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Hoshoku-sha 〜異世界転移してきた敵には光学迷彩の能力がありました〜  作者: ゆずさくら


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転生の扉

 飛行体の窓から、海が見えた。

 室内のディスプレイ上のマップには東海岸の文字が表示されている。

 この辺りなのだろう。

 だが、飛んでいる飛行体は見当たらない。

 周囲は山であり、俺たちの持っている銃の安全装置は働かない。俺はそう思った。

『高度を下げ、着陸します』

 なだらかに傾斜している斜面に、いくつかの飛行体が停止しているのが見える。

「あそこだな」

「警察が見えないのは、ちょっと不気味ね」

「……」

 高度がもっと下がり、斜面が近づいてくると停止している台数が分かった。

 警察のものと思われるものが三台、もう一台はヤツが盗んだXM3だ。

 飛行体が着陸・停止すると、三人は扉を開けて外に出る。

 警察の飛行体は、サイドの窓が銀色に変えられていて、中の様子が見えない。

 俺は周囲を慎重に回り込みながら、色のない正面の窓から中を覗き見た。

「!」

 俺はすぐに体を低くした。

 そして小さい声で言った。

「(アキナ、愛瑠(メル)、やばい)」

「(どうなってたの?)」

「(中で警察官が殺されてる)」

 一瞬しか見ていないが、胸に焼け焦げた跡がある。ヤツのレーザーで撃たれたのだ。

 俺と愛瑠は銃を抜いた。

「(ヤツを見つけるまでは迂闊に動いちゃだめだ)」

 俺は一人で別の飛行体へ向かった。

 同じだ。

 外に出る様子もなく、()られている。

 飛行体の扉が開かない低空で飛行している状態で撃たれたに違いない。

 俺はゆっくりと後ろを振り返った。

 もう一台の警察の飛行体が止まっていて、その直線上の先にXM3が停止している。

 XM3フロント(グラス)は見えない。

 おそらく、XM3のすぐ先に止まっている警察の飛行体も、同じように全員撃たれて死んでいるのだろう。

 俺は地面に顔をつけて、飛行体の下の隙間から、周囲を確認した。

 光学迷彩の乱れは、地面と接する辺りで起きやすい。外を歩いているなら、見つけられるはずだった。

 だが、街中の停車場とは違って、ここは山の斜面で凸凹(でこぼこ)している、それほど広い範囲が見通せるわけではない。

 俺は、時折そうやって地面に顔をつけながら、XM3へ近づいた。

 愛瑠とアキナは、少し遅れながら俺の後をついてきている。

 俺はさらにXM3に近づいていく。

「!」

 XM3のフロント(グラス)が見えると、俺は気づいてしまった。

 ヤツは飛行体の中にいるのだ。光学迷彩の歪みが見えた。

 俺は銃の引き金に指を置いた。

 この位置からでは狙えない。

 立ち上がって、座席と座席の間を狙わなければ……

 俺はタイミングを考えて、そして立ち上がった。

「家族の仇!」

 物事を成し遂げる前に、声を上げるのは、愚か者がすることだ。つまり、俺は愚かだった。

 だが、俺の引き金の方が、ヤツのレーザーより早く動作するはずだ。

 俺は引き金を引いた。

「だめ!」

 アキナの声がした。

 同時に、俺の目に、ヤツの赤いポインターが映った。

 なぜ俺の電子銃は動作しない。

 山の中なのに安全装置が働いているのは何故だ。

 考えている時間はなかったが、恐怖で動けなかった。

 ポインターが俺の胸を捉えているのが、視界に入っていた。

「!」

 気がつくと、俺は後ろからタックルされて、うつ伏せに倒れていた。

 二度目だ。

 二度も命を助けられた。

 ヤツが次のレーザーを射出する前に、二人は体を回転させ移動し、警察飛行体の影に隠れた。

 俺は飛行体の影から、XM3の動きを観察し続ける。

「飛行体は、撃ち落とされないように安全装置が働くのよ! 言ってなかった?」

「いや、聞いてない」

 俺は飛行体に乗った時、アキナが何か言いたげだったのを邪魔していたことを思い出した。

「もしかして、飛行体に乗った時にそれを教えようとしてた?」

「そうよ。思い出した。あんた、こっちの言葉を遮って来たでしょ」

「……ごめん」

 アキナが俺の頬をつねってきた。

他人(ひと)の話は聞くものよ」

 その時上空から警報音のようなものが鳴っているのが、聞こえてきた。

「何?」

 アキナは空を見上げると言った。

「警察の飛行体…… だけじゃない。軍の機体が混じってる」

「この状況が伝わったってことか」

「多分ね。さっさと逃げた方がいいわ。軍が来たってことは『生きたまま確保』なんてことしないから」

 ヤツもわかるだろう。

 とすれば、動きがあるはずだ。

「転生の扉!」

 愛瑠の声がした。

 同時に、XM3の扉が二つ、同時に開いた。

「どっちから出てくる??」

 光学迷彩のせいで、ヤツの姿は肉眼では捉えにくい。

 飛行体のどっち側に出たか分からない。

「逃げられたわ! ダイゴ、こっちよ!」

 愛瑠の声に、俺は立ち上がり、周囲を見渡した。

 光学迷彩の歪んだ輪郭が、空間に開いた黒く四角い扉に吸い込まれていく。

 隣で立ち上がったアキナが言う。

「なに、あれ」

「転生の扉」

 俺はアキナの手をとり、転生の扉へと走った。

 二人が転生の扉の下についた時、愛瑠がジャンプして『扉』に手を触れていた。

 ゆっくりと扉に吸い込まれ、転生していく愛瑠。

「ちょっと!」

「お前も行こう」

「転生しろっていうの?」

「お前が好きだ」

 そう言うと俺はアキナを抱きしめた。

 アキナは精一杯腕に力を入れて、体を離そうとしてくる。

「何言ってるのよ」

「一緒に行こう。二度も命を救ってくれた恩を返したい」

 アキナは首を横に振った。

「私は、この世界で戦うわ。恩を返してくれるなら、あんたの復讐が終わった後、この世界に戻って来るのね。その時、返してもらうから」

 転生の扉が小さく縮んでいく。

 俺は先に進まなければならない。

「さよなら」

 俺はジャンプして『扉』に手を突っ込んだ。

 体は固まり、意識が飛んだ。

 銅像のように動かない『相模和男』の形をした物体が『扉』に吸い込まれていく。

 アキナは警察と軍の飛行体が降りてくる前に、森の中へと逃げていった。




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