懐かしき出会い
2話目です。
慌てて書いたので、文面が荒いかも知れません。
気が付くと、私は周囲にはクラスの皆は居らず、障害物が一切ない真っ白な空間にいた。
「えっ?ここ何処?」
理解の出来ない事に、私は呆然とそう呟く。
「ここはあなたと話す為に作られた特殊な空間ですよ」
まさか返事が帰って来るとは思わず、私は慌てて後ろを振り返り、そして絶句した。
そこには、モデル顔負けの美しい金髪の女性が立っていた。
が、それは良い、まだ理解できた。しかし、私にはどうしても理解できない事があった。
「初めまして、私は慈愛の神アレスティア様の使徒であるメ―――」
「メルフィ」
「えっ?」
「あなたの名前はメルフィス•エルクラネルでしょ?」
そこには、“光の聖女”と呼ばれた英雄であり、私の前世の戦友の姿があった。
ーーーーーー
「…えっと、つまりあなたには前世の記憶があって、私の事を知っていた、という事ですか?」
その後、私は直ぐにメルフィに前世の事を説明した。その方が話が早いと思ったし、純粋に会えて嬉しかったのだ。
「そうだけど、正確には知っていたというより戦友だね」
「戦友ですか?…戦友なら記憶にある筈ですが、あなたは前世と同じ容姿をしているんですよね?」
「うん、髪の色も顔も全て一緒だよ」
「黒髪もですか?……すいませんが、私の知っている人物に黒髪の方はいなかった筈です」
そして真面目に悩んで考え込む前世の頃と変わらない姿に、私は不思議と笑いが溢れてくる。
「あはは!悩む仕草も何も変わってないね」
「からかわないで下さい!あなたは一体誰なんですか!?」
「そうだね〜。じゃあヒントを出すよ」
「ヒントですか?」
「うん、メルフィとは普通に面識があるし、多分分かると思うよ?」
私がそう言うと、やはり自分で思い出したいという気持ちがあるのか、「分かりました、お願いします」と返事を返してくる。
普通に名前を聞けば良いのに、何故か乗ってくる所も前世から何も変わっていない。
「じゃあ、行くよ?…ヒントは顔を見せた事がない、かな?」
「顔を見せた事がない?……まさか……黒騎士様?“最凶の黒騎士”ですか!?」
「あ〜、やっぱりちょっと簡単過ぎたかな」
「え?えっ?あなたがあの黒騎士様?女だったんですか!?」
「え?そっち!?」
いや、確かに声は低め出してたし、言葉遣いもかたっ苦しい感じだったけど、気付いてなかったの!?
普通に私に恋話とかしてくるから、てっきり気付いているのかと思ってたよ。
「…気付いてなかったんだ」
「はい、全く気付きませんでした。……あの、それを明かしていたら、“最凶の黒騎士”や“歩く天災”などの物騒な二つ名は付けられなかったのでは?」
「いや、こっちにも色々あったんだよ。…あ!因みに私が死んだ後ってどうなったの?」
そしてどうせならと言う事で、私は前世の記憶を取り戻してから、ずっと気掛かりだった事を聞いて見る。
「最高戦力だった黒騎士様が砦の将と相討ちになったと聞いて、初めは絶望したものですが、何故か魔族側が勢いが急に弱まったので、何とか勝利を納めました」
「…相討ち?」
メルフィを言葉を聞いて、私は再び絶句する。
確かに私は自身の命をプラーナに変え、あの化け物を殺す気で最後の一撃を放った。が、まさかプラーナも能力も、全てが上のあの化け物を倒せるとは思ってなかった。
「戦いの跡地を確認しましたが、砦の半分が完全に消し飛んでいました。敵が自爆でもしたんですか?」
「…いや、自爆したのは私だよ。プラーナも能力も全てが劣っていて、“禁忌の技”を使う以外勝ち目がなかった」
「…そんな!?長い人類史の中でも飛び抜けたプラーナ量を誇った黒騎士様よりも上の存在が居たのですか!?」
「でも、あれに対峙したお陰で、どうして魔王が強気で前線に出て来たのか直ぐに分かったよ」
私は前世で魔王とも対峙した事があったけど、今朝追体験したあの化け物程の力は感じなかった。
つまりあの化け物が魔族の最高戦力だったという事だと思う。
……ん?今朝?
「…ねぇ、そういえばメルフィは、なんで私を呼んだの?」
「えっ?…あ!忘れてました。そっちが本題でした」
「えぇ」
いや、私のせいなんだろうけど、仮にも神の使徒がそれで良いのかと言いたくなる。
「それで黒騎士様を呼んだ理由なんですけど…」
「あ、私の事は黒騎士じゃなくて紗霧で良いよ」
「では紗霧様と。それで紗霧様を呼んだ理由ですが、私達の時代から既に5000年の時が経っており、その間に魔族との小さな小競り合いがあったのですが、それが遂に大きなものへと変わってしまったのです」
「つまり私にあっちの世界に行って戦って欲しいってこと?」
「そういう事です」
また戦争をしてるのか…。寧ろ5000年の間に、よく大規模の争いが起こらなかったというべきかな?
いや、もしかしたらこの5000年の間にも、大規模な戦争はあったかも知れない。
「もしかして大規模な戦争やこういう異世界の人を呼ぶのって、結構頻繁に起こってたりするの?」
「はい、大規模の戦争は1000年単位で…異世界からの勇者の召喚は今回で2度目になります」
「なる程、それで今回は私になったと言う事ね」
「はい。正確には紗霧様達ですね」
メルフィのその言葉を聞いた瞬間、顔の血の気が引いていくのが分かった。
今、『紗霧様達』って言った?
「…もしかして召喚って私だけじゃない?」
「はい。今回は個人個人のプラーナ量の多かった、紗霧様のクラス全員になります」
「え?でもここには私1人しかいないよ?」
「それは国ごとの戦力バランスを保つ為に、複数に分けて別々の国に召喚されるからです。また、その殆どは大国に分けられるのですが、紗霧様は大国以外で、唯一枠を手に入れる事が出来た小国への召喚になります」
メルフィの言い方からすると、拒否権はないようだけど、私は少し安心した。
つまりは私は1人だけど、他の皆には仲間がいるという事だ。
個々のプラーナ量も多い様なので、それだけでも十分安心出来る。
「よし、大体理解できた。私の方は何の異論もないよ」
「その、強制するようですいません」
「良いよ。そっちにも事情があるんだろうし、メルフィにも会えたからね」
「紗霧様…」
そして私がそう言うと、メルフィが涙目で私の名前を呼ぶんでくる。
きっとこの娘は私が前世で死んだ時も、こういうふうに泣いてくれたのだろう。
そう考えるだけで、自然と頑張ろうという気持ちになって来る。
「あ、そろそろ時間の様です。その、紗霧様…」
「大丈夫だよ。今度は絶対に死なないから」
「はい!頑張って下さい!」
そしてメルフィとの挨拶を済ませると、今度は優しい光が私を包み込み、意識を手放したのだった。