった。

 コネクタが合えば、それを通じて発電機か、充電池と繋げればいいわけだ。

「電気は? どこで繋げられる?」

「見たことはあるが、思い出せない」

「警報器の電気はどうやって充電したんだ」

 ジョニーは外の方を指した。

「砂上車か。砂上車自体も充電池を使っているみたいだが、砂上車はどうやって充電する?」

「充電ステーションがある。あるが……」

 ジョニーは口篭った。

 頭を両手で抱え、髪をくしゃくしゃと掻きむしった。

「どうした?」

「充電ステーションは村とか、コミュニティーが持っている。村を出てしまうと、充電ステーションを使う権利がなくなる」

「今更後悔しているって訳か?」

 ジョニーは膝をつくと、そのまま、おでこを床に押し付けた。

「そうだ。母のためとはいえ、もう少し考えてから行動するべきだった」

「旅人はいないのか。他の村とか、コミュニティーに行って、充電させてもらうというのは?」

 床に頭を押し付けたまま、横に振った。

「ダメだ。他の村まで砂上車の電気が持たない」

「……」

「他の村ってどこなんだ、ここだってかなり遠くまで走ってきただろう。もう他の村も近くなっているんじゃないのか?」

 俺のいうことなど聞こえていない様だった。ジョニーは目を閉じて、ただ涙を床に垂らしている。

 泣いているだけで、俺が肩を叩いても、何か言っても答えはなかった。

 ここはそれほど絶望する様な場所なのだろうか。俺は建物の屋上へ上がり、周囲を確認しようと思った。

 さっき一階を散策していた時に見つけた、EPS(電気類のパイプスペース)に入ると、工事で余った廃部材(テツパイプ)を見つけ、手に取った。

 ジョニーの仕掛けた警報装置を潜って抜けると、建物の非常階段を登り始めた。

 この(てつ)パイプ一本で、ゾンビと戦えるかは分からなかったが、素手で逃げるしか選択肢がないよりマシだった。

 低い建物だと思っていたが、意外と高く、十階を軽く超えていた。

 緊張と疲労で息が切れてきた。

 上を見上げると、階段の終わりが見えた。

 俺は階段を上がり切ると、床に落ちている金属片を手に取った。

 屋上へ出る扉を開けると、閉まらないように金属片を挟んだ。

 すでに日差しは強く、容赦なく降り注ぐ陽の光で気温が上昇していた。

 屋上の中央には、屋上の上にさらに屋根を作るように板が張られていた。

 俺は目が慣れるまでじっと待った。それから屋上の周囲を歩き、街の様子を確認した。

 人が生きている様子は確認出来ない。

 眼下には、ただ建物が広がっているだけだった。

 街には、このビルと同じくらい大きなビルもあったが、平均すると三、四階の小さいビルだった。そして、枚数の違いはあるものの、どの屋根にも黒い板が乗っていた。板は、見た感じ、太陽光発電のパネルのようだ。

 ならばどのビルでも充電設備を備えていることになる。

 それぞれのビルで使っているなら大した量にならないかもしれないが、これを集約しているのであればかなりの発電量だ。

 このビルの屋上の中央にある屋根も、よく見ると発電用の太陽光パネルのようで、配線が見えた。

 このビルの中の設備を探せば、屋根の太陽光発電パネルから電気を受け取れるに違いない。

 俺はここに出てきた扉へと向かった。

 扉が見えるところまで戻ってくると、開いていたはずの扉が閉まっていた。




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