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新たな使用人達

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奴隷商で買った奴隷は、借金奴隷から一人、欠損などの訳有り奴隷から五人の、取り敢えず計六人。


まずはこの人達に慣れて貰ってから、新たに雇うかどうかを決めようと思う。


初めから大勢雇っても、纏めるのが大変だからな。


リーダーになりそうな人を雇う事も考えたけど、主の俺ならともかく、見ず知らずの奴に命令されたって反発しか生まない。


奴隷ではないマリーをリーダーに据えようかとも思ったけど、どうせ性分じゃないと言って辞退するだろう。


病気を治して貰った恩返しとして、この家で働いているだけだから、と。


だから初めは纏め役を作らない事にした。


奴隷達はどうせ集団行動になる。


生活していく中で、リーダーになる者は勝手に現れる。


それを待てば良い。


全員訳有り奴隷なのは変わらないし、その分他人にも優しくできるだろう。


自暴自棄になっている奴もいるが、これから欠損などを治すし、何とかなるだろう。


俺達が乗ってきた馬車は、御者席を除いて定員九人。


だから全員を入れる事も可能だけど、知らない人達が近くにいるのを怖がる二人の為に、後ろに荷車を連結し、そこへ六人を乗せる。


グラニだけで大丈夫かと尋ねたが、これくらいなら平気だと返事され、他の馬を買う事を止めた。


現在、少し大きな軍馬程度の大きさになっているとはいえ、本来の力が弱くなる事はないらしい。


行きと変わらない速さで進んでいく。




家に着き、初めにする事はソフィア達に六人の名前を教える事。


誰が何をするのかも伝えないといけないし、何より欠損などを治さなければならない。


知らない人を怖がって俺にへばりつく二人の少し離れた場所に、六人を並べて立たせる。


──一人は呪いのせいで、立つ事が出来なくて、背凭れ有りで座っているが。


「彼がクレイグ。任せるのは庭師として。」


「……よ、よろしく、お願いしま、す……」


気弱そうな声が返ってくる。


クレイグは熊人族。


唯一の借金奴隷だ。


お人好しで、“友人と言えない程の知人”程度の他人の借金を背負わされて、奴隷に落ちた。


柔らかそうな茶髪に、優しげな淡い薄茶色の瞳。


だけど身体が大きい事も一因なのか、見た目は厳つく見える。


だけど子供は好きらしいから、きっとソフィア達に優しく接するだろう。


現在27才で、レベルは低めの17。


「彼はロデリック。彼は料理が趣味だったらしいから、コックだ。今は失明しているが、後で治す。」


「ぅへぇっ!?……す、すいやせん!ロデリックっす。料理は本当に趣味程度な腕前なんて、目が治るならこれから必死に精進しやす!」


失明を治すと言った事に驚いたようで、変な声を挙げたロデリックは元冒険者。


妻帯者だったものの、妻に浮気され、出ていかれた彼は、ギャンブルに嵌まる。


冒険者だから、ギャンブルに負けても依頼を受ければ良いだけ。


それなのに、魔物との戦い中に負傷し、失明した。


その為にギャンブルでの借金を返せる手立てを失くし、奴隷となった。


短い赤髪に、茶色の瞳の35才の人間。


彼は奴隷になったばかりのようで、怪我もまだ生々しい。


レベルはこの世界では一般兵士並みの25。


「彼女はノエル。メイドをやって貰う。」


「宜しくお願い致します。」


笑みを浮かべているが、明らかな作り笑顔。


元々愛玩用の奴隷だったようだけど、前の主人に虐待されていた。


身体中に切り傷や火傷痕があり、兎人族特有の長い耳は、右耳が途中で切られている。


フワフワな白色の癖毛は肩に届かない程の長さで、ルビーのような赤い瞳を持っている。


現在30才の彼女だが、若い時から奴隷になっていた為かレベルは8。


六人の中で、一番レベルが低い。


「彼女はレイチェル。彼女にもメイドをして貰う。」


「っ、よろしくお願い致します。」


顔を隠す素振りを見せているが、全然隠れていない。


彼女がそんな事をするのは、額から瞼の上、左側頭部にも大きな傷を負い、その部分は髪も生えていない事を隠したいのだろう。


商人の一人娘だった彼女は、親の事業失敗による破産で一家揃って奴隷落ちになった後、娼館送りとなって馬車で移動中、魔物に襲われて怪我を負いながらも一命をとりとめたものの、娼婦として働けなくなり、再び奴隷商の元へ戻る事となった。


まだ17才と若く、自分の変わり果てた容姿を受け入れられないのだろう。


金髪碧眼の、傷がなければそこそこ美人な顔を売りとして、それなりの娼婦になれた事だろうに。


普通に奴隷として売られるより、娼婦として売られた方が奴隷期間が短く済むからな。


商人の娘という事もあってか、レベルは12。




「彼はアレックス。今は腕がないが、レベルが高く、戦い慣れている彼には護衛を任せる。」


「……この俺を“護衛”にねぇ……」


呟きは無視。


彼はこの国の元騎士団長。


城にいた騎士団長の前に団長をやっていたらしい。


仕事中に部下を庇い、右腕、肘から先を失う。


片腕、しかも利き手を失った彼は思うように剣が振れなくなり、騎士を辞めた。


そこからは堕落する一方。


バトルジャンキーの気が強い彼にとって、剣を使えないのはストレスが強く、酒に逃げた。


元々部下達と飲み歩く事が多く、金を貯めるタイプでもなかった彼には、貯金は殆どなく、あっという間に借金まみれに。


仕事をしていない彼に、返金の宛などなく……


否、元部下達を頼れば何とかなったかも知れないが、騎士を辞めた手前頼らないと決めていた。


元騎士団長としての矜持らしいけど、元部下に返せる宛のない金を借りるより、奴隷になる事を選んだ。


筋肉は少し衰えているようだけど、腕が戻ればまた戦えるようになるだろう。


少し長めのショートな金髪に、焦茶色の瞳。


元騎士団長だけあって、レベルは55の45才の人間。


「彼はマイク。彼にも護衛をして貰う。」


「…………」


マイクから返事がないどころか、周りからも訝しげな目で見られる。


彼は一人で立っている事も出来ない位、弱りきっているからだろう。


背凭れに凭れさせて、やっと座る事が出来ている状態。


今のままだと、護衛どころか、自分の事すら満足に出来ないだろう。


「おにいちゃん、このおじさん、びょうき?」


5才のソフィアから見ると、33才は“おじさん”になるようだな。


痩せ細っているから、余計に老けて見えるし。


「これは、徐々に体力が奪われていく呪いだ。呪いのアーティファクトを触ったんだろう。……だけど、俺なら解呪出来る。他の奴等も、元に戻る。ソフィアが気にする事はないよ。」


「そうなの!?おにいちゃん、すごいねぇ!」


あー……純粋で無垢な目が眩しい。


マイクは言った通り、呪われていて寝たきり寸前。


今はガリガリ過ぎて年齢以上に老けてしか見えない。


髪も栄養がなくてパサパサしているから、本来の色ではない可能性が高い。


鑑定では、彼は銀狼族らしいけど。


元冒険者で、Bランクパーティーのリーダーだった彼は、レベル45。


しかも、彼が呪われたのはパーティーメンバーに裏切られた事によるもの。


呪法防止の魔法陣を描かれた布で何重にも厳重に包んでいた呪われたアーティファクトを運んでいる最中、他のメンバーが金欲しさにその布をマイクに無断で売った。


その布は依頼達成の為、保険の為にもマイクもお金を出して布を追加したのに。


何枚も使っているから、数枚減っても構わないと思ったんだろう。


リーダーとして運ぶ役目を担っていたマイクは、そんな事とは露知らず、休憩前のように手にとった。


そして──呪われた。


そんなマイクを見て、メンバー達は逃げ出し、運べなかった事で契約違反にもなり、多額の違約金が呪いで動けなくなったマイクの肩にかかった。


他のメンバーは未だに行方知れずらしい。


……見つけたら報復を受けさせよう。




「暫くは使用人用の家で、6人で暮らしてくれ。俺がいる間、この家には入るな。二人が慣れたら此方の家に入って貰う事になるかも知れないが、今はまだ良い。……先ずは重症のマイクから治癒する。解呪したところで、体力自体落ちているだろうから、暫くは安静だ。」


「……ぁ゛……ぃ……」


もう話す事も難しそうだ。


ギリギリだったな。


もう少し遅かったら、マイクは奴隷にもなれないとされて処分されていたかも知れない。


「『解呪ディスペル』『大回復ハイヒール』『清浄リフレッシュ』」


呪いを解いて、体力回復、寝たきり寸前という事で身体を拭く事もままならなかったようだから、清浄もかける。


──奴隷という身分上、他の人達も臭いが強いけど。


「取り敢えず、水でも飲め。」


「ありがと……ございぁす。」


さっきよりも声が出るようにはなったが……病み上がりと一目で分かる姿だ。


ガリガリになったのは、ハイヒールでは治せないし。


「……このままだと、護衛として働けるようになるまで時間がかかるか……そうだ。『逆行』。」


大量のMPが必要な上、見極めが面倒って事で、ゲームでは殆ど使った事がなかったけど、鑑定しながら出来るなら、今の彼らの状況が変えられる。


ただし、何年分も逆行出来る訳じゃない。


マイクは呪われてから一年半程度だった為、呪われる前と比べると少し痩せた位の体型まで戻った。


半年分なら、これから鍛練などですぐに取り戻せるだろう。


「これから鍛練をし、身体を戻していけ。もう立てるだろう?」


「…………っ、っありがとうござい゛まず!」


立つ事が出来た喜びに満ちていて、お礼の途中に泣き出した。


彼はもう死ぬのを待つだけだったからな。


奴隷商でも、近いうちに死ぬからと、かなり安い金額がつけられていた。




マイクの変化を見ていた他の殆どの皆は、期待を込めた目を向けてくるようになった。


だけど、全員に逆行は使えない。


「俺の『逆行』は一年前に戻る。重ね掛けも出来ない。ノエル、アレックス、二人には再生魔法をかける。ない物を生やす事になるから、細胞が活性化されて患部が痒くなるだろうが、我慢してジッとしていろ。」


ゲームで使えていた魔法やスキルを総て持っている俺でも、出来ない事はある。


そういうのは時間をかけて戻していくしかない。


ソフィアに対して逆行を掛けなかったのも、それが理由だ。


逆行を掛けたとしても、一年前もガリガリに痩せ細っていただろうから。


同じように、二人は一年前よりも以前に身体の一部を失った。


逆行を掛けたって意味がない。


日常的に虐待を受けていたノエルに至っては、逆行を掛けるともっと酷くなる可能性もある。


それなら掛けない方が良い。


そんな感じで、他の奴等も健康体に近付ける事が出来た。


後はよく食べ、よく寝て、身体を動かせばもっと健康になるだろう。

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