小話─問題ばかり起こるのは呪いだろうか?─
PV10000超え記念の小話です。
初めはカイトと出会う前のソフィアを書こうと思っていたんですけど、胸糞悪い話になってしまったので、急遽変更致しました。
ブックマーク登録、有難うございます(^^)/
─?side─
「ご報告致します!コクミック王国、フォール支部所属の冒険者が、本日ルードゥブルグ共和国に入国致しました。当人はコクミック王国国王直筆の証書を所持している、Aランク冒険者です。バジリスクをたった一人で討伐したと言われている者で、彼への攻撃、暴言、及び、彼が連れている黒猫族の子供への暴言、攻撃をした者は、命の保障はないとの事です。現在、部隊長のシュバルツ様が該当冒険者と共にいらっしゃいます。」
国境兵団の兵士のそんな報告に、思わず動きを止めてしまった。
コクミック王国に高い実力を持つ冒険者が現れた事は、既に耳に入っている。
バジリスクを一人で討伐しただけでなく、最近コクミック王国近くで起きたオーガの大量発生もたった一人で解決したとの眉唾物のものを。
そんな彼がこの国に来たって事は、コクミック王国は彼を繋ぎ止められなかったという事だろう。
証書を持たせているのは、何としても国として関わりを持ちたかったからなのかも知れない。
「この国へ来た理由は聞いたのか?」
「はっ!“観光”との事です。」
実力者が、国王直筆の証書を手に、他国を観光……
(コクミック王国は、余程彼を怒らせたくないようだな。)
そのような権利と自由を与えて……それだけのメリットがあるという事か?
その実力が自分に向かわないとは限らないだろうに。
コクミック王国での監視役は誰なのだろうか?
我が国は今は一時的に国境兵団部隊長が共にいるようだが……監視役を早急に決めなければいけないな。
それに加え、彼への手出し無用の沙汰を出さなくては。
コクミック王国国王直筆の証書を持っているという事は、実力が認められた事でもある。
つまり、国さえも彼の行動を止められない事と同意。
そんな彼に敵対されたら、この国に少なくない被害が出るだろう。
たった一人の冒険者相手だと侮っていたら、痛い目に遭いそうだ。
大至急、副代表達へ伝達する。
勿論、貴族や商人へも。
当人と顔合わせをしたいけれど、会う約束はもぎ取れるだろうか?
部隊長が提案してくれたら良いのだが。
(この国が敵対しない事を分かってくれれば良いのだが。)
正直、現在争っている暇はない。
私が代表者になってからまだ日が浅いだけでなく、前任者が隣国のハニンソ皇国と敵対し、あわや戦争になりかけていた為、その尻拭いが大変だからだ。
前任者と共謀していた貴族達を粛清し、直ぐに戦争したがる馬鹿共を大人しくさせるので精一杯なのだから、今は余計な揉め事を増やしたくない。
観光に来たというなら、何事もなくお帰り願いたい。
……だが、そんな私の思いなど嘲笑うかのように、その日の夜に受けたシュバルツからの報告に、頭を痛める事態となった。
(まだ、彼がこの国に来てからたった一日しか経っていないのだぞ?)
よくもまあ、それだけ問題が起こるものだ。
スクエア支部のギルドマスターの浅慮な言動に加え、ベケット男爵家一行の愚かな態度……
ベケット男爵家の御者が跡形もなく消されたと報告を受けたが、自業自得だろう。
シュバルツがその前に警告していたと言うのだから。
だが、彼はベケット男爵家を潰す段取りでいるらしい事と、食堂で司祭以上の力を見せた事の報告に、どう対処するべきか迷う。
勝手に人を消されるのは困るし、それが貴族となるともっと混乱が起きる。
“次は自分の番になるのでは”と、保身しか考えていない馬鹿共が騒ぎだすからだ。
司祭以上の力を持っているなら、是非ともその力に肖りたいが、彼はその力を使うつもりはないと言うし……
だがいったい、どれだけの力を有しているのだろう?
我が国に滞在中、力を貸して頂く事は可能なのだろうか?
ギルドでも塩漬けとなっている依頼は多いと聞くし、バジリスクを一人で討伐出来る力があるなら、大抵の依頼を受けられるだろう。
──彼が受けるかは別として。
「彼は私と顔合わせをして頂けるのだろうか?」
[申し訳御座いません。一応提案させて頂いたのですが、断られてしまいました。]
「それは残念だ。……だが、私が顔合わせを願っていたと伝えてくれ。」
[分かりました。伝えるだけはしてみます。]
通信が切れる。
監視役が正式に決まるまで、シュバルツが続いて監視役として彼と同行するように伝えたが……
観光でルードゥブルグに来たなら、監視役を選定している間に移動しそうだな。
ベケット男爵家へも連絡をいれておく。
普通は男爵家へ直接連絡する事なんて滅多にないが、子供といえど国境兵団部隊長が“国賓冒険者”だと告げた相手にとる言動くらい、指導しておくべき事。
そのせいでこの国に危機が訪れているとなれば、連絡しない訳にもいかない。
緊急連絡用の魔道具を使う。
[……こんな夜分に何用だ?]
「……ほう?随分と偉そうだな?この魔道具は緊急連絡用だと分かっていての発言なんだろうな?」
相手の落ち度を咎める為の連絡なのに、高圧的な話し方をされて、思わずカチンときた。
“こんな夜分”に頭を痛める事となった原因が、何を言うか。
「私はレイモンド・フォスターだ。此度は、貴殿の令嬢一行が起こした件について連絡させて貰った。……娘から話を聞いているか?」
[こ、これはこれはレイモンド様。申し訳御座いません。何分寝惚けていまして、緊急連絡用の魔道具だと理解せずに出てしまいました。]
慌てた様子のベケット男爵。
……だが、緊急連絡用と通常連絡用の魔道具と間違う事などあるか?
隣に置くような、馬鹿な事をしていたりするのだろうか?
普通は、当主しか手に取れない所に置き、管理している筈。
鍵つきの金庫に入れている者も少なくないだろう。
「緊急連絡用の魔道具の管理の事は、今は置いておこう。……それで?弁明はあるのか?貴殿の娘のせいで、この国が存続の危機に陥っているのだぞ?」
[……本日、冒険者が御者を一人殺したと娘から報告を受けました。それなのに何故、咎められるのが私なのですか?]
(ああ、これは駄目だな。)
何故御者を殺されたのか、知ろうともしていない。
「彼はコクミック王国国王直筆の証書を持っていたのだぞ?彼の監視役についていた国境兵団部隊長も、その事を伝えた筈だ。それなのに、その御者は国賓冒険者だと信じなかったようだな。……“ただの冒険者”とは訳が違う事くらい、男爵家ともあろう者が分からない筈はないよな?」
他国とはいえ国王の直筆の証書を持っているという事は、国賓冒険者と呼ばれる。
その者のランクは関係ない。
つまり、国賓冒険者となり得る者は、国と敵対した時、国に莫大な損害を齎す者の意。
シュバルツから話を聞いていると、カイトという冒険者が本気で攻撃すれば、損害どころか国ごと地図からなくなりそうだ。
[……娘や衛兵達の報告によれば、その冒険者はまだ若い男だというじゃないですか。国の代表者ともあろう人が、気を回し過ぎですよ。]
「そうか。ある程度の罰を与えて彼に温情をかけて貰おうと思っていたが、私の配慮は意味がなかったようだな。精々気を付けるが良い。」
通信を切る。
私が庇ってやる必要はもうない。
もう一度シュバルツへ連絡を入れる。
カイトの監視役として共にいる為、国境兵団の詰所には戻っていないだろうが、そちらへ連絡を入れればシュバルツに伝わるだろう。
シュバルツ一人に負担を強いる事になるが……何としても国として彼に敵対しない事を伝えて貰わなければ。
翌日、覇気のない声で報告するシュバルツの言葉に、頭を抱える事となるとは思わなかったが。
─?(レイモンド)sideエンド─




