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ウザい客に限って、此方の都合を気にしない

ブックマーク登録、ありがとうございます。


5人の怪我を治し、マイクにかかっていた呪いを解呪した。


6人共食事は質素な物を与えられていたようで、全員細い。


筋力が戻りきらなくて鍛練が必要な護衛の二人は、レベルが高い事もあって現時点でもそこそこ戦えるようだから、特に心配はないだろう。


だが、過剰とも思える程の感謝と忠誠を誓われ、戸惑いの方が大きい。


解呪はハニンソ皇国以外の国では殆ど解ける者がいないだろうから、マイクが感謝を意を向けてくるのは理解出来るけど、他の奴等もマイクと変わらない程感謝しているようだ。


だけど、騎士団長までしていたから他国の事も良く知っているだろうアレックスに訊いたところによると、俺がした治癒などの行為を行える司祭は、ハニンソ皇国にもいないとの事だった。


アレックスも腕を失ってから、治せる人を求めてハニンソ皇国まで行ったらしいが、部分欠損を再生回復出来る司祭や大司祭がいなかったらしく、無駄足だったらしい。


ハニンソ皇国のトップ、教皇でも無理だという話を聞いて、何もせず帰ってきたようだ。


この国に残る古い文献で、勇者がいた遠い昔、同じ時期に存在していた聖女が、部分欠損を再生する事が出来たと書かれているんだとか。


つまり、その聖女と同等の力を持つ者は、この世界にいないという事。


アレックスが他国の騎士団長だからという事で偽りを教えられた可能性も考えられるけど、その事が本当なら、やはりこの世界はスキル自体も劣っている事になる。


……それなのに、何故俺のレベルやスキルが有り得ない事になっているんだろう?


未だに解せない。


それに、『逆行』を聞いた事がないとも言っていた。


聖女の起こした奇跡でも、そんな記述はなかったと言っていたけど、それはそうだろう。


逆行は時空属性と聖属性の合成魔法。


聖属性しか使えないとされている聖女が使える魔法じゃない。


聖属性と他の属性も使える筈の大司祭なら使える可能性が高いけど……


俺みたいに、この世界に来た人はいないんだろうか?


隠れ住んでいたら発見出来ないけど、鑑定が弾かれたら……って感じだな。


弾かれなくてもレベルは見れるし。


レベルを見れば、この世界で生まれ育ったか分かる。


──今のところ、見掛けていないけど。




(人を雇うの、まだ早かったかな?)


俺が家を何日も空けないと、俺が在宅中は家の中に入るなと言っているメイド達の仕事がない。


彼等を住まわせている、使用人用の家だけを掃除させているだけだから、時間が余っているだろう。


コックのロデリックは買い物から自分でしているみたいで、護衛の二人は鍛練の為に荷物持ちで付いて行っている。


もう少し人が増えたら、仕込みの時間もあるし、買い出しは他の人に頼む事になるだろうってロデリックは言っていた。


一番大変そうなのは、広大な庭を一人で任せているクレイグ。


伸びていた草は『風刃』でカットし、邪魔だから燃やしたけど、今は数本の木があるだけの一面芝生のようになっているだけ。


花を植えたり、木を植えたりする為に、今は花壇造りをしているらしい。


メイドの二人は、クレイグを手伝っているようだけど……庭師は力のいる作業が多い。


あまり力のない二人には過酷だろう。


その二人の中に、マリーを含んでいない。


ソフィアとシスに、他人に慣れて貰う為に、今まで同様、家に居て貰っている。


一人ずつ慣らしていけば、恐怖はそこまで大きくないだろう。


元々素直な二人だ。


相手が信用出来ると思ったら、俺へベッタリという今の状況が改善されるだろう。


流石にこのままだと、自立を促すなんて夢のまた夢だからな。




────

──


数日が経った頃、マリーの存在に慣れた様子の二人。


だけど、俺にベッタリなのは変わらないまま。


まだ俺抜きでの留守番は難しそうだ。


精神的な問題は、やはり時間がかかる。


それはどんな世界でも同じという事だろう。


精神に働きかける魔法はあるものの、治すとなればリラックスさせる程度しか効き目がない。


魔法によって起こされた事象なら治すのも簡単だけど、二人はそうではない。


単純に心身共に攻撃され、疲弊している状態。


目に見える怪我が消えても、心に負った傷は簡単に消えたりしない。


暴言や暴力に対する恐怖は、一生消えなくても可笑しくはないのだから。


レベル上げをしていないから、二人共引き取った時のまま。


ソフィアがレベル1で、シスがレベル3。


これも、どうにかしないとな。


二人はある程度の文字は書けるようになってきているし、算数も教えている。


体力が戻ったら、軽い鍛練を始めようかと思っている。




「……またお前らか。」


アレックスから、不審者を捕らえたと報告があって、門まで来たが……以前不法侵入未遂を起こした二人がロープで縛られていた。


因みに、子供二人は俺の姿が見える範囲にいるが、危険がある可能性があるからと、少し距離を空けさせている。


元貴族嫡男のアルフレッドと、元ダレル子爵家護衛のサイラス。


前回はお咎め無しにしたが、罪人としてギルドにつき出した方が良かったな。


「二度目だ。前回は見逃したが、今回はそういう訳にはいかない。……前に言ったよな?次はない、と。」


「…………」

「…………」


前回の俺の言葉を覚えていたらしい。


だとしたら、どうして来たんだろう?


不審者ではなく、罪人になると解っているのに。


「ダンマリが通じると思っているのか?猶予は与えてやった。お前らは現時点で罪人だ。……アレックス、マイク、ギルドへ連れて行ってくれ。」


「ま、待ってくれ!」

「話があるんだ!」


「俺が聞く義務はない。」


何やら言い訳を口にしているが、俺が聞く必要はない。


言い訳を言える時にダンマリという選択をしたのはコイツらだ。


レベル的にも、護衛の二人に敵う訳もなく……為す術なく連行されていく。






「…………で?」


「で、ですから、此方と致しましても、そちらに引き取って頂く事が最も適切だと判断した次第でして……」


「それは、誰の判断だ?」


「そ、それはお答えする事は出来ません。」


ギルドへ連行した事で済んだ話だと思っていたのに、衛兵二人が俺の家へ来た。


どうやらあの二人は衛兵の詰所での事情聴取で、俺に雇われたいと言ったらしく、その為に館へ訪れただけだと訴えているようだ。


それを鵜呑みにした衛兵達に、連行していった二人も憤っている。


二人の表情から、ギルドではまともな対応をされたのだろう。


……衛兵はどの国も腐っているのか?


「俺は使用人の募集などしていないぞ?此方で雇えと言うなら、その二人の給金は誰が出すんだ?お前らが出すのか?お前らの上司が出すのか?それとも、国に申請するのか?」


募集している家なら“雇われに来た”と言っても可笑しくはないが、俺は何処にもそんな募集はかけていない。


そんな家へ押し掛けたところで、どうなるというのか。


「えっ!?新たに雇われた者がいるから、募集している筈と言っていたのに!」


衛兵の一人が驚きの声をあげる。


奴等、前回とは違って人が増えていると分かり、それらしい理由を口にしたのだろう。


「奴隷を6人買っただけだ。……それで?俺に余計な出費をさせるつもりか?国に訴えるような案件だよな。信用ならない奴等を使用人として雇えと、治安を護る筈の衛兵が言っているのだから。」


衛兵は貴族とも関わりがあるだろうから、知り合いの家に知り合いを紹介くらいはしているだろうけど、衛兵に俺の知り合いはいない。


奴等と親しい訳でもない。


つまり、完全なる押し売り。


それを理解出来たのだろう、衛兵二人は顔を真っ青にして震え出した。




「お前ら衛兵は、俺に喧嘩を売ったって事だな。俺へ手出し禁止だとこの国の王が至るところへ伝達している筈なんだがな……約束が果たされなかったって事か。城、ぶっ壊して来るかな?……その前に、衛兵の詰所を破壊するか。いらないだろう?こんな問題を起こすような奴等なんて。」


「へ、陛下がっ!?そんな……っ!……か、確認して参ります!」


「この件の判断は、団長ではないのです!衛兵の総意では御座いません!団長の判断を仰いで来ます!」


慌てた様子で去っていく二人。


(“総意じゃない”?家まで押し掛けて、奴等を雇えと言った時点で、衛兵達の総意ととられても可笑しくはないっての。)


頭のデキも悪いんだろうか?


よくもまあ、あんなので衛兵が務まるよな。


「御主人様、フォールの衛兵団長は、俺の顔を知っています。俺が対応しましょうか?」


苛々しているのを察してか、アレックスが声をかけてきた。


確かに、以前騎士団長をしていたアレックスの顔を、同じ国で衛兵団長をしていれば、顔を合わせる事は幾度となくあっただろう。


「子供達も心配そうな顔をしていますし……」


その言葉に振り向けば、流石に近寄ってはいないものの、不安そうな2つの顔と目が合った。


二人には怒った顔をあまり見せたくない。


せっかく懐いてくれているのに、怖がられたら泣きそうだ。


「それなら頼む。……何か言ってくるようなら、詰所は跡形もなく無くなると伝えてくれ。」


「御意!」


アレックスに後は任せ、俺はソフィアとシスの元へ。


「おにいちゃん、だいじょうぶ?」


「兄さん、また知らない人が来るの?」


「俺は大丈夫だ。また知らない奴が来るが、アレックスが対応する。……怖かったな?何があろうと、俺が護るからな。」


二人を抱き上げる。


こういう時、人間辞めているステータスで良かったと思う。


シスは12才という事で、俺に抱き上げられる事を普段は遠慮するんだけど、怖がっている時は無理矢理でも抱き上げる事にしている。


一応遠慮しているものの、やはり安心するのか、抱き上げるとホッとするのは分かっているからな。


「オヤツにしようか。今日はドーナツだ。」


「わーい!」


無邪気に喜ぶソフィア。


相変わらず可愛い子だ。


「兄さんの作るお菓子、僕大好き!」


キラキラな瞳のシスも可愛い。


二人共、甘いものが大好きなんだよな。


スラムに住んでいたソフィアは勿論、外出を控えさせられていたシスも、甘い物を口にする機会がなかったから、余計に衝撃が大きかったんだろう。


この二人には、いつまでも可愛いままでいて欲しいな。

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