元神は怒り顔も照れ顔も可愛い
「うおわっ!?」
小太郎は毛布を跳ね飛ばし、驚いてベットからずり落ちた。美人は温かい毛布をはがされ、朝の冷たい空気に晒されたことを身震いしながら抗議する。
「ちょっと、寒いじゃないか人間」
「あああ、あんた誰だよ!?」
小太郎の言葉を聞いて、美人は目を半月型に尖らせ不満げに頬を膨らませた。
「ちょっと人間、僕の事を忘れるとは失礼だね。あれだけ楽しく会話した仲じゃないか」
「楽しく会話?……あ、」
美人の言葉で、昨夜見た夢を思い出す。そうだった……この人は別の世界の元神で、部屋に突然現れたんだった…………
「夢じゃ、なかったのか……」
「当たり前だろう?なんだい、僕の事夢だと思ってたのかい?」
「そりゃこんな美人が突然現れたら、誰だって夢だと思うよ……」
小太郎は立ち上がりながら弁解する。小太郎の言葉を「誰だって夢だと思う程に美人だ」と解釈したエルマは、満更でもなさそうに顔を高揚させ悦んでいた。元神様なので、エルマは『人間が自分に発する言葉は自分を称えるものである』と信じて疑わない性格をしている。元も子もない言い方をすると、ナチュラルに自意識過剰だった。