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閑話─圧倒的な力─

更新遅くなりました。

今年は更新難しいかもです。

ご了承下さい。


─?side─


連絡要員の国境兵団からの報告に頭が痛くなった。


このコンファレンスへ、大型のドラゴンが向かってきているらしい。


トリトニア小国群最西端に位置するこの国は、ザザンの森と隣接しているレジデンス国が間に入っている。


だからザザンの森やレセドゥヤ山脈から来た魔獣は、先にレジデンスに侵入する。


コンファレンスは海に面している為、陸の魔獣よりも海の魔獣を相手にする方が多い。


それなのに、何故向かってきているドラゴンは、レジデンスを素通りしてこの国に?


……コンファレンスも素通りするつもりか?


このまま素通りするなら、向かう先は海を渡った先にある島国、ジレスタン王国がある。


ジレスタンへ向かっているのだろうか?


それなら良いのだが。


一応国境に兵士を集め、国の重鎮達へ報告したが……ドラゴン相手に戦える者がどれだけいる事やら。


このまま素通りしてくれるのを祈るしかない。




だが、そんな風に思ったからだろうか?


国境手前でドラゴンが止まった。


(何故、この国なんだ……)


レジデンスに上陸していれば、こちらとしても対応を考える時間があっただろう。


それなのに、何故レジデンスは素通りで、コンファレンスで止まるんだ?


この国に用があるとでも言うのか?


……というより、このドラゴン、かなり大型じゃないか?


色も黒色っぽいし、話に聞いた事があるブラックドラゴンなんだろうか?


この国の戦力では、勝てるとは思えないが……


攻撃する様子は今のところないし、話し合いで解決出来るのだろうか?


叡智に長けているドラゴンは、人語を理解していると聞く。


それなら、攻撃態勢をとらない方が良いか?




『俺は冒険者だ。コンファレンスの第二王女とかいう女とその従者の二人が俺に喧嘩を売った為、コイツら二人か、コンファレンスという国かどちらかに消えるのを決めて貰いに来た。このエンシェントドラゴンは俺の従魔だから、攻撃してきた時点で、問答無用でコンファレンスを消滅させる。』


そんな中、拡散された男の声が届いた。


魔力での拡散は、専用の魔道具もある事だし、特に難しい技術ではない。


だが……


(このドラゴンが“従魔”だと!?)


しかも、エンシェントドラゴンとか言ったか?


それが何を意味しているのか分からないが、ブラックドラゴンより上位のドラゴンという事は何となく理解した。


つまり、このドラゴンを従魔にしている冒険者は、それだけの力があるという事になる。


しかも、このような事態になっているのは、我が国の第二王女が喧嘩を売った事によるものらしい。


我儘で傲慢、人族至上主義で、民達から人気のない第二王女。


……此処に冒険者が来たって事は、第二王女は命乞いでもしたのか?


『コイツらがそちらの関係者で間違いないか?』


その声と共に、手が届きそうな位近くに浮遊してきた2つの物体のあまりにも酷い惨状に、思わず顔を引き攣らせてしまう。


色んなモノを垂れ流し状態で、何よりも汚物の臭いが酷い。


まるで折檻部屋のようだ。


鼻をつままなかっただけ良くやったと言えるだろう。


相手は王位継承権がない王女だとしても、王族だ。


そのような対応、臣下の我等が出来る筈もない。




『……確かに、我が国第二王女のクレア・カーティス様と、その従者メリナで間違いないです。“喧嘩を売った”という事でしたが、この二人が貴方様に何をしたのでしょうか?……申し遅れました。私はコンファレンス国、国境兵団団長、ドルトです。』


言葉に魔力を乗せて拡散させる魔道具を使う。


魔力だけで声を拡散させる事が出来る人もいるが、俺はそこまで魔力が多くないから出来ない。


もしかするとあの冒険者は、魔道具を使用していないのかも知れないな。


『俺は酷い目にあっていた子供を引き取っている。まだ引き取って日が浅く、俺から離す段階にない。それなのにコイツらは、“獣人は臭いから連れて来るな”と言った。そもそも、俺はギルドに指名依頼を受けないと言っているのにだ。自分の護衛が出来るのは光栄だろうとか頭の可笑しい事を言っていたからその場で殺しそうになったが、俺はコクミック王国とコンファレンス国が戦争をするキッカケを作るつもりはない。だからこうして此処にいる。……お前らも、誰のせいで国家滅亡の危機に陥っているか知りたいだろうと思ったしな。初めはコイツら含め、コンファレンスという国を地図から消そうと思っていたが、罪もない民を問答無用で殺すのはどうかと思い直した。……だからこそ聞きに来た。コイツら二人の命が消えるか、コンファレンスが消えるか、お前らが選べ。』


……凄い話が返ってきたぞ?


彼が思い直す事がなければ、この国は既に攻撃を受けていた事になる。


こんな大型のドラゴンを従魔にしている相手の実力は、どれ程のものなのだろう?


国を滅ぼすのは簡単だと、言外に告げているが……


しかも、“指名依頼を受けない”……?


…………もしかして、彼はコクミック王国に現れた噂の冒険者ではないよな?


もしそうならば、私達は彼を国に取り込む機会を失った事になる。


ただの民なら切り捨てられるが、一応は王族がしでかした事。


知らぬ存ぜぬは通じないだろう。


『陛下達に報告しに行って良いだろうか?』


だが、先ずは陛下達へ報告しなくては。


私はそう思ったのだが──


『必要か?コイツらを擁護するなら、国自体が消えるんだぞ?誰一人として、生かしてはおかない。……周りの国もとばっちりで攻撃範囲に入るだろうが、コンファレンスと隣接していた事が運命だと諦めて貰おう。……有象無象がいくら消えたところで、俺には興味がないからな。』


嘲りを含んだ言葉が返ってきた。


確かに、国の存亡がかかっているとなれば、第二王女とその従者の命は切り捨てられる可能性が高い。


だが、それをここで、私がする訳にはいかない。




『私には、そのような判断を下す決定権がないのです。少々お待ち下さると助かります。』


『どの国も、国境兵団の地位は低いんだな。』


それはコクミック王国の事だろうか?


それとも、他の国?


『早くしろよ?コイツらが起きて煩くなったら、お前が戻る前に消えているだろうからな。』


だけどその言葉に、慌てて通信が出来る部屋へ向かう。


今は二人共気絶しているが、いつ意識が戻るか分からない。


第二王女の事だ。


目が覚めれば必ず騒ぎだすだろう。


これ以上この冒険者と敵対行動をとられると困る。


何かあれば連絡するように部下へ告げ、一旦現場を離れる。




「緊急事態発生!第二王女クレア様が、エンシェントドラゴンなる大型ドラゴンを使役する冒険者を怒らせて、現在国境間近にいる。クレア様とその従者の命を失うか、コンファレンス国が消えるか選べとの事だ。至急陛下達への連絡を頼む。」


こういう時、陛下へ直通の連絡が出来ないのがいたい。


[えんしぇんと……?そのようなドラゴン、聞いた事がないですね。ドラゴンを使役しているという事すら信じがたいですが、その冒険者へ攻撃は出来ないのですか?]


通信担当の者が応対するが、現場を見ていないからだろう、かなり暢気だ。


「それは不可能だ。その冒険者は簡単に国を滅ぼすと口にする位だぞ?噂になっている、コクミック王国に現れた化け物級の冒険者の可能性が高い。」


[……あの噂のですか?眉唾物だと思っていましたが……本当に存在していたんですね。]


「現在クレア様達は気絶しているが、意識を戻して煩くなった時点で消すと伝えられた。早く陛下達へ繋いでくれ!」


[り、了解しました!]


やっと緊急事態だと理解したのか、慌てる様子が伝わってくる。


──遅いんだが。




待たされている間、時間が長く感じる。


通信担当の者がある程度報告しているのだろうが、早くして欲しい。


やっと通信機から声が聞こえた時、体感では何時間もかかっているかのようだった。


……実際は数分程度だったようだが。


驚く事に、通信の先に出たのは、なんと、陛下だった。


国の一大事だからか?


規定通り宰相が出ると思っていたのに。


いつもなら通信機越しとはいえ、直接話すなんて緊張していただろうが、衝撃が強すぎる事があったからか、今は然して緊張していないように思う。


[……その冒険者が連れているのは、どんなドラゴンであった?]


「黒色の鱗である為、初めはブラックドラゴンかと思ったのですが、どうも、文献に描かれていた姿よりも大きく。しかも良く良く見ると、僅かに赤みがある黒色なのです。の冒険者はそのドラゴンを“エンシェントドラゴン”と呼んでおりました。」


[コクミック王国にいるとされている冒険者は、古代竜を従魔登録していると聞いている。エンシェントドラゴンとは、古代竜の別名なのかも知れぬな。]


(あれが古代竜なのか……?)


お伽噺の存在ではなかったのか。


古代竜は、世界が生まれた時に神が初めに創った種だと言われている。


古い伝記にも書かれていないが、過去、そのように古代文字で描かれた石板を発見したとか。


……現在はその石板は紛失しており、そこに描かれていた事も真実だと判明する事は叶わなかった筈。


──有名な考古学者を大勢投入し、調べ尽くしても。


だからこそ、殆どの人はその話を真実だと信じていない。


物語を書く者が話を作ったのではないかという説が濃厚だった。


昔もそれくらいの娯楽があっただろう、と。




[流石に我が娘とはいえ、国民全員の命と比べられるものではない。元より、家庭教師を雇っても部屋から抜け出して学ばず、我儘放題で国税で散財していたのだ。嫁の貰い手はこの先も見つからぬであろう。既に成人しているのだから、仕事もせぬ者をいつまでも国においている訳にもいくまい。……二人の処遇はその冒険者に任せる。王族ならば、相手を見極める事も必要。如何様にも処罰して良いと伝えよ。出来ればその冒険者と会合してみたいが……今回の事で難しくなっただろうからな。]


「はっ!そのように伝えます。」


通信が切れて、再び冒険者の元へと駆けていく。


砦には通信機が置かれている為、彼の冒険者がいる正面まで行くのに、時間は然程かからない。


──その光景が見えた瞬間、有り得なさ過ぎて足を止めてしまったが。


(……何をしている?)


見えてはいるが、頭が理解したくないのだろう。


そんな疑問しか浮かばない。


身体が動かない。


(“何”をしている!?)


冒険者へ──もとい、彼の従魔のドラゴンの方へと向かっていく魔法に、私は為す術なく見ているしかない。


形状を見るに、ファイヤーアローだろうが……“待機”を命じていたのに、何故命令違反が起こっている?




パンッ……と乾いた音がしたかと思ったら、速さも威力も増したファイヤーアローが返ってきた。


「総員、防壁展開!……っぎゃああぁぁ!!」


数人の国境兵団達が張る防壁は意味を為さなかったようだ。


的確に攻撃した者+指示した者へ攻撃を返したようで、他の者達へは被害がない。


……だが、いつまでもそれが通用する相手でもないだろう。


『そちらの判断は解った。これより、コンファレンス国に生存する全ての生物の殲滅を開始する。』


告げられた言葉に、血の気が下がる。


慌てて魔道具がある所へ向かう。


何としても攻撃を止めて貰わなければ、この国は終わりだ。


『申し訳ない!……いや、申し訳ありません!部下が勝手な事を……!私は先程対応させて頂いたドルトです。陛下との通信が終わり、その内容を伝えに今戻って来たところなのです。こちらからの攻撃、申し開きのしようも御座いませんが……何卒猶予のご検討を……!!』


先程冒険者が何をしたのか、全く分からなかった。


あれはどんな魔法だ?


それとも、古代竜の力なのか?


それでも、数人の攻撃など効かない事は証明された。


噂による想像よりも実力が高いのかも知れない。




『俺は先に忠告した筈だ。そちらから俺の姿は見えないだろうから、俺の従魔に攻撃した時点で攻撃を開始すると言っただろう?攻撃しておいて、“猶予の検討”?ふざけているのか?』


冷たい言葉が返ってきたが、それも当然の事。


彼の言う事は、何も間違ってはいない。


『お怒りはごもっともです。ですが、何卒国への攻撃は止めて頂けると助かります。我が国の陛下は、王女と従者の二人の命を差し出すと仰っていました。』


だが、国への攻撃を許容する訳にはいかない。


陛下の決断を無に帰す行いをした兵達は既に死亡している為、見せしめに殺す事も出来ないから、他の交渉条件が必要。


『この国に攻撃しないと決断して頂けるなら、私が貴方様の奴隷として仕えます。ですからどうか、国への攻撃は……!』


交渉にとって必要なものが何もない為、私の身を差し出す他ない。


周りは騒がしくなったが、私一人の身で国が救われるなら、それに超したことはない。


『お前みたいな弱い奴はいらねぇよ。』


だが、すげなく断られた。


──即答だ。


国境兵団団長の私は、そこまで弱いつもりはないのだが……。




『……今回だけは此方の時間もない事だし、攻撃するのを止めてやる。だが、次はないと思え。』


どうやらこの国の危機は去ったようだ。


理由は“時間がない”という事らしいが……


だが、理由はどうであれ、このまま攻撃を受ける事にはならないようで、胸を撫で下ろす。


……そんな風に気が抜けていたからだろうか?


響いた破裂音に近い音に、身体がびくついた。


音のした方へ目を向けると、そこには何かの肉塊が。


(……あそこに、何があった?)


動物はいなかった筈。


……だとしたら……人?


(そういえば、あの二人はあの肉塊の上付近で浮かんでいたな。)


どうやらあの肉塊は、問題を起こした二人のようだ。


どうやって攻撃したのか……


あんな魔法、見た事もない。


再び冒険者の方へ視線を戻すと、既にドラゴンは遥か彼方の空に小さく見えた。


(とてつもない力を有し、ドラゴンを従え、他国間の移動も簡単となると、安心は出来ないか。)


いつ何時、攻撃されるか分かったものではない。


これから陛下を始め、重鎮達と彼の冒険者への対応を決める必要がある。


──因みに、少数の兵士達が勝手な行動をとったのは、彼の冒険者の力を過小評価していたらしい事が分かった。


ドラゴンを従えている時点で、実力が高い事くらい、分かりきっているようなものなのに。


……馬鹿は死ななきゃ治らないと言われるのは、ある意味正しいのかもな。


─?sideエンド─

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