10-14 船内探索
噂の魔法の増幅器――――。
…………いや、「噂」のって、今さっきおっさんに聞いて初めて知ったんだけどさ……。
なるほど、確かに言ってた通りに結構な大きさだな? この大きさを個人で持ち運ぶってのは馬鹿馬鹿しい程に非効率だ。
周囲を確認。
よし、ここらには魔族は居ねえな?
んでは、早速。
丸っこくてフワフワな毛に覆われた手で触れる。
『【魔導核内臓式魔法循環機及び魔力増幅器試作4型 Lv.3】
カテゴリー:素材
サイズ:特大
レアリティ:C
所持数:1/60』
『新しいアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:微)』
名前なっが……。しかも何言ってんのか良く分かんねえし、この名前……。
循環機(?)とやらと増幅器(?)ってのは、多分“箱”と“筒”の事だろう。でも、切り離されてないって事は、この2つはセットで1つなのか?
もうちょい詳細情報プリーズ。
『魔王イベルによって作成された魔道具。
普通の魔族の魔力で“究極魔法”に匹敵する性能を引き出す事を目的に作られた。前試作機を倍近く上回る性能を実現している』
やっぱり件のマッド野郎が作ったのか……。
まあ、前もって知ってたから、其処について驚きはない
しっかし……究極魔法て……。
アレだろ? アビスの野郎が使ってた【ドラグーンノヴァ】みたいな奴だろ? あのレベルの火力をそこらの魔族が撃てるようにするってか……?
まあ、確かに出来たらヤベェよ……ってか、ヤバ過ぎるよ!? あんな周囲2、3キロを1発で消し飛ばすような火力を、船に搭載されてる増幅器全部からバカスカ撃たれたら、国なんて1夜で消し飛ぶ。
洒落にならんな……?
まあ、不幸中の幸いは、この増幅器にそこまでの性能はまだないって事だ。
だが、“まだ”ないってだけ。試作機って表示されてるし、これから先にもっと高い性能の――――本当に究極魔法を撃てるようになる増幅器がいつか作られる可能性は十分に有り得る。って言うか、他国の魔王に渡したのがこのレベルって事は、まず間違いなく本人の手元にはもっと高性能な奴が有る筈だ。
軍事拡張、兵士の強化……なるほど、この魔王はちょっとマジでヤバいな……? できるなら、早いうちに潰してしまった方が良いかもしれない。
“D”の魔王……か。
Eの魔王であるおっさんより上位者の魔王。個としての強さはおっさんより下らしいが、人間の敵って意味で言うのなら、コイツの方が圧倒的にヤバイ。
……まあ、今は目先の事だな。
目の前には、増幅器の置かれていた空間にぽっかりと空白。このまま放置すれば、当然盗み出された事に気づかれる→騒ぎになる→ピーナッツがおっさんに文句言う→おっさんが俺に怒る。
それを回避する為にはどうすれば良いでしょうか?
簡単です。
盗んだ事に気づかせなきゃ良いんじゃぁああああっ!!(無駄にエコー)
とは言え、盗んだ物を返す気は一切ない。…………あっ、違う違う! 盗んだんじゃねえや、危険物だから没収しただけっ! うんっ、ここすごく大事ね!!
ま、ともかく(誤魔化した)。
――――目を閉じて魔眼のカテゴリーリストを開く。
えっと……手に入れてからまとも使った事ねえんだよなぁ……。
『【贋作】
カテゴリー:魔眼
レアリティ:D
ランク:4
魔力消費:2000
実在するアイテムに触れている状態で発動すると、まったく同じ物を創り出す。
ただし、レアリティに比例して魔力消費が大きくなる。
レアリティ★のアイテムは創り出せない』
はい、これです!
右目の魔眼から【欺瞞と虚構】の能力を外し、【贋作】に付け替える。
触れてる状態で発動って書いてあるけど、収集箱内に入ってるなら触れてるのと変わらんのではなかろうか? いや、だって魔眼が発動できる状態になってるし……。
まあ、とりあえず使ってみるか?
体から微かに力が抜ける感覚。魔力が消費された――――まあ、【全は一、一は全】の効果で全ての魔力消費が100分の1だから、大して消費しないんだけどね。
それと同時にパッと現れる増幅器……の偽物。
おおー、見かけは完全に同じだ。
軽くペシペシッと叩いてみるが、【偽物】の魔眼で作った物のように簡単に砕けたりはしない。
耐久力はオリジナルと同等って事か? いや、でも魔力が流れていく感じがしないな……? 元々持ってる性能が失われて、形だけ作ったって事か?
【偽物】と違って、視線を切っても消えない……っつー事は1度作ってしまえば、ずっと存在し続けるって事でええんかねぇ? だとしたら、武器とか作れば大量生産――――ああ、ダメだ。魔力が通らないなら使い物にならねえ。やっぱり“不思議なポケットの法”が最強だよ。
ま、いいや。これで大丈夫でしょう?
増幅器としての機能は消えている訳だが、見た目一緒だから「不具合」とか「故障」とか、そんな感じで流してくれるだろう……多分、きっと、うん、信じれば。
おし、次行くべ。
一応魔眼の能力を【欺瞞と虚構】に戻し、【隠形】を維持したまま移動を再開。
相手から見えていないが、とりあえず猫らしい動きで床とトトンッと軽やかに歩く。
すれ違う魔族に一応の警戒を払いつつ、チョコチョコと歩く。
【バードアイ】で3人称視点で自身の歩く姿を見ると……愛らしさと可愛らしさで涙が出そうになるな……。いや、別に決して子猫の姿が情けないからってんではなく……ええ、本当に。
などと若干泣きそうになっている間に次の部屋に到着。
先程の砲部屋と違い、簡素だがちゃんとドアがある……多分お偉いさんの部屋。まあ、船のお偉いさんと言えば船長かピーナッツか……ピーナッツだな。
この部屋の中にある物を考えれば、間違いなくピーナッツの部屋だ。
お邪魔しまーす。
遠慮なしに部屋に侵入する。
え? ドアには鍵がかかってる? まさかドアを蹴破ったんじゃないかって? いやいやいや、まさかそんな無法者のような真似をする訳ないじゃないですか。私は常識ある良い歳した大人ですよ?
ちゃんと【転移魔法】でドアを素通りして室内に入りましたとも!
……そう言えば、いつの間にか【転移魔法】使っても結構平気になったな……? まあ、魔王スキル有りきでの話だけども。
初めて使った時は、1発で魔力切れ起こしてぶっ倒れたからなぁ……。って、感慨に耽ってる場合じゃねえや。
殺風景な船内にあって、この部屋だけがやたらと豪華……作りは他の部屋と大して変わらないが、置いてある調度品が上等な物っぽい。
確かめてみるか。
壁にかけてあった荒れ狂う海の絵に触れてみる。
『【絵画 Lv.12】
カテゴリー:素材
サイズ:中
レアリティ:C
所持数:1/60』
『新しいアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:微)』
ほーら、そこらにレアリティCの物が置かれてる~。
あー、ヤダヤダ、これだから成金嫌だわぁ!
クッソ腹立つから【贋作】で作った偽物置いときますね。はい、どうぞ。
ついでに大事そうに壁に飾られている武器も貰っておく。
『【オリハルコンのマチェット Lv.21】
カテゴリー:武器
サイズ:中
レアリティ:B
所持数:1/20』
『【ヴァルキリー Lv.42】
カテゴリー:武器
サイズ:大
レアリティ:B
所持数:1/20』
『【ギガンテスロッド Lv.41】
カテゴリー:武器
サイズ:大
レアリティ:B
所持数:1/20』
『新しい3種のアイテムがコレクトされた事により、肉体能力にボーナス(効果:微)』
はい、毎度ありがとーございまーす。
こちらも代わりに見掛けだけ同じの【贋作】置いときまーす。




