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10-15 ピーナッツにごめんなさいする

 【アクティブセンサー】の情報が確かなら、この部屋にある筈なんだが……。

 子猫の低い視線から、船室にしては微妙に広く作られている部屋を見渡す。

 ついでにお高そうな物も貰って【贋作(カウンターフェイト)】で作った偽物とすり替えておく。


『【羊毛のカーペット Lv.20】

 カテゴリー:素材

 サイズ:大

 レアリティ:D

 所持数:1/60』


『新しい3種のアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:微)』


 敷物にレアリティD使うとか信じられねぇわ……成金の考える事はよく分からん。

 まあ、本命はこれではない。

 ゴソゴソと探し回る――――必要も無く、「あからさま」なまでに「あからさま」に、部屋の窓際に大きな宝箱っぽい箱が置かれていた。

 絶対これだよ……。

 なんなの、あのピーナッツ野郎は? こんなの「どうぞ盗って下さい」って言ってるようなものじゃん? え、何? それとも盗って欲しいの? だったら遠慮なく頂きまーす!

 とは言え、あまりにもあからさまに置かれているのも怪しいので、一応魔法除去くらいはかけておくか。


 【術式解除(ブレイクスペル)


 反応なし。

 俺の警戒し過ぎか……? いや、でも、なんとなく嫌な感じがするっぽい気がするんだよなぁ……。天術の除去術かけてみるか? まあ、一応ね一応。


 【術式除去(ディスペル)


 目の前の大きな箱から、パキンッと小さいガラスが砕けるような音。

 

『【警報(アラーム)

 カテゴリー:魔法

 属性:支援/罠

 威力:-

 範囲:F』


『【術式防御(スペルプロテクト)

 カテゴリー:魔法

 属性:支援

 威力:-

 範囲:F

 常駐型の魔法にかける事で、その魔法の破壊効果が発動した時にその効果を無効化します。ただし、【術式防御(スペルプロテクト)】の効果が切れた時に対象の魔法も消えます』


 お、ビンゴ。

 【魔王】の特性から来る、魔法や天術への反応の良さは役に立つ。

 にしても……【術式防御(スペルプロテクト)】ね……小賢しい事してやがるじゃんピーナッツの野郎……まあ、俺の方が一歩上手だがな。

 【術式解除(ブレイクスペル)】は術式の“破壊効果”だからコイツに引っかかって無効にされたって事かな? 対して【術式除去(ディスペル)】は術式の“除去効果”。同じようで微妙に違う。

 まあ、そもそもの話として、この手の解除術式は相手の魔力と差があり過ぎると効かないらしいし天術なら解除できる……なんて簡単な話でもねえ。

 なんにしても、解除出来たから良いや。ついでに魔法も2つ貰っちゃったし。

 【仮想体】に適当な籠手をつけて箱を開けさせる。


「ミャッ」


 軽くジャンプして箱に上り、中を覗き込む。

 箱だった。大きな箱の中に、一回り小さい黒い箱。

 マトリョーシカかよ……。

 【仮想体】に箱の中の黒い箱を引っ張り出させて床に置く。

 とてもよく見覚えのある箱だった。何度目か分からない出会い。


 深淵の匣。


 専用の鍵か、【魔王】の特性装備者でなければ開ける事の出来ない即死トラップ付きの宝箱。

 俺の今までの経験から言わせて貰うと、この黒い箱には魔王たちが10年前の戦争で勇者たちから奪った神器を入れていると思われる。

 と言う事は、この中にも神器が入ってるんじゃなかろうか?

 まあ、それは開ければ分かる!! レッツらドンッ!!

 音もなく、滑らかに開く。その中には――――


「ミュゥ?」


 何だコレ?

 えー……なんだろう? まじまじと眺めても、箱の中に入っている“それ”が何なのか分からない。

 オートマチックピストルのグリップ部分だけを取り外したような……なんだこりゃ? 正体は分からないが、神器特有の不思議なオーラを纏っているって事は、間違いなくコイツは神器だ。

 神器と言えば、「なんか出所がよく分からない武具」な筈。って事は、この“持ち手(グリップ)”も武器か何かって事だろうか?

 まあ、収集箱にぶち込めば正体は分かるだろう。

 って訳で、箱の中にストンっと降りてそれに触れる。


『【宵闇の光鞭 Lv.100】

 カテゴリー:武器

 サイズ:小

 レアリティ:★★★

 属性:超神聖/深淵

 装備制限:特性・勇者

 付与術:審判の闇(ジャッジメントダーク)

 所持数:1/1

 第十三神器。

 神が人類に与えたと言われる武具の1つ。

 堕神フラネイルの触腕を模した光鞭』


『新しいアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:大)』


『【星の加護を持つ者 Lv.16】の特性レベルが上がり【星の加護を持つ者 Lv.17】になりました』


 やっぱりこれも神器か……。

 え? でも、これ鞭? 鞭じゃねーだろ? ただの“持ち手”じゃん。

 とりあえず収集箱から取り出して【仮想体】に持たせてみる。魔法の武器の為、大きさが【仮想体】の手に収まる丁度良い大きさに調整される。

 で、だ。

 振る。

 すると――――“持ち手”からニュロッと光が伸び、ヒュンっと空気が裂ける心地良い音。


「ミャっ!?」


 光で形作られた鞭が“持ち手”から伸びていた。

 はぁ~……なるほど、こう言う仕掛けなのね? “鞭”じゃなくて“光鞭”って表記されてるのはちゃんと理由があったか……。

 鞭の扱いなんて知らないので、適当に振らせてみる。

 空中を光の鞭がヒュンヒュンっと飛び回る。

 あ……これ、鞭を出してると微妙にだけど魔力消費してんな? 他の武器と違ってただ武器として使うのにも魔力使うってアレな感じ……。

 いやいやいや、でも考え方によっては超有用じゃない? 武器は持ち運ぶだけでも嵩張(かさば)るが、これなら“持ち手”だけ持ってれば良いから圧倒的に楽だ。それに、魔力の消費量によってリーチが結構伸びる仕様っぽいし。

 見かけによらず強武器か……?

 まあ、とりあえず付与術は貰って置く。


『【審判の闇(ジャッジメントダーク)

 カテゴリー:天術

 属性:超神聖/深淵

 威力:AA

 範囲:F

 使用制限:特性【勇者】

 暗黒/深淵/超神聖/神聖属性の対象に対して超特効。

 特性【魔族】【魔王】を持つ対象に対してのみダメージ判定』


 お、神聖と超神聖にも特効の天術だ。

 ……いや、でもこれは流石に微妙だろう……? 【魔族】と【魔王】に対してのみ効果があるってのは究極天術のお決まりだが、魔族や魔王の中に超神聖属性や神聖属性持ちが居るのかって話よ? いねえべや? だってアイツ等ナチュラルに逆属性の暗黒と深淵属性持ちだし。

 まあ、でも、貰える物は貰っておく。

 さってさて……神器が手に入ったのは良いんだが――――どうしようかな?

 これも【贋作】で複製出来れば良いんだが、この魔眼はレアリティ★のアイテムはコピー出来ねえんだよなぁ……。

 素知らぬふりで持ち逃げしてしまっても良いと思うんだが、見つかったらそれはそれで面倒臭い。ピーナッツの野郎はこの国に剣の勇者が居る事を知っているし、神器が奪われたとなれば第一に疑われるのは間違いなく俺だ。

 そーじゃなかったとしても、おっさんは犯人が俺だって直ぐに気付くだろうし、そうなればまた御説教タイムの始まりだ。

 かと言って、神器を置いて立ち去るのもなぁ……? そのうちピーナッツを倒しに行く事は俺の中で確定事項だが、それまで神器を野郎の手に預けておくのも何だか癪だ。

 うーん……何か良い方法ないかな?

 俺が神器を持ち逃げしても気付かれず、尚且つ騒ぎにならない……いや、この際騒ぎは起こしてもその犯人が俺だって特定されなければ良いんじゃん?

 そんな都合の良い方法…………まあ、あると言えばあるか。かなり力技だが、俺もいい加減ブルムヘイズに戻って明日の朝1の試合に備えて寝たいし……まあ良いか。

 よし、じゃあ、やるか!



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[一言] 勇者で盗人の腹パン族がいるじゃないか。あいつのせいにしとこ。
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