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猫だってアイテムを収集すれば最強になれます!(旧題:猫だってアイテムを収集すれば最強になれます)  作者: 川崎AG
8章 幽霊ですか? いいえ、ただの船旅……えぇぇ幽霊船!?
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8-14 船に乗って

 トボトボとグラムエンドに帰り着く。

 はぁ……。


「ミィ……」


 大きく溜息を吐く。

 いや、吐きたくもなるでしょう? あれだけコテンパンにされたらさ……。

 目先の事に集中って言っても、やはりこれだけ派手に負けたら、気にしないなんて無理だ。

 アビスとの戦いに続き、2度目の「手も足も出ない」敗北。

 1度目の敗北を経験し、力を求めて突っ走って来た。その甲斐あって、今の俺は魔王連中と比べても、かなり上位に食い込めるくらいには強くなった……と思う。

 でも、あのカラス野郎には、本当に、ホンっトウに、“何も出来なかった”。

 魔王以外にも、魔神を始めとした化物のような強さの奴がいる事は知っていた。けど、それを直接味わうと思う。


―――― 俺は、弱い……と。


 魔王を何人狩ろうが、それが次も勝てる理由にはならない。

 力が足りない。

 まだまだ、まだまだまだまだまだ。全然ちっとも、足りてない。

 何時まで経ってもアビスや他の最古の血(エンシェントブラッド)が現れないから、心のどこかに余裕が生まれていた。

 このまま、何事も無く過ごせるのではないか、と。

 そう、そうだ。思い出した。

 俺は、ただ“見逃されている”だけだ。

 このままではダメだ――――それは分かっている。問題は、これ以上どうすりゃ良いのかが分からんって事だ。

 魔王を倒して、経験値貰って、アイテム奪って強くなるって今までの行動は、多分間違いじゃない。

 強くなる為の最短コースを進んで来た自信はある。これ以上のリスクを負えば死ぬし、もっとイージーモードな道を選んでいたら、今程強くはなれていなかった。

 つまり、今までの道が限界ギリギリの丁度良いラインだったって事だ。

 これ以上、どうすれば…………。

 ……。

 ……。

 ……。

 分かんねぇ。


「ミィ……」


 ハァ……。

 どっかに、ババーンッと一気に強くなれる魔法の薬的な物は落ちてないものかしら? そんなん有ったら、今頃誰かが使ってるか……。

 溜息を吐きつつ街に入ると、バタバタと誰かが駆けて来――――なんだ、バルトか。

 勇者同士の話は終わったんかね?


「師匠!」

「(おう、もう話は良いのか?)」

「はい! 双剣の勇者、杖の勇者が、受け入れる、言う、ました!」


 俺がボコられてる間に、そっちは上手い事纏まったらしい。


「それで、師匠、港、場所、訊かない、出る、行く、から、代わり、訊く、しました!」


 おお、俺の代わりに港の場所を聞いてくれたってか? 何この子、何気に出来る子じゃないのウチの弟子。


「魔王、バグ……バグリ……ン? の、城、西、行く、在る、です!」


 ふむ……なるほど、そう言えば城から先へは行った事なかったな……? 城までは行った事あるから【転移魔法(テレポート)】で移動して、そっからは徒歩かな、

 ってか、バグリンってなんだ……幼馴染みたいな呼び方しおって。バグ……えー……バグなんたらさんに失礼でしょうが。


「(分かった、ありがとな)」

「はい! 師匠、役に、立つ、嬉しい、です!」


 本当に忠犬属性だなコイツは……。

 まあ、そう言うところが、弟子として可愛らしくもあり、放っておけない訳でもあり。

 それはともかく――――。


「(俺は、このまま港に向かって、大陸の北側に向かう船を見つけ次第、例の魔王の居る国に行ってくる)」


 どうでも良いけど、猫って船乗れるのか? まあ、最悪密航したって良いんだけどさ。船なんて、魔王の居る城に侵入するのに比べれば楽勝だろうし。


「もう、行く、ですか?」


 本当は道具や食料補充しつつ、ノンビリしてから行くつもりだったけど、そんな悠長に構えてられる気分じゃねえからな。

 カラスにボコられたから、妙に気持ちが「早く強くならなきゃ!」と焦る。

 自分に落ち付け、とブレーキをかけたいところだが、冷静になったところで状況が好転する訳でもねえし。


「(バルト、もしかしたら――――俺達の知らない、見えない場所で大きな流れが動き出してるかもしれない)」

「流れ……ですか?」

「(ああ。具体的に何って言える物じゃねえけど、何か……嫌な予感がする)」

 

 カラスの言っていた予言めいた言葉。

 あれがどこまで信用出来るのかは知らないが、俺の預かり知らぬところで、何かが動き出しているのは間違いない。

 そして、その動き出した大きな流れに、俺は既に呑まれているんだと思う。


「(俺がアッチの国に行ってる間は、皆の事宜しくな?)」

「はい!」


 予感だ。

 流れの先には、途轍もなく大きな戦いが待ってる気がする。

 戦いとなれば、人類の――――世界の守り手である勇者達だって他人事ではない。魔王と勇者の因縁云々を抜きにしても、勇者達には強くなって貰った方が良い気がする。

 そいで、現勇者の最大戦力は多分ウチの弟子だ。だったら、まずはバルトが強くならなきゃ始まらない。


「(俺がいない間も修行サボるなよ? まあ、お前に関してはそこまで心配してねえけど。って、修行の前に療養が先だな? ちゃんと飯食えよ、そいでちゃんと寝ろ。それで治らないならアザリアや他の勇者に相談しろ、何かしら知恵なり力なり貸してくれる)」

「はい」

「(それじゃ、俺はちょっくら船旅を楽しんで来る)」

「気を、付ける、下さい!」

「(分かってる。その先には魔王との戦いがあるし、気は抜かねえよ。【転移魔法(テレポート)】でアッチと行き来出来るようになったら1度戻って来るつもりではあるけど、船旅が何日かかるか分からん。その間は船から降りる訳には行かねえし、連絡も取れねえから、ここらで何か起こっても俺は戻って来れねえ。そっちもくれぐれも気を付けろよ)」

「はい! 師匠、居ない、時間、僕、いっぱい、頑張る、です!」


 無理しねぇ程度にな……と釘を刺してから、転移門(ゲート)を取り出して城の近くへとパッと移動した。



*  *  *



 潮の匂いは良い。

 子供の頃は海の近くに家があったから、両親が休みになる度に連れて行ってくれたっけ……。

 フッ。


「ミッ」


 ちょっと恰好付けてみた。

 ……見た目子猫だけど……。

 さてさて、現在地は――――船の上。

 転移門で城まで飛び、そこから西を目指してエンヤコラ。意外とそこまで距離はなく、走りだしてから2時間もかからなかった。……まあ、俺が時速100km越えの全開走行で走ったからってのもあるけど……。

 んで、港町に着いたのは良いんだが、話を聞くと大陸の北側へ行く船は数ヶ月に1度出るか出ないかってレベルらしく、潔く諦めて別の方法を……と思ったら、運良くその船が出るタイミングだったらしく、ダッシュで乗船券を買って、食料やらの道具の補充も出来ずに飛び乗った――――と言うのが、10分前の出来事である。

 数ヶ月に1度の船にガッチリナイスなタイミングで間に合うって、これは運が良いのか悪いのか……。

 まあ、良いって事にしておこう……うん、そうしよう、うんうん。


 ちなみに――――俺が乗っているこの船、無茶苦茶デカイ。

 なんつーの? テレビでやってる豪華客船? なんちゃらアンヌ号的な奴? それに比べれば流石に見劣りしてしまうが、小さな村の1つや2つなら放り込めそうなくらい大きい。

 船なんて、島間移動のフェリーくらいしか乗った事ないから、妙にテンション上がるわぁ……。

 そんな訳で、テンションの赴くまま、船内をトコトコと【仮想体】の肩に揺られて探検していた。

 4層構造の木造作り。

 何やら魔法的な技術により、風が無くても走れる上に、船底の方で常に術師達が天術で船を護ってるとかで、ちょっとやそっとでは船が傷付く事もないそうな。

 船って面白いよね?

 元居た世界とは似ても似つかない異世界なのに、船の形は似たような物なんだぜ? 船の構造は知らんが、海を渡るのに最適な形を求めたら、こう言う形に落ち付く物なのかね? だとしたら、ちょっと浪漫のような物を感じてしまう。



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