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人員確保へ


(人を雇うか。)


現在、使用人と呼べる者は、ニアとマリーしかいない。


普段なら俺も魔法で大抵の家事をするから全然構わないが、俺達が何処かへ出掛けるとなると、御者としてついてくるニアはともかく、マリーはこの家にたった一人で留守番になる。


一日二日なら良いが、何週間、何ヵ月と家を空けるような事がある場合、家事など手が回らなくて大変になるだろう。


部屋が多く広い為、一人でするなら掃除だけでも魔法を使わなければ一日仕事だろう。


それは流石に病気を治したとはいえ、可哀想だ。


使用人を雇うのは、通常、貴族の家。


だから使用人にはそれなりの教育が為されている事で、専門の知識のないマリーを、下に見る可能性がある。


そういう奴等は大抵、プライドだけは高く、傲慢な性格が多い。


俺のいないところで暴言を吐いたり、暴力を振るう可能性が高い。


黒猫族のソフィアなんて、主な陰口の対象になるだろう。


(……正規の使用人を雇うより、奴隷を買った方が良さそうだな。)


奴隷なら、俺に反抗は出来ない。


理不尽に奴隷にされた奴もいるだろうし、それを救うのも吝かではない。


ゲームでも何度か奴隷を買った事がある。


それは貴族ジョブの時が多かったけど、冒険者などでも買った事があった。


Sランクになって大きな家を買って、メイドを雇うのは、一種のステータスだと言われていたからだ。


……まあ、それでそのジョブでのゲームは終わりのようなものだったけど。




「ソフィア、シス、出掛けるぞ。ニア、御者よろしく。グラニ、今日も宜しくな?ソドムもついてくるだろう?」


俺が声をかけると、わたわたと近寄ってくる二人。


そんなに慌てなくても、置いていったりしないのに。


ニアとグラニは馬車を門前につける為に、先に部屋から出ていく。


『何処へ行く?』


「雇う人を買いに、奴隷商へ。」


飛んできたソドムは、俺の頭の上に停まる。


ずっと飛んでいても疲れる事はあまりない筈だけど、俺の頭の上が気に入っているのか、乗っている時間が長い。


『奴隷を雇うのか?』


「そうだよ。色々と便利だしね。」


正規の使用人を雇うとなれば、生家との繋がりとか持ち出されたら鬱陶しいし、俺の情報が国に筒抜けになるのも嫌だ。


それを考えたら、奴隷を買う方が何倍もマシ。


“雇い主を裏切らない”とか、“嘘をつかない”とか、色々設定出来た筈だし。


……不利益をもたらす奴隷はいるけど、そんなのは初めから買わなければ良いだけ。


ゲームでは、わざと失敗した風を装って罰則ギリギリを狙う奴隷もいた。


政敵の家にスパイとして潜入する使用人や奴隷は、貴族ジョブの時は定番だった。




「どれい?」


「ああ。俺達が出掛けると、この家にはマリー一人になるだろう?家の事を一人でするのは大変だし、誰も侵入出来ないとはいえ、外に出た瞬間に襲われないとも限らない。だから護衛になるような人も雇わないとな。」


……あれ?


良く考えたら、かなりの人数を雇う事にならないか?


庭師に、使用人達用のコックに、掃除や洗濯が主なメイド達……使用人を纏められるような人も欲しいな。


それにプラスして、護衛になるような人達。


……全員で何人になるんだ?


一気に人が増えたら、ソフィアとシスが怖がるか?


「ソフィア、シス、この家に出入りする人が増えても大丈夫?」


ソフィアはだいぶ怖がらなくなってきたけど、完全に怖がらないって訳ではない。


シスは共に捕らえられていたニアには怖がる様子がないけど、未だにマリーにも警戒している素振りを見せる。


……人を増やすの、難しいか?


「ソフィア、へいき。おにいちゃんがきめたこと、ソフィアまもる。」


「…………」


俺が決めた事に従うと言うソフィアに、顔色を悪くして震えるだけのシス。


「やっぱり、それはまだ早いか。使用人用の建物に住んで貰って、俺達の前に現れないなら平気?」


俺がいる場合、暫くは掃除などの仕事は免除でも良いか。


俺達がいない時に働いてくれれば、それで良い。


庭に行く時は通達していれば良いし、普段は使用人用の建物に居てくれれば。


この家に普通に出入りするようになるまで、日にちがかかりそうだな。


「ソフィア、それでへいき。」


「うん。」


やっぱり、まだ知らない人といるのは無理みたいだ。


二人とも、暴力を振るわれていた事が深く関係しているんだろう。


何故何もしていない子供へ手をあげるんだろう?


理由を聞いても納得出来ない事ばかり。




「これから人が沢山いる所へ行くけど、それは大丈夫?」


「おにいちゃんといっしょだから、へいき。」


「……僕も、兄さんが一緒だったら、大丈夫。……多分。」


ニッコリと笑顔で答えるソフィアと、自信無さげなシス。


シスとはまだ数回しか外出していないんだよな。


引き取ってから買い物くらいしかしていないし、すぐに家に帰っていた。


まだ人自体を怖がるから、あまり遠出が出来ないし、手を離すなんてもっての他。


外で俺と繋ぐ手はいつも、緊張で汗をかいているのに冷たいまま。


……家の中だと温かいんだけどな。


俺の事は“兄さん”と呼んでくれるようになったし、ソフィアとも仲良くしている。


つまりまだ、家の中しか安心出来る場所がないって事だ。


ソフィアと同じく、俺から離れないし。


……これから先、また子供を保護する事になったらどうしよう?


俺の両手は塞がっているし、抱きつかせる位しかないぞ?


でも、流石にそれは動き辛いし、無理がある。


大人なら仕事を与える事も出来るんだけど、子供を働かせるとか有り得ないし。


…………その時に考えるか。




ゲームでの事を思い出し、簡単な地図を書いてニアに渡してある。


地図に書き込んだ店は、ゲーム中、どのジョブの時でも潰れなかった店のみ。


つまり、優良店って事だ。


頻繁に変わっている店や、悪徳商人の店なんかは除外している。


そんな店、覚えてさせても仕方がない。


他の店はスルーするように言ってある。


悪徳商人をどうにかするのは、騎士や国の仕事だし、俺が手を貸してやる必要はない。


将来の為に関わらせるのも考えたけど、ニアを護る為に結局俺が出張る事になるだろうから止めた。




「ご主人様、着きました。」


馬車が停まり、御者席からニアの声が聞こえた。


着いた先はフォールにある奴隷商人の店。


アーバンの方が規模が大きい所も多いが、わざわざ遠出する必要もないからな。


ソフィアを抱き上げ、シスと手を繋いだまま馬車を降りる。


グラニとニアは馬車置き場で待機。


ソドムはついてくると言って、俺の頭の上。


本当ならソフィアとシスのような子供を連れて来たい場所じゃないけど、離れると不安になるようだから仕方ない。


不安にさせない方が優先度が高い。


店の中に入ると、応接間みたいな雰囲気だった。


奴隷達は別の部屋にいるんだろう。


「いらっしゃいませ。」


応対する奴隷商人の中年男は、営業スマイルに程遠い厭らしい表情をしている。


鑑定すると、コイツは雇われらしい。


「奴隷の売却ですか?黒猫族は需要がほぼない為、低い売却額になりますが、白狐族は能力があれば高値がつきますよ!………それとも、そのドラゴンでしょうか?」


ヒュッ──


「……っっ!?」


「これ以上ふざけた事を言うと、その首、胴と離れる事になるぞ?」


男の首にピタッと宛てられたのは──俺の足。


両手が塞がっているんだから、足しかない。


魔法で寸止めは面倒だし、仕方がない。


目を白黒させている男は、俺の足が首に宛てられるまで見えなかったんだろう。


「ひ、ひぃぃぃ……っ!」


腰を抜かして後退る男。


「今すぐ上の奴を呼んでこい。お前は二度と視界に入るな。目障りだ。」


「ひぇぇ……!!った、ただいま!」


慌てふためいて逃げるように去っていく。




少しして現れた壮年の男は、俺の顔を見るなり頭を下げた。


「お客様、この度はウチの者が、大変申し訳御座いませんでした。今後この様な事が二度とないよう、教育を徹底致します。」


俺の事を知っていたか、一目見てソフィアとシス、ソドムを売るつもりは微塵もないと気付いたか……その両方か。


「アレはもう俺の前に出すな。不愉快だ。店に出すなら、教育を徹底してから出すべきだったな。次あの顔を此処で見たら、この部屋の掃除が大変になるだろう。」


「……返す言葉も御座いません。」


苦笑を浮かべる男。


良く見れば汗の量が半端ない。


……これは俺の話を何処かで聞いているな。


城で色々やったからな。


奴隷商は貴族と繋がりが深い。


だから、それらを耳にしていても可笑しくはない。


「此処に来たのは、住み込みの使用人の人員として、奴隷を買いに来たんだ。見せてくれ。」


「それでしたら、借金奴隷を御見せ致しますね。それなりの人数がいますので、数人ずつ呼びましょうか?」


「そうだな。それで頼む。」


一人ずつ呼ぶのも良いが、それだと時間がかかりそうだ。


子供二人とドラゴンが退屈しそうだし。




次々と部屋に連れて来られる奴隷達。


一通り鑑定で見て、雇う人員を思案する。


(どうするか……護衛として雇う相手はレベルの高いのが良いんだけど、あの中にはいなかったな。でも、犯罪奴隷を雇うのは流石に抵抗がある。)


子供がいるのに、罪人を家に入れたくない。


犯罪奴隷は、総じて気性の荒い奴等ばかりだからだ。


後は……


「他の犯罪奴隷以外の奴等を見せてくれ。部位欠損や病気の奴等も。」


「はい。ただいま。」


部位欠損や病気の奴隷を連れてくるのは、他の奴隷と比べて時間がかかる。


連れてくるのも一人ずつとなった。


それは構わないが──


(皆、目が死んでいるな。)


借金奴隷の中にも目が死んでいるのが何人かいたが、此処まで見る者総てという事はなかったのに。


レベルがそこそこの奴もいるし、護衛はこの中から選べば良いだろう。


部位欠損や病気、呪いなど、俺なら治せるのだから。

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