来る筈のない来訪者
魔ねき猫です。
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「今回攻めて来たのは【ストゥルティ】で間違いないです。
そして、奴らの目的は【始祖の魔法使い】の復活です」
【始祖の魔法使い】の復活。
確か【選ばれし魔法使い】との戦闘が終わった後、【始祖の魔法使い】は眠りについた事はあまり知られていないのだった。
だが何故【始祖の魔法使い】の復活に生徒の情報が載った本が必要なのか。
ヨミから聞いた内容は、シャルからすればとんでもないことだったらしい。
初代クレア家の当主から防いで来た【始祖の魔法使い】の復活。
それを邪魔する者が現れたのだ。
【選ばれし魔法使い】の立場からすると、絶対に阻止しなければならない。
犯罪組織の手に【始祖の魔法使い】が仲間に入ると、この世界は終わってしまう。
シャルは、すぐにヨミを抱き上げ、質問攻めにする。
【ストゥルティ】の構成員は?
そもそも【始祖の魔法使い】の復活方法とは?
などをヨミの返答も待たずに聞くが、ヨミが困っていた。
シャルも焦り過ぎていた事を自覚して後悔したのか、ヨミに謝る。
ヨミは人間の姿になり、レンの背後へと周り、シャルを警戒する。
レンの服を握り、凄い力で引っ張ってくる。
「シャル、落ち着け。ヨミが怖がってる。
しかも幾らヨミでも分からない事だってある。
今すぐに【始祖の魔法使い】が復活するわけでもないんだから」
今までも復活させようとする者がいた筈だ。
それを歴代の【選ばれし魔法使い】が阻止してきているのだろう。
今回だって大丈夫だろう。
復活していない以上、まだ焦る時ではないのは確かだが、阻止するための策を練らなければならない。
もし【始祖の魔法使い】が復活した場合を考えると、他の世界にまで影響を及ぼすだろう。
「ヨミちゃん、ごめんね?
でも、まさか【ストゥルティ】が【始祖の魔法使い】を復活させようとしてるなんて」
「大丈夫ですよ!
あとその、ご主人様。閲覧禁止の本を盗んだのは、実はこの学園の生徒なんです」
予想が的中した。
内部からの犯行ではないと、誰にも見られずに盗むなんて不可能だ。
しかも隠密系統の魔法を使う者か、もしくは簡単に部屋に侵入できる魔法を持っている者。
捕まえるのは結構厄介になるだろう。
「だろうな。誰にも見つからずに図書室に入れるのは学生じゃないと不可能だろう。」
レンは【スカイ】をリビングにある箱に収めると、近くのソファに座った。
それに続いて、シャルとヨミもソファに座った。
レンが真ん中に座っていたので、取り合いをする事も無く、レンを挟むようにして座った。
「その犯人の名前は?」
「イシュと呼ばれていました。。顔は仮面で隠れて見えませんでした。」
イシュ...シャルの顔を見るが、シャルは首を振る。
シャルも知らないらしい。
もしかしたら、組織内での名かもしれない。
本名を呼び合う犯罪集団なんて聞いた事もないからな。
「イシュか。覚えておこう」
「私は今から学園長に報告してくるわ。
さっきの事みたいに、危険な事はしないでよ?
それから、私がいないからって、ヨミちゃんと良い雰囲気になるのは無しだから!」
自分の使い魔と良い雰囲気ってどういう事だ?
レンは首を傾げながら覇気の無い返事をする。
シャルはレンの返事を聞くと、箒に乗って学園長の元へ行った。
ヨミは遠のいて行くシャルの姿を見て腕を伸ばし、ぐるぐる回って喜びを表現する。
シャルとヨミは何にか分からないが、張り合っている節がある。
「ヨミはシャルの事が嫌いなのか?」
「嫌いと言うかライバルと言うか......そんなことより、約束していたなんでも言うこと聞くってやつ覚えてます?」
最初の方はゴニョゴニョ言って聞こえなかった。
聞かれたくない内容なのだろう。
「覚えてるよ。ヨミが自由に決めてくれ。」
ヨミが手を組んで何か唸っている。
何をお願いしようか考えているのだろうか。
その姿が自分の娘みたいで愛くるしい。
「ご主人様とこれから毎日一緒に寝る、なんてどうですか!」
妙案を思い付いたように大きな声で言う。
だが内容は予想外の方向で攻めて来た。
レンはてっきり撫で撫でや、何か買って欲しい物でもあるのかと思ったが。
レンは断ろうとしたが、ヨミの輝いた目をしていたのに気付き、口を閉じてしまう。
色々と苦悩して考えた結果断ることにした。
「やっぱりそんなお願いより、他のお願いの方が...」
「ご主人様は、私との約束を破るのですか?」
ヨミの目には涙が溜まっていく。
そして、悲しい顔を見せないように下を向いている。
だが一瞬だけ悲しい顔が見えた。
「いや、そうだな。
今日から一緒に寝よう」
負けた。
ヨミの悲しそうな顔を見た上に、可愛い子との約束を破るのかと思ったら負けてしまった。
そうだ。これは何もやましい事は無いんだ
レンはヨミのお願いには弱いらしい。
ヨミと会話をしていると、外で物音がする。
シャルが帰って来たのかと思い、玄関まで行く。
「シャルさんが帰って来たのでしょうか?」
擦りガラスで少し人影が見える。
外の者は扉をノックした。
シャルじゃないらしい。
擦りガラスで見えるのは黒い服装をしている。
手には箒らしき物を持っているので、生徒なのだろうか。
だが時間はまだ正午だ。
他の生徒は授業をしているので学生ではない。
レンとシャルは、ヨミが手に入れた情報を報告するために休んでいる。
レンはゆっくりと扉をあけて行く。
そこには黒いフードを被った盗人のマスクの男だった。
真っ白な仮面の真ん中にニコリと笑っている目と口が書いてあった。
レンは危険な奴だと思い、数歩下がる。
異変に気付いたヨミが、リビングから来る。
「ご主人様!そいつがイシュです!
離れていてください。」
シャルはレンの前に来て、レンを守るように立つ。
仮面の男は一歩下がり、レンとヨミに向かって一礼する。
「こんにちは、アマクサ・レン君。君を捕まえに来たイシュと言う者です。
以後、お見知り置きを」
イシュ...イシュウ...異臭っ!?