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猫だってアイテムを収集すれば最強になれます!(旧題:猫だってアイテムを収集すれば最強になれます)  作者: 川崎AG
8章 幽霊ですか? いいえ、ただの船旅……えぇぇ幽霊船!?
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8-16 船上の戦場

 船生活2日目。

 現在地、海の上。

 見渡す限りの青い海。陸地も既に見えなくなり、視界の中は上も下も、右も左も青ばかり。

 はぁ~、海上生活って癒されるわぁ。

 海の香りと、緩やかな波の動きに揺られ、目が覚めるような輝く青だけが支配する世界。

 ああ、なんか、こんな状況なのに、それこそ豪華客船クルーズしてるみてぇだな?

 青色が、心を落ち着ける色だってテレビで言ってたけど、確かにそうかも……。昨日は気持ちがササクレ立って海の青さを否定したけど、一晩寝てから海を見ていたら、凹んで居た気持ちもいつの間にか穏やかなニュートラルな状態になっているし。

 それに――――なんての? こうして船に乗って遠い場所を目指していると、なんかさ「冒険してる!」って感じでテンション上がる。

 ゲームでも、船を手に入れたら一気に行動範囲が広がって、今まで行けなかった場所にも行けるし、今まで見た事も無い強敵にも会えて、陸地が見える度にワクワクしたもんだ。


「ミャァ……」


 【仮想体】の肩で、穏やかな海に癒されていると、突然ドンッと船尾の方で音がして、グラッと船が揺れる。


「ミ?」


 何だ? 人がマッタリしてる時に……。

 ん?

 臭い。

 鼻を澄ませると、海の方からいくつかの魔物の臭いがした。

 臭いがそこまで強くないから、多分雑魚だと思う――――けど、臭いがやけに遠く感じる。

 臭いのする方に視線を向けると、大きな魚っぽい影が波をたてて泳いでいた。

 臭いの遠さ的には100mくらい離れているかと思ったが、実際は船のすぐ近くを泳いでいる。

 もしかして相手が水の中に居るからか? 猫の体に備わっている素の感知能力が微妙に働いていない。

 考えている間に、もう1度ドンッと何かが船にぶち当たる音と共に振動。

 乗客たちがワーキャーと大騒ぎで船室に戻って行き、船員たちが乗客達を誘導しながら武器を手に取っている。

 あらら……魔物に襲撃されてる感じかしらコレ?

 船壊されたら困るし、仕方ねぇな……チャチャッと始末して、バカンス気分に戻るとしますか。

 「よっこいせ」と【仮想体】を音のした船尾に向かわせようとしたら、目の前にロールパンが立ちはだかった。


「剣の勇者、手出しは無用ですわ! この船を狙う不埒な輩は、全て、この(わたくし)、エルギス帝国子爵ヴィセール=トト・レゼンスの娘、シアレンス=レア・レゼンスが倒して御覧に入れますわ!」


 ドドンッと妙に迫力のある宣言をするロールパンに、斜め後ろで老執事が泣きながらパチパチと称賛の拍手を送っている。

 って言うか、子爵に“元”を付けろって昨日注意されてませんでしたっけ? いや、まあ、別にええんですけどね? 俺は気にしないし。

 そんな事よりも、俺が気になっているのは、ロールパンの身に付けている鎧である。

 御世辞にも体格に恵まれているとは言えないロールパン。その華奢な体に似合わない、若干……いや、大分ブカブカな、サイズの合っていない重鎧(ヘビーアーマー)

 鎧を見ていた俺の視線に気付いたのか、ロールパンが自慢げに胸に手を当ててフフンッとふんぞり返る。


「ふふっ、やはりこの見事な鎧に目が行きますわよね? この鎧こそ、我が家に代々伝わる鎧ですわ。10年前の戦争に敗北し、家ごと魔族に取り上げられそうになった時、お父様が命からがら持ち出したレゼンス家の証。その名も――――」


 一瞬の溜め。


「スパイクアーマーZプラスmarkⅡダッシュターボエクストラアルファですわ」


 え? 何? ぁんだって?


「スパイクアーマーEXゼロ3ライジングサンスーパーパーフェクトボディですわ」


 さっきと違わない?

 しかも「微妙に違う」とかじゃなく大分違うよね? 明らかに別の物になってるよね?

 無駄に長い名前だから、覚えられないんじゃないの?

 そもそも何、その長い名前? シリーズが続き過ぎて、収拾がつかなくなった格ゲーのタイトルじゃねえんだぞ。


「この鎧を身に付けた私は――――無敵ですわ!」


 カッと目を見開く。

 無敵……無敵ねぇ……この後の展開が予想出来た気がするけど……まあ、良いか。

 とか呑気にロールパンの話を聞いている間も、後ろの方で断続的にドンッドンッと魔物が魚雷のように船にぶち当たる音と振動が響いている。

 ついでに船員らしき男の「こ、これ以上は無理だ! 傭兵の皆さん、早く魔物を倒して下さい!」と泣き叫ぶ声。

 それでようやく現状を思い出したのか、ロールパンがハッとした顔をする。


「クッ! まさか、私に恐れをなし、足止めをするなんて……なんて姑息で卑怯な!!」


 いや、足止めも何も、アンタが勝手に喋ってただけだが……。


「待ってなさい! 今、私が参りますわ!!」


 鎧が重いのか、妙に重苦しい足取りで船尾に走って行くロールパン。

 その後を、俺に会釈をしてから老執事が軽い足取りでトトッと追いかける。

 俺も行ってみようかとも思ったが、魔物は大した事なさそうだし、船を守る為に雇った傭兵がロールパン以外にも居るっぽいし、まあ、大丈夫でしょう。

 俺はここでリゾート気分に戻――――


「鎧のお嬢ちゃんがやられたぞ!!」「お嬢様ぁアアアア!!」


 …………予想通りの展開だった。

 口ほどにも無いって言葉を、是非あのロールパンに送ってやりたい。

 しゃーないな……手を出すかどうかはともかく、一応見に行っておくか?

 船尾に向かってトコトコと【仮想体】を歩かせる。

 船の後ろからいくつもの水柱が跳ね、炎が海の上を走る。

 結構な人数が集まって、下に向かって天術を放っていた。

 まあ、そら、そうなるか。

 4層構造の船ともなれば、甲板から海面まで結構な距離がある。海面近くまで降りて武器で攻撃……なんて選択肢はないだろうし、そもそも水中の敵相手に武器で戦うなんてナンセンスだ。となれば、必然天術での遠距離攻撃って選択肢になる。

 けど、あれだけバカスカ撃ってるのに、臭いが1つも減っていない。まあ、天術撃っても、深く潜られたら威力通らねえし、仕方ないっちゃ仕方ねえわな。


「け、剣の勇者様!!」


 船員の1人が俺に気付いて、縋るような視線を向けて来る。

 いや……そんな助けを求める目をされても……。


「勇者……」「勇者だ!」「あれが噂の……」「魔王を屠った、“本物”の勇者!」「本当に金ぴかなんだな?」「猫ちゃん可愛い……」


 皆が攻撃の手を緩めずに、チラチラとコッチを見ながら感想を漏らしている。

 ってか、足元で完全にノびてるロールパン。白目剥いて、女の子が人前でしちゃいけない顔してるけど大丈夫だろうか? 多分大丈夫じゃない。

 まあ、ロールパンの事は老執事が面倒見てるから放っておくとして……。

 敵は倒しちゃって良いのかしら?

 正式に雇われてる傭兵が居ると言うのなら、そいつらに任せた方が良い様な気もするが、それをすると船が沈没しそうだしな……。

 まあ、良いか。問題があるなら後で「ごめんなさい」するって事で。

 さて、そんじゃ、行きますかね!


 天術を放っている者達をジャンプで飛び越し、甲板から飛び降りた。


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