緊急事態
魔ねき猫です。
誤字脱字があれば報告してくれると幸いです。
「その人は...アマクサ・リュウジ。貴方のお父様ですよね?」
間違いない。
レンが物心つく前に病気で死んだとされている父親アマクサ・リュウジだ。
「なんで...この世界に父さんがいたんだ?」
確かにおかしいと思ったんだ。
両親について、お婆ちゃんに聞いたことがある。
でも教えてくれなかった。
「なんで教えてくれなかったんだ」
いつかシャーロット先生のところにでも行くか。
「貴方のお父様はここを卒業していますし、貴方も頑張ってみては?
あれ?貴方、これは?」
「え?」
シャルが指差す方を見ると、魔法陣が書かれた包丁があった。
「あ...ああ。これはシャルには関係ないことだよ!」
「そうですか...関係のないことですか...
もう知りません!」
シャルは怒って自室に戻ってしまった。
慌てて追いかけるが、間に合わなかった。
「シャル!何か感に触るようなことしたなら謝るから!」
「バディなのに、隠し事するなんて。
ありえません!」
その後、シャルが部屋から出てくることはなかった。
レンは焦っていた。
不味い...大変不味い...
「俺、ご飯作れないんだが」
今夜のご飯は諦めて、魔法陣の勉強に身を入れた。
翌日、レンとシャルは箒を持って、校庭に出ていた。
今日の授業は箒の授業だ。
またサルバス先生だ。
先程、シャルがみんなの前で箒に乗っていた。
「さすが【選ばれし魔法使い】様です!」とか「クレア様素敵!」とか言われていた。
そしてレンの扱いというと「なんであんな奴が、【選ばれし魔法使い】の、しかもクレア家次期当主のバディなんだ!」とか色々言われている。
箒の授業の前には、箒に乗っておかないとと思ってはいたが。
レンは【宿りの箒】を譲ってもらってから一度も乗ったことがない。
むしろ箱から開けてすらいない。
「貴方、そんな箱に箒を入れてるんですか?」
シャルの機嫌は少し直ってはいるが、やはり少し機嫌が悪い。
こんな呪いの箒を持って来ているんだ。
死ぬかも知れない。
シャルに殺されるのか、箒に殺されるのか。
「あははは。いや、今日が特別というか...今日が最後になるというか...」
「何言ってるんですか。
変な事言ってないで、早くその箱から箒を出して乗ってください」
レンはゆっくりと、時間をかけて箱を開く。
中から現れたのは、取っ手から先まで真っ黒な箒だった。
「こ...この箒は。貴方、なんて物を学園に持ち込んでいるのですか!」
これが【宿りの箒】
確かに空気がピリピリする。
「貴方、まさかこの箒のこと何も知らずに買ったのですか?」
「【宿りの箒】別名【呪いの箒】だろ?
乗った者は死ぬとかなんとか」
「呆れました...貴方にこの箒は乗れませんよ。
【始祖の魔法使い】が使っていたとされる物なんて」
シャルの忠告を無視して、レンは【宿りの箒】を掴んで跨ってしまう。
そのやり取りを見ていた他の生徒たちは、後ずさりしてしまった。
「乗ってみないと分からないじゃないか」
「分りますよ。貴方、魔力ないじゃないですか」
シャルの言っていることを聞き流した。
箒はいつも間にか浮いていた。
レンの足は、地面から離れている。
「まさか...【宿りの箒】が、持ち主を決めた...?
そんなことより、なぜ魔力が無い貴方が、箒に乗れてるのですか」
レンとシャルはすぐに気が付いた。
この箒は、その名の通り【宿りの箒】
作った人の魂が宿って、永久的に魔力を流している。
だから魔力が無いレンでも乗れる。
「俺、箒に乗れてる!」
レンはそのまま箒を発進させ、空に上がっていく。
街を見下ろすレン。
ここは元の世界より綺麗だ。
環境が壊れていない。
「ここにきて正解だったんだな」
レンの道は間違っていなかった。
同じ軌道でついてきた人がいた。
ナターシャだった。
「レン!箒に乗れたんだね」
「ナターシャ...」
ナターシャとは、あの日以来一言も話していない。
どんどん離れて言ってしまった。
「その...あの時はごめんなさい。
私なんて言えばいいか分からなかったから」
「ナターシャは悪く無い。
俺、大丈夫だから、心配しなくていいからな?」
ナターシャは、レンの嘘偽りない言葉を聞いて、安心する。
「ここまで飛んでいたんですか?
貴方は?」
シャルが飛んできた。
シャルはナターシャを見ると首をかしげる。
「【選ばれし魔法使い】様!わ、私はナターシャ・シャロンです!」
「その【選ばれし魔法使い】ってやめて下さい。クレアでいいです
そういえば、学園長が呼んでましたよ」
「なら帰るか。シャル、ナターシャ帰ろう」
「ゴォォォォォォォォォォォォ!!!」
突如現れた多数の化け物
容姿は恐ろしく、大きな姿の鳥だ。
「ナターシャ!シャル!危ない!」
二人をどかし、後ろにいる黒くデカイ化け物から逃がす。
二人は箒で器用に立ち直すと、レンを見る。
化け物の攻撃を、防御魔法で受け止めるレンの姿があった。
「貴方!魔法は使えないのに!」
「レン!大丈夫!?」
すぐにレンの援護に回る。
シャルは創造魔法を使って、槍を創造し、化け物の体を串刺しにする。
「ナターシャさん、あれはこのアルスマグナの守護鳥です!
サルバス先生を読んで来て下さい!」
「は、はい!」
ナターシャは急いで箒を反対に向け、飛んで行く。
レンとシャルは攻防を続けた。
箒で守護鳥の攻撃を避けつつ、学園の奥にある深い森に入って行く。
後からシャルも来る。
森の木々を避けつつ、守護鳥を攻撃する。
しかし、守護鳥も黙っていない。
「あ、貴方!前です!!」
レンは、後ろばかりを気にしていたので、回り込まれていたことに気付けなかった。
シャルの声と共に前を向き、すぐに防御魔法を発動した。
レンは衝撃のせいで、地面に落ちてしまう。
「大丈夫ですか!?」
レンの側に駆け寄ると、レンは腰を痛がっていた。
地面に打ち付けられた衝撃で、痛めただけだった。
「ねぇ...く...首飾りが...」
レンの胸元を見ると、クリスタルが欠けていた。