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目が覚めたら、森の中でした


「……ど、何処だ、此処……!?」


目が覚めて、視界に入ってきた景色に、慌てて体を起こし、辺りを見回す。


周りにあるのは薄暗い深い森……


真上へ視線を向けるも、覆い茂った葉の隙間から、僅かに覗く光が見えるだけ。


しかも、少し拓けた所ではなく、木々が密集して生えている場所。


──日の光が僅かにしか届かない樹海と言った方が正しいのかも知れない。


光が見えるのに、周りはやたらと暗い。


(俺は家に居た筈……確か、ゲームをしていて……そのまま寝たのか?)


もう何年も遊んでいるゲームをしていた筈。


RPGで、クリアする度に選択出来るジョブを変えて一からやり直していた、お気に入りのゲーム。


(確かクリアして、また一からやり直そうとしていたんだった。……そういえば、何のジョブにするか迷っていた時、何故か画面が光ったんだっけ?)


眩しくて目を瞑ったのは覚えている。


……それからの記憶はない。


だけど、確かに家の中にいた筈。


間違っても、こんな森の中に来た覚えはない。




(何か使える物、持っていないか?)


ポケットを探ろうとして──


「…………え?」


自分の服装に気付く。


「な、何だ?この服……?」


白色のTシャツにグレーの綿パンの部屋着で居た筈なのに、着ている服が違う。


やっていたゲームの、初期にアバターが着ている、防御+1の布の服にしか見えない。


(此処って、ゲームの中なのか?)


ラノベによくある、()()()()()ってやつ?


……でも、何故俺が?


新たにジョブを決めようとしていたのだから、俺のレベルは1の筈。


…………もしかして違うのか?


「ステータスオープン!……なんて……ええっ!?」


冗談で言ってみただけなのに、半透明のウィンドウが開いた。


やっぱりゲームの世界らしい。




╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋


カイト・ウスイ

性別:男体

年齢:20歳(見た目)

所持金:999999999999G

種族:不明

ジョブ:超越者

LEVEL:測定不能

HP:∞

MP:∞

STR:測定不能

VIT:測定不能

AGI:測定不能

DEX:測定不能

INT:測定不能

MND:測定不能

LUK:測定不能


《取得スキル》

武器系技能 Extra

魔術 Extra

体術 Extra

召喚使役 Extra

隷属契約 Extra

錬金術 Extra

鑑定 Extra

掌握 Extra

隠蔽 Extra

物理攻撃無効 Extra

魔法無効 Extra

鑑定阻害 Extra

状態異常無効 Extra・・・


╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋




「な、何だ、これ!?」


何度瞬きしても、目を擦っても、ステータス画面にある文字は変わらない。


(“超越者”って、何……?)


今まで聞いた事がないジョブ名だ。


しかも、メインに一つ、サブに二つ決められるジョブなのに、他のジョブが書かれていないのは何故だろう?


……それにしても……攻撃力や防御力だけでなく、レベルまでもが“測定不能”……


HPやMPは“∞”……


延々続いている色々なジョブによって習得出来るものが変わる総てのスキル達の、レベルが全部“Extra”……


武器は何でも扱えて、魔法も全属性が際限なく使え、物理攻撃が効かなければ、魔法攻撃も効かないし、状態異常もかからない。


所持金は上限MAX。


──こんなの敵なしじゃないか。


インベントリの方を確認すると、このステータスでは必要と思えないけど、ポーション類などの消耗品は所持上限数があり、武具や限定衣装などは、過去に色んなジョブ時に取得した物が全て揃っている。


レベル上げをする必要もないし、武器などを買う必要もないなんて……何をしたら良いんだ?


錬金術師のジョブ時に特に必需品になっていた素材なんかは、どうして所持しているのか、かなり不思議だけど……




(良く使っていた名前じゃなくて、本名になっているし……)


碓井うすい快斗かいとが俺の名前。


でもゲーム時はジョブによってアバターの性別を女にしていた時もあったから、毎回“イト”で統一していたのに。


年齢だって改めてゲームを始めるときどきで色んな年齢に設定していたけど……19歳になろうとしていたから“20歳”はまだしも、“見た目”とついているのは何故だ?


何も決めていない状態だったというのもあって成人年齢になったんだろうけど、何故か今のアバターは元々の俺の容姿。


──今までアバターを、俺に似た容姿にした事なんてないのに。


だけど、種族が不明になっているのは何故なのか分からないな。


性別が“男体”になっているのは、種族不明だからなのか?


それより、簡単に死ぬとは思えないステータスだけど、死に戻りが出来るか分からないんだから、なるべく良い武具を装備していたい。


「装備変更するか。」


防御力をただあげるだけなら、フルアーマーが妥当だけど……それだと俊敏性が低くなるんだよな。


ステータスの全てが測定不能とはいえ、やっぱりマイナスになる物は避けるべきだろう。


……と、なると──


「ここはやっぱり、魔導剣士の装備が一番かな?」


騎士系は騎士団に入るところから始まるし、それだと自由がない。


此処はゲームの世界らしいし、どうして此処に呼ばれたのかも分からないんだから、割かし自由に動ける冒険者でいる方が良いと判断した。


武器を使っても魔法を使っても良いように、どちらも使えるジョブの格好をしていたら、混乱される事もないだろう。


稼ぐ必要もなさそうだし、全力プレーは必要なさそうだし。


……でも、一応練習だけはしておかないとな。


いざっていう時、使えなかったら困る。


ステータス画面を操作し、決定を押すと、一瞬にして装備が変わった。


薄くて軽い銀色のアーマーの胸当て、肩当て、腰当て、籠手に、革のブーツ、動きやすい赤茶色の服に、黒色のズボンを着て、その上から縁だけ金色の濃藍こあい色のローブを纏った姿。


ホルダーには剣が腰の両方にあり、双剣使いのスタイル。


炎を纏い、火炎を放つ事も出来る火焔の魔剣と、風の刃を放つ事が出来る召風の魔剣は、冒険者ジョブの時にダンジョンで取得した物。


ローブにはフードもついており、高い魔術耐性がついた希少な一品だ。


このローブは課金してガチャを何度も回して手に入れた物なんだけど、どうやら今までに課金して手に入れた物も所持しているようだ。




(此処等は森の奥みたいだし、周りに人はいないだろうけど、一応気配感知しておいた方が良いな。)


感知系のパッシブスキルは、このゲームにおいては常時発動していて、そういったスキルを所持していれば、画面右上にマップが常時表示されている筈なんだけど……今は画面を見ている訳じゃないしな。


“マップ表示”って言ったら、勝手に目の前に表示された。


これ、ずっと出しておく事って出来ないんだろうか?


今のままだと、不意討ちされる可能性が高い。


マップが表示されていれば、敵や害意を持った相手が近付くとすぐに分かるようになっているのに。




(…………あれ?)


何も言っていないのに、視界の右上に、半透明のマップが表示された。


……もしかして、思っただけで表示されるんだろうか?


表示されているのは『ザザンの森』。


ゲーム内に出てきた名前だ。


数個の赤い丸が動いているところを見ると、ゲームと同じく敵認定されたものがいるって事なんだろう。


──森の中という事もあり、獣かな?


(ザザンの森という事は……東にあるのはゲーム通りだとするとコクミック王国の筈。)


西には三部族の村が併合した小国があったけれど、紛争が多く、治安の悪い国だからあまり行きたいとは思わない。


ゲームでも生活するには上級者向けとされてて、盗賊ジョブの時などはそこに行っていたけれど。


遣りようによっては悪人にも義賊にもなれるから、何年も続けられていたんだよな。


三種選べるジョブの組み合わせによっても出来る事が変わるし、全ジョブ制覇で隠しジョブが現れたりするのが目的でもあった。


勇者や天使や悪魔などのジョブは、そういった隠しジョブ。


隠しジョブの中で一番つまらなかったのは、やっぱり神ジョブかな?


箱庭を作る感じで、全くイベント絡みがなかったんだよな。


箱庭作りには興味ないし、何かしら起こっている事を見ているだけで、天候を操って天災を起こしたりするだけだった。


もう二度としないと誓ったものだ。




(……そろそろ戦い方の練習をするかな?)


近寄って来ている赤いマークに、両手に剣を握って向かっていく。


MNDが測定不能だし、対峙する相手が“人”でも躊躇する事はないんだろうけど……やはりゲームとは違う感覚だろうし、ある程度“殺す”事に慣れておかなければ此方が殺られる。


──このゲームは、そういうゲームだから。

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