小話─兄さんに保護されて─
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─シスside─
僕は先祖返りの、真っ白な毛を持つ狐人族。
“白狐族”というらしい。
白狐族は希少な種族で、凄い固有スキルがあるんだとか。
僕は本物の白狐族とは違うから、そんな力はない。
だけど見た目からは力を持っていないなんて分からないから、隠れて生活していた。
同じ村の人達にも見つからないように、ずっと家から出ずに暮らしていた。
外に興味がなかったとは言わない。
聞こえてくる子供達の賑やかな声を聞く度、皆と遊びたいって思っていた。
父さんと母さんは、村での様子や他の人達の事は、ずっと家の中で過ごしている僕を思って一切しなかった。
僕の仕事は、父さん達が収穫した物の仕分けや、農具の手入れ、掃除などの僕でも出来る家事。
でもあの日──熱を出して寝ていた時、喉が渇いて起きた時に、収穫物をひっくり返して傷をつけてしまったから、怒られるのを覚悟で謝りに二人の元へ行ったのは、やはり熱があった為に判断がキチンと出来なかったからだろう。
何故あの時、あんな事をしてしまったのか……
そのせいで、父さんと母さんは殺されてしまった。
僕も捕まって、白狐族の能力が発動するようにしてやるって言って、何度も殴られた。
そんな中で生きていたくなくて、与えられる食事を何回か食べなかったら、不味い液体を無理矢理飲まされて死ねなかった。
(僕は何の為に生きているんだろう?)
あの頃、ずっとそう思っていた。
救いを求めても叶わなくて、冷たくて頑丈な鎖は千切れる事もなくて……
他の部屋でも、僕みたいに捕らえられている人がいるのは悲鳴などが聞こえてくる事があるから分かっていたけど、どうする事も出来ない。
もし此処を出られたとしても、父さん達はもういない。
村の人達と顔を合わせた事もないのに、世話になんてなれない。
……死にたくないけど、生きていたくない。
ずっと、ずっと、そう思っていた。
そんな中、僕を捕らえていた悪い奴等を退治してくれた人が現れた。
そして、僕を保護すると言った男の人。
僕よりも小さな子供と一緒にいたけど、親子には見えない。
あの子も引き取ったんだろうか?
だから少し勇気を出して声を掛けてみた。
また暴力を振るわれるかもしれない。
また“役立たず”と罵られるかもしれない。
それでも、少しの希望をもって。
──警戒は緩めないけど。
だけど、自警団で剣を抜かれた時、“助けて”って願うと、あの人がいつの間にかいた。
冒険者のカイトという名前の男の人。
強くて、敵には容赦しなくて、でも凄く優しい人。
家族がいなくなった僕の家族になってくれた人。
“兄さん”になってくれた人。
ずっと隣にいてくれて、優しく頭を撫でてくれる。
殴られた事もない。
怒鳴られた事もない。
抱き締めてくれる。
抱き上げてくれる。
笑顔を向けてくれる。
一緒に寝てくれる。
身体を拭くのではなく、毎日風呂に入れられる。
美味しいご飯に、甘いお菓子も沢山並ぶ。
文字や計算など、勉強も教えてくれる。
綺麗な服に、僕だけの食器を与えてくれる。
……僕は何も返せないのに。
甘やかされる度、優しくされる度、僕は怖くなっていく。
だって兄さんが僕の前からいなくなったら、どうすれば良い?
兄さんに、“お前はもう要らない”と言われれば、僕には行く所がない。
兄さんに捨てられたら、きっと生きてなんていけない。
ずっと兄さんの家に居させて貰うには、どうしたら良いんだろう?
僕を保護してくれる期間は、“基本、成人する迄”と言っていた。
いつまでも兄さんの世話になるのは駄目だって分かっている。
大人になったら、僕は一人で生きていかなきゃいけないって事くらい、理解している。
でも……
成人して何か仕事をするにしても、兄さんの元にいちゃ駄目だろうか?
生活費としてお金を払ったら、出ていかなくても良くなったりするだろうか?
“弟”じゃなく“使用人”としてで良いから、この家に置いてくれないだろうか?
……だって、ズルい。
僕は成人したら出ていかなきゃいけないのに、使用人の皆はずっとこの家にいられるんだから。
──まだ誰とも話した事はないけど。
────
──
今日は庭に、僕とソフィアの畑を作るらしい。
一緒についてきたのは、“庭師”を役割とした使用人。
名前は……クレイグ、だったっけ?
身体が大きくて怖い。
兄さんは普通に会話しているけど、その兄さんよりも随分大きい。
兄さんは強いから、怖いものなんて何もないのかな?
……僕も強くなれるかな?
種芋を買って、土なんかも沢山買った兄さんは、あっという間にそれらを消した。
マジックバッグに入れたんだろう。
僕も一つ貰った。
兄さんの持つ物のように沢山は入らないけど、そこそこ入るらしい。
入れた物を思い浮かべて手を入れると取り出す事が出来る為、沢山入る物を渡されても、入れた物を覚えていられないだろうから、これで良かったんだと思う。
そんな中、兄さんへ声をかけてきた子供がいた。
襤褸切れを纏い、ボサボサ頭の子供。
僕より小さい。
でも……何ていうんだろう?
嫌な感じがする子供だ。
僕を捕らえていたあの男に似ている気がする。
アイツは人族で、この子供は獣人だから、見た目は全く違うんだけど……
悪い事をしている奴独特の雰囲気って事なのかな?
その子供への兄さんの対応は……凄く冷たかった。
僕達へ向ける優しい目は、そこにはない。
口元は笑っているのに、冷めた目はどこまでも冷酷で……
いつもの兄さんとは全く違う。
悪い事をすれば、この目が僕に向くんだろうか?
……考えただけで震える。
(悪い事は、絶対にしない!)
そう誓うも、どこから“悪い事”になるのか分からない。
兄さんから離れないで何処までもついていく事は、兄さんの邪魔にしかならないだろう。
夜中に悪い夢を見て飛び起きた時に兄さんを起こしてしまうのも、悪い事にならないか?
でも、それをした時、兄さんに怒られた事はない。
……今までのは大丈夫って事だろうか?
これからする事に気を付けよう。
─シスsideエンド─




