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子供の教育は難しい

ブックマーク登録、評価、ありがとうございます。


衛兵団と俺の間にアレックスが入った事により、侵入しようとした奴等二人を家に近付けさせない事で不問とする事にした。


ゲームと同じように、命のやり取りが簡単に行われる世界。


そのせいか、俺も簡単に他人の命を奪っている。


日本での感覚では罪悪感で眠れなくなったりしそうなものだが、現在そういった事はない。


──“ソフィア達を護る為”という口実がなくとも。


(傲慢にならないように、気を付けないとな。)


他の人達と比べると、俺の能力は桁違い。


一応、敵対行為をとった相手しか排除していないけど、力でゴリ押しした場面もあるし、特に俺のせいで収入が減っただろう闇ギルドの連中なんかは、俺を恨んでいるだろう。


……犯罪者集団を気に掛けてやる義理はないが。


闇ギルドと全面戦争をしてから帰って来た方が良かったか?


でも、シスをあの場に留めておきたくなかったし。


まだ何かされた訳でもないしな。


防衛の為に潰しても良かったけど、あの時はそんな時間はなかったし、そもそも闇ギルドはギルド内に人が集まる他のギルドとは違う。


つまり、ギルドだけ攻撃したって、ギルド員は散らばっているんだから意味がない。


闇ギルドの壊滅は、ゲームの時でも結構面倒臭かったんだよな。


……攻撃してくるようなら、“面倒”なんて言っていられないけど。


その場合は、徹底的に排除してやる。




(どうするかな?)


余計な来客のせいで、子供二人が怖がってしまった。


あまり家から出ていないし、簡単な薬草摘みでも教えようかと思っていたのに。


二人はまだジョブが決まっていないから、出来るだけ色々な事をさせたいのに。


将来の事を思えば、選択肢は多い方が良い。


クズばかりなこの世界では、子供一人で買い物に行かせられないし、現時点の二人で行かせても危険だ。


……まあ、今は俺から離れるのを怖がるから、出来るとしてももっと先の話だろうが。


まだ読み書きが完璧じゃないし、計算も勉強したばかり。


だけどずっと勉強するのも息が詰まるだろう。


本音を言えば、二人には思いっきり外で遊ばせたいんだけど、元スラムにいたソフィアに、隠れるように暮らしていたシスは、“遊ぶ”という事を知らないようで……


シスは両親が畑で収穫した物を選別する仕事を家の中で行っていたらしい。


それなのに何故クズ貴族に捕らえられていたかというと、熱を出して寝込んでいた時、家の中に並べられていた収穫物を誤って倒してしまい、両親へ謝りに外に出た事で、運悪くシスの存在が見つかってしまったらしい。


タイミングが少しでもズレていたら、捕まる事はなかったかも知れない。


(庭も広いし、畑でも作って世話をさせるか?)


庭師としてクレイグを買ったんだから、普段の世話は彼に任せるとして、雑草抜きや水やりなどをやらせてみるか?


(でもなぁ……二人共変に真面目だから、失敗して枯らしでもしたら罪悪感を抱きそうなんだよな……)


俺としては、畑を作ったとしても、自給自足をするつもりはないし、出来た作物を売るつもりもない。


枯らそうが、腐らせようが、普通に収穫出来ようが、どうでも良い事。


……でも、二人はそんな風に思わないだろう事は、想像に難くない。


もっと気軽に考えて欲しいんだけど、今までの環境がそれを許さないんだろう。


未だに食事中に溢したりすると、真っ青な顔で必死に謝ってくる位だし。


俺が食べさせる事が多い事もあるのか、ソフィアはだいぶマシになってきたけど、シスがな……


俺を怖がっているというより、俺に嫌われるのを怖がっている二人。


そんな簡単に嫌いになったりしないと言っても、心の何処かで信じきれていないのかも知れない。


“俺”という庇護者がいなくなれば、以前の生活に戻される可能性があると、本心では思っているのだろうか?


二人を保護すると名乗りをあげた者はいなかったし、シスを保護すると言ったのは、白狐族の能力目当てでしかなく、それが使えないと暴力を振るう奴等しかいなかった。


大人不信になっても可笑しくはない。




種族として得意だろうジョブは、ソフィアは斥候や射手、盗賊に暗殺者。


シスは薬師、白魔術師、占星術士、白狐族の能力を使うなら予言者。


今は二人共レベルが低いからステータスも低くて、まだ何か突出したものはないけど。


しかも、どちらも親に教わっていないから、別のジョブにつく事は可能。


ただ、レベルを上げると伸びやすいのが、ソフィアは俊敏性で、シスは魔力量になるだろう。


二人がどんなジョブを選ぼうと、俺は応援するだけ。


……今はまだ、その段階じゃないが。


今は人に慣れる事から始めないと、ジョブを決めるどころじゃない。


でも、精神的な事を治す魔法はない。


精神を落ち着かせる魔法はあるけど、二人にはそれをしたってあまり意味がない。


(やはりクレイグを巻き込んで畑の世話をさせるか?)


一緒に行動していれば、いずれ二人もクレイグと親しくなれるだろう。


親しくなる相手が増えれば、他の人へ過剰に怖がる事も減るかも知れない。




「畑を作って、何か育ててみるか?」


相変わらず俺の側にいる二人に声をかける。


「はたけ?」


「……二人で?」


キョトンとした顔のソフィアに、不安そうな顔のシス。


「俺は見てるだけだ。二人で世話をして貰う。初心者だから、庭師のクレイグに手伝って貰う事になるだろう。」


「おにいちゃん、いっしょちがう?ちかくでみてる?」


「……知らない人と一緒?」


不安そうな瞳が4つ、見上げてくる。


世の親はどうやって教育しているんだろう?


俺は駄目だ。


こんな目を向けられて突き放すのは無理。


二人の頭を撫でる。


「俺も側にいる。ただ、二人で世話をするだけだ。でも二人は畑の世話をした事がないだろう?クレイグは植物を育てるのが好きなようだから、どうやって世話をするのか教えて貰えば良い。」


この世界のジョブには、庭師も農家もある。


俺もそれらのジョブをとった事があるし、それ用のスキルもある。


だけど、実際に農業に手を出した訳ではないし、人に教えるとなれば専用の知識が必要。


俺が畑をやるならともかく、誰かに教える事は出来ない。


こういうところは不便だな。


「二人でやってみるか?」


「……頑張る。」

「…………ん。」


二人共、俺が言うから渋々やる事にしたって感じだな。


二人から俺が提案した事に対して、“嫌”と言った事がない。


そういうのもどうにかしたいんだけどな。




「ニア、裏庭にクレイグを呼んでくれ。」


現在クレイグに任せているのは、門がある正面の一部。


二人が使う事がある裏庭は、洗濯物を干しにメイドが行くくらい。


しかも、使う時は事前に知らせているから、鉢合わせをする事はない。


つまり、新たに家に来た奴隷達と顔を合わせる機会は、今のところなかった。


ニアの母親であるマリーへすらまだ少し怖がっているんだから、機会を作らなかったのは当然。


簡単に命のやり取りが行われる世界で、甘やかして育てるのはその相手の為にならないのは分かっているつもり。


ある程度突き放すのも優しさだと理解してはいるが、それを今の二人に強要出来ない。


──庇護者が俺しかいないのも一因だろう。


俺が突き放したら、この二人は頼る相手がいなくなる。


相手の為を思ってした事でも、今の二人にとって、それは悪手でしかない。


“俺に嫌われた”と認識する可能性が高いし、そうなれば心が壊れてしまう。


……難しい問題だ。


俺の寿命も分からないし、いつまでこの世界にいられるのかもまだ分からないのだから、早く自立して貰いたいんだけどな。


……感覚的に、もう日本へ戻れない気がするけど。


帰郷の思いも、両親や友人への思いも、日を増す毎に薄れていくのが分かる。


皆の顔も、どんどん思い出せなくなってきている。


どんな人だったかというのはまだ覚えているけど、虫食いのように記憶が欠如していっている。


既に友人達の名前は殆ど記憶から消えている。


“学校で騒いだ”“海へ行った”“旅行へ行った”など、断片的な記憶しかない。


…………俺は、日本で死んでこの世界に来たんだろうか?


普通なら、消えていく記憶に焦燥感を抱きそうなものなのに、特に何とも思わないのは、やはり異常だと思う。




「呼んで来ました。」


「あ、あの……僕、何かしましたか?」


ニアと共に来たクレイグの顔色は悪い。


買ってから直接顔を合わせる事もなかったし、呼び出す事もなかった。


正面にある庭を好きなように手入れしろと言ってあっただけ。


だからクレイグは、何か俺の癇に障る事をしたのではないかと不安になっているんだろう。


「畑を作る。手伝ってくれ。」


「……は、畑ですか?」


一瞬キョトンとした顔を見せるクレイグ。


黙って立っていたら強面にしか見えないのに、気弱過ぎる。


もっとも、そう思ったのは俺だけのようで、ソフィアとシスは俺の後ろに隠れている。


「畑の基本的な世話は、この二人に任せる。クレイグは、初心者のこの二人へ色々と教えてやってくれ。」


「は、はい!僕に出来る事なら。……初めてなら、簡単に成長する芋が良いと思うんですけど。」


「そうだな。」


この世界でも、芋は育てるのが簡単な分類になる。


初心者には適切な植物だろう。


「ほら二人共、まずは芋を育ててみるから、これから種芋を買いに行こうか。」


俺の後ろから、ピョコピョコと顔を出す二人。


動作や仕草が相変わらず可愛い。


……怖がっている二人からしたら、俺が微笑ましく思っているとは気付いていなさそうだけど。


「おにいちゃん、いっしょ?」


「俺も一緒だ。」


アレックスやマイクと一緒に行けば危険はないかも知れないが、まだ俺と離れるのに慣れていない二人には酷だろう。


「クレイグ、二人に他の植物の選び方や育てる時期などを教えてやってくれ。」


「は、はい!」


連れて行くのは二人の他にクレイグだけで良いだろう。


『我も行くぞ。』


その時、飛んできて頭に止まったのはソドム。


「街中を歩き回る訳じゃないぞ?」


『構わぬ。』


ソドムも暇だったんだろうか?


今度、狩りにでも誘うかな?


肉はギルドへ売っても良いし、ロデリックに渡しても良いし。




「御主人様、出掛けられるのですか?」


門へと向かうと、自主練習をしていたアレックスが声をかけてきた。


「ああ。館を頼む。」


「御意!」


歳が倍以上のおっさんに傅かれるのは変な気分だけど、俺に忠誠を誓うとか言ってきかないんだよな。


主と奴隷という関係だから、外から見ても変にとられる事はないだろうが。


いつもの面子+クレイグで外に出る。


グラニは庭で楽しそうに走っていたから、声を掛けずにそのまま出て来た。


もっと広い場所で思う存分走らせてやる機会を作らないとな。

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