ウザい女は好きですか?俺は嫌いです。
更新遅くなりました(;´Д`)
気を付けてはいたんですが、風邪を少々……
皆様も、体調を崩さないように(。-人-。)
畑仕事が二人の日課になった事で、徐々にではあるがクレイグへ自主的に話し掛ける事が出来るようになってきた。
まだ関わりのない他の奴隷達へは顔を合わせる機会も少ないし、見掛けても近寄ろうとしていないけど。
警戒心が高いのは、一概に悪い事ではない。
だけど、二人が俺に懐くのが早かったのは何故だろう?
初めて会った時だって、二人とも少し警戒している程度だったし。
カルガモの親子状態は見ているだけで癒されるけど、いつまでもこのままで良い訳もない。
俺が生涯養うならともかく、二人の自立を妨害するつもりはない。
──俺としては、二人をこのまま養う事になっても良いが。
だけど現在の俺は、種族不明、性別も見た目が男ってだけで、年齢もおよそ。
もしかしたら、年月が過ぎても、俺は老けないかもしれない。
ゲームの時のように、子供が出来るといった事にはならないのかも知れない。
俺の存在自体が不確かなのに、将来の見通しなど想像も出来ない。
(超越者って何だよ!?)
スキルを見る限り、今まで選択したジョブのスキルを全て持っている上に、レベルはExtra。
農民ジョブのスキルがあれば、勇者や貴族、王のスキルも持っている。
魔王や天使、悪魔、神のスキルすらある。
つまり、何者でもなく、何者にもなれるという事。
……でも、それだと矛盾だらけだ。
俺が何にでもなれるなら、この世界に勇者や魔王は現れない事になる。
王でもあるなら、それはどこの国の王なんだ?
神だというなら、この世界に神はいない事になる。
俺のステータスはバグもいいところだ。
人を殺しても何とも思わない事も、帰郷の思いに駈られる事がないのも、敵と認識した者への非道さとか、日本で暮らしていた頃の俺では考えられない事だ。
そういう事は考えられるのに、最近は両親の顔すら思い出せない。
名前もあやふや。
日本での記憶は、知識以外、殆ど消えた。
日本語はまだ書けるのに、歴史なんかも覚えているのに、人に対する想いや記憶だけが俺の頭から消えていく。
それなのに、それに対する動揺は──ない。
記憶が消えていく事実を、何ともなしに受け入れている自分。
……俺は日本で死んで、このゲームに似た世界に紛れ込んだんだろうか?
────
──
二人にさせている畑仕事は、朝の短い時間だけ。
後は勉強をさせていたり、遊ばせていたり……
でも根をつめて勉強させても、身に付くよりも疲れるだけだろう。
気分転換にと外へ連れ出す事はあれど、行き先はいつも市場や散歩として近所をブラブラ。
だから今日は少し遠出をする事にした。
ザザンの森の奥深くは、そこそこ強い魔獣が出る。
シスやソフィアのレベルでは、到底相手に出来ない強敵だ。
俺がいるから二人に怪我の一つもさせるつもりはないけど、今日の行き先はそんな奥深くじゃない。
フォールの街から出てすぐの、浅いところだ。
薬草摘みや、弱い魔獣討伐をする、新人冒険者位しかいない場所。
今日は薬草摘みの練習がてら、ピクニック気分で。
お供はソドムにグラニ。
今日はグラニに乗って来た。
俺しか乗せないと言っていたけど、二人が子供という事で妥協してくれたからな。
そして俺の頭の上には、既にそこが定位置となっているソドムが。
グラニに乗っていて俺の頭が上下に揺れている筈なのに、転がり落ちてくる事がない。
かといって、俺の頭を必死に掴んでいる様子もない。
館では、ソドムだけで何かしている事もあるけど、直ぐに俺の頭の上に移動してくる。
……あれ?
ソドムも結構、俺の側にいないか?
「これがヒラリ草。擂り潰した時に出る液体が切り傷に効く。そして少し似ているが、葉がギザギザの方はホロホロ草。擂り潰してそのまま患部に貼ると痒み止めになる。」
薬草の名前は、結構適当に付けられたんだと思う。
ゲーム中、クエスト表を見ながら探す事が多かった位だ。
覚えるまで時間がかかった。
ふんふん言いながら葉を見比べている二人。
一度に沢山教えても頭に入らないだろうから、今日教えるのはこの二種類。
初めは葉を見ながら薬草摘み。
慣れてきたら葉を見ずに薬草を摘ませる。
ソフィアはヒラリ草とホロホロ草を間違う事が多かったし、雑草を摘んでくる事もあったが、シスは殆ど正しい薬草を摘んでいた。
やはり適性があるシスは、あまり間違えなかったな。
これから続けていけば、間違う事もなくなっていくだろう。
森の浅い場所とはいえ、弱い魔獣は普通に現れる所。
でもソドムがいるからか、魔獣は姿を見せない。
作ってきたサンドイッチを三人で食べ、ジュースを飲んで一服。
その後は、売ればどれくらいになるのかを教える為、ギルドへ向かう。
ギルドの中に入ると、またもやざわめきが消える。
あれからソフィアへ暴言を吐く奴はいなくなったし、そもそもが話し掛けてくる奴がいなくなった。
ギルド自体に来る事も滅多にないし、今のところ用事もない。
依頼を受けなきゃいけなくなるまでには、二人がある程度一人でいられるようになっているだろう。
……Aランクの依頼となれば、大抵が指名依頼の筈だけど。
でも俺、指名依頼を拒否しているから……どうなるんだ?
「──ですから、ギルドとしては紹介する事も出来ません!」
静まり返ったギルド内だからか、奥からカルロスらしき声が聞こえてきた。
相手は貴族だろうか?
また無理難題を言っているんだろう。
この世界の貴族って、馬鹿が多過ぎないか?
まだ優良な貴族に遭っていない。
居なければ国が回らないから居るんだろうけど……どれだけいるか、怪しいものだ。
「ほら、二人とも、買い取り場は此処だよ。」
ウザそうな奴に出会う前に、用事を済ませてしまおう。
二人がマジックバッグから薬草を取り出し、カウンターへと乗せた。
査定している様子を興味深く覗いているのが、何とも癒される。
身長の低いソフィアなんて、背伸びして必死な様子だから、特に。
そんなに必死になってまで見るようなものでもないのに。
「ほら、これで見易くなったか?」
「ん!おにいちゃん、ありがとう。」
抱き上げてやると、嬉しそうに見上げてくる。
この可愛いまま、成長していって欲しいものだ。
二人が採取した薬草の買い取りが終わり、お金を各々のマジックバッグへ入れていた時──
「私を誰だと思っているの!?一介のギルドマスター風情が私の依頼を拒否するなんて……!獣人の分際で私と会話するのも烏滸がましいというのに!!」
勢い良く扉を開けて出て来た──馬鹿女。
ギルドマスター風情とか、獣人の分際とか、烏滸がましいとか……良く言えるものだ。
人族がそんなに偉いのか?
関わりたくないのか、ギルド内にいた奴等は揃って視線を逸らしている。
初めて自分で稼いだ事に満足げな二人は大声に驚いたようで、女の方を見ている。
獣人差別をするような奴だ。
いちゃもんをつけて来ないとは限らない。
お金を仕舞う為に再び下ろしていたソフィアとシスを抱き上げる。
此方に気付かず、そのまま出て行けば良いんだが……
買い取り場は出入口のすぐ横にある。
視界に入らない事はないだろう。
女と従者らしき奴等の後ろからカルロスが顔を出したが、俺と目が合うと一瞬で顔色を変えた。
……もしかして、俺への指名依頼だったんだろうか?
最悪なタイミングでギルドに来てしまったみたいだな。
「ああ、嫌だ!獣人なんかと同じ部屋にいたから、服に獣臭さが移っちゃったじゃない!早く着替えたいわ!……あら?もしかして、貴方ね。奇特な事に獣人の子供を引き取ったAランク冒険者というのは。有り難く思いなさい!この私が指名依頼をしてあげるわ!国へ戻る道中の護衛任務よ。この私と共に行動出来るなんて光栄でしょう?……あ、勿論、獣人は連れて来ないでよ?見ているだけで気分が悪くなるもの!」
俺に気付くなり、ベラベラと話し出すクソ女。
「ふざけんな。誰がお前なんかの依頼を請けるか!“獣人が獣臭い”なんて、よくも俺の前で言えたものだな?お前なんか、呼吸する事すら烏滸がましいんだよ。」
何故俺が、こんな奴を護らないといけないんだ。
しかも、二人を連れて来るなだと?
気分が悪くなるだと?
こっちが気分悪いっての!
「まあぁぁ!!私を誰だと思っているのっ!?」
「家の威を借りるしか能のないクソ女だろ?」
顔を真っ赤にして憤慨しているが、知ったことか。
「……っっ!!」
「ハッ!図星か。この二人ですら、今日自分達だけで稼いだぞ?俺の財産を当てにする事もない。俺が勝手に与えているだけだ。……お前はどうだ?親の金を食い潰しているだけだろう?親の金で他国へ旅行か。成人を過ぎているのに、いつまで国税を毟り取る?」
鑑定すると、この女──クレア・カーティスは俺より歳上の21才。
4つの小国が集まっているトリトニア小国群の中にある一国、コンファレンス国の王の次女。
つまりは、こんな奴でも身分は“王女”。
ただし、職に就かず、結婚もせず、あちこち旅行しては買い物に明け暮れている女。
身分的に結婚相手はすぐに見つかりそうなものだが、我儘な性格と、すぐに旅行に出掛ける放蕩さと、湯水のように散財するような金銭感覚の崩壊している様から、相手に恵まれないのだろう。
いくら政略結婚だとしても、こんな女、誰も貰いたくないだろうし。
俺だったら、幾ら積まれても断固お断りだ。
「……っ、こんな屈辱、初めてだわ!私はコンファレンス国の第二王女よ?平伏し、敬うのが庶民の義務でしょう!?」
「馬鹿か。王族だから偉いと決まっている訳がないだろうが。国の為に働いているならともかく、自分達の税金で遊び放題のお前の事なんか、自国でも敬う奴などいないだろう。それに、此処はコクミック王国だ。お前を敬う奴など、金目当ての奴等くらいだ。……それ以前に、敬う要素がないお前をどう敬えと?」
人として尊敬出来るようなところがあるとは思えない。
……もしあったとしても、俺が敬う必要はないが。
一応今のところ拠点としているこの国の王へも敬っていないのに、行った事のない他国の第二王女へ敬う訳がない。
しかも、こんなウザい奴なんか。
「~~っっ、不敬罪で処罰してやるわ!」
「へえ……俺を完全に敵に回すか。コンファレンス諸とも消してやっても良いが?」
紛争ばかりしている国って認識だったけど、この女を見ていると違うのかも知れない。
トリトニア小国群の内、他の三国の何処かが紛争地帯なのかも?
「何を言っているの?たかだか冒険者一人、Aランクといえど数には敵わないでしょう?今謝罪すれば、奴隷として生かしてやっても良いわよ?」
勝ち誇った顔をしているけど、コイツの馬鹿は死んでも直らなさそうだ。
「馬鹿だな。そんな小国、ソドムだけでも堕とせる。グラニだけでも堕とせる。俺はコンファレンス程度の小国なら、広範囲魔法一発で更地に変えられる。それに、俺はギルド登録してから緊急依頼以外の仕事は請けていないぞ?バジリスクを討ってこの街に来たらCランクになって、スタンピードで発生したオーガの殲滅でAランクになっただけだ。どちらも全力には程遠い力だけであっさり片付いたからな。……俺の敵になるなら、誰であっても一切容赦しない。お前の我儘は、俺には通らない。」
俺が全力を出すならどれ程の被害になるのか、自分でも分かっていない。
この世界が終わっても可笑しくはないようなステータスだからな。
「嘘よ!!そんな事が出来る人なんていないわ!」
「俺は出来ると言っているだけだ。嘘だと思うなら、その身をもって体験すれば良い。……もっとも、いつ死んだのかも分からない程、一瞬で死ぬだろうがな。」
この女が信じようが信じまいが、どうでも良い。
俺にとって重要ではない。
「今回は相手が悪かったですね。この国としても、カイトへは無干渉だと決定しました。ギルドとしましても、カイトへの指名依頼は全て受け付けない事に決まっています。他の冒険者を雇うか、傭兵ギルドへ頼んで下さい。……それと、ギルドを無視して勝手に冒険者へ声を掛けるのは止めて下さい。もう一度行えば、次回からギルドは、貴女の依頼を拒否します。」
女との間に、カルロスが割り込んできた。
……これは、あれだな。
俺にこの女……ひいては、コンファレンス国への攻撃を止めて欲しいのだろう。
(この女を護る価値などあるのか?)
こんなのでも王族だからか?
いなくなっても、誰も困らなそうだけど。




