2-15 猫的戦闘
どうも皆様、いつも通りに可愛い子猫な俺です。
アザリア達とアオダイショウ……じゃない、ブルーサーペントを討伐し、その死体を持って帰ると言うアザリア達と別れて、俺は森の中に残って居た。
と言うのも、折角こんな森の奥まで来たんだし、オーガベアでも探してみようかな……と。
10分程歩き回って周囲の臭いを探りつつ、【バードアイ】でそれらしい影を探す。
そして―――見つけた。
頭に角が生え、腕が異常発達した熊。
念願のオーガベアを見つけた。殺してでも角を奪い取るッ!!!
目立つ【仮想体】は一旦収集箱に引っ込めて、【隠形】で気配を消した俺だけで木の上を渡り歩いて近付く。
コソッと移動していると―――
『【隠形 Lv.2】のスキルレベルが上がり【隠形 Lv.3】になりました。スキル使用中は自分の発生させた音を消す事が可能になりました』
おっとー、使い続けた甲斐もあってレベルアップしたか。
しかも、いよいよ消音機能搭載か。
ってか、よくよく考えたらブルーサーペントの使ってた消える能力って最高レベルの【隠形】じゃないの? ……いや、俺が気付けたから最高レベルってのは言い過ぎだな。「そこそこなレベル」と言っておこう。
でも、そうか……俺が【隠形】使ってる時の相手の気持ちってのはあんな感じだったのか……確かに恐ろしいな。まあ、俺はまだ姿消せる訳じゃないけど。
スキルが強化されてウキウキ気分でオーガベアに近付く。
スキルの効果を確かめる為に、木の上でミャーミャー鳴いてみたが、聞こえているような反応は一切無い。どうやら、本当に俺の出した音は消されているらしい。
良いよねスキルが便利になって行く感じ。レベルアップしたなぁって感じが嬉しい。
で、だ。
この熊さんはどうしようかね?
はっ倒すのは決まっているけど、どう倒したもんかな?
魔法使えば【ライトニングボルト】一発で倒せるのはもう分かっているし、物理攻撃で倒せるか試してみるか?
【仮想体】のパワーなら倒せるだろうが、俺が知りたいのは猫の俺単体での戦闘力だ。
常に最悪の状況を想定しておくのは弱者としての当然の備え。
もし【仮想体】が使えない状況になったら―――。
もし“旭日の剣”を敵に奪われたら―――。
そんな最悪の状況を想定して、俺単体でどの程度敵と戦えるのかを知っておきたい。って訳で、出来る限り【仮想体】にも旭日の剣にも頼らない戦い方でこの熊を倒す。
魔法……も一応使わない方向で。魔法や天術を封じる術だって有るかもしれんしね? とは言え、全封じは流石に縛りプレイ過ぎてしんどい。支援魔法・天術はアリでいこう。
と言う訳で、
【ディフェンシブ】【パワーエクステンド】
防御力、攻撃力強化。
戦闘前に自身を強化するのは定石。そんで、ついでに
【盲目】
これは、クルガの町の魔族との戦闘の時に収集した魔法の1つ。相手の視界を一時的に奪う魔法。
【ブレイクストレングス】
同じく魔族の方々から貰った(食らった)魔法。相手の肉体能力を下げる弱体化魔法。パワー、スピード、耐久力、全部下げてくれるっぽいけど、効果自体はかなり低い。でも、まあ重ね掛け可能なら相当使えるな。
突然視界を封じられた熊が、ビックリしたのかバタバタと暴れ始める。
よしよし、狙い通り。
さてさて、ここからは攻撃のターンだ。
魔法、天術、【仮想体】を抜いたら、俺の攻撃は投射1択だ。
じゃ、やってみるか。
アイアンナイフを収集箱から、投げる―――!
音速を越えて撃ち出されたナイフ。
1撃で絶命させるつもりで心臓を狙った……が、バタバタと暴れて居た為に狙いが逸れて、筋肉の盛り上がった右腕に刺さる。
「ガぁッぁああッ!!」
血が噴き出し、更に暴れる。
周囲の木々を棒きれのように圧し折り、地面がひび割れる程踏みつける。
………怖っ……絶対接近戦したくねーわ。
にしても、結構硬いな? 今の俺の投射の威力なら体貫通出来ると思ったけど、刺さっただけか……。魔法で弱体化もさせてるのに……ちょっとショック。
まあ、弾にしたのが攻撃力最低辺の鉄のナイフだったし、うん。
変に苦しめるのもアレですし、早いところトドメ刺しちまおう。
次の弾は―――魔法銀の槍!
こんな槍をどこで手に入れたのかって?
これはアレですよ。クルガの町の魔族連中の形見です。
町の住人達が、町を守る為に使うっつーんで、流石に全部は貰えなかったけど、勇者モドキが欲しいと言えば「嫌」とは言える訳も無く、目ぼしい武器防具は貰った。
魔法銀の槍はその1つ。
まあ、御託を並べるのはこれくらいにして投げる。
ヒュンっと空気の壁を貫通し、一瞬で音速を越えた青みがかった銀の槍は、一直線に熊に向かい、擦り抜けるように音も無く―――心臓を貫いた。
よし!
やっぱナイフに比べて槍は貫通力が高いな。まあ、単純に攻撃力やらレアリティの差ってのもあるけど。
心臓をぶち抜かれた熊さんは一瞬で絶命し、糸が切れたように膝を折る。
脅威が去った事に安堵したその瞬間―――熊が地面に倒れる。
……別に狙った訳ではないだろうが(当たり前だが)、地面に向かって頭突きをするような倒れ方をする。
あっ、そんな倒れ方をすると、頭の角に傷がつくんじゃないの? とか思った矢先、熊の頭が地面にめり込む程強く打ちつけられ―――
ボギッ
クルクルと宙を舞う白い角。
………は?
俺が唖然としている間に、ポトッと地面に落ちる。
…………これは、うん? どう言う事だ?
角が折れた?
いや、いやいやいや、あれですよねコレ!? 決して折れた訳じゃねーから!! ただ、ちょっと、そう、あれだよ! 体を張ったギャグなだけだって、うん!! 間違いねえよ!!
そう、だからきっと、大丈夫! ちゃんとレアな角として収集箱も処理してくれるって、うん! 大丈夫大丈夫、本当!
木から下りて、恐る恐る折れた……いや折れてない! 折れてないから! 解体作業の手間を省いてくれただけだからきっと!!
………ともかく、その角に触れる。
『【破損した魔物素材 Lv.1】
カテゴリー:素材
サイズ:小
レアリティ:F
所持数:1/30』
いやぁぁぁぁああああああああ!!!!! 目の前が真っ暗だよぉおおおおお!!!
………いやいや、落ち着くんだ俺……うん。
たかが素材の入手をミスっただけだから、うん。
…………。
………………。
…………………。
ダメぇぇええええッ!!! 納得出来ないよぉおおおお!!
チキショウッ!!! なんでこんな事になっちまったんだよぉおお!!
これが、あれか? 噂に聞く、求める者には手に入らない物欲センサーって奴か? 腹立つ………死ぬ程腹立つ……!!
ダメだコレ。もうやる気が出ないわ。
今日の俺のやる気ゲージは尽きました。また明日出直して下さい。
あ~、無理無理。今日はもう帰って不貞寝する以外の選択肢がねーわ。
熊さんの死体は………もう良いや、背負って運ぶの面倒臭いし、さっさと収集箱に放り込む。
………目新しい素材は無いっと……。つくづく実りの無い時間だったわ…。
さっさと帰って寝て忘れよう。




