盗まれたモノ
魔ねき猫です。
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薄れている意識の中、レンは柔らかいものを触った。
なんだこれ...
すごく柔らかくて、気持ち良い。
「やん...ご主人様のエッチ...」
聞き間違いじゃなかったら、今確かにヨミの声がした。
昨夜、ヨミが人間の姿になれると知ったレンとシャルは急いで、使い魔に詳しいことが書いてある本を読み漁った。
だが惜しくも人間の姿になる使い魔の情報はなかった。
シャルと相談した結果、あまり人に言うものじゃ無いと言うことになった。
新しい武器に関しては、シャルに言ったらすぐに作ってもらった。
何でも自分が知っている物じゃないと創造魔法は使えないらしい。
人間になれる使い魔だ。
最悪の場合捕まえられて売られるか、実験台にされる。
ここにはレンと同じで違う世界の人が集まっている。
いなくなったら最後、見つかる事はないだろう。
「なんだ、ヨミじゃないか...ってなんでヨミがここにいるんだ!」
目の前には裸になったヨミがいた。
人の姿をしているし、女の子という事で違う部屋で寝るという事だったが。
なぜか今、レンと同じ布団で、裸で添い寝している。
「ご主人様は、朝から大胆ですね?」
「ヨミが大胆なだけだ!
こんな姿シャルにでも見られたら...」
「私に見られたら...何かいけない事でも?」
背筋が凍る様な声で喋る人は、現在レンの中で一番この状況を見られたくない人だった。
恐る恐るドアを見ると、そこには朝食を作り終えたのか、エプロンを着たシャルだった。
「変態に食べさせるご飯なんてありません!」
勢いよく閉まったドアを遠い目で見ているレンに、当事者のヨミはニコニコしながら見ていた。
「シャルさん、怒っちゃいました」
「誰のせいだよ!
着替えて学園に行くぞ」
「はーい!」
ヨミは人の姿と猫の姿を自由に変える事ができるため、学園では猫の姿になってもらった。
だが他のクラスの、特にレンの事を馬鹿にしている生徒に聞かれるのは面倒くさそうで憂鬱だ。
人の姿のなれるのは何故かと聞いたが、ヨミにも分からなかったらしい。
ヨミはゴシックなドレスを着ている。
何故ここで着替えるんだと突っ込みたい気持ちを無視して自室から出る。
この世界には、新聞がある。
そして驚く事にインターネットと同じ様なものもある。
後からヨミも階段から降りてきた。
シャルはと言うと、不機嫌そうにテーブルに座って朝食を並び終えて、一人で食べていた。
「シャル、今朝のは誤解なんだよ。
目が覚めたら隣にヨミが居ただけで...」
「ふん」
結構怒っているみたいだ。
だけど、レンとヨミの分のご飯も置いてあった。
「シャルさんのご飯美味しいです!」
ヨミが一口食べた後、シャルのご飯を褒めた。
その言葉にシャルの頬が赤くなるのだから喜んでいるのが分かる。
今日の天気は晴れているのが、窓を見て気がつく。
そんな事を思っていると、この家の扉をノックする音が聞こえた。
「俺が出るよ」
レンは椅子から立ち上がり、扉の方へと向かう。
ノックの音が再び聞こえる。
急ぎの用なのだろうか?
扉を開けるとそこには、新入生歓迎会で会った【選ばれし魔法使い】の一人【無の魔法使い】イラ・ニヒル・マーシェがいた。
「確か...アマクサだっけ?
シャルを呼んで」
イラの顔は真剣そのものだった。
相当な急用だったのだろう。
右手には箒持っていると言う事は、飛んできた証拠だ。
その場でシャルを呼んだら、リビングから歩いてきた。
「昨晩、学園の歴史書が盗まれたらしい。
あの襲撃があった時に外の警備を厚くしたばかりに、機密文章を貯蔵してる場所に盗人が入ったみたい」
「何ですって!
どの様な古本が盗まれたの?」
「今探している途中らしい。一冊少ないと気づいて今に至るから。
シャルのお母さんも来てるみたいだから、あなたも来なさい」
本が盗まれただけでヘーゼさんが出てくるのだ。
機密文章を保管している本は相当凄いらしい。
その後、ヨミを猫の姿に戻ってもらい、箒に乗って学園に直行した。
ヨミは器用に箒に乗っている。まるで魔女の宅急...言わないでおこう。
やはりレンの箒は格別に速く、二人を置いて行く程だった。
「アマクサめ...魔法はできないくせに、箒だけは速いんだから」
イラが後ろでグチグチ煩いが、待ってあげたので文句無しだろう。
先生達と、ヘーゼさんは学園長の部屋で待っているらしいので、そこに向かう。
「シャル!久しぶり!
あら?アマクサ君!久しぶりですね!」
「ヘーゼさん、お久しぶりです!」
実際に見るともっと綺麗な人だ。
身長は少し高く、スタイルは抜群。
足元にいるヨミも「おお」と言って、その美貌に驚いている。
周りには学園長とローレッタ先生、シャーロット先生、サルバス先生など複数人の先生達がいた。
「お母様、事情はイラから聞きました。
これからどうするのでしょうか?」
「盗まれた本はわかったのよ?
今までの生徒の情報が載ってる本らしいわ。
魔法協会からどうなっているんだと事情の説明を催促されているわ」
魔法協会というのは、この世界で一番権力を持っている組織の事。
魔法に関しての法律から、大罪人の確保までをもしている。
学園長が椅子に腰掛け、ため息をする。
「ヘーゼさんの言っている事もしなくてはなりませんし、守護鳥の件、襲撃の件、そして今回の事。
一気に事が起き過ぎています。
その事についてもハッキリしておかなくてはなりません」
学園長は【ストゥルティ】が黒幕だと言った。
今まで穏やかだったアルスマグナ魔法学園だったが、急に事件が度重なるので何かあると思ったのだ。
だが、まだ尻尾すら掴めていない状態では何もできない。
「今は【ストゥルティ】が動き出すのを待つしかないんですか?」
レンはこのままやられてばかりでは嫌だった。
それはシャルだって一緒だ。
だが何もできない事には変わりない。
それが分かっている大人達は何も言えなかった。
だが、何者かが声をあげた。
「一つだけ、方法がありますけど」
重い空気の中、希望の光とも取れる言葉は、皆の視線を左右させる。
その声の主とは...
書き溜めが沢山あるけど、出来る限り1日一回投稿です。
気分が良い時は、何回か投稿します。