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1-4 異能力に気付いて

「ミィ……」


 小さく息を吐き、気持ちを落ち着かせてから辺りの様子を窺う。

 見える範囲に大きな奴は居ないな?

 はぁ~…マジで怖かった…!!!

 何だよアレ!? コッチの世界ってあんな怪物が居んのかよ!? 冗談じゃねえよッ!! こんな危ない世界で、生きていける訳ねーだろうが!!?

 人の体でも生きていけるか分からないのに、猫て!? 子猫て!? 鬼畜って言うか無理ゲーじゃない!?

 いや、いやいやいや、本気(マジ)で嘆いてる場合じゃないって、どうする…?

 …どうするも何もねーよ。どんなに辛かろうが怖かろうが、死にたくないなら生き抜くしかない。

 じゃあ、具体的にどうするって話だ…。

 猫の体じゃ、兎にすら勝てない。あんな異形なんてどう頑張ったって勝てる訳ない。

 逃げるか隠れるか。どっちにしたって、やり続けるには限界がある。子猫の俺の敵は大型の存在だけじゃない。蛇だって鳥だって、なんなら虫にだって捕食されかねない。

 力だ。

 身を守れる力が要る! しかも大至急!!

 でも、そんな物そこらに転がってる訳―――いや、待てよ? 転生職員との会話が本当だとすれば、確か何か力をくれるって言ってたな?

 とりあえず色々試してみよう。

 木を殴る。ぺチンと前脚が痛くなっただけだった。

 ジャンプする。脚力が足りないのか、20cm程飛ぶのがやっとだった。

 走る。普通に疲れた。

 鳴く。声に釣られて何かが寄って来るんじゃないかとビビっただけだった。

 結果は、腹が更に減っただけだった。

 ダメじゃん…。

 何? もしかして転生職員が力を渡し忘れたとか? もう…泣きたい…。


「ミャァぁ…」


 空腹と絶望感で立って居られなくなる。

 全然ダメダメじゃん…。いっそ、もう本気で諦めた方が良いのかなぁ? 正体不明の力なんぞに頼らずに、そこらに落ちてる物とか使って生きて行くって方が現実的かもしれん。とは言え、子猫の体じゃまともに物を持ち歩けないしなぁ…。

 ちょっと休憩…と座った瞬間、足元に有った木の枝に触れる。

 体の中で何かが“開く”ような錯覚。

 なんだ? と思った時には、足元の木の枝が消えていて、そして頭の中に突然文字が打ち出される。


 『【木材 Lv.1】

 カテゴリー:素材

 サイズ:小

 レアリティ:F

 所持数:1/30』


 は? 何これ?

 まるで(まぶた)の裏にディスプレイが付いているかのように、目を閉じるとこの良く分からん文字が見える。

 えーっと……? どう言う事?

 事態を呑み込めていない俺を無視して、更に文字が打ち出される。


『条件≪カテゴリー:素材に1種類のアイテムをコレクトする≫を満たした為、以下のカテゴリーが解放されました。

・カテゴリー:武器

・カテゴリー:防具

・カテゴリー:装飾品

以後、解放されたカテゴリーのアイテムをコレクトする事が可能になりました』


 収集(コレクト)? が可能になった?

 更に文字打ちは続く。


『新しいアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:微)』


 どうやらこれで文字打ちは止まったらしく、暫く待ってもそれ以上は文字が脳裏に浮かぶ事はない。

 ん~? これはどう言う事かしら?

 試しに、近くに有った別の枝に触れてみる。

 パッと消える。

 そして文字打ち(ログ)が流れる。


 『【木材 Lv.1】

 カテゴリー:素材

 サイズ:小

 レアリティ:F

 所持数:2/30』


 もしかして―――いや、もしかしなくても、これが転生職員のくれた能力なのか?

 アイテムを収納……じゃないな、収集する能力って事か?

 ふむ…だとすれば、猫である俺に唯一与えられた生きる術がこの能力って事になる。まずは、この能力を理解しない事には始まらないな。

 消えたアイテムは、どこかに収納されてるのかな? だったら、取り出すとか出来るのか?

 そんな事を考えていると、脳裏にさっき消した枝の姿が浮かび上がる。それをカーソルを動かす様に意識の外まで移動させる。すると、


「みゃッ!」


 突然ポトリと、目の前に枝が落ちた。

 ビックリして思わず可愛らしい声で鳴いてしまった…。


 『【木材 Lv.1】

 カテゴリー:素材

 サイズ:小

 レアリティ:F

 所持数:1/30』


 ログが流れた。

 所持数のところが減ったな…って事は、取り出す事が出来たって事か。試しにもう1度同じ工程をしてみる。

 先程落ちた枝の上に、重なるように2本目の枝が落ちる。


収集箱(コレクトボックス)の中身が空になりました』


 収集箱? これがゲームで言うストレージとか、アイテムボックスとかそんな感じの奴って事か? その箱が俺の中に存在しているのか、異空間的な場所に在るのかは分からないが……まあ、深く考えないでおこう。俺の常識で考えても答えが出るような事じゃない気がするし…。

 枝に触れてみる。

 何も起こらない。

 「収集箱に入れる」と意識しながらもう1度触れると、今度は消えた……いや、収納された。

 なる程。触れた物を収集するかどうかは、俺の意識でオン、オフが出来るのか。

 アイテムを入れた時に流れるログは、そのアイテムの詳細(ステータス)だよな?

 木材……? 木の種類じゃなくて、ただの木の素材として表記されてる? 枝だからか? 幹とかだったら違うんかな? あと横についてるレベル表記はなんだ? 鍛えたら上がるのか? いや、でも木材を鍛える意味が分からんだろう。

 カテゴリーってのは、多分収集箱内での分類だな。

 サイズ…これはそのまま大きさの事だ。

 レアリティ……レアリティ? 普通に考えれば希少度って事だけど。ただの枝がFって事は、Fが最低評価って事だな、多分。とすると、1番上がAとか、そんな感じか。

 所持数は、そのアイテムを所持できる限界数か? 流石に全アイテムでの所持限界数って事はない……とは思いたい…。いや、でもダンジョンRPGとかだと、全部でアイテム30個くらいしか持ち歩けないとかざらにある設定だしな…。これは重要案件なので、後でちゃんと試してみよう。

 さて、次が俺が1番引っ掛かった部分だ。

 頭の中のログを少しスクロールして戻す。

 1本目の枝を収集箱に入れた時に打ち出されたログ。


『新しいアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:微)』


 これだ。

 言葉通りに受け取るのなら、俺の能力値がチョビッとだけ上昇したって事なんだが……全然パワーアップした感じはしない。まあ、効果は微って書いてあるしな…。ステータス表示とかあったら、多分+1とか2とか、誤差レベルの上昇値なんだろう。

 しかし―――「新しいアイテムが収集(コレクト)された事により」って事は、これから新しいアイテムを収集箱に入れるごとに、毎回このボーナスが発生するって事じゃないか?

 だとすれば、これ凄い事だぞ!? プラスされる数値が1とか2でも、それが100回、200回と続いたら猛獣のような強さになれるかもしれない!

 って事は、アイテムを集め続けたら―――なんてこった……猫の身でありながら、もしかして最強にだってなれるんじゃね!?

 ………まあ、今は兎にすら勝てないんですけどね…。




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