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11-14 猫はコソコソする

 とりあえず時間をかけるのも馬鹿らしいので、さっさと“転移門(ゲート)”を収集箱から引っ張り出す。

 久々の……ど、こ、で、も、●ア~!

 荒野にポツンと木製の扉と言うのは中々シュールな光景だが、これはこれで結構絵になるような気がする。

 それはともかく――――適当な場所にワープしよう。

 ……どうでも良いが、転移って言うと情緒もへったくれも無いが、ワープって言うと途端に浪漫に溢れるな。

 転移魔法をこれからはワープ魔法と呼ぼう…………いや、やっぱり語呂が悪いから止めよう。

 転移門の仕様は、移動可能範囲内にある魔力濃度の高い場所に転移出来る……だったよね、確か?

 この国の中にもいくつか転移出来る場所が有るっぽいから、適当に回ってみるか? どっかでピーナッツの居場所に当たるかもしれないし……そうでなきゃ、大きな町で情報収集して帰るか。

 ん…………? ウィンダルム山脈の半端な所に1つポインタが光っている。

 大陸の南側――――ツヴァルグ王国側で使った時には何もなかったよな……? あれ? もしかしてこの魔道具の仕様って……いや、一先ず良いや。今は行動の時間だ。



*  *  *



 6回転移門を潜り、(ようや)くピーナッツの居城らしい場所を見つけた。

 ま、居城っちゅうか神殿だけども。

 インベなんたら神殿……七色教とは別の宗教の建てた荘厳で大きな神殿。

 なんつーか、どっかの聖闘●が戦いを繰り広げてそうな場所だった。

 綺麗で、厳かで、神々しい魔王の居城――――。

 だが、そこで“使われている”人間の姿は酷い物だった。

 奴隷の証である首輪で首を絞められ、今にも倒れて死にそうなボロボロな体。

 最低限の清潔さすら許されていないのか、誰もが体や服から異臭を漂わせ、埃や垢で真っ黒になっている。

 バグなんたらの国の人間の扱いも相当酷かったが、ここはそれ以上だ。

 なまじ、おっさんの国で人間と魔族が仲良くしているのを見た後だから、コッチの世界がこう言う世界なのは分かっていたのに、ちょっとショックを受けてしまった……。

 この国のトップがピーナッツなら、この姿は必然だった。あの針鼠野郎は「魔族こそが至高の種族」と言う選民思想の強い魔王らしいからな?

 このクソッタレな国の中では、人間は機械と同じ扱いなんだろう。

 生き物として扱われず、ただの消耗品として無感情に消費されるだけの存在。皆殺しにされてないだけまし……ってか? まあ、尊厳と自由を奪われているって点を無視すれば、だが。

 …………助けてやりたいのは山々だが、ここで騒ぎを起こしちゃ元も子もない。

 助けると言うのなら、ピーナッツをブチ転がした後だ。

 今は情報収集だけ……。

 こう言う時に無理矢理にでも助けに入れないから、俺は勇者じゃねえんだろうなぁ……とかボンヤリ頭の片隅で思ったりする。

 若干凹みつつ神殿にソロッと侵入。

 ぶっちゃけ侵入する事はアホ程簡単だった。っつか、今の俺なら【隠形】1つで大抵の場所には侵入し放題である。パケットし放題くらい放題なのである。

 アクティブセンサーで探ってみても魔王の姿はない。

 いや、流石に国中を転移門で回ったから、今ピーナッツが不在だって情報は既に知っている。であれば、狙うべきは現時点で国の重要な情報を持っている奴。

 こういう時の定石は、建物の高い所か、1番奥か、豪華な部屋って所だろう。

 トテトテと歩いて神殿の奥を目指す。

 豪華な服や、煌めくような鎧に身を包んだ魔族とすれ違う。

 魔族が通り過ぎるのを、廊下の隅で虫のように平伏して待つボロボロの人間達。

 誰も俺には気付かない。

 何の障害もなく神殿の1番奥の部屋に到着。

 キラキラとした不思議な光沢の木製ドア。そこまで装飾はないが、ぱっと見ただけでも“お高い”感じが伝わって来る。

 扉を収集箱に入れたい欲求を我慢して聞き耳をたてると、何やら重要っぽい話し合いをしてるくさい。

 室内は6人。他の魔族に比べれば、皆ちょっとだけ強いかな? 魔族は弱肉強食だから、強い奴ほど偉い筈。これは、当たりかな?

 【仮想体】に適当な籠手だけ装備させてドアをノックする。

 中の魔族が反応してドアを開ける前に【仮想体】を回収。


「何の用だ! 今は近寄るなと言って――――!」


 怒鳴りながらドアを開けてくれたので、足元をスルッと抜けて部屋に入る。

 室内では、成金趣味のキンキラ衣装の魔族達が、円卓を囲んで難しい顔をしていた。

 何やら話し合いが難航しているって雰囲気ですなぁ? クソざまぁ。


「おい、どうした? 誰か来たんじゃないのか?」

「いや……誰も居なかった」

「なんだそりゃ……廊下での物音を、揃ってノックと聞き間違えたのか? ハハッ、バカバカしい、人間みたいな間抜けさじゃないか」

「おいっ! いくらなんでも人間如きと同じってのは侮辱が過ぎるぞ!」


 1人が怒鳴ると、他の連中も「そうだ」と言った本人を睨みつける。

 人間の扱いはゴミ虫以下ってか……腹立つわ。


「そんな事はどうでも良い! それより、どうする? 魔王様には既にご報告したのだろう? それで、お返事は!?」


 ……ん? ピーナッツはまだ船でコッチに帰って来る途中じゃないのか? 海上……っつか、遠くと連絡が取れる“電話”みたいな魔道具でも有るのか? そう言えば、移動手段の乏しさの割りに、剣の勇者(おれ)の情報が伝わるのが早過ぎる……とは、ずっと思ってたんだよね。

 だったら俺も1つくらい欲しいな? 騒ぎは起こせないから持ち去れないけど、収集箱の中で“不思議なポケットの法”で即行増やして戻せば問題ないし。

 帰る時に忘れないように探してみるか?


「我々と同じ意見だ。やはり、古き戦場を抜けるのは不可能だ、と。かと言って南のウィンダルム山脈を抜ける事は出来ぬ。進軍は北側のフィラルテ様の軍と合流してになる、と」

「クッ……まさか、このタイミングで戦場の亡霊が湧くとは……!!」

「陣を構築する為に先に向かわせた5000人がほぼ全滅……死んだ者の中には、名前持ち(ネームド)が100人近く……戦力が削れた等と言うレベルの話ではないぞ!?」

「喚くな!! 起こってしまった事を怒鳴っている場合ではないだろうが! 明後日には魔王様がお戻りになる、それまでに計画を見直さなければならんだろうが!!」

「とは言えどうする? フィラルテ様の軍と合流するとなれば、当然国主であるアチラが主導権を握る事になるぞ?」

「だが、元々魔王同盟を発案したのは我等が魔王様だぞ!」

「それで相手が納得する訳もないだろう。相手は腐っても“帰還組”だぞ?」


 帰還組……って事は、おっさんやバグなんたらと同じ、10年前の戦争を勝って帰って来た魔王の1人か……。

 まあ、でも、実力がおっさん以上って可能性は無いから、そこまで警戒はしてない。

 だが、コイツの軍とピーナッツの軍が合流するってんなら、2人が一緒に居るって可能背は高い。

 その辺りの警戒だけはしておく必要があるか……。

 まあ、それはともかく、今の会話を聞く限り古戦場の魔物を湧かせている犯人は魔王同盟には居ないっぽいな?

 ぶっちゃけそこだけ聞ければ用は無い。

 長居して騒ぎ起きてもアレだし、気付かれる前にさっさと帰るべ――――って、その前にコソッと回ってお土産貰って行くか。

 え? 騒ぎ起きるんじゃないのって?

 別に今回は盗む訳じゃないし。収集箱に登録したらちゃんと戻るし。ただ、俺の手元にコピー品が残るってだけだし。

 そもそも俺にとってアイテム収集はライフワークですし。



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