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1-6 追い剥ぎ…ではありません

 朝―――。

 木々の隙間を抜けて、朝の日差しが森の中に差し込む。

 朝日と共に起床した俺は、昨夜の寝床代わりだった高い枝の上で体を伸ばす。


「クミャアァ」


 筋が伸びて、とっても気持ち良い!

 さてっと…。


 昨日は、リンゴをゲットしたすぐ後に陽が落ち始めて、暗くなってから動き回るのはどう考えてもリスクがでか過ぎる……と言う事で、さっさと寝る事にした。

 まあ、寝ると言っても簡単な話じゃなかったけども…。

 魔物がうろついている森の中、地面に寝るなんて危険過ぎる。会ってはいないが、狼とか熊とか、ヤバい動物だって居る可能性は十分にある。

 それを考えた時に、俺の寝る場所は自然と木の上になった。2m程度の高さでは首長が届いてしまいそうなので、登れる限界まで登って寝た。

 体も精神も疲れていたからスンナリ寝る事は出来たのだが、俺がビビっているからか、物音や気配ですぐに目が覚めて、とてもではないが快眠とは行かなかった…。

 体の疲れがとれている気がしない…。

 正直、元の世界だったら遅刻覚悟で2度寝しようかと本気で悩んでいたかもしれない。……まあ、遅刻すると後が酷いから結局無理にでも起きるんですけどね…。


 枝をヒョイヒョイッと飛び移り、地面に降りる。

 ああ…そう言えば高い場所でジャンプしたり、寝たりするのに全然恐怖を感じないな? 俺自身は特に高い場所が得意って訳じゃないし、これも猫になった影響かな。まあ、怖くないのは有り難い。

 収集箱から残飯こと昨日の食い残しのリンゴの欠片を出し、朝飯にする。

 ん? リンゴが酸化での色落ちをしてない…? 剥いたばかりのように実が綺麗なまま、汁気も失われて居ない。

 もしかして、収集箱の中って時間が止まってる設定なのか? だとしたら、水や食べ物が腐る心配が無いのでとっても嬉しい!

 軽く水を飲んで……ごちそうさまっと。

 さてっと、今日も元気に川を追っかけて下って行きますか。


 と、歩きだしたものの―――特に語る程の変化はなかった…。


 日が傾くまで歩いた。

 疲れたら休んで、暫くしたらまた歩く。

 そんな事を1日中していたが、一向に変化がない。

 動物らしき影は何度か見たが、下手に近付くと危ない目に遭いそうなので怖くて正体を確かめる事すら出来なかった。

 人里はない。

 人影も無い。

 新しい食べ物も見つからない………ああ、でもキノコを3つばかり見つけた。ただ、俺の知識では食べられる物なのかどうか判別出来なかったので、収集箱に入れるだけ留めている。


 『【キノコ Lv.2】

 カテゴリー:素材

 サイズ:小

 レアリティ:F

 所持数:3/30』


 まあ、こんな感じだ。

 せめて毒なのかどうかの判定だけでもしてくれればいいんだけど……そこまで便利じゃねえんだよなぁ…。

 つっても、毒が無かったところで、キノコの生齧りとか勘弁して欲しいけど…。

 ……目的地もなく歩き続けると言うのは予想以上に体力と精神力を消耗する。

 どこまで歩けばいいのか? いつまで歩けばいいのか? 明確な数字が分からないのは、だんだん体が沼に引っ張り込まれて行くような不安と恐怖を感じる。

 しかし、足を止めればそれこそ終わりだ。

 死にたくないなら歩かなきゃ。

 少し暗くなってるけど、今日はもう少しだけ歩いてみるか……と、足を踏み出した時、何かを感じた。


「ミ?」


 違和感。


――― 臭い。


 森の中で嗅いだ事のない臭さ。

 何かが腐った、鼻を突く臭い。

 クンクンっと臭いの場所を探る。

 小川の対岸―――木々や草で先が見えない。でも、多分そんなに遠くないな。猫の嗅覚がどこまで信用出来るのかは分かんないけど。

 とりあえず行ってみるか?

 俺が臭いに気付いたって事は、他の動物や…あの魔物だって気付く筈だ。でも、強い臭いを動物は嫌う。って事は、この腐臭に近付く事にそこまでリスクは無い筈……まあ、俺の常識が通じない事態でも起こって居ない限りは。

 小川をジャンプで飛び越えて対岸に渡る。

 身体強化のボーナスを貰っているお陰で比較的楽に飛び越す事が出来たけど、素の状態でのジャンプだったらバラエティ番組なノリで川に落ちてたな…。

 トコトコ歩いて臭いの出所に近付く。

 うぇえ……近付くと、臭くて鼻の奥がピリピリする…。鼻が良いのも考え物だな…。

 ぶっちゃけ「近付く必要あんの?」とは自分でも思わなくもないけど…。気になるじゃん? 野次馬根性的な物が目を覚ましてしまったのですよ。

 まあ、どんな危険が転がってるか分かったもんじゃねえから、警戒は怠らずに。

 草を掻き分けて臭いの出所に辿り着く。

 そこには


――― 人間の死体が転がって居た



 「ミャァあッ!!!?」


 うっげぁええええ!?

 …っと、驚いて悲鳴をあげてしまった。

 慌てて口を閉じて、近くに何か居ないか警戒する。大丈夫? 今の声に釣られて何か近寄ってきたりしてないかな?

 ………大丈夫…そうだな。

 よし。

 一旦深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

 あービックリした…! いきなり死体に出くわすとか…まあ、腐臭の時点で何かの死体である事は予想出来てたけど、人の死体とか全然予想して無かったな。

 改めて観察する。

 死体は男。筋肉質で身長は180くらいかな?

 皮の鎧を身に付け、傍らには真っ二つになった剣が落ちていた。……えらいファンタジーな恰好やねぇ…流石異世界。

 そして何より―――顔が半分無い。

 鎧から露出した部位も獣に喰われたらしく、頭から爪先まで至るところに黒くなった肉と折れた骨が露出し、腐った血が地面と傷口で固まり、傷口に虫が群がっていた。

 ……グロ…。

 俺の人間の時の感覚で言えば、胃の中の物を全部吐き出して、暫く食べ物を口に出来なくなるくらいのトラウマな光景―――なのだが、吐く程の嫌悪感はないな…? やっぱ体が猫だからか? 肉食の猫科の動物としては、動物の死骸なんて気にする程の物じゃない……って事かな?

 元人間としては、穴でも掘って弔ってやりたいところだが、子猫の体で悠長にそんな事してたら俺の方が危ない。

 この死体がどこの誰かは知らないが、黙祷で冥福を祈る事ぐらいはしておく。

 さてっと……死体漁りは気が引けるが、コッチも生きるか死ぬかのギリギリなところですし、死体の持ってるアイテムは貰って行こう。

 死体に触るのはちょっと嫌な気分だ。そしてそこからアイテムを剥ぐのは、更に嫌な気分だ…。

 罪悪感と自分への嫌悪感が凄い……が、これも生きる為だ。

 死体の纏っていた皮の鎧に触れる。途端に鎧が消えて、死体がインナーだけになる。


 『【レザーアーマー Lv.4】

 カテゴリー:防具

 サイズ:大

 レアリティ:F

 所持数:1/10』


『新しいアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:微)』


 防具カテゴリーのアイテム初ゲット…。

 嬉しさよりも、死人とは言え他人の物を盗み取った事で心が重くなって泣きたくなる。

 あれ? 所持数限界が10個? もしかして防具って素材系よりも所持数限界厳しいのか…。

 続いて落ちていた折れた剣。


 『【破損した武器 Lv.1】

 カテゴリー:素材

 サイズ:小

 レアリティ:F

 所持数:2/30』


『新しいアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:微)』


 流石に折れてる物を武器とは認識しないか。

 まあ、でも、真っ二つになっていたお陰で数的には2つだし、ボーナスも貰えたから良いか。

 次に取りかかろうとするが、ログに続きが流れている事に気付いて目を閉じて読む。


『条件≪10種類のアイテムをコレクトする≫を満たした為、以下のうちから1つボーナスを選ぶ事ができます。

・肉体能力強化(効果:大)

収集箱(コレクトボックス)内のアイテムの所持数限界を上昇

・新しいスキルを取得する(ただしランダム)』


 おお、とっても素敵な選べるボーナス!!?

 陰鬱と沈んだ心を癒してくれるタイミングの良い幸運!

 ……もしかして、この人が俺に「ちゃんと生きろよ」と応援してくれているのかな? とか、都合のいい事を考えたり。

 うん、よし、頑張ろう!

 で、ボーナスはどうするかな?

 正直1番欲しいのは肉体強化。

 今まで貰っていた効果:微ではない、効果:大の肉体能力強化だ。多分、体感出来るくらいの上昇値だろう。

 肉体能力がアップすれば、歩くのが楽になるし、敵と遭遇しても逃げられる可能性が上がる。地味に感覚器官も強化されてるから、食べ物を探すのにも役に立つ筈…。

 ただ……目先の事だけを考えていいのか?

 これから先を考えるなら、最初に切り捨てる候補は肉体能力強化だ。何故なら、このボーナスは貰わなくても、アイテムを収集していけばいずれは同等の力が手に入るからだ。対して他2つは恐らくボーナスでしか手にする事が出来ない。

 他2つの候補……収集箱内のアイテム所持数限界上昇―――は、ぶっちゃけ要らないな。これ今入ってる物の所持数限界を上げるボーナスだろ? 今入ってる物で、今以上に所持したい物なんてないしな…。まあ、強いて言うなら水くらいか? それにしたって、別に「絶対欲しい!!」って程じゃない。「余裕が有るなら、持っておくか」って程度の事だ。

 ……とすると、最後の奴だな。

 新しいスキルを取得……これは、なんだ? 【収集家(コレクター)】みたいな、新しい異能力が手に入るって事…で良いのか? でもカッコでランダムって書いてあるんですけど…。

 つまりコレ、あれじゃん? 能力ガチャって事でしょ?

 ボーナス一回分消費してガチャ引けます…的な。

 ………学生時代に1カ月のバイト代全部ガチャに注ぎ込んで地獄見た事を思い出してしまった…。まあ、あれのお陰ですっぱりソシャゲ断ち出来たと思えば……ね? うん。

 …引いてみるか? 何が出るか分かんないけど、どんな物が出るのかの確認の意味でも1回はやる価値がある。……まあ、今後もこの能力ガチャがボーナスで出て来るのかは知らんけども…。


『“新しいスキルを取得する”が選択されました。ランダムで派生スキルを1つ取得』


 ん? 派生スキルってなんぞ?


『派生スキル【ショットブースト】を取得しました』

『条件≪派生スキルを取得する≫を満たした為、以下のカテゴリーが解放されました。

・カテゴリー:派生スキル

以後、解放されたカテゴリーのスキルをコレクトする事が可能になりました』


 え? 何? アイテムだけじゃなくて異能力(スキル)も収集可能なの!? それって凄くない!? 万能じゃない!?

 いや、なんつーか………本当に凄いな…? なんでも収集出来る…(まさ)に“収集家(コレクター)”って感じ…。

 まあ、驚きは一旦横に置こう。

 このショットブーストってのは、どんな能力なのかね? 名前から察するに…撃つ能力の強化って事? 銃とか? 弓とか? そんな物持ってませんけど。って言うか持ってたとしても猫ですから使えませんけど?

 …………これは、うん、まあ、うん、あれだ…ハズレ引いた感じじゃない?


 いやぁああああああああッ!!!!!?


「ミャァアアアアアアアアアッ!!!?」


 人間の時に散々感じたハズレガチャの絶望感が蘇り、頭を抱えてその場でゴロゴロとのた打ち回る。

 貴重な選べるボーナス無駄にしてもうたーーーッ!!!

 どんな物が出るかの確認の意味でも1回はやる価値がある? ねえよ!! ぶっちゃけそんな(もん)ガチャしたかった言い訳だわ!!



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