こっち側とあちら側
更新遅くなりましま(-_-;)
静かになった市場を見て回っていると、数人の兵士らしき奴等が近付いてきた。
だけど俺を見るなり足を止め、その内の一人が別方向へと駆けていく。
(あっちは会談をしている場所の方角か。)
俺の事を国の重鎮達へ報告しに行ったのだろう。
聖騎士達とは違い、俺の事をきちんと把握しているようだ。
俺へ話し掛けてくる事はせず、一定の距離を保ってついてくるのは鬱陶しいが。
だけど店側や通報したであろう民達には、何もしない兵士に理解が出来ないのか、何やら訴えている奴等もいる。
だけど兵士達はとりあっていない。
「“現人神”とまで言われている方だぞ?俺達にどうしろと言うんだ?情報によると敵対さえしなければ何もしないという話だから、喧嘩を売るような真似をしなければ良いだけだ。殺された者も、彼へ敵対の言動をとったのだろう。」
そう言って追い返している。
町民達は俺の情報を初めて耳にしたようで、驚愕の視線が向けられた。
一気に不満を口にする人が居なくなったのは、流石は“宗教国家”ってところだろうか?
神の存在を信じていない奴だったら、そんな話をまともに聞いていないだろう。
暫くして、一人の男が駆けていった兵士と共に走ってきた。
俺の姿が見えたのか、兵士を置いてきぼりにして疾走してきた男は、コクミック王国の騎士団長だ。
……国王の護衛は良いんだろうか?
彼は護衛の責任者だろうに。
「カイト様、件の詳細が知りたい。陛下へ報告しなければならないので。」
呼吸が乱れていないのは、流石騎士団長ってところか。
今やっとのことで追い付いた兵士は、肩で息をしている。
『俺が報告する義務などない』
そう言って突っぱねてやっても良いとも思う。
だけど俺が口を開く前に、言葉を発する者がいた。
『あの人族共が、愚かにも主に我を売れと言ったのだ。人族共は直ぐに死ぬ為、我は主により、普段から覇気遮断の結界が張られておる。奴等は我の覇気に耐えられなかっただけの事。この我を“買える”と思うような愚か者に相応しい最期であったろう?』
俺の頭の上にいるソドムだ。
余程頭にキテいたらしい。
……自分を買いたいと分不相応に言ってくる奴に苛つくのは、誰でも同じだろうが。
もし俺なら……即殺だっただろうな。
「ソドムは俺の従魔である事も、この姿は俺の要望でしてくれている事も伝えた。それなのに“慈悲を無駄に……”とか何とか言っていた奴等だ。死んで当然だろう?……俺から何かを奪おうって奴を、生かしておく必要はない。……今回俺がしたのは、市場に死体を転がしてるのもなって思って、処理をしただけだが。」
そう、俺がしたのは死体を消しただけ。
……結界の範囲を広げたのは俺だけど、覇気を発しているのはソドムだし。
俺は色々相殺されてて、普段はそこまで強い覇気は発していないから、どれ位の覇気でどのレベルの奴等が死ぬのかの判別がついていないけど。
この世界は全体的に弱くなっているし、俺もゲームでは最高レベルが100だった事もあって、加減が難しい。
弱い攻撃でも、この世界の奴等は簡単に死んでしまう。
……だから殺しても何とも思わないんだろうか?
…………関係ない、か?
「次回からは、出来れば報告してからにして欲しい。」
「は?何の為に?」
報告の義務なんて、俺にはない。
騎士団長の言う報告先は、あの国王なんだろうが……
現時点でコクミック王国に住んではいるが、国の意思に従う必要はない。
「俺がお前らに従う義務はない。報告の義務はない。お前らは俺へ敵対行動をとらなかったってだけの奴等だ。それ以上でもそれ以下でもない。」
コイツらは俺が庇護する対象じゃない。
俺の側に置くつもりもない。
ただの有象無象。
そんな奴等を優先する事はない。
「今回の依頼を受けたのは、ギルド登録抹消回避の為でしかない。お前らの、国王の為に受けた訳じゃない。……まあ別に、登録抹消されたとしても、また登録したら良いだけだが。次は低ランクで留めていても良いし。」
再登録にはお金がかかるけど、今の俺にはその程度、痛手じゃない。
そもそもこんなにも柵ばかりなら、低ランクのままで良い。
──メリットよりもデメリットの方が圧倒的に多いのだから。
「…………」
口を噤んだ騎士団長を置いて歩いていく。
アイツは俺が気にしてやる対象じゃない。
アイツの為に、俺を曲げる必要もない。
「あのおじさん、いいの?」
「ん?あれは俺のじゃないからな。話を聞く必要はない。」
ソフィアに答えながら歩いていく。
(この国も、特に見るものはないな。)
質は他の国と然程変わらない。
やはり帰ってから炉を設置して、自分で作った方が良さそうだ。
それか、鍛冶の出来る奴を買うか。
使い道のない鉱石が大量にあるから、失敗されてもどうって事もない。
宝石も沢山あるし、それは魔石にも言える事。
魔道具を作れる奴も買おうかな?
それか、素質のある奴を引き取るか。
……でも今のところ、ソフィアとシス以外の子供を引き取りたいとは思っていないが。
スレていない子供がいたら話は別だけど、見掛けないんだよな。
ゲームでも“良い奴”が圧倒的に少なかったけど、現実に接すると余計にそう思う。
ソフィアとシスの存在が奇跡過ぎる。
後、良い子そうだったのは、ルードゥブルグ共和国で見た、食堂にいた子供位か?
両親が揃っている子供を引き離すつもりもないし、俺が介入する必要もないだろうから、彼を引き取るつもりはないが。
両親共、良い人そうだったしな。
「引き取った弟妹でもなく、自分で選んだ奴隷でもない相手に、俺が割く時間はない。」
いってみれば、それに尽きる。
俺自身の時間は有り余っていようが、それはそれ。
関係ない奴等に、俺が対応する義理はない。
「あのおじさん、きらい?」
「んー?好きとか嫌いとかの以前に、興味がない。」
「???」
「ソフィアにはまだ難しいか。……ソフィアは一生知らない感情かもな。」
純粋なソフィアにはこのままでいて欲しい。
元々人の顔色を伺いながら生きてきたソフィアにとって、“関心がない”“興味がない”とはいっていられなかっただろう。
いつ誰に暴言を吐かれるか、暴力を振るわれるかと怯えて生活していたようだし。
今は俺に殺される奴等を見ても驚くだけで留まっているのも、俺が一瞬で始末し、遺体を消しているからだろう。
“俺が殺した”という認識は、あまりもてていない気がする。
シスは流石に理解しているようだけど、俺が手を出すのは何かしらの理由があると思っているようだ。
俺が無差別に殺していたらただただ怖がっていだろうが、相手から何かアクションがない限り、俺が手を下す事がない事を知っている為、特に怖がっている様子はない。
“相手が勝てもしない喧嘩を売った”と認識しているようだ。
……もっとほのぼのとしたスローライフを過ごしたいんだけどな。
黒猫族を忌避する風習はどの国でも同じようだし、白狐族のように固有の能力を持つ種族に見えるってだけで、力の発現の為という名目の元、暴力を振るう。
そういう奴等がいなくならない限り、俺が殺す人数は止まらない。
「ソフィアとシスの事は好きだけどな。」
「ソフィア、おにいちゃん、だいすき!!」
「僕も!僕も兄さん好き!」
嬉しそうに笑う二人。
──マジ天使。
俺の持っている天使の衣装、二人なら似合うだろうに……イベントリに入っている物は譲渡不可能なんだよな。
ゲームでの性別は男と女の両方でしていたから、両方の性別の服があるのに。
…………二人に羽付きの服を縫って、三人でお揃いにしても良いかもな。
…………いや、やっぱり俺は無しかな?
あの衣装、確か後光がさすのがデフォだった筈。
周りに眩しがられそうだ。
とにかく、二人に羽付きの服を縫うのは決定だな!




