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猫だってアイテムを収集すれば最強になれます!(旧題:猫だってアイテムを収集すれば最強になれます)  作者: 川崎AG
8章 幽霊ですか? いいえ、ただの船旅……えぇぇ幽霊船!?
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8-4 教父に会いに行こう

「(ってな訳で、ちょっくら船で遠出して、魔王の所行って来る。まあ、戦うかどうかは相手の強さによるけど)」


 はい、説明と回想のターン終わり。

 現実に戻れば、そこはグラムエンドの路地裏。

 そして、目の前には、俺の話を一切口を挟まずに、体育座りで聞いて居たバルト。


「そう、ですか。師匠、一緒、行きたい、です、けど、足手纏い、嫌、です……」


 シュンっと少し落ち込んだ顔になる。

 時々思うが、コイツは犬か猫かで言えば完全に犬だな? しかも大型犬ってよりも、人恋しい子犬っぽい。

 ………こう言うのを、世の女性方は放って置かんのだろうなぁ……腹立つ。俺も子犬に転生すれば良かった……いや、そもそも、俺が選んで猫になってる訳じゃねえけど。

 ……いや、いやいや、別に猫が嫌な訳じゃねえよ? 身軽で夜目の利く猫も好きですよ? まあ、ちっとも体大きくならねえのは腹立つけど。


「(気にすんな。それに、留守番だからって暇な訳じゃねえからな?)」

「……え?」

「(俺が居ねえ間は、皆の事護るのはお前の役目だからな?)」

「は、はい!」


 「自分の留守番は無駄じゃない!」と知り、分かり易く顔に陽が差したように明るくなる。

 ……本当に感情を隠せんなコイツは。

 こんな馬鹿正直で心配になる。少しは会話や表情で駆け引きするって事を教えた方が良いのかしら? いや、でも、そう言う事教えて、人を疑うようになったら、バルトの良さを潰す様な気がするんだよなぁ……。


「(それと、勇者連中が無茶やりそうだったら、そのブレーキ役もな?)」

「はい!」


 って言うのは建前で、本当の狙いは“コイツに”無茶をさせない為だ。周りに勇者連中が居れば、バルトも流石に無茶しないだろうし、しようとすれば誰かしらが止めると思うし。

 勇者、勇者……。

 おお、そうだよ。別にアザリアじゃ無くても良いじゃん、港の場所聞くの! 双剣の双子はこの国の人間だし、ビッチことシルフさんも、バグの城に侵入する為にこの国の事下調べしてたっぽいから、当然港の位置くらい調べてあるだろうし。


「師匠、どう、しました、か?」

「(港の場所を誰に聞こうかと思って)」

「それなら、教父さん、に、聞く、良い、と、思う、ます」

「(教父ぅ? あの悪魔にとり憑かれてた教父ぅ?)」

「はい。教父さん、師匠―――剣の勇者、様、に、会いたい、言う、ました」


 俺に会いたい?

 何? まさかリベンジじゃないよね? ………無いか。無いな。教父爺は、ベリアルの支配から解かれてる筈だし………え? 解けてるよね? 解けてない、なんてオチ無いよね?

 ……あ~、考えたら不安になって来た……。

 そこら辺を確かめる意味でも、1度直接会っておいた方が良いか。後々気付いて、「色々手遅れでした」なんて展開になったら笑えねえし。


「(分かった。じゃあ教父の所行くか)」

「はい。御供、する、です」

「(おう、宜しく)」


 通訳係のバルトが居てくれと、話がスムーズに進むから有り難い。

 やっぱり、人間のコミュニケーションは、会話が1番ですよねぇ。え? だったら喋れるように努力しろって? はいはい、しますします、本当本当、あ~面倒臭ぇ。



*  *  *



 5分程歩き、辿り着いたのは………ヴァリィエンス教会だった。


「(え? ここに居るのあの人?)」

「はい」

「(あんな騒ぎ起こしたのに?)」

「はい」

「(悪名が広がっちゃってるのに?)」

「はい」


 意味が分からんです。

 教会がバカなのか、世の中がバカなのか、俺がバカなのか……。


「でも、教会、居るの、訳有り、ですよ?」

「(訳有り?)」


 詳しく聞くと、こう言う事らしい。

 教父が、あの悪魔の元締めに支配されてあの事件を起こした事をグラムエンドの住人達が知り、それに対しての「“背信者”として処罰しろ」だの「悪魔の使いを殺せ」だの、暴動が起きそうな程の騒ぎになり、そんな住人達から教父を匿う為に、教会の人達が口添えして、こう言う状況になったそうな。

 悪魔として暴れた教父が、未だに教会に居る事。そして、その教父を教会が庇っている事について、住民達は納得していないようで、この七色教の町でありながら、七色教から離れる人が後を絶たない……だとさ。

 大変だわねぇ宗教って。

 まあ、でも、元々は七色教を弱体化させつつ、勇者の名声が上がれば良いなぁ……とか思いながらの悪魔との戦いだったし、俺の狙い通りの展開だわな。


「師匠、行く、ましょう」

「(ああ)」


 周りに気付かれないように、家の間の小さなスペースに【仮想体】を出して、オリハルコンの鎧一式と、腰に旭日の剣を垂らす。

 ヨシっと。

 ちなみに、オリハルコンの鎧は、ベリアルの阿呆に腹に大穴あけられたけども、この3日の間に【自己修復(オートリペア)】を使って新品同様に直した。

 磨き抜かれた鏡のように光る鎧が、直射日光を反射して、鎧の肩に乗る俺には若干辛い……って言うか、普通に熱い……鉄板焼きかコノ野郎。

 心の中で文句を言いつつ、可愛い子猫の振りをして金ぴか鎧の肩で丸くなる。

 教会へと足を踏み入れる。

 戦いの時は特に気にしなかったけど、殺風景だなぁ教会って……。贅沢は罪とか、そんな感じの……何とかの誓いってのがあるんだっけか? まあ、それは元の世界の宗教の話だけど。

 これだけ何も無いところをみると、コッチの世界でも似たような感じなのかな? 世界が違っても、宗教の目指すところは一緒ってか?

 バルトと2人………1人と1匹と鎧1つで待つと、俺達を待っていたかのようなタイミングで部屋から出て来たシスターが、教父の居る部屋まで案内してくれた。


 1番上の階にある、小さな部屋。

 数日前まで、七色教の全権を握って、世界を闇に落とさんとしていた奴の居る部屋とは思えない程、小さい。整頓も掃除もされているようだが、それでもどこかしら草臥(くたび)れた印象を与える部屋。

 小さな部屋に備え付けられた、小さなベッドで、身を縮こませるように横になっている初老の男―――教父爺……こと、双子の父親であるカヴェル。

 ベッドの横では、双子が並んで座り、心配そうに眠っている父親を見守っている。


「剣の勇者……」「と、ペットの猫」


 バルトを無視した訳ではないだろうが、双子の注目が【仮想体】と(おれ)に集まる。

 双子はジッと金の鎧と俺を見続ける。いつかのように敵意は一切無い……が、同じ顔の同じ表情でジッと見られると、落ちつかねぇ……!

 ってか、え? 何? 俺の発言待ちじゃないよね? だったら無駄よ? 喋れないもん。

 「そっちが話を進めんかい!」と言う意思を込めて、俺も双子をジッと見返す。

 しかし一向に双子が喋り出す雰囲気はなく、仕方ないので【仮想体】に、気付かれないようにバルトに「話を進めろ」と言う意味の合図を送る。


「師匠、連れる、来ました」


 はい、連れられて来ました。


「教父さん、は、喋る、ますか?」

「もう、お父さんは教父じゃないですけどね」「教会で匿う時に、七色教での権限の全てを放棄するって約束しました」


 そら、そうだろう。

 あれだけの事やらかして、権限そのまま残すなんてしたら、間違いなく七色教の評判は地に落ちる。そうなったら、今残ってる信者達も愛想尽かしかねない。

 そもそも、権限そのままにして、教父が同じような騒ぎを起こさない、なんて保証はないしな?


「剣の勇者」「体は、もう大丈夫?」


 何の心配……?

 あっ! そっか、俺3日前に皆の前からドロンする時に、オリハルコンの鎧の腹の穴そのままにしてたんだった。

 この通り、鎧は新品同様ですから、問題なっしぃんぐよ。


「そうですか」「良かった」


 言うと、双子が一瞬顔を見合わせる。そして。


「お礼を」「言いたかった」「お父さんを助けてくれて」「ありがとうごさいました」


 立ち上がった双子が、シンクロした動きでペコっと頭を下げる。

 気にすんな。

 ぶっちゃけ大した手間じゃなかったし、ベリアル相手なら、「教父助けた上で撃破」くらいのハンデがあって丁度良かった。



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