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Hoshoku-sha 〜異世界転移してきた敵には光学迷彩の能力がありました〜  作者: ゆずさくら


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キダイ責任者

 昼飯で時間を使いすぎた小隊は急ぐことになり、迂回路ではなく近道を使うことになった。

 ただし、近道は崖沿いを通る道で、滑落の危険があった。

 全員の腰をロープで繋ぎ、足場のほとんどない壁を進んだ。

「お前がもっと早く小便を済ませれば、こんな道通らずに済んだのに」

「そんな昔のこと忘れたな」

 俺とタスケの会話を聞いて、小隊長が言う。

「声を立てるな。ここで山賊に狙われたら全滅だぞ」

 危険な道はそう長くはなかった。

 そこからの道は、急な上り下りで、歩き(にく)くはあったが、危険は少なかった。

 最後の数メートルの上り道が終わると、キダイは突然目の前に現れた。

 キダイは山間の村で、ダイセイとの国境近くにあった。

 さまざまな道が、ここに集まるように出来ているため、交通の要所であり、戦でも重要な場所となっていた。

 キダイの村は周囲を壁で囲んでいて、重要な場所には壁の上に見張り台を置いていた。

 俺たちは、主要ではない道から近づいたため、周囲を少し回り込む必要があった。

 大きな道へ回り込むと、門から村へ入った。

 俺にはこれだけしっかり壁に囲われた村が、どう心配なのか分からなかった。

 キダイを攻略するなら、山賊が奇襲をかけるより、規律があって、計画的に行動する軍の攻撃の方が有効で、逆に言えば心配ではないのか。

 山賊が侵入して、中を掻き回され、内側から門を開けるような状況が作れるのだろうか。

 村の中は広く、前日に泊まった村とは比較にならないほど一軒一軒の建物がしっかりしていた。

 ただ、中の建物は、概ね木製で、周囲を囲む壁より弱い印象を受ける。

 小隊長はキダイの責任者に挨拶に行くと言った。

「長吉、お前が荷物持ちだ」

 俺は小隊長の荷物を持たされ、キダイの責任者に会いに行くことになった。

 他の人間はとりあえず酒場で食事をして待つよう指示された。

「いつ襲われるか分からないんだ。酒は飲むなよ」

 酒場で待つのに酒を飲まないということで、絶句しかかっていたが、全員が返事をした。

 俺は黙って小隊長の後についていくと、大きな家に入った。

 テーブルのある席に通されると、小隊長が挨拶した。

 俺も膝をついて頭を下げた。

 キダイ責任者が小隊長をテーブルに座らせると、俺はその横で立った。

 直接目を向けなかったが、視線の隅で見えている責任者は、髪は肩に届くくらい長く、細かくウェーブしていて、扇のように左右に広がっていた。

 髭も、顎や口全体が伸びていて、何も手入れしていないようだった。

 テーブルの奥の大きな椅子に、座っているだけなのだが、荒々しい迫力が伝わってくる。

 俺は何も持たない状態で、他人にプレッシャーを掛ける人物に初めて出会った。

 キダイ責任者は言った。

「人手が足りないから、一人でも二人でも兵が増えるのはありがたい。だが、クレヒト。あなた自身はともかく、この小隊は訓練されたモノなのかね」

 キダイ責任者はあからさまに俺を見て、そう言った。

「我が小隊は、十分訓練してきた者ばかりです。ご心配なく。ちなみに、この者ですが、この者は小隊の一員ではありますが、本来の目的は『赤い亡霊』対策です」

「『赤い亡霊』がキダイを襲うというのか?」

 小隊長は小さく笑った。

「万一の為です。この者は赤い亡霊と戦う武器を持っています」

「!」

 責任者は目を見開いて、俺を凝視した。

「この者が、赤い亡霊と同じ武器を持っているということか?」

「アツミ様。こちらは長吉と申します」

「長吉、外に出て武器を使って見せろ」

 俺はいつ発言していいかわからないまま黙っていた

「ほら、話せ」

 俺は口を開いた。

「申し訳ございません。ミチズナ様の前でも武器を使って見せていません。その武器は何度も使えないのです。使う時は赤い亡霊と戦う時だけです。また、この武器は赤い亡霊が持っているモノとは構造が違います」

 キダイ責任者のアツミは言う。

「では『モノ』だけでも見せてみろ」

 俺は自分の荷物の中から、電子銃を取り出してみせた。

「それは銃だな?」

「はい」

「我々の知っている、金属の球を発する『銃』とは違うな?」

 この時代に、どこまでの技術があるのか分からず、俺は訊かれたことにだけ答えるようにしていた。

「では赤い亡霊の銃は何を発している。あの武器は、当たったところから、すぐに火が上がる。全く音も炎も上がらないのに、当たったところだけが燃える。異常な武器だ」

「あれはレーザー……」

 俺は言いかけて止めた。

「れぇざぁとはどのようなものか?」

「陽の光を集めてモノを燃やしますよね」

「?」

 伝わっている気がしない。俺は言い返してみた。

「太陽光を反射する金属はないですか? 金属をお皿のように湾曲させて、陽の光を集中させてモノを燃やしたことは?」

 俺の世界なら小学校で習う内容だ。

「……よくわからぬが、つまり、陽の光を集めたようなモノというところか」

「簡単に言うと」

 さすが責任者だ。意外と頭が回る、と俺は思った。

「確かに陽の光なら見えない。当たって初めて明るく、暖かくなるが、途中はまるで何もないかのようだ。確かに『赤い亡霊』が使う武器と性質が似ている」

 アツミは俺に近づいてきて、電子中に触れようと言う勢いだった。

 俺は自分の袋に、銃を素早くしまった。

「申し訳ございません」

「その銃は、金属の弾の代わりに何を飛ばす?」

 電子、と言っても伝わらないだろう。だとしたら何だ? 俺は考えた。

「……こちらは雷を飛ばします」

「雷!」

 言うと同時に胸の前で手を合わせ、大きな音を鳴らした。

「発想がすごい。我々はまだ水や火を少し制御できるようになっただけだ。火の制御で銃が出来たが、雷や陽の光を御すれば、あのようなすさまじい威力の武器が作れると言うわけだ」

 アツミは俺の袋をじっと見つめている。

「どこかの国では、この武器を作れるということだな。今、その国と戦ったら、絶対負けてしまうな」

「……」

 俺は転生してきた際に、別の世界から持ってきた、とは説明できなかった。

 別の次元に、世界が存在すると言う概念を説明できるまで、どれくらいの時間がかかるかわからなかったからだ。

「とにかく、赤い亡霊は任せてください」

 アツミは物欲しげに俺の袋を見つめている。

「ああ、現れた際はよろしく頼んだぞ」

 その言葉は中身がないように聞こえる。

 戰が続く世界なら、対策が出来ない、強い武器を得たものが世の中を制することができるだろう。鉄砲伝来が戦の形を変えたように。

 中学で学んだのは、それらも所詮一時(いっとき)のアドバンテージでしかなく、新しい武器も双方に行き渡り、それだけでは勝てなくなるのだ。

 ただし、俺と『赤い亡霊』との戦いは別だ。この武器が無ければ逃げ回ることしか出来ない。

 武器をアツミに奪われたら、それは俺が死ぬ時だ。

 俺の袋を見つめながら、アツミは言った。

「クレヒト、どうだ、ここで酒でも飲んでいくか」

「いえ、小隊の者を待たせていますので」

「小隊の者も呼び寄せれば良い」

 さっき、小隊の連中には臨戦体制をとるように指示していたはずだ。

「アツミ様。我々は戦いに来ています。これにて失礼致します」

 小隊長が挨拶すると、俺も同じように深々と頭を下げた。

 責任者は目線を外すと、去っていく俺たちに言った。

「キダイの防衛を頼んだぞ」

「はい」

 小隊長について、アツミの家を出た。

 キダイの通りを歩きながら、小隊長は俺に言った。

「あのアツミという男は、機会があればミチズナ様に取って代わろうしている」

「あの男の身体中から感じる圧力のようなものは、そういう野心からくるものでしょうか?」

「そうかも知れないな」

 小隊の連中が食事をしている店に入り、周りを見渡していると、小隊の連中が先に気づいて手を振ってきた。

 小隊の連中と一緒の席に座ると、料理を注文した。

 書いてある品名を見ても、どんな料理(もの)か分からないものばかりだったので、俺は食べかけている他の人の皿を指差して注文した。

 俺はタスケの横に座って訊ねた。

「キダイでは、どこに泊まるんだ?」

「昨日の村とは違う。キダイは兵舎があるからな」

「なるほど」

 俺は『いよいよ前線に来た』という気持ちになった。




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