悩みとは、他人に言って初めて解決する
魔ねき猫です。
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目の前に現れたのは、神々しい鳥だった。
「これがシャルの使い魔...」
普通より大きな鳥だ。
だが教室には問題なく入っている。
教室が広いってのもあるが。
「貴方が次の主人なのね?」
クラスの皆が驚く。
それもそうだ。
今まだ召喚されていた使い魔は、喋る事はなかった。
「ええ、そうよ。貴方が【選ばれし魔法使い】のクレア家に使える朱雀で間違いないわね?」
「魔力量も申し分無し、人格も適正。良いわよ。
貴方を主人として認めるわ。」
これで使い魔の召喚は終わった。
魔法陣に魔力を流す事の出来ないレンは、挑戦すら出来なかった。
「多分、皆さんが疑問に思っているであろう事に答えます。
普通の使い魔は喋る事は愚か、シャルさんの使い魔の様に莫大な魔力を持っている事は無いでしょう。」
ローレッタ先生は話し出した。
皆が不思議だと思った事を。
「使い魔を召喚する際、それに相応しい魔力量を注いだ場合に起こるのです。
つまり、大きな魔力を注げば注ぐほど、強い使い魔が召喚されます」
事例はあるらしい。
【選ばれし魔法使い】ではない魔法使いが、使い魔を召喚した際に人語を話したと。
人語は喋れなくとも言っている事が分かっている使い魔も生まれてくる。
「勿論、成長した後にもう一度使い魔に魔力を流したら喋れる事だってあります。
皆も使い魔が話せれる程に、この学園で勉強をしてください」
その瞬間皆の目は輝きに溢れていた。
しかし、シャルだけは違った。
この場で一人だけ使い魔を召喚出来ていない少年。
レンを見ていた。
「レン...落ち込む事はないわ。
レンだっていつかは...」
授業の終わりお告げる鐘の音が鳴ったせいで、シャルは続きが言えなかった。
いや...もしかすると、鐘のせいでは無かったのかもしれない。
「シャル...良いんだ。
俺、シャルが教えてくれた先生に、魔法を通さない物質聞いてくるよ!」
レンは、シャルが後ろでレンの名前を呼んでいたのを無視して走って先生の元に行った。
ー昼の光に、夜の闇の深さが分からないー
そういう言葉がある様に、使い魔を召喚したシャルが慰めても逆効果だった。
「シャルは悪く無いのにシャルに当たるなんて...バディ失格だな」
いつだってシャルは俺の味方だったのにな。
レンは、シャルに自分の夢を話した時がある。
最強の魔法使いになりたいと。
シャルは応援してくれたのに。
最強の魔法使いになんてなれないのに、なりたいと思ってしまうのは我侭だろうか。
「おや?君はもしや、レン君だね?」
「ボイド先生?」
廊下で出会ったのは、シャルが魔法を通さない物質の事を知っているかもしれないと言っていた先生だ。
ボイド先生に連れられ、実験室に案内された。
「クレアさんから聞いたよ。
魔法に絶対的耐性がある物質を探しているんだね。少し待っていなさい」
ボイド先生は椅子から立ち上がり、部屋の奥にある沢山の引き出しからそれを探し始めた。
少し沈黙があったが、ボイド先生は話し始めた。
「レン君は廊下で悲しそうな顔をしていたね。
どうしてか教えてくれないかな?」
「この世界では、魔力がない人は夢を見てはいけないのでしょうか。」
ボイド先生は、少し手を止め、また探しだす。
「確かレン君は魔力が無かったんだね。
うーん。逆に聞いても良いかい、レン君。」
「は、はい」
「レン君の世界では、目が見えない子や足がない子は、前を見て進む事は許されなかったのかい?」
「そんな事は無いです!」
「それと同じだよ。足がない子は歩く事を禁止される。目が見えない子は見る事を禁止される。
そんな事あり得ない。魔力がない子が、夢をみる事を禁止されるなんてあり得ない。
夢を見るという事は...まだ諦めていない証拠だ」
レンは気付かされた。
自分の中では諦めかけていた最強の魔法使いになる夢。
どこかでまだ諦めたくない自分がいたなんて。
「あったあった。
これが魔法に絶対的耐性を持つ魔石【アダーストーン】」
赤黒い色をしているが、綺麗な石だった。
この石を探していたのだ。
「ボイド先生ありがとうございました!」
使い魔の授業で最後だったので、急いで寮へ帰る。
そしてシャルにも謝らないといけない。
荷物を取りに教室へ戻ったレンは、先ほど使っていた魔法陣を見つける。
ローレッタ先生が持って帰るのを忘れたのではないかと思った。
だがその前に気になった事があった。
もし自分がこの魔法陣に手をかざしたら...なんて。
「浅はかな夢は、時に自分を壊す...か」
ふとそんな言葉を思い出した。
お婆ちゃんの家に住んでいた頃、レンは好きな子がいた。
幼馴染の女の子だ。
その時、仲が良かった友達にその子が好きだと言った時、言われた言葉がそれだった。
その日は特に落ち込んだ。
お婆ちゃんの家と沙霧さんの家は意外に近い。
離れたかった気持ちもあって魔法学園に行こうと思ったのかもしれない。
「だけど、試す事だっていけない事ではないんだ」
恐る恐る魔法陣に、ゆっくりと手をかざす。
「あ!やっぱりここに忘れてたのね」
教室にか言ってきたのはローレッタ先生だった。
レンはかざしていた手を一瞬にして引っ込めた。
「あら、アマクサ君。何してたのですか?」
「い、いえ。何も」
どうせ使い魔なんて召喚出来はしないのだ。
そう思い、自分の荷物を持って教室を出ようとする。
「待ってください。
アマクサ君も試して見ますか?」
ローレッタ先生は笑顔でそう言った。
レンも少し笑ってしまった。
そんな表情を出すって事は、試して見たかったという印。
「いいんですか?」
「何もしないよりマシでしょう?」
そう言われたレンは、魔法陣に近づいていく。
高鳴る気持ちを抑えようとするレンと、どこか楽しみにしている自分がいた。
ボイド先生良い人だ。