危険の先に
魔ねき猫です。
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思ったよりも森の奥深くまで来てしまった。
箒で帰る前に、守護鳥がある程度離れた方が良い。
シャルとレンは、近くにあった倒木に座る。
「クリスタル、壊れましたね」
「ヘーゼさんに外したらいけないって言われているけど...壊れた場合どうなんだろう」
「多分、ダメでしょうね。
でも魔力が現れた様子も無いし...この首飾りは何を意味していたのでしょう」
シャルは、この首飾りは魔力を消す魔導具だと思っていた。
だが違った。
ますます分からなくなった。
「シャルは...【選ばれし魔法使い】で、すごい魔力を持っているのに、俺とバディでいいのか?」
「どうしたんですか。藪から棒に」
シャルが不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
レンは、自分が思っていることをシャルに聞いた。
「俺は魔力が無い無能だ。だけどシャルは違う。みんなから【選ばれし魔法使い】なんて言われて...
どうして俺なんかとバディをしてくれるなんて...」
バディは、もし正当な理由があれば変えることだって出来る。
だから、今こうしてバディ組めている事に疑問を持っている。
「最初は、嫌というより不思議な人だと思いました。
私がわざわざクレア家の名前まで言いましたのに、話しかけて来るんですもの」
「その時は、クレア家がどのくらい凄いのか分からなかったから」
シャルが笑顔でこちらを見て来た。
いつもはツンツンした顔なのに、可愛い顔をする時は、ギャップがある。
「そこですよ。自慢ではありませんが、クレア家を知らない人なんていないと思っていました。
いつもクレアとか、【選ばれし魔法使い】などと肩書きばかり呼んで、私のことをシャルとは呼んでくれませんでした。」
馬鹿には馬鹿なりに苦悩があるように、天才にもまた苦悩がある。
まさにレンとシャルだ。
「でも、シャルだって俺のこと名前で呼んでくれないじゃないか。
しかも敬語だし...」
「そ、それは...」
困った顔のシャルは、いじめたくなる。
「ク・レ・ア・様?」
「わ、分かりました!敬語をやめて、名前を呼べばいいんでしょう、呼べば!」
シャルの顔が次第に赤くなっていくが、関係ない。
「レ...レン...
は、恥ずかしい!」
「うむ。よろしい!」
結構時間が経った。
そろそろ学園に戻らないと不味い。
「そろそろ戻るか」
「そうね。...って!そんなことより、なぜレンが【宿りの箒】に乗れてるの?」
【宿りの箒】は、長年持ち主を選ばなかったのだ。
その箒よりも速く、魔力を注がなくても良いと、箒の中でも反則的だ。
だが誰も乗ろうとはしなかった。
この箒には呪いが掛かっているから。
「俺も分からないんだ。ナターシャに箒の選び方を教わって、その通りに選んだらこの通り」
「よく分かりませんが...魔法が使えるのも何故ですか?
魔力は今まで通り感じられませんが」
「魔法陣だよ。昔の魔法使いが開発されたとされている」
「魔法陣!?あれって実践的に使えないとされているはずだけど...」
「この紙だよ」
レンは魔法陣が書かれた、ごく普通の紙を見せる。
「魔法陣が書かれた紙?」
「そう!この魔法陣に手をかざすと...ほら!」
魔法陣から、大量の水が出て来る。
その様子を見ていたシャルは黙ってこちらを見ていた。
「な...なに?」
「レン、後でお話があります」
お母さんの口調で言われた。
その後は、箒に乗って学園に飛んで行った。
帰って見ると、意外に遠くの方まで飛んできたのが分かった。
余談だが、この【宿りの箒】は本当に速いため、結構遅くしてシャルと飛んでいる。
森まで逃げている時も、シャルに合わせていた。
箒に乗って学園の広場に降りると、クラスのみんなから迎えがきた。
「アマクサ君、学園長がお呼びです」
サルバス先生に、言われた。
入学式に学園長は出てきたが、遠過ぎて見えなかった。
「シャル、先に帰っといてくれ」
「え...うん」
シャルは心配そうにこちらを見ていたが、レンは気付かなかった。
授業が終わり、レンはサルバス先生と学園長の元へ向かう。
「失礼します」
学園長の部屋には、ローレッタ先生がいた。
「ようこそアルスマグナ魔法学園へ。
私は、ここの学園長を任せられていますヴィクトール・オルネラです」
この人は凄いと、レンでも分かった。
見た目は少し老けたお婆さんだが、魔力がピリピリ伝わって来る。
「お、俺はアマクサ・レンです」
「ふふふ。存じていますよ。
さて、何故ここに呼ばれたか分かりますか?」
なんでだ?
シャルとのバディをなし?
魔力がないから退学とか?
分からない。
「先ほどの事です」
「守護鳥についてはごめんなさい!
ここの学園についてよく知りませんでしたので...」
「貴方は謝らなくても良いのです。
普段、守護鳥は魔法学園の生徒には攻撃しないようにしているのですが...」
「え?ならどうして今回は攻撃してきたのですか?」
その場にいる、ローレッタ先生、サルバス先生、ヴィクトール学園長が黙る。
なるほど。
普段温厚な守護鳥が、学園の、しかもクレア家次期当主のシャルに攻撃したのだ。
何としてでも、この不祥事を解決したい訳だ。
「俺は、箒を乗って上空に飛んだだけで、おかしいことはなかったです」
「箒に乗って...?」
学園長が反応する。
「アマクサ君は確か、魔力がない魔法使いと聞いていましたが...」
そこで、レンは【宿りの箒】を買ったことから、乗るところまでを簡潔に説明した。
ローレッタ先生はびっくりしていて、ヴィクトール学園長は深刻そうな顔で、何かを考えていた。
「そうでしたか。今から先生方と守護鳥の確認に行きますので、次の授業は中止です。
なので寮の方で安静にしていて下さい」
ヴィクトール学園長からの指示がでた。
レンは学園長室から出ると、寮に戻った。
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その夜、夢を見た。
目の前には自分がいた。
だが自然と怖くはなかった。
むしろ安心感というのだろうか。
「安心しろ。お前の味方だ。
自分の苦悩は、自分しかわからないだろ?
俺はお前だ。お前の苦悩は知っている」
もう一人のレンは笑顔だった。
しかし辺りは真っ暗だった。
「お前は誰なんだ?」
「俺は...お前だ。」
その時までしか、レンは覚えてなかった。
不思議な夢だと思ったが、人に相談する程でもないと思った。
異性と二人きりってドキドキします。