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11-26 インチキ臭いどころかインチキです

 この世界の大きな戦いの基本は、大規模魔法だの天術だのをいかに効率良く叩き込んでダメージを与えるかだ……ってな事を、アドバンスと戦った時に思ってたなぁ。

 あれから精々4ヵ月だってのに、随分と長い時間を過ごした気がする……。まあ、それだけ濃い時間を生きて来たって事なんだろうけど。


「対魔法防御!」


 下の方で誰かが叫ぶ声を聞きながら、そんな事を呑気にそんな事を思っていた。

 おっさんが身を(かが)めながら、肩に乗っている俺を自身の手で覆って護ろうとする。

 ありがとう、おっさん。

 でも別に大丈夫だぜ? どうせ有象無象の魔族の魔法なんて、魔力値の桁が違い過ぎてダメージ食らわないしな。


 岩山の陰から雨あられと乱射される魔法の数々。

 その魔法の隙間を縫うように翼を持った魔族が高速で突っ込んで来て、少し遅れて騎馬や足の早い四足系の魔族が続く。

 高速で突っ込んでくる魔族から大分遅れて、重武装の歩兵が岩山の陰からゾロゾロと現れる。

 …………この世界の兵法は分からんが、目の前の敵の出方を見て判断するなら、まず魔法の連打で砦の防御を崩し、コチラの対空攻撃が止まっている間に空から砦の中に侵入。内側から引っ掻き回しつつ出来れば開門まで持って行く。

 まあ、開門させなくても弓兵や術士を潰してしまえば後から来る騎馬が近付きやすくなり、時間を稼げば外から門を開けられる。

 門が開けば歩兵が雪崩れ込んで、数の力で一気に詰み。

 シナリオとしてはこんなところだろうか?

 敵の数はどれだけだ? 今視界に入っている1万近い数ですら一角でしかないだろう。

 こう言う大規模戦闘は、アドバンスの時以来か……? まあ、規模で言えば今回の方が何倍も上だけど。

 思い返せば、あの時は逃げる事だけ考えてて……ってか、実際に逃げ出して本当に禄でもない野郎だな俺は……。


 けど――――今は違う。

 

 逃げねえし、今の俺は、あの時のような“無力な猫”じゃない!

 それを、ここで、証明しろ!!


 【全は一、一は全(レギオン)


 全身に熱が回る。

 体の奥の方で“獣”が吠える。

 うるせぇ、すっこんでろ!! ここはテメェの出番じゃねえよ!

 表に出て来ようとする獣を、収集箱の奥へと押し戻す。同時に、旭日の剣を収集箱から引っ張り出して浮かべる。


「何をするつもりだ……?」

「(まあ、見てなさいって)」


 魔王同盟が初手で魔法をぶっ放して来るのは分かり切っていた。

 その対策法も既に俺は持っている。

 目を閉じて天術のリストを開き、“それ”を選ぶ。


 【サンクチュアリ】


 俺を中心に光のドームが広がり、全てを飲み込む。

 通常なら1、2kmの効果範囲が、俺の膨大な魔力と、旭日の剣の装備効果“天術の効果プラス補正”によって5km先まで広がる。

 砦の中の皆も、コッチに向かってくる魔族達も、飛んでくる魔法も、岩山の先の方まで全てが光のドームに呑まれる。

 そして、【サンクチュアリ】の効果により範囲内での魔法の使用を禁止に。ついでに発動中の魔法を無効にする!

 パキンッとガラスの割れるような音と共に、雨あられと飛んで来ていた魔法が全て消失。

 ついでに俺が敵と認識する対象――――魔王同盟の連中全てにえげつない弱体化(デバフ)をプレゼント。反対に、味方に対しては同等レベルの強化(バフ)を施す。

 …………本当に今更だが、1人で使う分にはあまり思わなかったけど、集団戦で使うとヤバ過ぎじゃないこの天術? こんなん振り回されたら、敵の親玉が「ちょっと待って下さいよお!」って泣くわ。

 アドバンスの奴も平気な顔してたけど、心の中では「勘弁して下さいよぉ!」とか泣いてたのかしら? だとしたら面白いな。

 まあ、どうでも良いか。


「む……! これは……究極天術か!? しかし、勇者は1人1種しか使えぬ筈……! 剣の勇者は【審判の雷(ジャッジメントボルト)】だけでは――――!?」


 驚いているおっさんを無視する。

 今はそれどころではない。

 魔法が打ち消されて戸惑っている敵。

 空を飛んでいた連中は弱体化を受けて速度も高度も保てず地に落ち、騎馬達も何人かが馬から転がり落ち、重装歩兵が全身鎧(フルプレートアーマー)の重さに耐えきれず足が止まる。

 「ざまぁ!」と腹を抱えて笑ってやりたい衝動をグッと我慢する。

 笑える展開は――――ここからだ!

 再び瞼の裏で天術のリストを開き、【審判の雷】を選択。

 足を止めている敵のど真ん中に、巨大な柱のような白い雷。砦に効果が届かないように細心の注意を払う事も忘れない。

 通常の状態であっても魔王レベルでもなければ即死。しかも【サンクチュアリ】の弱体化が入った状態では、どれだけ対策をしてあっても生き残れない。

 白い雷に呑まれた魔族は1秒とかからず消滅し、纏っていた防具や持っていた武器だけが地面に転がる。

 ただ、【審判の雷】の効果範囲では頑張っても1発では敵を全て捕らえられない。

 なので――――“連鎖起動(チェイントリガー)”!


 【審判の雷】×100!!


 視界が真っ白になる。

 瞼を閉じても眼球を貫いて来る凄まじい光と轟音。

 魔族だけを焼き尽くす、無慈悲で圧倒的な暴力。

 天を貫く100本の光の柱。

 勇者の使う“奥の手”に相応しい神々しさ。逆に、襲われる魔族達にしてみれば禍々しい光。

 多分、これだけやっても敵の1割も削れていない。

 だが、それで良い。

 俺の狙いは初手で全滅させる事じゃない。相手の初手を潰して、敵の動きを遅くさせる事だ。

 ちなみに……連鎖起動を使う為には、同時に魔法や天術を吐き出す為の武器か防具を出していなければならないのだが、今回に限ってはその必要がない。何故なら、この砦に居る味方は、大多数が“収集箱から出した武具”を装備しているからだ。

 ついでにもう1つ言っておくと、これだけやっても魔力は全然減っていない。【全は一、一は全】で魔力消費100分の1に重ねて、旭日の剣の“超神聖属性の天術は消費魔力2分の1”の効果で、本来の200分の1しか魔力を消費していないからだ。

 超絶便利でアザース!

 心の中で、誰に言ってるのか分からない礼を言っている間に【審判の雷】のエフェクトが切れて静寂が辺りに満ちる。


「これは……」

「(見覚えあった? おっさんには耐えられた奴だけど)」

「……今、つくづくお前が味方で良かったと思ったよ」


 まあ、弱体化したおっさんじゃあ、間違いなく耐えられないだろうからな? え? そう言う話じゃなくて?

 いや、そんな事は今はどうでも良い!

 コッチの砦を襲撃されたって事は、タイミングを合わせて北西の砦の方でも動きがある筈――――もしくは現在進行形で動いている筈。

 もし仮にコッチと同じような展開だったとすれば、アッチはヤバい。アッチにアザリアが居れば【サンクチュアリ】で防御できるが、今うちの妹分は町で離れるのを拒否する人達の説得に回ってるし。

 だが――――この展開も織り込み済み!

 何の為にアッチにバルトと双子を詰めさせてたと思ってんだ。俺が対応するまでの時間くらい余裕で稼いでくれるわ。


「(ちょっとアッチの砦見て来る!)」


 おっさんの返事を待たず、【転移魔法(テレポート)】でその場から消えた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 猫にゃんにゃん、かっこいい! 次回は師弟で活躍かな、楽しみです
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