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11-6 久しぶりの師弟

「師匠、お久しい、です!」


 言いながら、子供のような純粋な笑顔で頭を下げるバルト。

 そして未だにその背中で俺にガチビビりの精霊達。


「ミ」


 おう。

 1ヵ月ぶりでも相変わらずのようで、ちょっと安心した。

 うちの弟子が、その内世間の波に揉まれて性格ひん曲がったりしないか心配だわ……。まあ、バルトがヤンキー口調で話し始めたら、それはそれで面白いかもしれないが……。

 いや、だが……「ちょ、師匠(ぱいせん)w 金貸してくね?」とかガムをクチャクチャしていたら――――まあ、間違いなく「そんな子に育てた覚えはありません!」つって全力で猫パンチ叩き込むな……。

 うん、やめとこう。

 “面白い”とか要らねえわ、うん。うちのバルトは品行方正に真っ直ぐ育ってくれた方が絶対良いわ。


「長旅、大変、お疲れ、です」

「(言うても、帰って来る時は【転移魔法(テレポート)】で一瞬だったけどな)」


 …………やっぱりだ。

 こうして近付かれると良く分かる。

 バルトの奴、俺が居ない1ヵ月の間に大分強くなってんな?

 “手強(てごわ)い勇者”が目の前に居る事に、俺の中の【魔王】の力がやたらと騒いでいる。

 俺から離れた1ヵ月、うちの弟子がどんな戦いと修業をしていたのかをじっくり聞きたい気持ちはあるが……それは、また時間に余裕が出来てからだな。

 【仮想体】を動かして双子に「行こう」と視線を送る。

 俺の先を急かす視線に気付いた双子が、左右からバルトの服をチョイチョイと引っ張る。


炎熱(イフリート)、師匠との再会が嬉しいのは当然だけれど」「剣の勇者は何やら急いでいるようよ」

「そう、だった、ですか!?」

「ミ」


 うん。


「リーダーに話をしに行くけれど」「貴方も来るかしら?」


 お、有難い提案。

 バルトが一緒に話聞いてくれれば、後で別に説明する手間が省けるし、何より話せない俺の通訳としてバルトは最高だ。


「(暇してるなら一緒してくれ。俺、他の勇者の前だと喋れねえし)」

「分かる、ました! 一緒、します!」


 はい、元気一杯の良いお返事。

 こんな即答で肯定されると、本当にいつか詐欺師に引っ掛かるんじゃないかと不安になる。

 アザリアあたりが上手い事そういう部分を教えてくれると有難いんだが……。

 俺が心の中で溜息を吐いている間に、双子が先に立って宿屋に入って行った。


「師匠、行く、ましょう!」

「(おう)」


 っと、アザリアの所に行く前に、通訳頼む以上は少しコッチの事情話しておかないとな?

 若干ゆったり目の歩幅で宿屋の扉を潜りつつ、右斜め後ろを着いて来るバルトと話す。

 とりあえず、変に緊張させないように世間話から振ってみるか。


「(俺が居ない間、どうだった? 他の勇者達と上手くやれたか?)」

「はい! 皆、優しい、ご飯、美味しい、とても、いっぱい、満足、です!」


 皆が優しいのも、ご飯が美味しいのも、半魔として酷い扱いされて来たバルトにとっては特別な事か……。

 っと、バルト自身がそういう部分を不幸と思ってないのに、俺が勝手に同情するのは筋違いか? ごめんバルト。


「(なんか敵とか出たりしたか?)」

「悪魔、居ました。皆、力、合わせる、協力、いっぱい、頑張る、した、倒す、ました!」

「(悪魔!? まだ残ってたのかよ!?)」


 悪魔と言えば、七色教の件で好き勝手しやがった連中だ。まあ、“連中”と言っても、悪魔は基本的に実体は無く、人に憑りついて行動しているのだが……。

 グラムエンドでのベリアルとの決戦で全部殺せたと思ってたんだが、まだ残党が残ってやがったのか?


「残る、違う、ます。師匠、倒す、した、悪魔、部下、違う、言う、ました」

「(ぁん? ベリアルの部下じゃねえの?)」


 バルトが少しだけ神妙な顔で頷く。


「悪魔、言う、ました。自分達、ベルフェゴール、眷属だ、と」


 ベルフェゴール……また、大物悪魔の名前が出なすった……。

 詳しい逸話は知らないが、“便座悪魔”の姿だけは有名だから知っている(まあ、実際は便座じゃないらしいが)。

 と言う事はどう言う事だ?

 ベリアルクラスの大物悪魔がどこかに居て、何かしようとしている……のか?


「(そのベルフェゴールたら言う悪魔とは会ったか?)」

「いいえ。会う、ない、です」

「(エンカウントしたのは何時頃の話だ?)」

「16日、前、です」

「(悪魔の数は?)」

「悪魔、5。魔物、28、です」

「(魔物まで連れてたのかよ!?)」

「はい」


 魔物か……。

 もしかして、悪魔ってのは魔物を使役する能力があるのか? ベリアルの時は“七色教”って隠れ蓑を保つ為に使わなかっただけで。いや、偶々その悪魔5人の中に魔物を使役する能力持ちが居たって可能性も有るか……。

 いや、でも悪魔5人か……悪魔ってのは、もっと群れてる印象があったんだけどな?


「(悪魔に関する他の情報は?)」

「無い、です。皆、悪魔、捜す、でも、見つかる、ない、です」


 他の悪魔の気配は無し……か。

 斥候役……若しくは、何かしらの工作隊だった、とか……?

 いや、考えても分からんか。そのベルフェゴールたら言うのが何をしようとしてるのかは知らないが、今のところ大きな行動起こしてる訳でもないし、一旦放置しといて大丈夫……かな?

 だったら、先におっさんの国の問題を片付けたいな? あっちもこっちも仕事抱えられる程、俺は器用な仕事人じゃねえんだよ……。


「(お前から見て、悪魔共は直ぐに何か問題を起こしそうだったか?)」

「いいえ。出会った、偶然、です。悪魔、僕達、と、戦い、避ける、しよう、していた、思う、ます」


 悪魔が少人数。コソコソと……。

 うーん……聞く限りだと、ただの斥候役に思える。多分、実際にエンカウントしたバルトの印象も、口ぶりから察するにそんな感じだろう。

 一応他の連中にも悪魔の様子聞いてみて、時間あるようなら一旦放置で。

 時間が無いようなら……勇者連中を連れて行くのは諦めるしかねえな……。いや、でも、それでも不安だな? バルトが強くなったっぽいつっても、ベリアルクラスを相手に真っ向勝負挑める程じゃねえだろうし……結局ベルフェゴールたら言う悪魔の親玉は俺が相手しなきゃならんか……。

 と、すると――――やっぱアルバス境国の問題を速攻で片付けて、コッチに戻って来るって方が現実的か……。


「悪魔、気になる、ですか?」

「(まあな。でも、一先ずそれは置いとこう。あ、そうだ、なんでバルトの精霊達って俺の事そんなに怖がってんだ? 前は大丈夫だっただろ?)」


 俺が訊くと、少し困った顔で、自分の背に隠れている精霊たちをチラッと見る。


「精霊さん、言う、ます。師匠、強い、精霊、匂い、残る、近付く、怖い、です」

「(強い精霊の匂い……?)」


 なんのこっちゃ……?

 強い精霊と言えば――――あ、もしかして大精霊の事言ってんのか?


「(大精霊の事か?)」


 俺が何気なく吐いた言葉に、バルトがキラッと目を輝かせながら反応し、小走りで俺を追い越して横に並ぶ。


「師匠、大精霊、会った、ですか!?」

「(おう。何か、縁が有るんだか偶然なんだか知らんが、水っぽいのと岩っぽいのに会った)」

「2人、会う、凄い、です!! 大精霊、皆、会えない、伝説、です!」


 伝説ねぇ……。

 俺としては、特に会いたい訳でもないのにアッチから会いに来るから、あんまりレアっぽい感じがしないんだよなぁ……?

 あ、そう言えば八咫烏が挨拶しておけっつってたっけ、あと「放っておいても会いに来る」とも。

 …………八咫烏の予言通りになってんな?

 結局あの八咫烏が何者かも分かってねえし。予言の意味も分からんし……分からん事だけが積み上がってちょっと泣きたいわ……。



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― 新着の感想 ―
[一言] にゃあああああああああああああああああああああ!!! え?代わりにないてあげただけだけど?(違うそうじゃない
[一言] 久しぶりの清純な空気感。 ありがとうございます、ありがとうございます!
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