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皆でお買い物

ブックマーク登録、ありがとうございます。


庭を任せている事から、クレイグは何処に植物の種などが売っているか知っているようだ。


「花の種を買うの、いつもこの店です。」


クレイグに先導されて着いたのは、そこそこ広い店。


花の種だけでなく野菜の種なども売っているし、土や肥料も売っているらしい。


園芸用品売り場って感じだ。


クエストなどに出されるような植物とは違い、ただの花なんかは日本で見た物と同じ名前になっている。


バラに、ガーベラに、チューリップ……


品種は日本で見た程多くないが、何度か目にした事のある花々の種が並んでいる。


野菜の種も豊富。


芋類で育てるのに慣れたら、他の野菜に手を出しても良さそうだな。


季節ごとの野菜を植えれば、収穫も楽しみになるだろう。


俺としては二人に働かせるつもりはなかったけど、与えられているだけの立場でいる事に不安になっていた二人には、今回の事は丁度良いと思う。


今は食事は全てロデリックに任せている。


使用人用の建物の方でも作っているから大変だろうけど、ロデリックは気にしなくて良いと言うから甘えている。


ロデリックを買うまでは、二人の食事は俺が作っていた。


マリーが作るという案もあったが、治ったとはいえ病み上がりな事も考えて、彼女にはニアと二人分の食事を作るだけで良いと言ってあった。


俺からロデリックに料理担当が変更した時から、二人は一時的に食が細くなったから慌てたけど。


調理スキルレベルExtraの俺と、他の奴等が作る料理の味が同じ訳がないんだから、仕方ないといえば仕方ない。


料理はロデリックへ全面任せになったが、お菓子作りだけは俺がしている。


新鮮な卵に、搾りたて牛乳、白い砂糖を手に入れるのは、金さえあれば簡単だ。


所持金が現時点でもカンストしている俺にとって、全く痛手にならない。


……湯水のように使っているが、いったいどれだけ使えばカンスト状態ではなくなるんだろう?




「種芋は、これとこれです。」


「ムロイモとサツマイモか。」


サツマイモは日本で良く見たオーソドックスの物。


甘くて美味く、庶民のオヤツとして人気らしい。


ムロイモは貴族ジョブの時のクエストで良く出てくる見た目ジャガイモの芋だ。


飢饉や干ばつで食べる物が減った時に、重宝する“世話を怠けていても成長する芋”。


世話が簡単な上に、そこそこ豊作に収穫出来る事が魅力だけど、味は美味くもなければ不味くもない、腹を満たす為だけの芋という設定。


調理スキルレベルⅢ以上の奴が料理すると、その味が劇的に美味くなるらしい。


つまり、俺なら美味くする事も可能。


ロデリックはまだⅡだけど、これから作り続けていればいずれ上がるだろう。


「どうする?どちらも簡単なら、サツマイモにするか?それとも、両方にするか?」


普段料理しているのはロデリック。


美味くない物を食べさせるつもりはない。


植物の世話をする事をメインに考えているから、収穫しても食べる必要はないけど。


スラムにでも置いてくれば、奴等は勝手に取っていくだろうし。




「どっちも!」

「……両方、が、いいかな?」


元気良く手を挙げるソフィアに、おずおずと発言するシス。


シスは未だに、俺へ発言する時ですら恐縮する。


“俺の威を借りて好き放題する屑”に成り下がりでもしない限り、俺が追い出したりする事はないんだけどな。


「両方か。……まずは6個ずつ買うか。」


畑もそういえばまだ作っていないんだよな。


重労働だから、帰ったらおれがするつもりだけど。


クレイグに任せても良いけど、流石に一日で耕して種芋を植えるところまでもっていく事は難しいだろう。


あの家の庭の地盤、結構硬いんだよな。


それなのに、雑草は生える。


初めから植えられていた木は、現在切り倒して根も撤去済み。


邪魔な所にあったからな。


現在花壇を作っているクレイグだけど、まだ花壇として耕している範囲は狭い。


……硬い方がグラニにとって走りやすいみたいだけど。


グラニの運動不足解消の為に、ある程度は今のままにするつもりだ。


それより、農民ジョブのスキルもあるし、俺が畑を作った方が早い。


今日中に、畑になる箇所を耕して畝を作り、種芋を植えるところまで終わらせたい。


あ、ジョウロも買わないと。


子供用の小さめな物があると良いな。


あと、スコップも。


畑作業用の服も作らないと。


……あれ?


一番忙しくなるの、俺?


…………まあ良いか。


二人の為だし。




「土も一応買っとくか。肥料も。……種はまた今度で良いか。芋が収穫まで出来れば、その時に考えよう。……クレイグは何か買う物はあるのか?」


店に来たついでに何か買うかと思って声をかけたが、慌てた様子で首を振るクレイグ。


「あっ、もう、植える花の種は買っていますし、土も肥料も花壇の周りに敷く煉瓦も少しずつ買っていますし、今は買い足す物はありません。また何か必要になれば買いに来ます。」


「そうか?」


一応、庭の設備費として金は渡してある。


今は何もないような状態だから、一番金が必要な時だろう。


だけど追金を要求された事は今のとこない。


クレイグのレベルが低いからどうかと思っていたけど、あの硬い地盤を考えると進行状況は悪くない。


メイドの二人はまだあまり仕事を任せていないから未だ分からないが、それ以外の奴等は想像より出来る為、良い買い物となった。


ロデリックは調理スキルレベルⅡながら目利きが良く、ハズレ食材を掴まされる事がない。


何軒か店を回り、相場を定期的に勉強しているからぼったくられる事もない。


渡している金だけで遣り繰りし、超過する事がないのはロデリックも同じ。


アレックスとマイクに至っては、まだ買ってからそんなに経っていないのに、筋肉量が見るからに増えた。


毎日二人して鍛練しているのは索敵の上位スキル『遠視』で知っているが、些かやり過ぎじゃないだろうか?


負荷がかかり過ぎて身体を悪くしそうなものだけど、元々鍛えていた二人だからか、ケロリとしている。


……ある意味化け物かも知れない。


たまに二人の鍛練に、ロデリックが参加して簡単に転がされているのも見るけど、コックとして買ったのに、身体を鍛えたいんだろうか?


筋トレレベルならともかく、実践訓練のようにしか見えないんだよな。


……戦うコックになりたいのか?


俺はどちらでも良いけど。


クレイグは身体も大きいし一見強面だけど、雰囲気が柔らかい。


どちらかといえば“癒し系”。


──俺より歳上なんだけどな。


重装備でもすれば迫力がありそうだけど、花を愛でている方が雰囲気に合っている。




買った物を次々とマジックバッグへ入れていく。


土を大量に買ったのは、あの地盤には岩が多いから。


水捌けを良くする為に砂利は必要だけど、大きな岩は必要ない。


粉砕して砂利にするにしても、そんなに多くはいらない。


つまり、岩を退けると地面の位置が下がる。


それを埋める為に、沢山の土が必要。


クレイグが買いに来る時は、台車を持ってくるらしい。


……マジックバッグ(小)でも持たせていようか?


この世界では、マジックバッグ(小)でも持っている奴等は少ないようだけど。


奴隷に持たせていると露呈したら、煩くなるか?


──そうなったとしても、排除すれば良いだけだけど。


因みに、ソフィアとシスに持たせているマジックバッグは、マジックバッグ(中)。


マジックバッグ(特大)を持たせていても良いと思ったけど、そんなに入れる物がない為、(中)にしている。


二人のマジックバッグに入っている物は、(小)でも充分なくらいしか入っていない。


二人のマジックバッグに入れているのは、10数着程の服と下着、スプーンなどの専用食器、軽食にお菓子、お小遣い。


しかも俺と本人しか使えないように所有者権限を施しているから、落としても盗まれても平気。


暫くすれば、手元に戻ってくるようにしているからだ。


使用者特定だけだと、勝手に返ってくる事はない。


ある場所は特定出来るから、賊に持っていかせて、後で拠点を襲撃する時なんかには重宝するんだけど。




「おい、そこの兄ちゃん!俺を引き取れ!!俺はお買い得だぞ!」


マジックバッグに入れ終わって、出て来たついでにお菓子の材料の買い物でもしようかと話していた時、背後から声変わり前の高い声が聞こえた。


そこにいたのは、10才位の、襤褸(ボロ)を纏った狸人族の少年。


勝ち気そうな雰囲気でふんぞり返っているけど、ヤンチャの枠からはみ出しているように感じる。


つまり、ソフィアやシスとは違い、“スレた子供”って事だ。


ただのヤンチャくれなら、一考する可能性もあっただろうが──


「お前のような餓鬼は要らない。他所をあたれ。」


あいにく、加害者を護ろうとは思わない。


コイツはスリや盗みをするだけでなく、一人旅をしている旅人の不意をついて襲ったり、喧嘩した後の道端で倒れている冒険者から防具を奪ったりなど、正々堂々と喧嘩を売るならともかく、セコい真似ばかりしている。


子供だという事でそういう事をしなければ、大人相手に勝てないのは理解出来るが、コイツはそれを悪びれている様子がない。


何だったら、冒険者はチョロいと思っている位だ。


こんな将来ゴロツキになるしかなさそうな馬鹿、俺が引き取りたいと思う訳がない。




「何でだよ!?そこの黒猫族を引き取っておいて、何で俺は駄目なんだ!そんな奴、俺なら簡単に殺せる!俺を引き取らなかった事、後悔するんだな!!」


「……へぇ?俺の前で“ソフィアを殺す”だなんて良く言えたな?そんな事を言えば、俺に殺されるとは思い至らなかったのか?お前のようなクズ一匹、居なくなろうが困る奴なんていないだろう?」


相手が餓鬼だろうが、関係ない。


防げる火の粉は払っておくべき。


「餓鬼だから何を言っても平気だと思っていたか?“忌避されている子供を無償で引き取った善人なら、攻撃してくる事はない”とでも考えていたか?……甘かったな。俺は相手がクズなら、餓鬼だろうが女だろうが、容赦はしない。……一思いに殺さず、両腕を切り落としてやろう。両腕を失って、これからどうやってスラムで生きていくのか、楽しみだな?」


ほぼほぼスリで生活していたらしきコイツにとって、腕は特に必要。


病気もしていない健康体ですら生きていくのが大変なのに、部分欠損した奴がスラムで生きていく事自体、難しい。


訳有り奴隷として、安い金で買い叩かれる位しか道はない。


そうでなければ死ぬだけ。




「……っ!」


「おっと。……何、逃げているんだ?俺に喧嘩を売っておいて、逃げられると思っているのか?」


本能的に危険を察知したのか、慌てて逃走を謀ろうとしたが、魔法で拘束。


一方的に喧嘩を吹っ掛けておいて、危険だと分かるや逃げるなんて虫が良すぎる。


「腕を斬る前に、足を落とそうか?歩けなくなるから足だけは勘弁してやろうと思っていたが……考慮してやる必要はなかったな。」


「ひぃぃい──っ!!」


喉の奥から引き攣った声を発し、真っ青な顔で涙を流しながら震えている餓鬼。


異臭がしてきて見れば、汚物を垂れ流している。


(汚ねぇな。臭ぇ。)


──罪悪感?


微塵も感じていないが、何か?


きっとこの餓鬼を見る俺の目は、かなり冷めているんだろうな。


「殺される覚悟で“殺す”と言ったんだろう?それを両腕だけで勘弁してやると言っているんだ。……逃げないで有り難く思えよ。」


口角を上げて言ってやると、本格的に号泣しだした。


──今の俺、悪人ポジションじゃないか?


「ゆ、許して下さい!謝ります!謝りますから……っ!ヒッ……グス……に、二度と殺すなんて言いま゛せんがら、許じて下さい゛!!」


ブルブルと震えながら、嗚咽混じりに声を張り上げる餓鬼。


「ふーん……俺に泣き落としが通用するとでも?」


口角だけ更に上げて言ってやると、泡を吹いて気絶した。


(泣いたらあわよくば許して貰えると思っていたようだけど……それがバレていると分かったら気絶するなんて……)


他に策はなかったようだな。


(でも、これだけ脅しておけば、これから俺やソフィア達に関わろうとしないだろう。)


さっきまでは本当に両腕を切り落とすつもりでいたけど、気絶した相手にしたって意味がない。


拘束を解き、路地裏に転がす。


これから先の事は、俺には関係ない。


餓鬼の目が覚めるまで、見守ってやる義務はない。


奴隷商に捕まろうが、誰かに暴行されようが、俺の知った事ではない。


運が良ければ何もなく目覚め、帰る事が出来るだろう。


奴が垂れ流した汚物に清浄をかけて、その場を離れる。


(さてと……卵を買いに行くかな?)


そんな事より、お菓子の為の材料を買いに行く方が大切。

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