9-13 とあるパン屋の話
アルバス境国の象徴とも呼べる場所――――闘技場。
その出入りは激しく、その人間達を狙って露天商が品物を並べ、軽食を売る料理人達が朝から忙しなく料理を作る。
そして片隅では、本戦への出場者を予想する賭け師達による話し合いと共に金貨のやり取りが行われ、その横では予想屋が酒を傾けながら次の戦いの予想を金と引き替えに自慢げに歌う。
そんな小さなお祭り騒ぎが、闘技場の前では毎日繰り返されている。
しかし、そんな外のお祭り騒ぎとは打って変わって、闘技場内に設けられた治癒室は静かだった。
闘技場での戦いで傷付いた者達の休息所……と言えば聞こえは良いが、実際にここに運び込まれた者達からの呼び名は“守銭奴の沼”である。
相場の倍以上の金額を要求される事からついた名であり、払えない者を問答無用で奴隷収容所のような労働施設に放り込む鬼畜な仕様で恐れられている。
そんな“守銭奴の沼”の片隅で、ダンデは目を覚めした。
「ぅう……どこ、だ……? っ痛ぅ!?」
右頬に一瞬鋭い痛みが走る。
その痛みが思い出させてくれた。
自分が、あの黄金の鎧を纏う“剣の勇者”に殴り倒された事を。
(なんだったんだ、あの化物は……?)
強い――――そう、確かに強かった。
だが、あの黄金の鎧の主を「化物」と称したのは、強さ云々の話ではない。
殴られる直前に感じた、寒気にも似た……怖気。
全身の毛穴が一瞬で開き、冷たい汗が噴き出したのが自身で分かった程だ。
ダンデは今まで様々な強敵達と戦って来た。
剣豪グウェン、魔狂リャカ、四剣ダダラン、吸血ガドロ。
強敵だったのは人間だけでは無い。名前こそ無いが、戦闘能力は1級品の魔族の猛者達も数え切れぬ程いた。
だが――――剣の勇者は、今まで戦って来た者達とは明らかに違った。
何が違う……と具体的に言える訳ではないが、生物としての本能が言っていた。
―――― コイツと戦うな! と。
今までダンデが信じて来た常識。その外側に居る存在。
関わってはいけない。戦ってはいけない。近付いてはいけない。
本能が目の前の鎧の中身を全力で拒否している――――否、否定している。
体が硬直して逃げられなくなる。
そして――――金色の拳が右頬にめり込んだところで、記憶がプツッと切れていた。
(剣の勇者……ギルシュテン王国を支配していた魔王アドレアスを一騎打ちで討ち取った人間離れした能力を持つ騎士……とは噂で聞いていたが、実際に立ち合ってみた印象は全然別物だな?)
魂さえ出て行きそうな深い溜息を吐きつつ、ジンジンと痛む右頬に触れる。
痛みはあるが、腫れはそこまでではない。
痛みだって、派手に殴られたように思えたのに、口内までダメージが抜けていない。
予想していたより大分怪我の度合いが低い。
自身が思っているよりも体が頑丈だった……などと思う程ダンデも馬鹿では無い。
恐らく、気絶している間に治癒士が天術をかけてくれたのだろう。
「アンタ!」「父ちゃん!」
呼ばれて横に視線を向けると、妻と息子が心配そうな顔で見つめていた。
その後ろには、先程の試合で一緒の組だった3人が、自分と同じように床に敷かれた布の上で上体を起こしている。
「お、ダンデの奴が目ぇ覚ましたぞ」「1番最初にやられたくせに、起きるのが最後ってどんだけ鍛え方足りてねえんだ」「そう言うお前も今さっき目を覚ましたばっかりだろうが……」
3人共闘技場の出場者として頻繁に出入りしているダンデの顔見知り。
試合では殺し合い1歩手前の戦いをする事も良くあるが、その後は大抵勝った者の奢りで酒を一緒にするような、比較的仲の良い3人。
ダンデを含めた、手の内を知り尽くした4人でなら剣の勇者に勝てると踏んだのだが……考えが甘かったらしい。
「剣の勇者が勝ったのか?」
治癒室に居ると言う事は、先程の試合で自分がやられた後に、同じく3人共やられたと言う事だ。
それは分かっているが、訊かずには居られなかった。
「らしいな? 俺も最後まで立ってた訳じゃないが」
と、兎のような耳を生やした魔族が言うと、その先を1本角の魔族が引き継ぐように続ける。
「最後にやられたのはウォッツだろう?」
「ああ。まあ、『最後まで立ってた』と言えば聞こえは良いが、実際は倒される順番が最後だったってだけだろ、アレは……」
投げやりに言いながら、ドンッと力無く床を叩く。
剣の勇者の“異常性”は戦士として全員が感じている。だが、だからと言って敗北を悔しがらない程彼等も弱くない。
「アンタ……体は大丈夫なの? 剣の勇者に殴り倒された時には……もう、心臓が止まるかと……」
「アイツ……父ちゃんをぶん殴った! それに……それに、父ちゃんの斧を持って行きやがったんだ! 絶対許さねぇ!!」
「……斧……持ってかれた、のか?」
気まずそうに、妻が頷く。
「そうか」
大事な相棒を持って行かれた事は残念だし、怒りたい気持ちもある。だが、敗者の武具を勝者が持って行くのは、闘技場のルールにのっとった行動であり、なんの問題もないし罪にもならない。
ダンデを始めとした闘技場で戦う者は、全員自分の武具を奪われる覚悟をしている。
今までそれが無かったのは、ただ単に運が良かっただけだけだと言う事もダンデは理解している。
それが今回来るべくして来た……それだけの事だ。
ダンデ自身はそのように納得しているが、まだ10歳にもならない息子にそれを分かれと言うのは酷な物。
「あの金ぴか野郎! 父ちゃんの斧だけ持ってったんだ! 父ちゃんが強くて怖いから、父ちゃんが戦えないように斧を持ってったんだ!!」
「お前等の武器は持ってかれなかったのか?」
「ああ」「おう」「俺は持ってかれるような物持ってないし……」
確かに、ダンデ以外の3人の武具はそこまで特出して良い物ではない。
目利きの出来る者ならばダンデの武器に目を付けるのは当然。
だが、ダンデは首を傾げずには居られなかった。
妻と息子を除く3人も、ダンデと同じく「何かが納得いかない……」と言う顔をしている。
「剣の勇者はどうしてダンデの武器だけ持ってったんだろうなぁ?」
1本角の魔族が呟くように言うと、噛みつかんばかりの勢いで息子が睨みながら叫んだ。
「父ちゃんが怖かったからだ!!」
「それは、無いだろう」
息子の頭をポンポンと撫でて落ち着かせながら、ダンデ自身が息子の考えを否定した。
剣の勇者とダンデの力の差は歴然。天と地ほどの差があった。ダンデの力を恐れる理由なんて剣の勇者には欠片も存在しない。
では、何故か?
武器を持って行く時の理由なんて2つしかない。
「自分で使う為」か「売って金にする為」だ。
自分で使う――――剣の勇者の手には、名高き勇者の剣こと“旭日の剣”がある。ダンデの斧は確かにそこそこ良い物ではあるが、神器たる旭日の剣とは比べ物にならない。
それに“剣の”勇者の名が示す通り、剣の勇者は剣以外の武器は使わないだろう。
売って金にする――――勇者とて生きるには金が必要なのは当たり前。だが、それならば、どうして他の者達の武具には手をつけなかったのか? 良い物ではないといっても、売れば多少なりとも金にはなるのに、だ。
「ダンデ、お前剣の勇者に個人的に恨まれてる……とか、無いよな?」
「ねえよ……」
「だが、アッチは全身鎧で誰なのか分かんねーだろ? もしかしたら知り合いって事もあり得るだろう?」
「鎧の中身が誰かは分からないが、あれだけ飛び抜けて強い奴と会ったら忘れない。絶対会った事無いし関わった事も無いって断言して良いね」
「剣の勇者の謎の行動はともかく……ダンデ、これからどうするんだ? 武器無くなったら戦えないだろ?」
「レンタルするか?」
「でもレンタルの武器ってまともに手入れもしてないような物ばっかりだぞ? 今までみたいには戦えねえんじゃねえか? なあダンデよぅ」
その問いには答えず、ダンデは自身の手を見つめる。
手を握って、開いて、また握ってグッと力を入れる。
そんな不思議な行動に、妻が首を傾げる。
「アンタ、どうかしたの……?」
「……いや」
短く返して、何事もなかったような顔をする。
その様子が気になり、更に妻が訊こうとすると、それを遮るようなタイミングで闘技場の職員の女性が治癒室の主たる老婆を連れて治癒室に入って来た。
「あっ、ダンデさん起きました?」
「ようやく起きたのかぃ、この愚図」
「……婆さん、起きたての怪我人をグズ呼ばわりすんの止めてくれよ……」
「愚図は愚図じゃろう。あんだけアタシが戦うのを止めてやったってのに、何闘技会に参加してんだぃ、この愚図!」
言うなり、老婆はトトトっと小走りに近付いて来てダンデの頭を持っていた杖でゴスゴス叩く。
横に妻と息子が居るのが見えているにも関わらず、問答無用に容赦なく叩いた。
「いてっ、痛いって婆さん!」
微笑ましい光景に少しだけ空気が和らぐ。
だが、その場に居た全員の頭の中で先程老婆が吐いた言葉が引っ掛かる。
「あの……家の夫が戦うのを止めたって言うのは、どう言う?」
「ぁあ? なんだぃ、アンタもしかして嫁にも自分の体の話ししてないのかぃ?」
ギロっと老婆に睨まれ、妻と息子に「え? どう言う事?」と疑問顔を向けられ、戦友3人が嫌な話しになる空気を察して、少しだけ顔を険しくする。
「偶に、生まれた時から属性に耐性を持ってる特異体質な奴が居るんだよ。火とか雷とか氷結とかね? そんで、アンタのダンナもその特異体質の1人なのさ。しかも、超珍しい“治癒”に対する耐性のね」
「治癒……の耐性?」
会話の不穏さに、息子が怖がって母親の服をギューっと掴む。
「そうさ。だからコイツは、普通の人より治癒術式の効きが極端に悪い。しかも、長年戦っては治癒の生活を続けていたせいで、その持って生まれた耐性能力が滅茶苦茶なレベルにまで成長しちまってるのさ。今回の怪我だって、治すのにアタシの持ってる1番強力な治癒術式を使ったぐらいだからねえ。それだって完全には治し切れてない。治癒士として言いたくないセリフだが、次は治せるか分からないよ――――って言う話を、この前コイツを治した時にしたのさ」
治癒の耐性。
そんな話しは誰も聞いた事がなかった。
そもそも耐性の能力と言えば、どんな物であれプラスの恩恵を齎してくれる物と言うのが基本的な認識なのだ。まさか、マイナスに働く耐性が存在するなんて、誰が予想出来ただろうが?
しかも、それが身近に居たなどと。
「じゃあ、家の夫は……!」「父ちゃん!」
「今の多々怪我する生活を続けていたら、そのうち治癒術どころか回復薬すら効かない体になるだろうね? そうなったらもう御終いさ。まあ、2度と怪我しないってんなら別だろうけど……そんな事が許されるのは彼の魔王アビスくらいなもんさ」
だからこそ、治癒士である老婆はダンデが戦う事を止めたのだった。
戦う事と負傷する事は切っても切り離せない。
もし仮に――――この世界の“医学”が発展していて、異能の力に頼らなくても体を治せる技術が存在したのなら、これは問題にすらならなかったのかもしれない。
だが、なまじ魔法や天術などと言う便利な力があった為、この世界の医学は発展途上とも呼べない程レベルが低い。
故に、治癒効果を受けられないと言う事は、この世界において死に等しい意味を持つ。
それを理解した瞬間、火がついたように妻は己の夫を叩く。
怒りと悲しみをぶつけるように叩く。
「どうしてっ、どうして言ってくれなかったの!! アンタ、このままじゃ死んじゃうかもしれないのよっ!!」
ダンデは、抵抗する事なく言葉と痛みを受け入れる。
元々、そう言う覚悟は決めていたから。
「今回の闘技会がどんな結果になるにしても……どっちにしろ今回で剣闘士は引退するつもりだったからな」
「ダンデ、お前……」
「俺は、小さい頃から生きて行く方法を戦う以外に知らねえからさ……。引退するなら、命と引き換えてでも優勝して、家族に賞金を残してやりたかったんだ」
「馬鹿ッ! 大馬鹿っっっ!! お金よりも、アンタが生きてる事の方が私もこの子も大事だって、なんで分かんないのよ!」
「父ちゃん、死んじゃ嫌だよー!」
「そうだ馬鹿!」「本当だぜ馬鹿!」「話は良く分かんなかったけど、とりあえず馬鹿!」
皆から責められ、ダンデが項垂れる。
そんな姿を見かねたように、老婆が声をかけた。
「まあ、そう言う意味じゃ例のキンキラキンな勇者様に感謝するんだね? さしものアンタも、相棒の武器が無きゃ戦えないだろう?」
そこで全員がハッとなる。
先程疑問に思っていた答えが、思わぬ方向から示されたから。
「もしかして……剣の勇者は、だからダンデの斧だけ持って行ったのか……?」
ダンデの頭の中で、殴られた瞬間の光景がリピートされる。
あの時、剣の勇者の動きは明らかに余裕があった。
強者が驕って手を抜いている……と言う感じではない。あの時の姿はむしろ、今から殴ろうとする相手を労わる“手加減”の姿だった。
(俺の体の事を知ってたから……)
結果として、その“手加減”の拳でも怪我をしている訳だが、それは剣の勇者が想像していたよりもダンデ自身が弱かったと言う、それだけの話だろう。
本来ならば、怪我無く気絶させるだけのつもりだったのは明白。
言葉が出ない。
そして、それはダンデだけではなかったようで、その場に沈黙が流れる。
そのタイミングを待っていたかのように、おずおずと小さく手を挙げながら闘技場の係員の女性が口を開いた。
「あ……はい、私、喋っても大丈夫でしょうか? 大丈夫ですか? はい、ありがとうございます。あの、こんなタイミングでスイマセンが、剣の勇者さんから、ダンデさんへ品物をお預かりしていますよ」
言いながら、真っ白な布に包まれた、何やら良い匂いのする手の平大の物を手渡す。
「勇者から? 何だろう……?」
勝者から敗者に渡す物なんて大抵碌な物ではない。
蔑みの意味を込めて、「お前はこれで遊んでろ」と言う木製のナイフ。
敗者の心を圧し折る、「次はこうなるぞ」と言う鼠の死骸。
ダンデも他の者達も、そう言った嫌がらせの品物を受け取ったのは1度や2度では無い。だからこそ、受け取った包みを開ける事にも注意をしてしまう。
だが、包みの中身は予想外だった。
「パン……?」
「パンだ」「パンだな?」「パンにしか見えない」「なぜに……?」
パンだった。
こんがりと焼き色がしっかりついた丸いパン。
ふんわりとしていて、甘みと香ばしさの混じる匂い。
「パンと言えば……ダンデの嫁さんがパン屋だろ?」
「ええ、はい……でも、これ、うちのパンじゃないです」
「そのパン、勇者さんから渡された時はまだ温かかったんですけど、ダンデさんが起きるのを待つ間に冷めちゃったんですよ」
謎のパンを目の前に口と手を止めていると、漂う匂いに我慢出来なくなったのか、ダンデの息子が手を伸ばしてパンを一口分千切って口に放り込む。
「あっ、おい!」
一瞬、「もし毒でも盛られていたら!」と恐怖が頭を過ぎる。
しかし、息子はモグモグとパンを咀嚼しても、倒れる事もなく、白目を剥く事もなく、泡を吹く事もない。それどころか、笑った。
「美味しい! 母ちゃんのパンより美味しい!!」
「はぁ!? アンタ何言ってんの! うちのパンより美味しい訳ないでしょう!」
プンプンしながらダンデの妻も手を伸ばして一口食べる。
モグモグと一噛み一噛み味わう。
「……良い小麦を使ってるわね……いえ、焼いてる窯が違うのかしら……? それに、何かしら? 果汁か何か生地に練り込んであるの……?」
料理の批評家ばりにパンを分析する。
フワッとした雲のような柔らかさと、噛むと広がるパンと果実の甘み。
「クッ……認めたくはないけど……確かに、うちのパンより美味しいわ……!」
「本当か? どれ、俺も」
「俺にもくれ」「俺も」「ちょっと貰うぞ」
治癒室の床に座って、皆でパンを食べる変な光景。
「美味いな」「確かに」「どこのパン屋か教えて欲しいわ」「ちょっと……パン屋の前で他のパン屋訊く流れに持ってかないで欲しいんですけど」「わぁ、美味しいパンですね」「父ちゃんもう一口頂戴」
皆が美味しそうに1つのパンを食べる。
そんな姿をぼんやり眺めているうちに、ダンデの中に1つの想いが生まれる。
(俺でも……こう言うパン作れるのかな……?)
今まで、嫁がパン屋だと言うのに、それを手伝った事はない。
自分には戦いしかないのだと決めつけ、パン屋の仕事をするなんて考えた事も無かった。
だが、勇者に負け、武器を失い、戦いの道を突然打ち切られて、初めて――――初めて自身がパン屋になると言う選択肢が見えた。
「俺――――パン屋になるわ」
「は?」「え?」「何?」「アンタ……」「父ちゃん?」
口をついて、言葉が勝手に外に出た。
料理すらまともにしないダンデがパン屋になるには、きっと覚えなければならない事が山ほどあるだろう。
生活だって今までのようにはいかない。食生活だって変わるかもしれない。
剣闘士としての収入が無くなり、きっと生活が苦しくなる。
だが、それでも、ダンデはパン屋になろうと――――なってみたいと思った。
そんな夫の決意と覚悟が妻には見えたのか、クスッと笑う。
「良いけど、アンタがパンを焼けるようになるのは何時になる事やら……」
「父ちゃん絶対黒こげのパン作るんだぜ」
「何、心配要らねえよ坊主。ダンデの黒こげのパンが並んだって、俺達が毎日通って買ってってやるよ? なあ?」
「おう」「まかしとけ」「でも、黒こげは勘弁かなぁ……」
皆して笑う。
(ああ、そうか。剣の勇者は、俺に戦う以外の未来があるって分からせる為にこのパンをくれたんだな……)
先程、係員の女性は「勇者から渡された時は暖かった」と言った。
つまり、その時点ではパンは焼いて間も無かったと言う事だ。試合後に買いに行くような暇は無かっただろう事を考えれば、試合前からパンは用意されていた事になる。
だとすれば、勇者の行動は始めからダンデの為の物だったかのようにすら思える。
試合前に、どこかでダンデの体の状態を聞いたか……若しくは、ダンデを自身の目で見て看破したのか。それで、ダンデの身の回りの情報を集めて、嫁がパン屋である事を突き止め、そこに導く為にどこかしらからこのパンを手に入れて来た――――と、このような事だろう。
「勇者って凄ぇなぁ……」
超人――――と言うより、人間離れしている。
だが、どこか暖かく、人をより良い方向へと導く存在。
それを人は、勇者と呼ぶのだ。
「おっし、決めた! 俺、剣の勇者のファンになる!!」
後に「東大陸で1番」と謳われる事になるパン屋が、この少し後に誕生するのだが……それはまた、別の話。




