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閑話─敵に回すべきではない相手─

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有難うございます♪


─?side─


コクミック王国との会談で、国王が連れてきた護衛の事が報告にあがった事に驚いた。


(その冒険者は、コクミック王国に加担すると決めたのか?)


どの国にも属さないのではなかったのだろうか?


コクミック王国側から、彼の同席を求める書状が送られているのは、属した事を報告する為だろうか?


……彼が引き取った子供達や奴隷達も連れてくるという旨も書かれているが、それは今はどうでも良い。


コクミック王国から出された報告書に書かれていたような、化物染みた実力者が一国に属するとなると、国力のバランスが崩れる。


確かに、自国に属してくれたら嬉しく思う。


彼が正規の戦力になるなら、それに見合った額を支払うつもりでもある。


……だが、それが他国の話になると、絶望でしかない。


どのように懐柔すれば良い?


敵対しない為に、我が国はどれ程譲歩しなければならない?


どんな難題を吹っ掛けられる?


心配事は山積みだ。




────

──


コクミック王国の一行が、会談場所に姿を現した。


ウィリアム国王に、騎士団長のニコラス殿、魔術師長のルーファス殿の姿も見える。


国王の移動に絶対ついてくる面々だから、目新しい感じは全くない。


一行の最後尾に現れた十人程の集団へ視線が向かう。


黒猫族の子供を抱き上げ、白狐族の子供と手を繋いでいる若い男が、くだんの冒険者なのだろう。


……何故か頭の上に小さなドラゴンが鎮座しているが。


そして何故、子馬まで連れているのだろうか?


馬舎に置いてくれば良かったのに。


彼の後ろにいるのは、彼の奴隷らしいが……


その中の一人が、何やら見覚えのある顔のような……


………………


(コクミック王国の、前・騎士団長ではないか!?)


魔獣に食い千切られた腕を治療する為、ハニンソ皇国へ来たのを覚えている。


……結局、千切れた腕がない為に、治癒不可能だったが。


切り落とされた腕があれば、何とかくっつける事は出来る。


だが、失った腕は元には戻らない。


それは治癒ではなく、再生になるからだ。


流石に教皇の私でも、神の奇跡と言っても良い魔法は使えない。


それなのに──


何故、腕がある!?


どう見ても義手には見えないし……どうやって治癒したんだ?


冒険者が現人神という噂は、本当だったという事か?




私が驚愕している事に気付いた周りも、何に驚いているか理解したようだ。


前・騎士団長が、治癒目的でハニンソ皇国へ訪れた事は、上層部ならば知っている。


あれから年月も経っている。


つまり、欠損の上に“古傷”となるという事。


そもそもが、古い傷は治癒魔法が効きづらい。


治癒は絶望的だった筈。


それこそ、神の奇跡でもなければ治癒は不可能だろう。


伝記に残されている聖女でも、欠損の再生が出来るとしか書かれていなかった。


冒険者・カイトの方が、過去に存在した偉人より治癒の実力が高いという事だ。


……やはり噂通り、神なのだろうか?


でもそれなら、何故人族として存在しているのだろう?


しかも“冒険者”などという、身分が関係ない職種に就いているのは、何か理由があるのだろうか?


顕現した神として教会に現れれば、神として手厚く歓迎される立場になれただろうに。


……普段なら教会で囲い込みをしそうだが、彼に対してそんな事が出来る者は皆無。




「……やっぱり、教皇でも“神の祝福”すらついてないじゃないか。聖騎士どもが“神の加護”があると豪語していたから見に来たのに……あの程度の治癒魔法しか使えないんだったら、アレックスの腕が治せなかったのも理解出来る。どちらかといえば、この教皇は攻撃特化のようだし。……まあでも、精々小規模な“神の裁き”を放てる程度だが。」


冒険者の言葉に、周りが静まり返る。


(私は鑑定されたのか?)


確かに私には、神の祝福なるものはついていない。


癒しや護りより、攻撃特化というのも、神の裁きを放てるのも当たっている。


だがこんな一瞬で、どこまで見たんだ?


「解呪のスキルレベルがⅢって、低過ぎるだろう。これならマイクの呪いもコイツでは解けなかったな。複合呪いは、Ⅴ以上でなければ無理だし。……教皇がこの程度なら、他の奴等の実力もしれているな。この世界の神は何をしているんだ?あまりにも腐っている奴等が多いから、放棄した可能性もあるな。」


(複合呪い……!?)


そんな高度過ぎる呪いが解けたのか!?


しかも……この世界が神に放棄された可能性がある事を示唆されるなんて……


しかも、それは人族のせいだと!?


確かに傲慢な者が各国に蔓延っているのは知っている。


この皇国も他人事ではない。


聖職者でありながら、教皇の私の目を盗み、国の金を着服し、私腹を肥やしている者がいるのは分かっている。


──証拠を押さえるのに手間取り、未だに解決出来ていないが。




「もう此処に用はない。帰る時に連絡しろ。滞在期間中、俺達はお前らに関与しない。」


「あい、分かった。」


コクミック王国の国王相手でも、畏まった様子はない。


しかも、それを許容している国王……


周りは何も言わないのか?


「宿をとったら、自由行動にするか。魔道具があるから、お前らだけでもある程度は安全に街を回れる。皆一緒に回りたければそれでも良いが、どうする?金も魔法袋も渡しているし、数日間だけだが、奴隷という立場を忘れて過ごすのも良いし。」


しかも、奴隷達に自由行動をさせるなんて……!


奴隷に対して、このような対応をする人なんて、今まで見た事がなかった。


……それに今、“魔法袋”を渡していると言わなかったか!?


そのような超高級品を、奴隷に貸し与えているというのか?


国で確保している物も、どの国も数はそんなに多くはないだろうに。


「いえ、私共は御主人様と共に行動する事を希望します。御主人様には及びませんが、裁縫用の布の種類をご教授願いたく思っております。」


「私もメイドとして、勉強したいと思っています。」


「俺も、この国の物価を見てみたいっす。御主人様へ料理の提供が出来るのはまだまだ力不足でやすが、流石に好みは知っておきたいっすし。」


だが、彼の奴隷達は主から離れられる自由行動を拒否した。


つまりはそれだけ奴隷に対する待遇が良いという事だ。


ここまで奴隷を“人扱い”している者も珍しい。




「何だ、結局皆ついてくるのか。他国にいる間は仕事がないんだから、好きなように行動すれば良いのに。……可笑しな奴等だな。」


奴隷達と会話している彼は、普通のお人好しな青年のようだ。


彼が“敵対”してくる者に対して慈悲がない事は聞いてはいるが、今の様子だとそうは見えない。


それは私だけでなく、この場にいる他の者達も同様に感じたのだろう。


──だからだろうか?


「教皇様に対しての無断鑑定をした不義行為……看過出来る筈もない。」

「教皇様に神の祝福がないだと!?“この程度”だと!?貴様、不敬であるぞ!」


同席していた司祭達が愚かにも声を荒げ、彼を糾弾しだした。


彼に対して恐怖より怒りが勝ったのだろうが、彼の恐ろしさを直接目で見ていないからか、危機感を持っていないのだろうか?


「神聖なるこの地に穢れた者が入る事など許されぬのに、国王の護衛という身分をゴリ押しして侵入させた野蛮人めが!」


一人の司祭の言葉に足を止めた彼。


……否、動けなくなったのは、私達の方。


彼から発せられた凄まじい殺意のせいで。


「俺が“侵入させた”……?穢れた者って、それは誰の事を言っているんだ?奴隷の事か?……いや、此処に来るまでにも数多く見た。宗教国家なだけはあって、色んな種族がいたが……お前の言う『穢れた者』って、誰の事を指している?」


子供二人を下ろした後、振り向いた彼の目は冷たく、この場の気温がぐんと下がった気すらする。


先程奴隷達に向けていた目とは違い過ぎる。


ここまで印象が変わるものなのか……!




「~~~~~~」

「~~~~~~」


あまりの恐怖に、誰も言葉が出ない。


ハクハクと、口を開閉するのみ。


(何だ、これは……!!)


冷や汗ばかり出て、声も出せず、身体は震えるばかりで動かない。


魔獣討伐をした時だって、山賊と対峙した時だって、ここまで恐怖を感じる事はなかった。


命の危機があった場面でも、ここまで恐怖に震える事はなかった。


“失神したい”と願う程、現実逃避をする事はなかった。


私達がこんな様子なのに、彼の後ろにいる奴隷達や、彼が先程まで腕に抱いていた子供達は、恐怖に駈られている様子は全くない。


「おいこら、聞いているのか?答えろ。」


いつの間に移動したのか、問題発言をした司祭の前、テーブルの上に立ち、片足をその司祭の肩に乗せている。


驚いているのは私達とコクミック王国の騎士達だけのようだ。


コクミック王国の国王は、彼の移動手段を知っていたのか?


彼の奴隷達も驚いている様子はない。


後ろを向いていた彼が発言した司祭の特定をした事にも驚きだが……魔法を使う前兆がなかった事の方が驚いた。


──詠唱は?


──魔力収束時間は?


魔法を使ったという証の、魔力漏れすら感じられなかった。


誰にでもある筈のそれらが、何故ないんだ?


…………“神”だからという事か?




「聖職者のくせに差別発言をするなんて、お前こそが穢れているだろう。輪廻の輪に入れないよう、魂ごと浄化してやる。お前のような腐った奴、来世で生まれ変わる価値もない。今此処で、お前という概念ごと消滅しろ。」


その言葉が発せられて直ぐ、彼の前にいた司祭が消えた。


何処かに移動させたのかと思う程、何も残っていない。


だが彼の言葉から察するに、一瞬にして魂ごと消したという事なのだろう。


「さて、街へ行くか。」


再び一瞬で元居た場所に戻り、子供達を抱き上げている。


やはり瞬間移動なのだろうか?


──過去にいた“大魔導師”と勇者と共に現れた“賢者”にしか使用出来ないと言われている移動魔法なのだが。


既に表情は元に戻っている。


司祭が言った“穢れた者”は、黒猫族の子供を指すのだろう。


つまり、彼の周りにいる者達に対して差別をしなければ、彼と敵対しなくて済むのだろうか?


悠然と立ち去る背中を、茫然と見送るしかなかった。


─?(ハニンソ皇国・教皇)sideエンド─

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― 新着の感想 ―
[良い点] 色々な作品を読んできましたが、 やはりこの小説ほどスカッとする、爽快ななろうの小説は無いですね! 一言で言えば『最高』です!! [一言] 更新頻度遅くてもいいので、この作品だけは途中で止…
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