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街へ行きます


ザザンの森は、浅い所は初心者向けの弱い獣や魔獣が現れる。


だけど、現在俺のいる場所はあまり陽の光が届かない森の深い所。


つまり、出現するのは大物が多い。


(出現する魔獣は、ゲームと同じなんだろうか?)


国などの名称はゲームと同じだけど、ステータスからしておかしいし、魔獣もゲームより強くなっていてもおかしくない。


どうして俺がゲームの世界(それとも、似た世界?)に来る事になったのか分からないけれど、日本にいた時より遥かに命のやり取りが多いだろうから、気を引き締めなければ……!


死に戻りが出来るかも分からないし、死んで日本に戻れるのかも分からない。


つまり、死は避けるべき案件。


何としても生き延びるつもりだ。


こんな、訳の分からないまま死んで堪るか!


あいにく、スキルは何でもあるし、武具も性能の高い物があるし、気を抜かなければ何とかなるだろう。


──このステータスが無意味なものでなければ。




────

──


(どういう事だ?……やっぱり、ゲームとは違うって事か?)


マップ上に表示されていた赤いマークに近付いて行くと、魔獣らしき姿が目視出来るようになった。


索敵と鑑定スキルがあるからか、まだ戦闘になっていないのに相手の名前、HPバー、レベルまで表示されている。


今のところ背中しか見えていないけど、見た事のない相手なのに、名前は良く知っている。


(ゲームでは、バジリスクはドラゴンの亜種だった筈。レベルも最低50だったし、体表は濃い赤色だったのに……)


見えているのは黒っぽい茶色。


ドラゴンというより、爬虫類にしか見えない。


……あれだ。


イグアナを大きくした姿にそっくり。


しかも、レベルが30しかない。


もしかして、バジリスクの幼体?


……でも、そんなの聞いた事がない。




(討ってみれば分かるか。)


ゲームより弱いなら、イージーに事を進められる。


火焔の魔剣を手に、一気に駆けていく。


思った以上に早く到着した俺は、何故か此方に気付かないままの横たわるその大きな体目掛けて剣を突き刺す。


(え……?)


刺しただけでまだ何もしていないのに、バジリスクのHPバーが一気に真っ黒になった。


つまりそれは、死んだって事だ。


(何があったんだ?)


確か、ログ履歴が見れた筈。


そう思った時──




‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


──発動スキル『隠密』─気配遮断─対象の魔素マナ感知無効

バジリスクへ攻撃をしました。

──発動スキル『即死攻撃』─一撃必殺─対象の防御力無効・体力無視

バジリスクをたおしました。


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡




半透明の画面が、目の前に現れた。


「……へ?」


それを見て、無意識に呆然とした声が出る。


知らないうちにスキルを発動していたなんて……


隠密は暗殺者の時のスキルだし、即死攻撃は魔王の時のスキルだった筈。


でも隠密はともかく、即死攻撃は無条件に使えるものでもなかったし、使おうと思っていなかったのに発動するなんて、やっぱりゲームとはかなり違う。


自動的に的確なスキルが発動するなら、簡単に討伐する事が出来るだろうけど……これって無敵過ぎやしないか?


…………まあ、死ぬ可能性が低いって事は、喜ばしい事ではあるけど。




(取り敢えず、討伐済みのバジリスクはインベントリ……には入らなかった筈だから、マジックバッグに入れておくか。)


インベントリに入るのは、武具やポーション、素材などだけで、死体は入れられない。


マジックバッグは容量の決まった鞄で、それらは通常、課金によって手に入る。


イベントの成功報酬だったり、稀にダンジョンボスを倒した時のドロップ品だったりするが、それらは容量が少ないからな。


良くてマジックバッグ(中)が入手出来る程度。


俺が持っているのは、課金で手に入れたマジックバッグ(特大)。


……なるべくジョブを変える度に買うようにしていたから、所持数があり得ない事になっているけど。


……もしかして、マジックバッグ(特大)を売った方が、何も気にせず暮らせるんじゃないだろうか?


…………いや、それだと悪徳商人や盗賊などに目を付けられ易くなるか。


やっぱり、地道に冒険者として働くのが一番かな?




マップ上に表示されている赤いマークの所へ向かっていく。


(バジリスクがレベル30だったって事は、他の魔獣のレベルも違うのかな?)


ゲームとの違いがある事が不思議だと思ったけど、そもそもがゲームの世界に来ている現状からして可笑しいのだから、それほど不思議ではないか。


(……レッドボアか。レベル20……ゲームより魔獣は全体的に弱いのか?)


ゲームではレベル30以上の魔獣だった。


猪に似たブルーボアの上位種って事で、体も二回り位大きいし、それなりに強い魔獣とされていた筈。


村民などでは討伐出来ず、レッドボア討伐の依頼はそこそこのレベルの冒険者が受けていた。


でもレベル20なら、そこまで強い冒険者を雇わなくても討伐出来るんじゃないか?


腕に自信のある奴がいるなら、村の中で片付けてしまうだろう。


……冒険者に仕事ってあるのか?


最上位にでもならないと、重宝されないとか……?


……やはり冒険者ギルドへ向かわないと、何とも言えないな。




(レッドボアは肉も買い取ってくれるんだったな。)


それだと首チョンパが一番か?


(相手が攻撃体勢に入る前に、先制攻撃だ!)


駆けていき、剣を振るう。


呆気なく飛んだ首は、声を発する時間が全くなかったようだ。


(俊敏性……のせいじゃなさそうだな。何かスキルが発動したか。)


自動的に必要なスキルを発動してくれるのは有難いけど、これって俺が選ぶ事は出来ないのか?


スキルが沢山あり過ぎて、選ぶのに時間がかかりそうだから、今のままでも構わないっちゃ構わないんだけど。


選んでいる間に攻撃されるだろうし。


(さてと……今は何をしたんだ?)


またログの履歴を見る。




‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


──発動スキル『駿足』─俊敏性上昇神大

──発動スキル『隠密』─気配遮断─対象の魔素感知無効

レッドボアに攻撃をしました。

──発動スキル『一閃斬』─武器負担値0─対象の体躯切断

レッドボアをたおしました。


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡




(スキル発動があの短い時間の中で三回……)


しかも、取得出来るジョブはバラバラ。


“超越者”っていうのは、全てのジョブをカンストしたって事なんだろうか?


……これって、本当に俺は何をしたら良いんだ?


何をしたら帰る事が出来る?


……それとも、もう帰る事が出来ないから、こんなに力を与えられたのか?


(今考えても仕方がないか……)


何も分からない今、死なないように、目立たないように、人に紛れて過ごす事が一番だろう。




取り敢えず、他の赤いマークの方へ向かう。


密集しているから、小規模の群れっぽい。


(今までスキルで一瞬にして討伐が終わったからな……闘いの練習をするには群れは丁度良いな。)


二つの剣を握り直し、駆けていく。


ステータスが測定不能なだけはあって、流れていく景色のスピードは速い。


……先程よりも速い気がするんだけど……?


二本の剣を構えたら──見えたブルーボアの群れに、足が勝手に突っ込んでいく。


腕が無意識に動いたのが分かった。


群れから抜けた所で足が止まり、振り返ると一体残らずこと切れていた。


(また何かしらのスキルかよ!?)


ログ履歴を見ている時間の方が、どう考えても長いよな。




‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


──発動スキル『疾走』─能力AGI値比例

ブルーボア六体に攻撃をしました。

──発動スキル『灼熱真空斬り』(火属性の魔剣・風属性の魔剣の二本所持時のみ発動可)─全体へ特大攻撃─AGI値下の相手の回避不可

ブルーボア六体をたおしました。


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡




(魔剣二本によるスキルか……)


というか、また一瞬で討伐が終わってしまったんだけど……


これは練習にならない。


死体をマジックバッグへ仕舞い、町へと向かう事にした。


流石に野宿は、来たばかりの俺にとってはハードルが高い。


せっかく潤沢な資金があるんだから、宿に泊まってベッドで寝たい。






────

──

『コクミック王国・フォールの街・関所』


関所が目視出来ると、マップ上に掲載される街の名前は、ゲームと同じ。


フォールはザザンの森と隣接している事から、外壁を築き、砦のようになっているんだよな。


森から魔獣が現れる事も多いし、武装している人達が多い。


魔獣の素材を売買する必要もある為、冒険者や商人達も多い街だ。


大陸一の、大きな冒険者ギルドがあった筈。


関所の前には入国審査待ちの列。


商人っぽい馬車や、冒険者が主。


貴族達は別の入口から入るから、この列には並んでいない。


(まずは身分証明が必要だから、ギルド登録をして、それから飯にするか。宿は何処にあったっけ?)


これからする事を考えるけど、考える事が少な過ぎて時間潰しが出来ない。




「身分証を。」


長い時間待たされて、やっと俺の番。


「ないので現金で良いですか?」


「……身分証がない?……お前、何処から来た?」


(あれ……?)


関所を通るには、高いけど現金でも良かった筈なのに……


これもゲームと違うところか?


「さっきまでザザンの森にいたんですが……」


「「ッ!!?」」


一瞬にして周りがざわめいた。


(……何だ?)


ザザンの森は、冒険者達も良く行く筈。


何でこんなに驚いているんだろう?


「ザザンの森はバジリスクが出現したからと、討伐出来る冒険者が集まるまで立入禁止にしていただろう?」


「……それって、黒っぽい茶色の体をしているやつですか?」


「そうだ!……見たのか?」


(ええ……?)


もしかしなくとも、あの弱かったバジリスクの事を言っているのか?


「遭遇したから一体討伐したんですが……悪かったです?」


討伐の為に冒険者を集めていたのなら、横取りした事になるし。


何体討伐の依頼だったんだろう?


……ギルドに一度も行っていない状態では、依頼の事を知る手段は何もないんだけど。




「…………」

「…………」

「………………」


(あれ?皆黙ってしまったんだけど、どうしたんだ?)


やっぱり悪い事だったか?


目を瞠っている人が多いけど……


「……っ、バジリスクを討伐しただと!?まさか……たった一人で討伐したと言うのか!?」


「はい。」


だって、あのバジリスクはレベル30だったんだぞ?


冒険者ランクC以上なら討伐可能の筈。


ゲーム通りレベル50だったとしても、ランクBでも何とか討伐出来るだろう。


……それなのに、何故こんなにも大騒ぎしている?


「あ、あり得ない……!たった一人でバジリスクを討伐する事が出来るなんて……」


(そんな事を言われてもな……)


本当の事だし。


「これから身分証を作るついでに討伐した魔獣を売るから、確認すれば良いでしょう?それより、早く通してくれないです?通行料はいくらですか?」


いつまでも関所で足止めされると、宿に泊まるのが大変になる。


宿が満室になって、何処かの店で一晩過ごす事になるとか、嫌だ。


「ああ、申し訳ない!通行料は200Gだ。」


感覚的に、1G≒100円って感じなんだよな。


つまり、通行料は約2万円。


ジョブによって始まる場所が違い、殆どは街中かザザンの森の浅い場所だった。


始まってすぐの所持金は、毎回1000Gだった。


だからこそ、通行料の200Gはいたかったんだよな。


……今は簡単に払えるけど。


“200Gを払う”と思ったら、手に小さな麻袋のような物が現れた。


これが金を入れる袋なのは、見た事があるから知っている。


ステータスの所持金が、全く減っていない事の方に驚いた。


(限度額以上は持てないけど、その後は使えばそれだけ減った筈なのに……!)


余剰分があるのか?


宿屋に着いたら、色々と調べてみるか。

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