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夏の扉

 まだ夏休みに入ったばかりだったが、第三中学サッカー部の夏は終わった。大会の一回戦で負け、あとはただ後輩を育てるだけの部活があるだけだった。

 俺は練習が終わると、まだ陽が高いので、河原の土手で横になり、空を見ていた。

 今日は日曜日で、今、家に帰ると、父や母、妹がいて邪魔臭い。

 もうしばらく、こうして一人でいたい気分だった。

「おい、醍醐(だいご)。俺たち先帰るからな」

 部活の友達が、俺の頭の先の方で、そう言った。

「ああ。俺はしばらく雲でも見てる」

「ゲーム、やるだろ。いつもの時間に入ってこいよ」

「わかった」

 俺たちが言う『ゲーム』は、TPSサードパーソン・シューティングゲームで、様々な武器を使って撃ち合いをするゲームだった。

 俺はサッカーはそこそこだったが、そのゲームが得意で、チームでも頼られていた。

 今日はどんな武器を使ってやろうかと、雲を見ながら考えた。

 その時だった。

 何もない空に、陽炎のような揺れが見えたかと思うと、扉のような四角い領域が発生した。

 それは厚みがなく、平面的に黒く菱形に塗りつぶしたような物だった。

 俺は、上体を起こして、その菱形の暗黒を凝視した。

 一瞬、何かが落ちてきたように見えた。

「えっ?」

 俺は立ち上がって走っていた。

 はっきりと目に映ったわけではない。俺はそれが何かを確かめたかった。立ち上がって、そこに向かっている間に、黒い長方形(おそらく菱形にみえたのは俺が土手に寝そべっていた為だろう)は次第に細くなって消えてしまった。

 俺は落ちたものが見たくて、その黒の長方形の下を探した。

 背の高い雑草が生えているだけで、何も見えなかった。

 俺はその位置からもう一度土手に上がり、付近を見下ろしてみた。

「?」

 ざっとした位置だったが、黒い長方形の下の草が、押し潰されていた。

 だが、押し潰しているものは見えない。

「なんだろう」

 俺はTPSで発揮する視力と観察力を張り巡らせて、その『もの』を感じ取ろうとした。

 すると、草が不自然に揺れた。

 揺れた方向を、目で追うと、今度は見えている風景がほんの少し、歪んで見えた。

「光学迷彩?」

 TPSゲーであった光学迷彩マントのようだった。先の風景が透過して見えるが、時おり、処理がしきれずに風景が歪むのだ。コンマ何秒かのフレームのずれのような。

 背景に溶け込んでいるようだが、その部分だけが、一瞬、浮いたような、そんな感覚。

 ゲームの中の出来事が現実世界で起こっている。

 俺はまだ幼く、それがワクワクする出来事だと思っていた。

 だから、その陽炎のような風景の歪み、空の扉から落ちてきた異物を追いかけた。

 これから何が起こるか、期待しながら。




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