ハーレム王国でハードゲイしてみた
私はあと一回モテ期があるはずなんです。
女神がメッチャ眉間にシワを寄せて、俺をキ〇ガイ星人かのように冷ややかな視線を浴びせている。
「……正気ですか?」
俺は正気だ。好きな異世界へ転生させて貰える上に、好きなスキルを一つだけ貰えるという至れり尽くせりだ。その好意に思い切り甘えなくてどうする!? 大丈夫だ。俺は狂ってなんかいない!
「女しか居ないハーレム王国で……俺はハードゲイになる!!」
女神は目頭を押さえて俺を異世界へと送りつけた。
……
…………
………………
「──!」
気が付くと俺は、家畜小屋で寝ていた。
「……ここが異世界なのか?」
スッと起き上がると、小屋掃除をしていた金髪の女と目が合った。顔立ち的に隣に住んでいたインド人に近い物を感じる……。
「あの……」
俺を見るなり、女が口を開いたまま微動だにしない。まるで魔法にでもかかったのだろうか?
「……あのぅ……」
女の口にハエみたいな小さな虫が入っていくが、女は気にも止めずに止まったままだ。
「あのぅ!?」
「オスゥが居るぅぅぅぅ!!!!」
金髪の女は掃除用具を蹴飛ばし小屋の外へと一目散に逃げ出した。
「あ、あのぅ……」
まさか逃げられるとは思ってなかったから、どうしたら良いのか分からず、とりあえず後を追った。
「うわっ! メッチャ女の人居る!!」
小屋の外にはまさに老若女女! 全てが女性で男らしき人物はまるで見当たらない。皆が俺の方を注視しており、何だか変な感じだ。
「ほ、本当に異世界へ来てしまったのか……嬉しい!」
嬉しさのあまり泣き出してしまいそうになるのを抑えていると、この辺の長らしき女性が前へと進み出た。滅茶苦茶ナイスバディなんだが、今の俺には『なんでこの人胸にケツ付いてるん?』程度にしか感じなかった。
「オスゥの生き残りが居たとは……何処から来たんだ?」
長らしき女性がジロジロと俺を舐めるように見渡す。嘘を付くのも何だし本当の事を言っておくか。
「気が付いたらココに居ました。女神に連れてこられたッス」
「おお! やはり我々の祈りが通じたか!」
突然俺に向かって手を合わせ、祈り始める女達。とりあえず訳が分からん。誰か説明プリーズ。
「オスゥが居なくなり、我々メスゥだけの生活を余儀なくされて早16年。ようやく復興の兆しを授かったのだ! 皆! 今夜は神の使いと交わり放題やり放題だ!」
「「オォー!!」」
何やら卑猥な言葉が聞こえたが、とりあえずこれがハーレム王国だと言う事は理解した。女神よ、ちゃんと仕事したのね。
「あのぅ……」
手を上げ、長に声を掛ける。何やら期待に満ちた面持ちで振り向く長。あ、別にアンタが一番とか、今から直ぐにとかじゃないからそんな顔は止めてくれ。何より、今から言う言葉は全てを台無しにする死刑宣告なんだからさ。マジで……。
「俺、ハードゲイなんだよね……」
「──?」
いまいち理解し切れていない顔の長。その隣ではババアが頻りに腰を振っている。止めれ。ギックリ腰になってしまえ。
「ハードゲイ」
「ハード……ゲイィ?」
「ノーメスゥ。オーケーオスゥ! どぅーyouあんだすたん?」
「マ?」
「まままのま」
今流行りのステータス画面を開き長に見せる。スキル欄にはデカデカと『チートスキル:ハードゲイ』と書かれていた。あ、これチートスキルなんだ(笑)
「え? コレは? 何の為? この世界オスゥ居ないよ? アンタで最後の最後。ラストオスゥだよ……冗談キツいよ」
服の上から俺の曲刀を指差す長。いや、今はなまくらか。
「でぃすisハッテンソード!」
「マ?」
「まままーま まーまま」
長は1秒間に16回の瞬きで目をパチクリさせた。
「ちぇーんじ!!」
そして腰に携えていた剣を抜いた。え? もしかして殺される? 最後のオスゥなのに? 呆気無くぅ?
「村長! ダメダメ! こっちこっち!!」
直ぐ近くに居た若い赤髪の女性が、長の剣を押さえ、代わりにハサミを渡した。因みに隣に居たババアは案の定腰を痛めて倒れている。ざまぁ。
「おいおい、そのハサミで何をするつもりだ…………」
「ちぇーんじ……」
「え? 取るの? 一度外したらもう着けられないよ?」
「なら今すぐ私とハメーリングなうするのだ!」
「分かった! 分かったからそのハサミをしまってくれ……!」
まさか自慢の曲刀を異世界で刀狩りされるとは思っても見なかったので、俺は訳の分からない圧に負けて渋々合意した。
「──ビーッ! チートスキル『ハードゲイ』により、乱に交わる事は出来ません!」
突然ステータス画面が赤くなり、警告音を発した。全く空気を読まない画面を手で追い払おうとするも、空を切るだけ。
「な、ならばハードゲイを捨てる!! 捨てるから……!!」
「──ビーッ! それを捨てるなんてとんでもない!」
「どうすりゃ良いんだボケー!!」
「──ビーッ! チートスキル『ハードゲイ』を発動します!」
突然、長の動きが止まる。が、何も変化は無い。
「──これが……ハードゲイィ?」
「──は?」
「私、ハードゲイになりました!!」
見た目も何も変わっていない長が、突然ハードゲイ宣言を噛ましてきた。
「え? え? え!?」
「これで子作りフィーバータイム!!」
ズルズルと首根っこを掴まれ、俺は長の家へと引きずられた。
「イヤァァ!! ケツが四つあるぅぅぅぅ!!!!」
しかし無理な物は無理だった。
俺は長の家から逃げ出し、遠くへと逃げた。
そして疲れ果てて辿り着いた湖で、水面に映る自らの顔に惚れ、近付きすぎて足を滑らせ、そのまま落ちて溺れ死んだ。
読んで頂きましてありがとうございました!!
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