8-8 元教父の宝物
収集箱に入った謎の箱こと“星屑の箱”を、床に下りてから取り出す。
表面が木目っぽく見えたけど、明るい所で見ると分かる。これ、金属の“濁り”か。こうしてみると、結構綺麗なもんだな?
骨董品を買い漁る小金持ちの気持ちがちょっとだけ分かるかも。まあ、そんな物に払える金なんか持ってなかったけど……。
…………いや、貧乏だった訳じゃねえし……本当だし、マジだし、うん、決して、貧乏じゃ……うん、なかったよ? ええ、本当に、マジでマジで。
いや、違う! 俺が元々貧乏だったかどうかなんて、どーでもええんじゃ!! べ、別に誤魔化す為に話題変えようとしてるんじゃないんだからね!!
今は、箱の中身を確認する事の方が重要だ、って事よ。
「師匠、箱、開ける、やる、ますか?」
「(いや、自分で開けるから良い)」
ばっきゃろう。
宝箱を開ける時のワクワク感は俺の物だコンチキショウ。
教父爺から貰った鍵を口で咥えて、器用に鍵穴にぶち込んで回す。その猫らしからぬ動きに感動したように、バルトが横でパチパチと手を叩いている。
………若干バカにされてるようで、気分的には微妙だな……。
鍵をもう1回転させると、ガチンっと言う気持ちの良い音と共に、鍵のロック部分が外れる。
はい、それじゃあお待ちかねの、レッツオープン!!
蓋を開け、ワクワクしながらバルトと2人(1人と1匹)で箱の中を覗き込む。
「………ミャァ?」
………ボール?
「…………ボール…です、ね?」
バルトが目をパチクリさせる。
多分、俺もコイツと同じような顔をしている。……まあ、猫の顔だと、そんな事分からないだろうけども。
星屑の箱の中に入っていたのは、フワフワな綿や、柔らかい布に包まれた―――真っ白ですべすべな……ボール? だった。
触れてみると微かに暖かく、持ってみると微妙に重い……。大きさ的にはソフトボールくらいなのに、重さはバスケットボール……みたいな感じ。
特に装飾のような物はなく、完全に真っ白な球だった。
何、コレ?
完全に謎の白いボール。
ぶっちゃけて言おう。期待ハズレな事この上ない。今度教父爺に会ったら、どてっ腹に猫パンチ(極)を叩きこんでも許されるんじゃなかろうか?
「師匠、これ、何、ですか?」
「(俺に訊くな)」
正体不明なボールだが……ま、とりあえず収集箱に放り込んでみるか? 少なくとも詳細情報見れば正体分かるかもだし。
丸っこい手でボールに触れる。途端、ボールが消えて瞼の裏にログが流れる。
『【天使の卵 Lv.99999】
カテゴリー:素材
サイズ:小
レアリティ:★★★★★
所持数:1/1
神の生み出した奇跡。
「彼の悲しみは、新たに生まれ来る命によって救われるだろう」』
はい、キターッ!!!!
近頃お決まりになって来た、「何に使うのか分かんない」シリーズ!!!
ってか、このアイテム色々おかしくない?
レベルが………何この桁外れ……? 絶対カンストしてるよね、これ? いや、待って。普通のカンストって99か999じゃない? 9万とか完全にぶっ壊れ過ぎだ。
異常表記……バグかな?
レアリティが★5。旭日の剣や天映の盾と同レベルの、超高レアリティ。
説明書きは、「何に使うのか分かんない」シリーズ御馴染みの、どっかの誰かのポエムみたいな意味不明な奴。
だぁかぁらぁ、説明書くなら、もっと明確に分かり易い文章で書けやボケぇ!!
使い方は不明。何の為の道具なのかも不明。
唯一分かったのは名前―――天使の卵。
……いや、正直名前は名前で訳分からんけども……。
天使……まあ、天使は分かる。羽の生えた、頭に気円●みたいな輪を乗っけてる……なんか、良く分かんない神聖な、なんやかんやの奴だ。
その卵ってのが分からない。
なんで卵? 天使って卵生なの? 人みたいな見かけしてるのに、カモノハシ的な感じなの? 哺乳類なのに卵産みます……的な。
結論。
超絶意味不明。
まあ、別に驚きや落胆も無いけどね?
いい加減、魔神の所から貰って来た“虹の器”からコッチ、使用用途不明な物が妙に集まり出したから、「もう、良いよ……」と諦めな気分になるだけだ。
ただ―――何の収穫も無しって訳じゃない。
目を閉じて、瞼の裏で流れるログを確認する。
『条件≪レベルをカンストしたアイテムを手に入れる≫を満たした為、以下の派生スキルが解放されました。
・ネコババ』
ネコババ……?
え? 何? 俺の事ディスってんの? 猫ディスってんの? シバき殺すぞ。
『【ネコババ】
収集の能力を発動する際、あらゆる魔法、天術、スキルでの妨害効果を無効にする。このスキルの効果はあらゆる能力より優先される』
ん~?
収集能力の妨害無効のスキルって事かえ?
例えば―――バグとの戦いで、オリハルコンの鎧と旭日の剣が、野郎の魔王スキル【支配】の効果を受けて収集箱に戻す事が出来なくなっていた。けども、この【ネコババ】のスキルがあれば、そう言った収集能力に干渉して来る系の効果を全部無効にする事が出来る……って事か。
相手が何かしらの能力で自分のアイテムを収集される事を防いでいたとしても、その効果を無効にして、強制的にアイテムを収奪する事も出来る。
つまり、だ。ゲーム的に言うと『“盗む”の成功率100%』の効果ってところだ。
そう考えると、結構な“当たり”スキルじゃない?
これから先も魔王相手に喧嘩を売っていくとなれば、中にはバグのような、コッチの能力の天敵も居る可能性は否定できない。だが、そんな能力持ちが現れても、このスキルがあれば、コッチは「いつも通り」の立ち回りが出来る訳だ。
普段は恩恵が無いけど、持っておいて損はないし、精神的な安心度も大分違う。
うんうん、良いんじゃない?
更にログをスクロールさせる。
『レアリティ★のアイテムを獲得した事により、特性:【星の加護を持つ者】のレベルが12になりました』
『レベルアップにより、特性:【星の加護を持つ者】の付与スキルが解放されました』
『【星の加護を持つ者 Lv.12】
カテゴリー:特性
レアリティ:★
能力補正:全能力(効果:大)
付与スキル:タイムアクセラレータ
効果:属性“虹”を解放
アクティブセンサー
???(レベルアップで解放)
???(レベルアップで解放)
備考:通常経験値ではレベルアップしない。
レアリティ★のアイテム入手でレベル上昇』
『【タイムアクセラレータ】
一時的に発動者を通常の時間の流れから切り離し、時間を遅延・早回しする能力』
出たぁああああああッ!!!!!?
強スキルの筆頭、時間干渉系能力だぁあああああああぁぁぁぁぁぁあッ!!!
来たわ、ついに俺の時代が来たわ。
「師匠、何か、分かった、ですか?」
おっと、いつもの調子で自分の世界に入り込んでしまっていた……。普段は、アイテムを収集する時は俺1人だからなぁ……まあ、許してくれ。
「(いや、全然。何の為の道具なのか意味不明だコレ)」
まあ、アイテムとしては意味不明だが、収集アイテムとしてはレアリティ高いし、結構優秀じゃなかろうか?
お陰で強くなったしね。
…………あれ? なんか忘れてるような……?
そこで、自分の本来の目的を思い出す。
「ミャァあああッ!」
「し、師匠! どうした、ですか!?」
双子と教父爺に港の場所訊くの忘れた……。




