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一人の夜

誤字脱字があればお知らせ下さい!



乗り手を拒む【宿りの箒】を乗りこなした者とは。


レンが言った質問を聞いて、初めてナターシャは気付いた。

ナターシャの顔はいつになく真剣な顔になった。


「歴史上、俺が聞いたことのある奴は一人しかいない。

 そいつは【始祖の魔法使い】だ」


ナターシャとレンはその木箱をもう一度見てしまう。

この中に最恐と謳われた最初の魔法使いが使っていた箒があるのだ。


「この箒を乗りこなそうとした奴は、不慮の事故で死んだとかなんとか」


【宿りの箒】を乗ってみたい欲が、レンの気持ちをいっぱいにする。


「おじさん、この箒っていくら?」


その発言に、二人はびっくりした顔でこちらを見る。

【宿りの箒】の話を聞いた上で載せろという人は少ないんだろう。


「えっ!?レンこの箒買うの?」


「お...お前さん、話聞いてたか?

 こいつは売り物じゃないんだ。少しだがお前さんを気に入っているんだ。

 死なれたら困る」


確かにおじさんとは仲良くなれそうだ。

...おじさんはこう見えても、ちゃんと商売をしているんだ。

最初は姿も見せなかったのに。


「お願いします!

 おじさんも、いつまでもこの店にあっても困るだけだろ?」


「ゔっ...そうだが。

 ったく、分かった!こいつをお前さんに譲ろう。お金入らん。こんな呪いの箒なんて売れねぇ」


「おじさん、ありがと!」


意外にもおじさんは押しに弱いらしい。

ともかくおじさんから譲り受けた【宿りの箒】を手に入れた。

店を出るとナターシャの買い物をした。


その後、夕方に買い物が終わり、アルスマグナ魔法学園に向かった。

アルスマグナまで続く林道を歩く。


「それにしても、本当に【宿りの箒】をもらっちゃうなんてね!

 レン、乗れるの?」


ナターシャが心配する。

だがレンは、ナターシャやおじさんに言われた通り、直感で選んだ。


「なんて言えば良いか、なんとなく乗れる気がするんだ。」


「なら良いけど。

 あ!レンあれ見て!」


ナターシャが前方を指差すので、前を見る。


そこには、巨大な門が待ち構えていた。

こんな巨大な門は、レンの世界で何処を探してもお目にかかれないだろう。


その巨大な門を潜り、学園へと少しずつ足を踏み入れて行った。


「ようこそ!アルスマグナ魔法学園へ!

 君達が最後の入学生だね!」


いつの間にか目の前にいたらしい人の正体は、幼女だ。

だが、確実に先生だ。

なぜなら、ローレッタ先生と同じローブを着た人だった。


「ふむふむ。君達で十二人目だよ。

 私を見て先生と気づいてのは」


「え?君って先生なの!?」


やはりナターシャは知らなかったようだ。

先生は半目でナターシャを睨むが、ため息をついて話を続ける。


その顔を見たナターシャは「なんですか!」と強気に出ていたが、明らかにナターシャが悪い。


「十一人に減ったが、普通と比べて多い方だろう。

 おっと、紹介が遅れたね。私は攻撃魔法全般を教えてるシャーロット・セレンよ」


攻撃魔法全般って、普通にすごい人じゃないか。

見た目に似合わず高関魔法が得意なのか。


「さぁ、アマクサ君とナターシャちゃんはこっちに来て。

 魔力量を調べるからね」


シャーロット先生の案内のもと、学園の中に入ると、少し大きな部屋に連れて来られた。

ここまでの道は覚えられない程、入り組んでいた。


その部屋の中心に大きな水晶があった。

水晶は、透明で向こう側の壁まで見えた。


「此処に手をかざしてみて」


「はい!はい!私からやります!」


まず最初にナターシャが水晶の前まで出て、シャーロット先生に言われた通り、水晶に向かって手をかざす。

すると水晶の中が次第に透明さを失って行き、モクモクと白い煙で覆われた。


「魔力はなかなかのものか。よし、次はアマクサ君!」


こういう時は、何故か緊張する。

悪いこともしていないのに。


「レンの魔力量ってどのくらいなのかなー!」


ナターシャが満面の笑みでこちらを見るから余計に緊張する。

レンは恐る恐る水晶の前まで出て、手をかざす。


水晶が透明さを無くすまでの時間が、果てし無く長い。

意識している上、緊張している時の時間は特に長い。


しかし、幾ら待っても水晶は透明のままだった。

シャーロット先生の顔を見る。


「あれ?おかしな。魔力量が出ない」


その様子を見ていたシャーロット先生も異変に気付く。

シャーロット先生が焦っている様子を見ているレンは、ますます心配になっていく。


「シャーロット先生、レンの魔力は?」


流石のナターシャも不安になって来たらしい。

レンとシャーロット先生を交互の見る。


「まさかとは思ったけど...

 アマクサ君、君は魔力を持たない魔法使いだね」


「「魔力を持たない魔法使い?」」


結果、シャーロット先生は不具合背はないと判断したらしい。


過去に一度だけあったらしい。

アルスマグナへの入学条件は、ローレッタ先生が言っていたのと同じだ。

魔力を持った者が入学を許される。


その条件は、一見簡単に思われる条件だが、それは違う。

魔法使いとしての競争率が高いらしい。


そのアルスマグナ魔法学園に魔力がない者がいるのだ。

いじめが起きるなんて考えなくても分かる。


だから、魔力がない者が入学を許可される訳がない。


では誰が、あまたある世界から魔力を持った者を判断し、入学を決めているのか。

それはこの水晶だ。


水晶の名は【運命の月(ルーナ・フォルトゥム)


初代【運命の魔法使い】が作りし物だ。

この水晶は毎年の学園の入学生を決める。


【運命の月】に聞き、教えられたことには間違いがなく、絶対だと言われている。


「魔力を持っていないのに入学を許された者のことだ」


レンは俯く。

魔法が使いたくて此処まで来たんだ。

最強の魔法使いにだってなれるかも...なんて考えていたのに。


なのに、魔法が使えない?


頭の中は真っ白だ。

レンは俯き、何も考えれなくなる。

その姿を見ていたナターシャは、なんと声をかければ良いか考える。


「アマクサ君、私はこの事を学園長にお知らせして来る。

 ナターシャちゃん、アマクサ君を頼んだよ」


「で...でも」


ナターシャが喋る前に、シャーロット先生は行ってしまった。

二人だけになったこの空間。

気まずいに決まっている。


「レン...」


「大丈夫だって!俺は魔力がなくても、世界一の魔法使いになってやる!」


レンは笑って言った。

ナターシャは何も言えなかった。


強がりだと分かったからだ。

頭の悪いナターシャでも分かった。

だから何て声をかけるか分からなかった。


「俺、ちょっと外に行って来る」


ここは一人にさせた方が良いのだろう。


「あ...うん」


魔法が使えないのなら帰るべきだろうな。

でも今更沙霧さんや舞に帰ってきたなんて言えない。


心の中にある不安な気持ちは少しずつ大きくなっていった。




まったりと投稿しようと思ったら、次々と投稿してしまう。

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