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<第九章>白居邸

<第九章>”白居邸”





「考えだと?」

 酔っ払いのようにふらふらとした足取りで立ち上がると、南城は崩れたアフロヘアーを必死に整えながらそう聞いた。武田はようやく静かになった室内の面々を見渡し、丁寧に説明を始める。

「あいつらの武器はあの超音波みたいな声と高いジャンプ力だ。それさえ無効化できれば楽に倒せる」

「無効化って、具体的にどうする気なの?」

 愛がさっぱり分からないといった様子で聞く。

「手っ取り早く言えば、この倉庫を利用するんだよ。ここなら高く飛べないからあの蛙人間も歩くしかない。超音波だってずっと歌ってるわけじゃねえんだから、奴が歌い出す前に喉を潰せばいい」

「倉庫の利用はともかく、喉を潰すってどうやるのよ? こっちの姿が見つかった瞬間に歌が始まるでしょ? 大体、倉庫におびき出すのに姿を見せる必要があるんだからこんなの最初から不可能な策よ」

「最初に喉を潰すんだよ」

 武田は自信タップリに言った。

「遠距離攻撃で喉を攻撃することで、歌を封じると共にここにおびき寄せるのさ。そうすれば全て上手く行く」

「遠距離攻撃で喉を潰す? 銃弾はもう無いんだぞ? まさか投石するとか言うんじゃねぇだろうな!」

 南城に対して同様、武田にもあまり良い感情を持ってはいない佐久間は、かなり嫌味を含んだ聞き方をした。

「そんな命中率の低い真似はしないさ。――人が、喉を正常に使えなくなるのはどんな時だと思う?」

「首を絞められたり、何かが詰まったときとか?」

 自信なさ気に愛が呟く。

「そうだよ。喉に何か異物が入り込むと誰もが咳き込み声を出せなくなる。それを引き起こすんだ。この倉庫には丁度石灰の詰まった袋や灰、砂なんかがある。それをぶちまければあの蛙人間の大きな丸い口なら、きっと簡単に呼吸困難になるだろうぜ」

 武田は部屋の奥に積んである米入りの袋のような物に視線を向け、そう言った。

「なるほどな。リスクは高いが確かに効果はありそうだ。だが一体誰がそれを奴にぶちまける?」

 石炭を確実に口内に侵入させるには少なくとも蛙人間まで二メートルか三メートルの距離に接近しなければならない。さらに気づかれずににそこまでの位置に移動し、かつ投撃後は相手をおびき出しつつ無事にこの倉庫まで逃げ延びる必要もある。この危険性にいち早く気づいた南城は責めるように武田を見つめた。




 





 

 鉄屑に満たされた大地――ゴミ山に囲まれた谷のような場所で、安形は無数に転がっている蛙人間の死体を一望した。

「全滅か、凄いな。さすが、黒服の最重要兵器か?」

 息を整えながら皮肉交じりに背後に立っている黒髪の青年を振り返る。

 青年は大量の汗を流しながら膝を崩した。

「どうした!?」

 あまりに疲労している相手の様子が心配になり、安形は思わず駆け寄った。

「はぁ、はぁ……黒服の連中に、何か妙な注射を打たれた。多分……イグマ細胞を抑制する薬か何かだだろう」

 鋭はかなり悪い顔色で声を絞り出した。

「……――鋭……やっぱり本当にお前は化物だったんだな」

「騙して悪かった。だけど……白居の注意を削ぐにはどうしてもお前の存在が必要だった」

「俺の存在ねぇ……一緒にこの町から出たことにしたかったんだろ? 敵さんは全部見抜いていたみたいだけどな」

「――いや、それは予測ずみだ。黒服はこんな策に引っかかるほど甘くはない。俺の本当の狙いは別にある」

「本当の狙い? 何の事だ」

 安形は詰問するように聞いた。しかし鋭は答えない。

「おい、俺を巻き込んでおいて今更秘密も何も無いだろ! 本当なら今ここでお前をぶっ飛ばしてもいいんだぞ? 罪も無い一般市民を何人も狂人化させやがって」

 ギリギリと強く拳を握り込む安形。

「殴りたいなら殴ればいい。いくら痛めつけられようとそれだけは言えない。それを言えば――俺とあいつの全てが無駄になる」

「あいつ?」

「白居の存在を快く思っていない男だよ。俺の研究所脱出に協力し、お前への依頼を提案したのもそいつだ」

「一体誰だ?」

「それも言えない」

 鋭は口を真一文字に結んで顔を僅かに逸らした。

「はぁ、だったら俺はもう帰るぞ? お前からの依頼は偽証だらけだ。こんな仕事やってられるか」

「虚勢は止めろ。短い間だけど俺はお前の性格を理解しているつもりだ。愛や佐久間、その他の人間をこのままいしていく気か? そんな真似出来ないだろ?」

 安形は言葉を返すことが出来なかった。

「悪いようにはしない。たった一つだけ仕事をしてくれ。それさえ終わらせれば、この町のミミズは全て解除する」

「今ここでお前を倒した方が早いさ」

 怒気を含んだ表情で安形は鋭を睨んだ。

「俺を倒してもミミズは行動停止なんかしないさ。寧ろ命令が消えてこの感染範囲をこの町以外にも広げるようになる。今お前が選べる道は二つだけだ。ここで俺や他の人間を見捨てて黒服支部に帰るか、依頼を続行するかどっちかだ」

 佐久間や愛を見捨てて帰れるわけが無い。安形の中では最初から答えは決まっていた。鋭から情報を引き出すためにワザと話を長引かせていたが、もうこれ以上迫っても何も得られそうには無い。盛大に溜息を吐くと、面倒くさそうに攻撃態勢を解いた。

「……仕事って何だ?」

 鋭はほっとしたようにニヤリと笑うと、汗の滴る顔を上げた。

「そもそもお前を雇ったのは俺の目的が白居の暗殺だと黒服の連中に思い込ませることだった。それが成功した今、もうお前の役目は終わったとも言える。連中も真実を伝えられたお前が俺に協力するとは考えないはずだ。――そこを利用する」

「言っとくが、幾らなんでも自分の組織のボスを暗殺することは御免だからな?」

「ふ、安心しろ。勿論そんなことはさせないさ。お前にやって欲しいことはもっと簡単なことだ」

 鋭は軽く笑った。

「白居邸まで俺を連れて行って欲しい。イグマ抑制剤の所為で体が思うように動かないんだ。しばらくはさっきの姿にもなれないだろうな」

「それじゃあ、黒村たちの思うまんまじゃないのか?」

「それが狙いなんだよ。奴らに俺がお前に捕まったと思い込ませるんだ。お前は素直に俺を引き渡せばいい。重要なのは、黒服にもう俺が白居の暗殺に失敗し抵抗する意思が無いと確信させることなんだからな」

「一体白居邸で何する気なんだ?」

「俺は……黒服の計画を止めたいんだ。俺のこの体の技術を利用すれば、とんでもない兵器が生まれてしまう。白居邸にはその実験レポートや資料が山ほどある。取りあえずは、それを全て消すためだと思っていてくれ」

 鋭は含みのある言い方をした。

「いくら聞いてももう無駄みたいだな。分かった。取りあえずお前を白居邸まで届けてやる。向こうに着いてからまた仕事をして欲しいとか言うなよ?」

 安形は面倒くさそうに言うと、鋭の腕を肩に担ぎ、歩き出そうとした。だが、その前に耳元で鋭が呟いた。

「実は、もう一つだけ頼みたいことがある」









「い、いいか? い、行くぞ!?」

 佐久間は倉庫の扉を握り締め、自分の役目の危険性とプレッシャーで足をチェンソーのように細かく、高速で振動させながら背後の三人の顔を見回した。その表情は恐怖を感じすぎて一部が固まり、逆に笑っているように見える。

「早く行け腰抜け」

 南城は無表情でそんな佐久間の尻を蹴飛ばした。

 「ガンッ」と扉に自分の頭が当たった音にビクつきながらも、その蹴りで覚悟が決まったのか、佐久間は肩に担いだ石灰入りの袋を握り締めると、ゆっくりとノブを回した。

 冷ややかな風が全身を包み込み、数メートル先でこちらに背を向けたまま立っている蛙人間の姿が視界を圧迫してくる。恋する乙女のように何度もまばたきしながらその後姿を見つめ、忍び足でこそこそと相手との距離を詰めていく。

 ――死ぬ、死ぬ、これ死ぬってマジで!

 目を血走らせ、頭の中で悲鳴を上げながら、それでも高速振動する足を前に進める。今ならこの足で鉄でも斬れそうだ。

 佐久間は自分の運の無さを激しく後悔した。

 先ほど誰が石灰を撒くかで論争になった面々は、結局くじ引きという方法を取り、見事佐久間が当たりを引いてしまったのだ。武田側のくじなら安全だろうと勝手に良く分からない考えを抱き、自分に一番近いくじを引かなかったのが間違いだった。だが今更いくら後悔しようとももう遅い。既に自分は石灰を抱えて蛙人間に向って歩いているのだから。

 ――前を向いてろよ……振り向くな……頼むぞマジで……!

 滝のような汗を鉄の臭いがする地面に垂らしつつ、佐久間はとうとう蛙人間から三メートル以内の場所まで辿りついた。

「アゥウウゥウ……」

 遠くの方から聞こえる激しい戦闘音に注意を引きつられているらしく、蛙人間はただじっと道の先を眺めている。これなら作戦を成功させる事ができるはずだ。

 ――よ、よし、行くぞ、な、投げるぞ! こっち向くなよ……!

 抱えた袋の紐を解き腰元に構えると、佐久間は一気に投げようとした。

「アウ?」

 蛙人間が服の擦れる音に反応し振り向いた。ピッタリと佐久間の血走った目と視線が合う。

「あぅ!?」

 佐久間は氷づけになったようにそのまま固まった。

 突如真後ろに現れた存在に対し、蛙人間は驚いたようにその顔を見つめ飛び退こうとした。

「佐久間っ!」

 このままでは作戦どころか佐久間の身が危ない。愛は咄嗟に倉庫から身を乗り立たせ叫んだ。

「……いっ、いひひひひひぃぃぃぃい!!」

 恐怖で頭がおかしくなったのか、佐久間は突如不気味な叫び声を放つと一気に袋を振りぬき、その中身の石灰を撒き散らした。油断していた蛙人間は頭からそれを被る。

「よし、いいぞ逃げろ!」

 愛を強引に倉庫の中に引きこみながら武田が怒鳴った。

「っぇぉおぉおおおおー!」

 その声で我に帰った佐久間は腕を前後に振り乱し、超高速で今来た道を戻っていく。

「ウゥウウァッ、ウァッツ、ァアア!?」

 狙い通り気管に石灰の粉が侵入したらしい。蛙人間は歌う事が出来ず、咳き込むような鳴き方をしながら倉庫へ飛び跳ねた。

 佐久間が倉庫の中に飛び込むとほぼ同時に蛙人間もその扉の前に降り立つ。だが部屋の中に踏み込むとすぐに、何かに足を取られ床に倒れ込んだ。南城が扉の死角から足を引っ掛けたのだ。

 起き上がろうと踏ん張るものの後頭部を愛のブラックジャック、砂を込めた袋で強打され、再び地面に額を一体化させる。

 その隙に、ガラスの破片に布やガムテープを巻いたナイフを持った武田が背中を滅多刺しにした。何度も何度も体を貫き花火のような血が舞い上がる。

「アゥウウウゥッ――!」

 蛙人間は無理やり声を出そうと最後の力で顔を上げるも、その瞬間喉を掻き切られあっさりと絶命した。

 眼前の光景の残酷さに佐久間と愛が顔を伏せる。だが、全身を血に染めた武田はそんな事などお構い無しに酷く低い声で唸った。

「はぁ、はぁ……今のうちに行くぞ」

 その表情はもはや到底人間のものには見えなかった。

 

 

 

 



 倉庫からおっかなびっくり屑鉄だらけの道を進み『夢遊町のトイレ』を抜けると、目の前に和洋中を混ぜたような何とも表現のしようの無い大きな屋敷が踏ん反り返っていた。ボロボロの荒廃した建物が多いこの夢遊町の中で、唯一この屋敷だけが清潔さを携えている。

「こんなに近くまで来るのは初めてだけど……改めて見ると不気味な屋敷ね」

 ゲームに出てくる魔王城のような圧倒的威圧感を感じ、愛は若干引いた。

「一応、住人は居ないことになっているからな。正面扉は開かない。着いて来い」

 そう言いつつ南城は正面にある二メートル近い門を通り過ぎ右へ進む。門の前には廃車や車の残骸などが散乱しており、若干歩き難そうだ。

「――ここだ」

「二十メートルほど進んだ所にある小さな金属製の扉の前で南城は止まった。

「いいか? 言っとくが俺の恩恵があるからお前らはここに入れるんだぞ。そのことを忘れるなよ?」

「うるせぇ、いいから早く開けろよ」

 ぐだぐだと自分の権力を誇示されることに腹を立てた佐久間が、本当にうざったそうに急かす。南城はそんな態度を許すのは今のうちだけだ、とよくある脅し文句を述べながら扉の鍵を開けた。「ギイー」と高い金属の摩擦音を鳴り響かせ屋内の光景が見えてくる。

「むん?」

 中は真っ暗だった。

 本来ならば真っ白な壁に挟まれた、絵などが飾ってある短い廊下が現れるはずだったが、闇が支配したかのように一面暗黒に包まれている。

「電気を切っているのか?」

 普段とは大分異なった光景に幾分の警戒心を抱きながらも、南城は足を踏み出した。

「お、おい……! もしかしてここも狂人たちにやられたんじゃねえか?」

  「最後尾は嫌!」と四人の間に割り込みながら、佐久間が一番可能性の高い要因を提示する。

「ここには多くの俺の仲間や白居候の部下が居たんだぞ! きっと電力節約とかでスイッチを切ってるだけだ」

 南城は強い態度で言葉を吐いたものの、動揺しているのは誰の目にも明らかだった。

 廊下を進むと暗がりの中に二つの扉が浮かんできた。一つはそのまま正面に、もう一つは左側に付いている。

 正面のは屋敷の反対側や非常階段へと通じている廊下に出るだけだ。南城は大広間へと繋がっている左の扉のノブを握った。

「もし本当に狂人か、さっきの蛙人間がいたらどうする?」

 ノブを回そうとした瞬間、耳元で武田が囁いた。服に染み込んでいるのか強い血の臭いが鼻につく。

「そんときは……気づかれずに進むか、この廊下に立て込もるしかないさ。まあ、この扉は見ての通り見かけに気を使い直ぎてあまり丈夫じゃねえから……どっちみち逃げるはめになると思うがな」

 つまり、もしこの向こうに敵がいた場合、一度扉を開ければもう後戻りは出来なくなる。南城の言葉に一同の顔色が変わった。

「よし、開けるぞ」

 南城は出来るだけ物音を立てないように慎重に扉を開けた。冷房が入っているのか異常に冷ややかな空気が肌を撫ぜる。

 そして同時に、武田の服から発せられている臭いとは比べ物にならないほどの強い血の臭いが一気に嗅覚を占領した。










「ここが白居邸か?」

 東洋と西洋の文化が混じったような異様な屋敷を前にし、安形は自分が肩を担いでいる相手である鋭に聞いた。鋭は薄く瞼を開けながら肯定する。

「そうだ……右に回れ。正面は開かないはずだから……」

「大丈夫か? 何かどんどん顔色が悪くなっているぞ?」

「心配ない。ただの……薬の一時的な抑制作用だ。時間が経てば元に戻る」

 鋭はそう言ったが、安形にはかなり深刻そうな状態に見えた。体も痙攣しているしどう考えてもまともな反応じゃない。なるべく急いだ方が良さそうだと思わずにはいられなかった。

「ん?」

 足元に振動を感じ、安形は視線を屋敷から移した。何やら車のエンジン音のような音が聞こえてくる。

 ――黒村らか!?

 咄嗟に隠れかけたが鋭を渡す事が今の目的だと思い出し、その場に留まった。

 屋敷と平平行するように並んでいる道路の先から一台の黒い車が姿を現した。車についてはよく知らないため車種は言えないが高級そうだということだけは分かる。その車は屋敷の正面扉の前、安形と鋭の目と鼻の先で止まった。

「ほう、律儀に出迎えか?」

 予想通り、その中から黒村や曽根、本田が出てきた。自分たちの姿を見ても安形が逃げ出さないことからナイフは抜かず、笑みを浮かべて歩み寄ってくる。

「――……鋭を捕まえた。お前らに渡す。ちゃんと報酬は貰えるんだろうな?」

 安形は事前に鋭と打ち合わせした通りの言葉を述べた。

「まさか本気でこちら側に付くとはな……まあいい。ちゃんと報酬はくれてやる。曽根、本田、鋭を受け取れ」

 黒村が顎を上げると同時に、ハリネズミ頭の本田と、顔の全面を毛が一周しているような曽根が安形の肩から鋭を引き離した。それを確認すると、自分の部下に対して命令するように言葉を続ける。

「これでお前は自由だ。帰るなり散歩するなり好きにしろ」

「あんたらはどうするんだ?」

「俺たちは鋭を一端白居邸の中に連れ戻し、身体拘束を行う。しばらくはここに留まることになるだろうな」

「俺も一緒に居ていいか? 一応こいつに騙されて頭にきてたんだ。最後まで見届けたい」

「見届けるも何も別に殺すわけじゃない。拘束し、再調整するだけだ」

「いや、正直に言うと白居邸の中に興味があったんだ。上司のキツネから色々と聞いていてな、ちょっとくらい見学してもいいだろう?」

 キツネは黒服上部直属工作員のようなものだ。キツネならばこの白居邸が黒服ボスの物であると知っていてもおかしくは無い。鋭から聞いたとあっては情報漏えいを阻止するために殺される危険もあったが、キツネから聞いたとあれば黒村らも下手に処分は下せないだろう。安形は自分の境遇と上司の高名を上手く利用した。

「キツネに? 本当か?」

 何故か黒村は驚いたような表情をした。

「本当だ。後で本人に聞いてみればいい」

 どうせその頃には自分が鋭に頼まれた最後の仕事は終わっている。安形はそれが分かっているから余裕タップリに答えた。そう、次の一言を聞くまでは。

「いや、いい。今本人に聞く」

「は?」

 予想外の言葉に安形は間の抜けた声を上げた。

 黒村は自分の背後にある真っ黒な車に向き直ると、まるで誰かがそこに乗っているかのように扉を開け横にズレる。

 ――どういうことだ? まさか!?

 安形が目を見開き見つめる中で、その男は車から降り立った。寝ていたのか眠そうに片目を擦っている。

「な……そんな……!」

 思わず一歩退く安形を他所に、その男はこちらを向くと楽しそうに笑った。

「クスクス……やあ、安形さん。二週間ぶりかな?」

 安形は鋭の計画の全てが初っ端から破綻したことを悟り、呆然とした。

 








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