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新たな養い子

更新遅くなりました(・д・`;)


ブックマーク登録、有難うございますヽ(*>∇<)ノ


やっと起動した(顔色は真っ青を軽く通り越して土気色っぽくなっている)シュバルツに、奴隷にされていた二人を引き合わせた。


どうやら奴隷を買う事自体は罪じゃないけど、借金奴隷であっても雇い主が暴力を振るうのは処罰対象となるらしい。


借金奴隷はつまり、借金を返せなくて奴隷におちた者達で、“働いて返す”期間を奴隷として過ごすというだけで、暴力を振るって良い相手ではないとの事。


これはゲームの設定通りだ。


拐って奴隷にするのは犯罪そのもので、普通は悪徳奴隷商人がとる手口なのに、貴族でありながらそれを指示したなんて。


シスはまだ子供なのに誘拐されて、しかも奴等はその時に抵抗した両親を殺したようだ。


だからこそシスは心が病んでしまったんだろう。


そんな二人を保護したって事は、ベケット男爵家は犯罪をおかしていた証拠にもなる。


事情聴取の為、二人はこれから自警団(他国でいう騎士団のような所)へ行く事になるらしく、迎えが来るまで待機となった。


傷だらけの二人の治癒をしようかと思ったけど、この傷は暴力を受けていた証拠にもなる。


今治癒するのは、二人にとって不利にならないとも限らない。


光のない瞳でボンヤリしているシス。


救われたと喜ぶニアとはかなり様子が違う。


ニアは暴力を受けていた事により、奴隷期間が短縮されるだろう。


だけどシスは解放されても、両親は既に殺されている。


まだ子供のシスにとって、一人で生きていくのは厳しいだろう。


しかも、シスは狐人族の間に生まれた先祖返りの白狐族らしいから、狐人族で引き取り手を見つけるのは至難。


連れていく兵士が帰った後すぐ、稀少種族だからと売ろうとする可能性が高いからだ。


実子でも先祖返りはもて余す為、売る親が多いのはゲームの設定通りだろう。


つまり、シスを安心して預けられる相手がいない。


詳細鑑定によると、シスの両親は、周りから隠すようにシスを育てていたようだけど……ベケット男爵家の連中に見つかったのは不運な偶然だったらしい。




「シス、これからも生きたいなら、俺が引き取ってもいい。これから先、シスの身は俺が何があろうとも護ってやる。……選べ。生きたいと願うなら、聴取が終わり次第迎えに来る。反対にもう死にたいと思うなら、苦しまなくて良いように一思いに殺してやる。」


「…………」


光のない瞳が俺を捉える。


だけど、何も言わないまま。


……それもそうだろう。


初対面の奴相手に、散々酷い目にあってきたシスが、俺を簡単に信用する筈がない。


だけど、それを待ってやれる程、この世界は甘くない。


俺が引き取らなければ、シスは聴取が終わり次第解放されるだけ。


良くて狐人族の集落へ案内する程度だろう。


元々いた集落に帰れる可能性は高くないだろうし、親に隠すように育てられた事からも、他の者達が信用ならなかったという証でもある。


つまり、奴隷になるか、その前に自害するかの二択の未来でほぼほぼ確定だろう。


「今すぐ俺を信用しろとは言わない。だけど俺は、シスに対して暴力を振るわないし、売り払ったり奴隷扱いもしないと誓う。……迎えに来る迄に考えておけ。俺はただ、もう一つの道を示唆しているに過ぎない。選ぶのはシスだ。強制はしない。」


生気の感じられない目で見ているだけのシスから視線を外す。


これからの事を決めるのはシス自身なのだから。


シュバルツが通信機で兵士を呼んでいるから、直に誰かが迎えに来るのだろう。


それまで待機になるだろうが、それくらいなら待てる。




本来なら、手を下した俺も聴取に応じなければならないのだろう。


だけど全てを見ていた人がいるし、何より昨日、ベケット男爵家を消すとシュバルツに伝えてある。


改めて俺が話す事はない。


暫く待っていると、十数人が現れた。


シュバルツと同じような制服を着た人もいれば、違う人もいる。


彼等は自警団なんだろう。


国境兵団から話を聞いていたのか、俺達へ視線を向けるものの、話し掛けてこない。


奴隷だった二人を連れて行くだけ。


国境へ向かっていない事から、自警団の詰所へ行くようだ。


護るように囲われた状態で歩いていく二人。


……と、少し歩いた所でシスが歩みを止めた。


「どうした?」


隣にいた兵士に声を掛けられたのに、シスが振り返って視線を向けたのは……俺だった。


「……さっき言ってた事、本当?」


「ああ。」


それは間違いない為、即答。


「……本当に、ホント?」


「ああ。俺が引き取るなら、“弟”として大事にする。死にたいと願うなら殺してやる。……どちらにせよ、シスがこれ以上我慢する事はない。耐える必要もない。」


もしシスが死を望んだとしても、それはそれで仕方がない。


生きている方が辛いと思うなら、無理をさせるのはシスにとって負担にしかならない。




「……僕、何も出来ないよ?」


……あれ?


どうやら俺に引き取られるのは、嫌じゃなさそうだな。


「俺がそんな事を気にする訳がないだろう?俺の庇護があるからと、好き勝手するような馬鹿じゃなければそれで良い。」


俺の家族になったからと、好き放題を許す訳じゃない。


勿論、甘やかすのは確定だけど、嫌な奴にはなって欲しくない。


「俺の弟として、ソフィアの兄として、元気でいればいい。」


勉強も教えるつもりだし、戦い方も教えるつもりだけど、ある程度出来たらそれで良い。


俺がいつまでこの世界にいられるのか分からないんだから、何も覚えない状態だったら、困るのはソフィア達だ。


ずっとこの世界に留まるとしても、俺が先に死ぬ可能性もある。


だからこそ教えようと思っているだけ。


「……何も出来なくても、怒らない?僕、白狐族の能力なんて使えないよ?」


やはり、それが強引に奴隷にされた理由か。


狐人族の間に生まれた先祖返りなのだから、力の使い方なんて教わる事などないだろうに……


白狐族の固有能力は“先見”だが、力の使い方を知る為には白狐族に教わる以外にない。


「俺にとっては、必要のない能力だ。……でも、シスが覚えたいというなら、その機会を設ける事もやぶさかではないけどな。」


俺が利用する為ではなく、シスの将来に必要かも知れないし。


「……何も出来なくても、いいの?僕、字も書けないよ?」


「それくらい、いくらでも教えてやる。」


ソフィアも今、名前を書けるように勉強中だ。


「それでも信用出来ないなら……『転移』。」


シスを俺の前に転移させる。


「ソフィア、少しだけ降りててくれるか?……大丈夫。怖がらなくて良い。ローブを掴むな。……ほら、中においで。」


ソフィアを下ろすと、途端に不安そうな顔をするから頭を撫でた。


──ら、それでも不安なようで、ローブを必死な様子で掴んでくる。


そのあまりにもな怖がり様に、ローブの中へと招き入れた。


(そういえば、ソフィアを保護してから、一人で歩かせてないな。……それで怖がったのか?)


未だに宿の部屋の中でも、俺が視界に入っていないと駄目みたいだし。


まだ日が浅いから、暴行を受けてきた恐怖が消えていないのは理解出来るけど……懐かれたって思えば嬉しいな。




「シス、これを預かっていてくれ。必ず迎えに来る。これはその証だ。」


シスへ、魔道具のネックレスを着ける。


これはソフィアにもさせている、色々な結界を張る魔道具。


所有者権限も施しているから、俺以外の者に外す事は出来ない。


しかも、俺に居場所を教えるから、違う場所に移動しても分かるようになっている。


(シスが奴隷用の魔道具を着けていなかったから、良かったな。)


正式な奴隷じゃないから、高い金を出して隷属の首輪を買うのを惜しんだんだろうか?


シスは暴力に屈しただけのようだし。


相手が子供だからと、首輪を買う必要がないと断じたんだろうか?


もし着けていたら、俺の魔道具を着けた途端、“対象を攻撃した”とみなされる首輪は外れる事になっただろうけど、無理矢理首輪を外すと、何やら罰則が発生する物もあったからな。


ゲームでは、無理矢理首輪を外すと、首輪をされていた者が死ぬ呪いを掛けられていた物もあったし。


「これは俺にしか外せない。何処に行こうとも、どれだけ離れようとも、俺に居場所を教える物だ。」


それ以外が本命の魔道具だけど。


「何かあったら、石を握って叫べ。」


それだけ耳打ちし、自警団達の方へと送り出す。


──馬鹿な事を考えない役人は、ゼロではないだろうから。




────

──


アヴェニューで商品を見ていた時、キン──と甲高い音が頭に響いた。


“助けて!”


その後直ぐに聞こえた声に、直ぐ様探知をかける。


シスがいる場所は、自警団詰所。


そこで聴取をとると言っていたのだから、可笑しくはない。


だけど、初対面の俺へ助けを求める何かが起きたという事だ。


抱えて連れてきた事で少しふらついているシュバルツの腕を掴み、シスのいる場所へと転移する。


すると──




「何をしている?」


自ずと声のトーンが下がるのは、仕方ない事だろう。


部屋の隅にうずくまるシスの前に、剣を振り上げている男がいるのだから。


「なっ!?何処から入って来た!?」


そんな光景を笑いながら見ていたもう一人の男が、慌てた様子で立ち上がった。


剣の柄に手をかけているけれど、抜かせはしない。


「保護された子供相手に、自警団が何をしているのかと聞いている!」


声に魔力を乗せ、威圧する。


(……失敗した。)


コクミック王国で、“王の覇気”を持っている国王や、人類最強と謳われているカルロスでさえ俺の威圧に負け、顔色を悪くしていた。


それを自警団の下っ端らしき奴等が耐えられる訳がない。


糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。


シュバルツには移動の為に様々な防壁をかけていたから何ともないようだけど。


……転移酔いをしているようだけど、少し休めば治るだろう。


そんな事よりも──


「シス。」


未だに踞っているシスの方が気がかりだ。


シュバルツの腕から手を離し、シスへと近付く。


ネックレスに付いている石を掴んだまま、動こうとしないシス。


たぶんまだ、俺が来た事も分かっていないのだろう。


「もう大丈夫。これからはシスは俺が護る。誰にも傷付けさせないと約束する。」


空いている方の腕で抱き上げると、漸く俺に気付いたようだ。


ポロポロと涙が溢れていくまま、俺を見上げている。


「憂いは全て、俺が払う。……シスに未来を選ばせる選択肢を残してやりたかったけど、この残酷な世界に放り出せない。現時点から、シスは『俺の弟』だ。」


「うぁぁ゛あ゛──」


声をあげて泣き出したシス。


こんな子供に剣を向けるなんて、何を考えていたやら。


「団長に話を伺ってきます。」


シュバルツが慌てた様子で奥へと向かっていく。


──その団長とやらがどんな言い訳をしたって、許しはしないが。




シスが泣き止んだ頃、漸く二人の中年男を連れたシュバルツが戻ってきた。


遅かったのは、俺の威圧で気絶した二人を起こしていたからだろう。


二人共頬に叩かれた痕が残っている。


「彼等は、自警団の団長と副団長です。」


「私が団長の──」

「お前らの名乗りはいらない。保護された子供へ暴力を振るった事、どう責任をとるつもりだ?」


自己紹介を遮り、言葉を発する。


コイツらの名前なんて知ったところで、何になるというんだ?


それに鑑定のお陰で、名前は既に分かっている。


「……礼儀知らずな小童が……」


不快そうに歪む顔を向けてくるが、そんな事はどうでも良い。


「これは責任問題だぞ?まずはシスに謝罪しろ。」


自警団は謂わば、民を護る組織だ。


それなのに剣を向けるなんて、あり得ない。


「聴取をとると言うから、お前らにシスを預けただけだ。それなのに斬りかかろうとするなんて、どういう事だと聞いている。」


預けた時、俺が迎えに行く事も言ってあった。


それでもこんな問題を起こすなんて、何を考えている?




「私達が謝罪?……ハッ!ふざけた事を。白狐族として生まれたなら、この国の為に働くのが義務だ。それを断ろうというのだから、排除されて当然だろう?」


(あ、コイツは駄目だな。)


シスがベケット男爵家でどんな扱いを受けてきたか、立場上知っている筈なのに。


シス自身、白狐族固有スキルを使えなかったからこそ、暴力を受けていたと言っていたのだから。


「シスは狐人族から生まれた先祖返りだ。それ故白狐族固有スキルは教われない為に使えない。その事は既に聞いている筈だ。お前の言い分は通らない。」


シスのステータスには、スキルの横に“条件を満たしていない為、使用出来ません”と書かれている。


つまり、今のままだと使える可能性はゼロ。


そんな状態なのに、“国の為に使わないから排除する”?


ふざけるのも大概にしろっての。


「排除すべきはシスではなく、お前らだ。シスに手を出した事、生涯後悔しろ。」


一瞬で殺す?


──そんな簡単に死なせてやるものか。


ずっと後悔しながら生きていれば良い。


「ソドム、二人を頼んだ。」


『任せておけ。』


抱き上げていた二人を下ろし、ソドムに託す。


二人を任せられるのは、ソドム以外にいないのだから。


シュバルツでは弱過ぎるし。


火焔の魔剣を抜き、構え──


一瞬で終わらせて鞘に戻す。


一拍遅れて騒ぎだす二人。


……かなり煩い。


奴等二人へは、手首と肘の間を斬ったから、これから剣を握る事も出来なくなっただろう。


切り落とされた手は床に転がっている。


騒いでいる暇があるなら、冷凍処理でも施せば良いのに。


あれだと後々くっつける事が出来なくなるだろうに。


部位欠損を修復出来る人、この世界にもいるんだろうか?


ゲームではプレイヤーしか出来なかった筈。


俺以外にもプレイヤーは存在するんだろうか?


大司祭とかじゃないと使えないスキルだから、皇国にいるとか?


──会うつもりもないから、どうでも良いけど。




「お前らは終わりだ。保護すべき子供に危害を加えた事、これからずっと後悔しながら生きろ。……実行したコイツらは、既に事切れているようだから、もういいか。……ニア、此処に。」


至近距離での威圧に、シスに攻撃しようとしていた二人は、レベル的に耐えられなかったようだ。


意識を失っているだけかと思ったのに……


もう一人保護された筈の奴隷の男を呼ぶと、彼も此処へ来てから暴力を受けていたようで、真新しい殴打痕が顔にあった。


彼にはシスのように魔道具を渡していなかったから、まともに殴られたのだろう。


この部屋と離れた場所にいたのか、気を失っているだけだった。


隷属の首輪も、威圧を和らげる一因になったのかも知れないが。


起こすと簡単に起きた事から、やはり首輪が何らかの作用を齎したのだろう。


死んでなかったのだから良しとしよう。


「……あれ?貴方はあの時の……」


周りへ視線を向け、俺がいる事に気付いたようだ。


そして、転がっている手を発見し、短い悲鳴をあげた。


傷口を火で炙った状態になっているから、血は出ていないんだけどな。


「ニアの方も、不当な扱いを受けていたようだな。……この国を離れる事を気にしないのであれば、俺が引き取っても良いぞ?他に誰も雇っていないから、初めは仕事が多くて大変だろうが……その分、給金を上乗せしても良いしな。好きに選べ。」


掃除は魔法で済むし、料理も三人分(二人と一体?)だったから、作るのに苦痛じゃなかった。


結界があるから、訪問者に時間をとられる事もなかったし、執事を雇う意味がなかったからな。


貴族じゃないんだから、一日のスケジュールを組まなくても良いし……あれ?ニアの仕事、なくないか?


…………まあいいか。


「出来ればお願いしたいです。……もう、暴力を受けるのは御免ですから。」


「そうか。」


自警団は何を考えて二人に暴行したのか……


ベケット男爵家かその関係者から、何かしらの優遇を受けていたのだろうか?


だが、自警団は信用ならない事が分かった。


二度と何も託さないだろう。

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