スクエア街中
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シュバルツに連れられてやってきたのは、庶民的な居酒屋のような雰囲気の食堂だった。
この食堂は一家で経営しているようで、ふくよかな体型の女性と、その息子らしき少年が料理を運んでいる。
厨房に見える男性が父親なんだろう。
少年をかなり強面にしたような容姿だ。
「いらっしゃい!……おや?今日は連れがいるのかい?珍しいね。」
常連客だと言っていた通り、シュバルツへ親しげに話し出した女将。
“連れ”の中に、何故かついてきたギルマスも含まれているんだろうか?
「隣国の冒険者だ。国賓扱いになるので、粗相のないように頼む。」
「おや、そんな偉いさんをこんな店に連れてきて良かったのかい?うちは“安くて多い”がモットーだよ?うちの料理じゃあ舌に合わないんじゃないかい?」
「私はスクエアで他に美味い店を知らないのでな。」
女将は表情豊かだけど、シュバルツはずっと無表情。
何となく砕けた様子は垣間見えるから、彼なりに心を開いているんだろう。
……対比が凄いけど。
というか、“国賓”って……そんなものになった覚えはないぞ。
「……おやおやまあまあ、随分痩せっぽっちな子供だね。キチンと食べさせているのかい?」
ソフィアへ視線を向けてから、女将の反応が早かった。
ソフィアを抱き上げている俺を見る目は厳しい。
ソフィアをここまで“ただの子供”扱いしたの、彼女が初めてじゃないか?
カルロスだって忌避する様子は見えなかったけど、“黒猫族”として見ていた部分があった。
それなのに女将は、種族で区別しているように見えない。
でもソフィアは女将の迫力が怖かったのか、俺の首に回っている腕に力が入った。
「はい。……今、もっと沢山食べられるように頑張っているところだもんね?」
「ん!たくさん、たべる、すると、おにいちゃん、よろこぶ。」
「うん。前より食べられるようになってきたもんね?ソフィアは偉いね。」
頭を撫でると、少し緊張している様子が解れたようで、いつもの気持ち良さそうな表情になった。
「この子はまだ引き取って日が浅いもので。栄養のある料理をお願いします。」
まだ一人前すら食べられないソフィアだけど、だからこそ栄養のある料理が望ましい。
コクミック王国では家を買ったし、すぐに料理するようになったから外食は殆どしなくなったんだよな。
関所を通るまでに食べようと思って作ってきたサンドイッチがマジックバッグの中にあるけど……時間経過しないから、また今度食べれば良いか。
「最近引き取った子かい。そりゃ悪い事を言ったね。すまなかったよ。……嬢ちゃん、この兄ちゃんの事、好きかい?」
謝るのも潔い。
気持ちの良い人だな。
「ん。……おにいちゃん、やさしー。すき。ごはん、たくさん。きれい、たくさん。なぐる、しない。けが、なおす、してくえた。……おにいちゃん、いっぱいいっぱい、すき!」
普段は人見知りするのに、女将へはあまりしないんだろうか?
興奮しているようだから、それが一因か?
まだまだ表情が表に出にくいのに、今はニッコニコだ。
──笑顔のソフィアは可愛いから、俺はほっこりと癒されるだけだけど。
「……そうかい。良い人に出逢えたんだね。沢山甘えな。」
一瞬顔を歪めたのは、ソフィアのような子供が暴力を受けていたと分かったからだろう。
やはり良い人のようだな。
「この子を見て暴言を吐く人が絶えなかったのですが、貴女は違うのですね。安心しました。」
「こんな子供に罪はないよ。精々出来る事といったら、食べ物を盗む位だろう?……良い服を着させて貰えているようだし、大事にしているんだね。」
「ソフィアはもう俺の妹ですから。俺にとっては、誰よりも優先すべき人物です。……俺は冒険者登録はしましたが、どの国にも属していないので、誰にも従う義務はありませんしね。」
大事にしているに決まっている。
現時点で、ソフィア以外に大切にしている人族はいない。
今のところ、ソフィア以外の子供を引き取るつもりもないし、ソフィアを放置して恋愛をするつもりもない。
……ソフィアみたいな境遇の子供がいればどうなるか分からないけど。
他の稀少種族がどれだけいるのか分からないけど、忌避されている子供がいるなら俺が引き取る可能性が高いと思う。
金銭的に余裕があるし、護る為の力もある。
……性格が悪かったら、そういう対応をしない可能性もあるけど。
ソフィアの場合は、幾度となくゲームで見ていて、救いたいと思っていた事もあって引き取ったけど、他にそういう風に思った子供はいなかったし。
席に着くと、ソフィアを膝の上に乗せる。
子供用の椅子なんてないし、子供が普通に座るとテーブルが高く、上手く食べられない。
基本的に子連れでの外食をする習慣がない世界のようだから、子供用のものが置かれていないんだろう。
フォールにいた時はすぐに家を買ったし、自炊していた。
他の家族もそうなんだろう。
だからこそ、この食堂にも子供の姿がないのだろう。
他の店も外から見ただけだけど、子供の姿はなかった。
家事は大変だし、家族連れは特に、たまには外食したいと思いそうだけど……
俺が自炊していたのは、まだ沢山食べられないソフィアへ栄養価の高い食事を摂らせる為。
俺一人なら外食で充分だし。
調理スキルがなければ、この世界で自炊する事もなかっただろうけど。
元々俺は、簡単な料理しか出来ない。
作れるものといえば、簡単な炒め物に、材料をぶっこむだけの鍋やカレー位だろうか?
実家暮らしだった俺が料理する機会は、料理が大好きな母親がいた為にあまりなかったし、気が向かなければ作る事もしなかった。
料理しなくともコンビニに行けば充分な食料を買えるし、カップ麺とかも好きだし。
友達と外食する事も度々あった。
……だけど現在、料理する事が苦じゃないのは、やはりスキルのお陰だろうか?
俺の向かいにシュバルツが座り、何故かその隣にブライアンが座った。
ぶつくさ文句を言っていたくせに、一緒に食事を摂るつもりらしい。
ソフィアへ暴言を吐いた事はまだ許していないから、大人げないけど完全に無視する事にした。
ソフィアの目の前で暴言を吐いたくせに、謝っていないのだから。
「ソフィア、スプーンとフォークを出せる?」
ソフィア用の物は、殆ど全てソフィアが持つマジックバッグに入れている。
俺のマジックバッグに入っているソフィアの物は、服が多いかな?
お小遣いも食料も入れているから、俺が離れても数日は大丈夫なようになっているけど、ソフィアの精神的に大丈夫だとは思えないから、今のところ離れるつもりはない。
でも、もっと大きくなってから俺と離れたいと言い出す可能性もあるから、その為に。
子供用の木で出来た小さなスプーンとフォークを取り出したソフィアは、それらを両手に持って嬉しそうな表情をしている。
“自分用の食器”が嬉しいらしい。
陶器で出来た物や金属のもあるけど、ソフィアが木で出来た物の方が使いやすそうだったから、ソフィアが使う物は木で統一した。
取り皿などもソフィアが持つマジックバッグに入れてある。
木で作られた食器は比較的可愛い物が多かったから、この世界の子供達が多く使う物なのかもしれない。
落としても滅多に割れないし、大きな音もしないんだから、日本でいうプラスチックの食器と同様な使い方をされているんだろう。
「おや、自分用のがあるのかい。」
「おにいちゃん、かってくれたの!」
「そうかい。良かったね。」
女将に嬉しそうに報告しているソフィアは、文句なしに可愛い。
「オススメをお願いします。この子には栄養のあるものをお願いします。ドラゴンには焼いただけの肉を。」
「はいよ!アンタ達は何にする?」
俺の注文を聞くと、その後シュバルツ達の注文も聞いて厨房へと向かっていく女将。
「……それで、何故ギルマスまでついてきているんだ?食事を摂りたいなら、違う席に座れば良いだろう?」
やっと隣へ座るブライアンへ声をかけているシュバルツ。
「ケチケチするな。この間の依頼で破損した防具を買ったら、手持ちが厳しくなったんだよ。明日返す。」
「……またか。」
どうやらブライアンは金欠らしい。
自由に出来るお金をあまり持ち歩かないタイプなんだろう。
ギルマスが金欠って……笑えないんだけど。
会話を聞いていると、シュバルツとブライアンは性格は全く違うのに、それなりに親しそうだ。
国境兵団の部隊長と、ギルマスだもんな。
同じ街を護る者同士、顔を合わせる機会は多いのだろう。
「申し訳ありませんが、彼も同席で宜しいでしょうか?ここの精算は総て私が持ちますので。」
断りを入れてくるけど、既にブライアンは座っているんだから遅過ぎだ。
食事代を奢ってくれるらしいけど、そんなに高額にはならないだろうし、そもそもそれくらい自分で払える。
席を移動しても良いけど……料理を楽しみにしているソフィアに水をさすのもな……
「構いませんよ。俺達には関わりのない人の事なので。」
存在ごと無視していれば良い。
会話をする必要性も感じられないのだから。
「……関わりはあるだろう?俺はギルマスだし、──」
「ソフィアへ暴言を吐いた者は俺にとって等しく“下衆”でしかないのですから、存在を消されたくなければ視界に入らない事をお薦めします。シュバルツさん、忠告、お願いしますね?」
下衆が何か言っているけど、勝手に会話に混ざるなと言いたい。
認識する必要のない有象無象でしかないのだから。
何か喚いているけど、右から左だ。
暫くして料理が来た。
俺はタレのかかった大きなステーキ。
塩コショウをふっただけの物の方が好きなんだけど……この世界では両方とも高級品だから仕方ないか。
ソフィアは小さなパスタらしき物が入った具だくさんのスープ。
ソフィアのフォークの出番はなさそうだ。
……俺の肉を分けても良いから、仕舞わなくても良いか。
「ごはん!」
「食べようか。」
急いで食べようとするのは治まってきたけど、まだ完全にじゃない。
こういうのは時間がかかるというし、ゆっくり治していけば良いと思う。
スプーンなどの持ち方は教えたし、多少ぎこちないけど自分で食べられるようになったから、今は俺が食べさせる事も少なくなった。
「美味しい?」
「ん!」
「これも食べな。あーん。」
「あー。……おいしー!」
こうして別の物を食べさせる時くらいだろうか?
────
──
ゆっくりと食事を摂り、膨れたお腹を擦っている満足そうなソフィアを見て和む。
「御馳走様でした。ソフィアも美味しい料理に喜んでいました。また寄らせて頂きます。」
「そうかい。ウチの料理を気に入ってくれたなら嬉しいよ。ウチの人も喜ぶってもんだ。」
朗らかに笑う女将。
やはり珍しい程良い人だ。
こういう人は報われて欲しいと思う。
「『オーバーヒール』……他人の為に力を使うつもりはなかったんですが、貴女へは一切の懸念がありませんね。店内を駆け回る職種上、辛かったでしょう?悪くされていた膝、治しておきました。これからもお仕事、頑張って下さいね?」
僅かに引き摺ったように歩く事から、足を悪くしているのは見て分かったけど、鑑定したら右膝に炎症が起きていて、痛みが発生しているのが分かった。
痛みから動くのが億劫になり、体重が増えて余計に膝への負担が増える悪循環に陥っていたのだと思う。
驚愕の表情を浮かべる女将に軽く会釈し、店を出る。
他の人達も驚いていたようだけど、特に気にする必要はないだろう。
(さてと……次は何処に行こうかな?)
今日はこの街に滞在すると決めたし、商店を覗こうかな?
他の街へ行くのは明日以降だ。




